2017年3月調査 日銀短観・企業の物価見通し

2017年4月4日

―大企業・製造業・業況判断DIは16期連続でプラスを維持し、2四半期連続前期より改善―
―生産回復で「はん用機械」、輸出増で「自動車」などが改善を牽引―
―大企業・製造業は内訳・素材業種・加工業種をみると「最近」改善幅大、「先行き」悪化せず―
―今回から調査が始まった研究開発投資額の16・17年度前年比は6カテゴリー全て増加―
―全規模・全産業物価見通しは販売価格見通し・物価全般見通しとも2期連続全て前回より低下せず―

●3月調査日銀短観は、大企業・製造業の業況判断DIは+12と12月調査の+10から2ポイント上昇した。しかし、内訳は素材業種が4ポイントの改善、加工業種が2ポイントの改善であることからみて、四捨五入の関係で改善幅は2ポイント上昇にとどまったが実際は3ポイントに近い可能性が大きい。

●大企業・製造業の業況判断DIは16期連続で「良い」超のプラスとなった。前期から改善するのは2期連続だ。景気に持ち直しの動きが出てきたことを示す内容である。

●大企業・製造業で「悪い」と答えた割合は16年3月調査・6月調査とも10%だったが、9月調査で9%、12月調査で7%と低下してきた。今回17年3月調査は前回16年12月調査と同じ7%だった。

●なお、「悪い」と答えた割合は「最近」では7%だが、「先行き」では2ポイント減って5%になる。実際に悪くなるという確信があると言うよりも海外要因などに先行き不透明が強いと言うことなのだろう。「良い」と答えた割合は「最近」では19%、「先行き」では16%で変化幅が3ポイント減だ。

●3月調査の調査期間は2月27日~3月31日である。

●3月調査の大企業・製造業の業況判断DI+12は12月調査の「先行き」見通し+8より4ポイント改善した。足元の景況感が予測より良かったということになる。

●大企業・非製造業・業況判断DIでは、15年9月調査・12月調査は+25と91年11月調査の+33以来約24年ぶりの高水準だったが、16年9月調査・12月調査で+18まで低下したのち今回17年3月調査では+20と2ポイント改善した。

●3月調査の大企業・非製造業・業況判断DIは23期連続のプラスである。大企業・非製造業で「悪い」と答えた割合は16年6月調査・9月調査・12月調査で6%だったが、今回17年3月調査で5%に低下した。

●大企業・製造業の「先行き」業況判断DIをみると、+11と「最近」の+12から1ポイント低下が見込まれている。3月調査の17年度想定為替レートは108円43銭と足元の実際の為替の動きより円高に置いている。こうしたところに、企業の慎重な見方が感じられる結果となった。

●しかし、「先行き」業況判断DIの内訳をみると、素材業種・加工業種は各々「最近」「先行き」とも+12で低下していない。大企業・製造業の「先行き」判断が国際政治面の不透明感などを理由に悪化する見込みとコメントする向きもあるが、大企業・製造業の「先行き」はそれほど弱くなく、横這いに近い慎重さだろう。

●大企業・非製造業では「先行き」は+16と「最近」の+20から4ポイントの悪化が見込まれている。「悪い」と答えた割合は「最近」では5%だが、「先行き」では1ポイント減って4%になる。何か大きな悪材料があってDIの悪化が見込まれているわけではないことがわかる。一方、「良い」と答えた割合は「最近」では25%、「先行き」では20%で変化幅が5ポイント減だ。先行きの不透明感からDIは悪化見通しになっていることがわかる。

●中小企業・製造業の業況判断DIは16年9月調査で▲3と3四半期連続マイナスになったあと12月調査では+1と、4ポイント改善しプラスに転じ、今回17年3月調査で+5と4ポイント改善し2期連続プラスになった。なお、3月調査の「最近」+5は12月調査の「先行き」見通しが▲4に悪化するとみていたのに対し、9ポイントも上回る数字になった。足元の景況感が予測より改善するという結果になった。

●一方、中小企業・非製造業の業況判断DIは、13年12月調査で+4と、92年2月の+5以来21年10カ月ぶりのプラスになった。今回17年3月調査では16年12月調査の+2から2ポイント改善し+4となり、14期連続でマイナスになっていない。16年12月調査時点の「先行き」▲2を6ポイント上回った。予測よりは良かったということになる。

●17年度上期の売上高計画は、大企業・中小企業、製造業・非製造業の、組み合わせ6つすべてのカテゴリーで増加になっており、明るい数字と言えよう。

●雇用判断DI(「過剰」-「不足」)は人手不足感が一段と強まってきていることを示唆する数字となった。大企業・全産業では▲15で16年12月調査の▲13より2ポイント不足超が拡大した。92年2月調査の▲24以来25年1カ月ぶりの水準である。一方、中小企業・全産業では▲28で16年12月調査の▲24より4ポイント不足超が拡大した。中小企業の人手不足感も大きく、こちらも92年2月調査の▲32以来、25年1カ月ぶりの水準となった。

