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2017年7月分全国消費者物価指数について

2017年8月25日

―全国消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比+0.5%、7カ月連続上昇―
―同・生鮮食品及びエネルギーを除く総合・前年同月比は+0.1%、5カ月ぶりに上昇―
―8月分東京都区部消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比+0.4%上昇―
―今年は12日が土曜日で、8月分東京都区部消費者物価・生鮮野菜は前年同月比▲2.3%―

●7月分の全国消費者物価指数・総合指数は2015年を100として100.1となり、前年同月比は+0.4%と10カ月連続の上昇。前月比(季節調整値)は0.0%と横這いになった。

●生鮮食品の前年同月比は▲1.1%の下落だった。6月分は+0.5%の上昇だった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.07%となった。不漁のいかは前年同月比+17.3%で依然2ケタ上昇だが6月分よりは8ポイント弱程度低い上昇率になった。7月分のエネルギー全体の前年同月比は+5.8%と6月分の+4.9%から上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.06%と上昇要因になった。なお、7月分のビールは前年同月比+7.9%となった。

●エネルギー分野の各項目の、総合指数の前年同月比に対する寄与度差はまちまちに働いた。ガソリンの前年同月比は、前回6月分では+6.1%だったが、今回7月分では+6.3%と上昇率がやや高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。灯油の前年同月比は、6月分では+23.0%だったが、今回の7月分では+21.2%とやや鈍化した。前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。一方、原油市況動向が遅れて反映される電気代の前年同月比は+6.1%と6月分の+4.9%から上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.04%と物価押上げ要因になった。都市ガス代の前年同月比は+2.3%と、6月分の+0.1%から上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%だった。

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は7月分では前年同月比▲4.0%と、6月分の前年同月比▲3.7%から下落率がやや拡大したが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。また、家庭用耐久財は前年同月比0.0%で、6月分の前年同月比▲1.0%の下落から横ばいになった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。7月分の携帯電話機が前年同月比▲8.6%下落したことが主因で7月分の通信の前年同月比は▲2.8%の下落になった。但し、6月分の通信の前年同月比は▲3.1%だったので、7月分の通信の総合指数・前年同月比に対する寄与度差は+0.01%と上昇要因になった。

●7月分の宿泊料は前年同月比+0.4%で、6月分の前年同月比+0.2%から伸び率がやや上昇した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。6月分は前年同月比▲5.3%の下落だった外国パック旅行費は、7月分では同0.0%の横這いになった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%だった。

●7月分の全国消費者物価指数・総合指数・財の前年同月比は+1.0%と6月分の同+0.9%からやや上昇率が高まった。6月分から7月分への寄与度差は、+0.02%と物価上昇要因になった。また、生鮮食品を除く財は+1.1%と6月分の+1.0%から上昇した。5月分から6月分への寄与度差は、+0.09%と物価上昇要因だった。一方、サービスは▲0.1%の下落と6月分と同じだったが、四捨五入の関係で総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.04%と物価上昇要因だった。通信・教養娯楽関連サービスの総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。

●また、7分の全国消費者物価指数・総合指数・持家の帰属家賃を除く総合・前年同月比は+0.6%と6月分の+0.5%から上昇した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.05%だった。なお7月分の持家の帰属家賃は前年同月比▲0.2%で6月分の▲0.3%から減少率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。

●7月分の生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数は100.1で、前年同月比は+0.5%の上昇となった。前月比(季節調整値)は0.0%と横這いだった。前年同月比は1月分で13カ月ぶりの上昇に転じたあと、7カ月連続の上昇になった。前年同月比の+0.5%は、消費税率引き上げの影響(+2.0%)を除くと、2014年12月の+0.5%(消費税率引き上げの影響含む+2.5%)以来、31カ月ぶりの上昇率である。

●7月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は100.6で、前年同月比は+0.1%になった。前月比(季節調整値)は0.0%だった。前年同月比は13年10月分以来17年2月分まで41カ月連続で上昇が続いていたが、そこで途絶えた。17年3月分では▲0.1%と13年7月分の▲0.1%以来44カ月ぶりの下落だったが、4月分・5月分・6月分はともに0.0%で、7月分で5カ月ぶりの上昇に転じた。

