ホームマーケット経済指標解説2017年1月分鉱工業生産指数・速報値について

2017年1分鉱工業生産指数・速報値について

2017年2月28日

-1月分鉱工業生産指数・前月比▲0.8%と6カ月ぶりの減少-
-生産指数は予測指数で延長すると1~3月期にかけ4四半期連続前期比増加-
-基調判断は3カ月連続して「生産は持ち直しの動きがみられる」-
-一致CIによる景気判断、1月分は4カ月連続で「改善」か-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・1月分速報値前月比は▲0.8%と6カ月ぶりの減少になった。前年同月比は+3.2%と3カ月連続の増加になった。

●1月分の生産をみると、15業種のうちスマホ等の情報デバイス向けの電子部品が堅調に推移した電子部品・デバイス工業や、輸出が良かったプラスチック製品工業など3業種は増加したものの、新型車の投入一服で普通乗用車等予定通りの減産に加え自動車部品の生産が弱かった輸送機械工業や、12月に春向けの化粧品などの新商品が伸びた反動が出た化学工業(除.医薬品)、コンベヤ等12月に好調だったものの反動が出たはん用・生産用・業務用機械工業など12業種が前月比減少だった。

●経済産業省が公表している鉱工業生産指数の先行き試算値で、1月分の前月比は最頻値で+0.5%、90%の確率に収まる範囲で▲0.5%~+1.5%だった。1月分前月比実績の▲0.8%は製造工業生産予測指数前月比(+3.0%)より予想通り下振れたが、下振れ方が予想範囲外に大きかったと言える。

●中華圏の春節の時期が今年は1月に早まったこと、トランプ大統領が就任した直後先行きの不透明感がかなり高まったことも影響しているかもしれない。製造工業生産予測指数2月分前月比+3.5%、3月分前月比▲5.0%で3月の生産計画は大幅に低下している。但し、製造工業生産予測調査は2月10日時点なので、日米首脳会談の結果は反映されていない。

●鉱工業生産指数の先行き試算値では、2月分の前月比は最頻値で+1.1%、90%の確率に収まる範囲で+0.1%~+2.1%である。製造工業生産予測指数前月比(+3.5%)より下振れるものの増加見通しにはなっている。

●先行きの鉱工業生産指数2・3月分を製造工業生産予測指数前月比で延長して求めた場合、1~3月期の前期比は+0.8%の増加になる見込みだ。一方、2月分を先行き試算値最頻値前月比に置き換えて延長した場合は1~3月期の前期比は▲0.8%になる見込みだ。16年4~6月期以降17年1~3月期にかけ前期比プラスは4四半期連続になるかどうか注目される。なお、経済産業省に確認したところ、今年の季節調整替えは1月確報値段階で行われるということだ。昨年は愛知製鋼の事故や熊本地震があったこともあり、季節調整の影響も注目される。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をみると14年1~3月期では、出荷の前年比が+7.4%、在庫が同▲1.2%、と45度線を下回っていた。しかし、14年4~6月期では、在庫が前年同期比増加に転じ、出荷の前年比が+0.9%、在庫が同+3.1%、と45度線を上回ってしまい、在庫積み上がり局面に入った。15年10~12月期では、出荷の前年比が▲0.8%、在庫が同0.0%、と近づいたものの45度線をやや上回った。それ以降16年4~6月分(出荷の前年比が▲2.0%、在庫が同0.0%)までは45度線を上回ったままだった。16年7~9月期で出荷の前年比が▲0.6%、在庫が同▲2.0%と45度線を下回った。10~12月期では出荷の前年比が+1.7%、在庫が同▲4.6%とさらに右下に動いた。17年1月分では出荷の前年比が+3.5%、在庫が同▲4.3%となった。現在、在庫循環図からみて、生産が増加しやすい「意図せざる在庫減局面」に入っていると言えよう。

●経済産業省の基調判断は16年8月分では「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断に2カ月ぶりに上方修正された。15年5月分から1回を除き続いてきた「一進一退」の表現がなくなった。16年9月分、10月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断は維持された。16年11月分では「緩やかな」がとれて「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という判断に上方修正された。前回16年12月分に続き今回17年1月分でも「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という判断は継続となった。

(1月分景気動向指数予測)

●1月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲0.3程度と4カ月ぶりに前月差下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、2月28日午前9時現在でデータがわかっているのは7系列だ。そのうち、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、中小企業売上げ見通しの5系列が前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数、東証株価指数の2系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る新規求人数、新設住宅着工床面積の2系列が前月差マイナス寄与になるとみた。

●1月分の一致CIは前月差▲0.5程度と、2カ月連続の下降になると予測する。12月分で発表が中止になった中小企業出荷指数が採用系列からはずれる。2月28日午前9時現在で、速報値からデータが利用可能な7系列中6系列が判明している。商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の2系列が前月差プラス寄与に、投資財出荷指数1系列が前月差寄与ゼロに、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数の3系列が前月差マイナス寄与になる。残る有効求人倍率1系列は前月差マイナス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断は16年10月分から基調判断が景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」になっている。一致CIの前月差が2カ月連続下降しても、3カ月後方移動平均や7カ月後方移動平均は1月分も上昇するとみる。「足踏み」や「下方への局面変化」にはならず、4カ月連続して「改善」が続くことになろう。

●1月分の先行DIは77.8%程度と景気判断の分岐点の50%を4カ月連続して上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、2月28日午前9時現在でデータがわかっているのは7系列。そのうち、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しの6系列はプラス符号に、最終需要財在庫率指数1系列はマイナス符号になることが判明している。先行DIは66.7%以上88.9%以下と50%超が確定している。残る2系列では、新規求人数1系列がプラス符号に、新設住宅着工床面積1系列がマイナス符号になると予測する。

●1月分の一致DIは85.7%程度と景気判断の分岐点の50%を上回る数字になると予測する。2月28日午前9時現在で、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の5系列がプラス符号、耐久消費財出荷指数1系列がマイナス符号であることが判明している。一致DIは71.4%以上85.7%以下と50%超が確定している。残る有効求人倍率1系列はプラス符号になると予測した。予測通りなら景気判断の分岐点の50%を6カ月連続で上回ることになろう。