●中小企業・製造業の「先行き」の業況判断は0と「最近」+5から5ポイント悪化する見通しである。また、中小企業・非製造業は▲1と「最近」より5ポイントの悪化見通しである。中小企業、特に非製造業では比較的「先行き」を慎重に見る傾向があることを考慮すれば、次回6月調査の「最近」がそこまで悪くなかったとなる可能性が大きいのではないかとみられる。

●全規模・全産業の業況判断DIは、過去最悪の98年9月調査の▲48に近かった09年3月調査の▲46を底に上昇し、東日本大震災による一時的落ち込みなどを挟んで13年9月調査で+2と07年12月以来のプラスになった。その後は消費税率引き上げによるもたつきなど様々な動きがあった。今回17年3月調査では+10で16年12月調査より3ポイント改善した。全規模・全産業という全体の景況感は16期連続してプラスの水準だ。景気が底堅いことを示唆する数字だろう。

●また、全規模・全産業の「先行き」業況判断は+4と、「最近」+10から6ポイント悪化する見通しである。全体としてみた、企業の景気の先行きには不透明感が強いことを示唆していよう。

●17年3月調査の17年度の大企業・全産業の設備投資計画・前年度比は+0.6%。一方、17年度の中小企業・全産業の設備投資計画・前年度比は▲22.6%だった。17年度の全規模・全産業の設備投資計画・前年度比はまだ3月調査であるため▲1.3%になった。

●一方、今回から発表されている研究開発投資額は、2017年度計画・前年度比は製造業・非製造業と大企業・中堅企業・中小企業を掛け合わせた6カテゴリー全てで16年度に続き2年連続で増加となっている。

●このためGDPの設備投資の概念に近い「ソフトウェア・研究開発を含み土地投資額を除くベースの全産業・全規模の設備投資」の2017年度計画・前年度比は、大企業・全産業で+1.9%。一方、17年度の中小企業・全産業で▲15.9%だった。17年度の全規模・全産業では+1.5%と3月調査段階でプラスになった。実際に設備投資がどうなるかが注目される。

●3日発表の概要に示された、「上昇」-「下降」の割合を示す、販売価格判断DIや仕入れ価格判断DIは、大企業・中小企業、製造業・(うち素材業種)・(うち加工業種)・非製造業の、企業規模・業種8つすべてのカテゴリーで17年3月調査は前回16年12月調査から、「上昇」超幅が拡大した。

●翌4月4日に発表された「企業の物価見通し」全規模・全産業ベースをみると、販売価格見通しの平均は、1年後が+0.4%と前回12月調査の+0.3%から0.1ポイントだが上昇した。3年後は+0.9%で前回と同じだった。5年後は+1.1%で16年6月調査以降4期連続同じ上昇率であった。

●一方、全規模・全産業ベースの物価全般の見通し平均は、1年後が+0.7%、3年後が+1.0%、5年後が+1.1%となった。全て前回12月調査と同じ上昇率になった。14年3月調査の調査開始以来全規模・全産業ベースの物価全般の見通しの予想物価上昇率は16年9月調査までは低下方向の動きしかなかった。販売価格見通しと物価全般の見通しで2期連続して全ての先行き年限で下落がない状況は14年3月調査の調査開始以来初めてだ。デフレからの脱却の動きが企業の予想物価上昇率の下げ止まりとして現れるようになったとみられる。日本の予想物価上昇率は足元の物価動向に左右される適合的期待の部分が大きいと言われる。足元の企業物価指数などの前年比しっかりとプラスに転じてきたことなどが反映されていると言えよう。

●国内企業物価指数の前年同月比は2月分で+1.0%の上昇、企業向けサービス価格指数は同じく2月分で同+0.8%まで上昇してきた。全国消費者物価指数・生鮮食品除く総合は2月分で同+0.2%と、日銀の物価目標の+2%にはまだまだ届かないが、プラスの伸び率にはなってきた。

●米大統領選挙でトランプ氏が勝利後に円安・株高が生じたが、12月調査では完全にそのプラスの影響が織り込まれなかった部分があり、今回調査で足元プラスに働いた面が大きいと見られる。円安や海外経済の持ち直しで、輸出が増加したことの影響が大きいようだ。海外経済をみると、米国で景気の堅調さが続き、今秋に5年に一度の共産党大会が開催される中国も持ち直している。自動車やスマートフォン関連部品は円安の恩恵も加わって輸出が増加傾向だ。また、在庫サイクルが意図せざる在庫減少局面にあることから生産が増加基調にあり、機械関連業種の景況感が上向いている。さらに円安による訪日客の消費増などで、非製造業の景況感も改善した。このように企業行動に堅調さが感じられる一方、最近のトランプ米大統領の政策運営に対する不透明さや、足元の円安や株高の勢い一服などを考慮し、企業の先行きへの見方は慎重であることも同時に示された内容と言えよう。