●ESPフォーキャスト調査・8月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比の総平均予測値は、16年7~9月期の▲0.50%を底に持ち直し、17年1~3月期に+0.2%とプラスに転じ、17年4~6月期は+0.4%になった後、見通しでは緩やかに上昇する見込みだ。17年7~9月期は+0.70%、17年10~12月期は+0.80%、それから1年後の18年10~12月期は+0.88%だ。

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の新しい方法の試算で16年10~12月期・17年1~3月期とともに+0.1%のプラスになった。一方、日銀の需給ギャップは16年7~9月期+0.07%、10~12月期+0.57%、17年1~3月期+0.79%と3四半期連続でプラスになっている。ともにマイナスを脱した。17年4~6月期の実質GDP第1次速報値は前期比年率+4.0%だったので需給ギャップはさらに改善する見込みで、消費者物価指数・予想物価上昇率の上昇要因になるものと思われる。

●物価指数の前年比は、まず、商品指数が底打ちし、その後、国内企業物価指数、企業向けサービス価格指数が動き、最後に消費者物価指数が底打ちするというパターンが多いが、現局面も同様の展開になっている。

●7月分内閣府「消費者マインドアンケート調査」で1年後の物価が上がるとみている人の割合(上昇+やや上昇)は72.4%と、このところ頭打ちだが、4月分以降4カ月連続して70%台になっている。

(8月分の暫定的予測)

●8月分の全国消費者物価指数・総合の前年同月比は+0.8%程度と、4~7月分の+0.4%から上昇率を高めるとみた。11カ月連続の上昇になろう。

●8月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同月比は+0.7%程度と、7月分の+0.5%から上昇率が高まり8カ月連続上昇になると予測する。

●8月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数の前年同月比は+0.2%程度と2カ月連続上昇とみる。

●関連データである8月分の東京都区部消費者物価指数(中旬速報値)では、総合の前年同月比は+0.5%と、0.1ポイント上方修正された7月分の+0.2%から上昇率を高めた。4カ月連続の上昇だ。生鮮食品の前年同月比は+1.7%で、7月分の▲0.1%の下落から上昇に転じた。生鮮食品の総合指数・前年同月比に対する寄与度差は+0.07%だった。東京の8月の降雨連続記録は1日から21日までの21日連続で、77年の22日連続に次ぐ史上2番目の記録になった。このため天候不順の影響でキュウリなど夏野菜の価格上昇を伝えるニュースが多かったが、8月分の東京都区部消費者物価指数(中旬速報値)では、生鮮野菜の前年同月比は▲2.3%で意外にも下落となった。今年の8月は12日が土曜日で、調査対象日が12日を含む週の水・木・金(9日~11日)だったので天候の影響が出る前の調査になった可能性が大きいようだ。一方、生鮮果物の前年同月比は+5.2%で、ぶどうが同+26.1%である。

●エネルギー全体の前年同月比は+7.7%で7月分+5.3%から上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.11%で上昇要因になった。8月分の家庭用耐久財の前年同月比は+2.9%と、7月分の+4.1%から上昇が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%になった。8月分の教養娯楽用耐久財の前年同月比が▲4.2%と、7月分の▲6.4%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。8月分の宿泊料は前年同月比+1.8%で7月分の+0.4%から上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%になった。

●また、大阪市の総合8月分前年同月比は+0.1%で7月分の同▲0.1%の下落から9カ月ぶりに上昇に転じた。生鮮食品の8月分前年同月比は+0.7%だ。生鮮魚介は同+10.9%と上昇だが、生鮮野菜は同▲5.0%の下落、生鮮果物は同▲2.5%とこちらも下落である。

●8月分の生鮮食品を除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は+0.4%と6月分の+0.2%から上昇率を高めた。大阪市の生鮮食品を除く総合の8月分前年同月比は+0.2%で7月分の0.0%から上昇した。17カ月ぶりの上昇だ。

●8月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は7月分の▲0.1%の下落から0.0%の横這いになった。また、大阪市でも8月分前年同月比は▲0.3%で7月分の▲0.4%から下落率は縮小したものの、12カ月連続の下落になった。