ホームマーケット経済指標解説2016年10~12月期実質GDP(第2次速報値)について

2016年10~12月期実質GDP(第2次速報値)について

2017年3月8日

―実質GDP成長率前期比年率+1.2%と第1次速報値同+1.0%から上方修正―
―設備投資の需要サイドデータ(法人企業統計など)が大きく上方修正に寄与―
―16年度は残り1四半期・前期比年率+0.6%で、政府見通し+1.3%達成―

●10~12月期の実質GDP・第2次速報値は、前期比+0.3%、前期比年率+1.2%と、第1次速報値の前期比+0.2%、前期比年率+1.0%から上方修正となった。国内需要の前期比寄与度が+0.1%と▲0.0%から上方修正になった。緩やかな景気回復基調が続いていることを示唆する内容だ。

●内訳をみると、第1次速報値から第2次速報値にかけて前期比ベースで、個人消費(▲0.0%→+0.0%)、設備投資(+0.9%→+2.0%)が上方修正、住宅投資(+0.2%→+0.1%)、民間在庫変動(前期比寄与度:▲0.1%→▲0.2%)、政府最終消費(+0.4%→+0.3%)、公共投資(▲1.8%→▲2.5%)が下方修正となった。実質GDPの上方修正の主因は設備投資である。

●第1次速報値段階では、供給サイドのデータに基づいて算出した、名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は+1.2%で、需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は+1.3%であると公表されていた。法人企業統計が出た後の今回第2次速報値段階では、供給サイドのデータに基づいて算出した、名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は+2.2%で、需要側推計値の名目原系列前期比は+5.5%である。供給側データも上方修正要因になったが、法人企業統計など需要側データの寄与が大きかったと言えよう。

●実質GDP前期比年率の最近分の改定状況は、15年10~12月期▲1.2%→▲1.0%の上方修正、16年1~3月期+2.3%→+1.9%の下方修正、16年4~6月期+1.8%→+2.2%の上方修正、16年7~9月期+1.4%→+1.2%の下方修正、16年10~12月期上方修正となっている。

●10~12月期・第2次速報値でGDPの約6割を占める個人消費(民間最終消費支出)は前期比+0.0%と第1次速報値の▲0.0%から僅かに上方修正された。実質個人消費の内訳を第1次速報値と第2次速報値の前期比で比べてみると、耐久財の前期比は+1.4%→+1.4%で変わらず、半耐久財の前期比は▲2.1%→▲1.5%で上方修正、非耐久財の前期比は▲0.4%→▲0.6%で下方修正、サービスの前期比は+0.1%→+0.2%で上方修正と、まちまちである。

●10~12月期・第2次速報値で雇用者報酬の前期比は名目+0.6%、実質+0.2%と、第1次速報値の前期比・名目+0.5%、実質0.0%から上方修正となった。名目は7四半期連続、実質は9四半期連続(15年1~3月期の+0.04%を含む)で前期比増加である。GDPの雇用者報酬の動きから見ると、最近の所得の動向は個人消費の下支え要因になっているようだ。

●内閣府が「今週の指標」で発表しているGDPギャップは、10~12月期(第1次速報値段階)は▲0.4%だったが、今回の第2次速報値を反映すると、マイナス幅がやや縮小することになりそうだ。

●次の1~3月期の統計は、まだ主に1月分のデータだけしか発表されていないので、1~3月期の実質GDPの見通しに関してはまだ不透明な面が多い。

●ARIMAモデルにより内閣府が現時点での情報を使って算出・公表した、1~3月期の原材料在庫の季調済実質値前期差は▲3046億円、仕掛品在庫の季調済実質値前期差は+1384億円である。

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の1月分対10~12月分平均比は▲4.9%の減少になった。また非耐久消費財出荷指数は同▲1.5%の減少だ。同じく供給サイドの関連データである商業動態統計・小売業販売額指数の1月分対10~12月分平均比は▲0.5%の減少だ。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の1月分対10~12月分平均比は+2.0%の増加だ。乗用車販売台数の1月分対10~12月分平均比は▲3.3%の減少だ。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)の10~12月期から1~3月期へのゲタは+0.3%だ。1月分だけから見ると供給サイドがマイナス、需要サイドがプラスで、総合的に判断すると、1~3月期の個人消費の前期比が最終的にどうなるかは不透明な部分が大きいように思われる。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の1月分対10~12月分平均比は▲2.4%の減少になった。資本財(除.輸送機械)は同+0.3%の増加である。また、建設財は同▲1.7%の減少になった。供給サイドから推計される1~3月期の実質設備投資・前期比の符号が最終的にどうなるかはまだはっきりしない状況だろう。

●実質輸出入の動向をみると輸出の1月分対10~12月分平均比は▲1.1%の減少になった。輸入は同+4.2%の増加になっている。1月分のモノの動向だけからみると、1~3月期の外需はマイナス寄与になりそうなスタートだ。

●2月9日に発表された日本経済研究センター「ESPフォーキャスト調査」2月調査によると、1~3月期実質GDP成長率(前期比年率)の予測平均値は+1.04%のプラス成長になるという見通しである。なお、10~12月期は+1.20%のプラス成長と今回の第2次速報値と同じ伸び率を予測していた。

●総合的に判断すると、5月18日に発表される1~3月期の実質GDP第1次速報値は現状では不透明要素が大きい。何とか5四半期連続のプラス成長率になることを期待したいところだ。

●16年度実質GDP成長率に関して15年度から16年度のゲタは+0.3%。17年度の政府見通しの16年度実績見込みは+1.3%程度。これを達成するには残り1四半期で前期比年率+0.6%(前期比+0.15%)が必要だ。