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2016年10月分鉱工業生産指数・速報値について

2016年11月30日

-10月分鉱工業生産指数・前月比+0.1%と3カ月連続増加-
-鉱工業生産指数は10~12月期にかけて、3四半期連続前期比増加に-
-基調判断は3カ月連続「生産は緩やかな持ち直しの動き」-
-一致CIによる景気判断は10月分で約1年半の「足踏み」脱却し「改善」か-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・10月分速報値前月比は+0.1%と3カ月連続の増加になった。前年同月比は▲1.3%と3カ月ぶりの減少になった。

●鉱工業生産指数・10月分速報値の指数水準は98.5で、15年4月の98.9以来の水準になった。

●10月分の生産を業種別にみると、15業種のうち前月比増加は電子部品・デバイス工業、金属製品工業、輸送機械工業等6業種、前月比減少がはん用・生産用・業務用機械工業、電気機械工業、化学工業(除.医薬品)等9業種だった。

●経済産業省が公表している鉱工業生産指数の先行き試算値で、10月分の前月比は最頻値で▲0.1%、90%の確率に収まる範囲で▲1.1%~+0.8%の見通しだったので、10月分前月比実績の+0.1%は概ね予想通りだったと言える。

●今回の製造工業生産予測調査によると、先行きは、11月分前月比は+4.5%の増加、12月分は同▲0.6%の減少という見通しである。

●鉱工業生産指数の先行き試算値で、11月分の前月比は最頻値で+1.7%、90%の確率に収まる範囲で+0.7%~+2.7%になる見通しだ。製造工業生産予測指数前月比(+4.5%)より下振れる慎重な見通しだが増加になる可能性が高いことを示唆する内容だ。

●先行きの鉱工業生産指数11・12月分を製造工業生産予測指数前月比で延長して求めた場合、10~12月期の前期比は+3.7%の増加になる見込みだ。一方、11月分を先行き試算値最頻値前月比で、12月分を製造工業生産予測指数前月比で延長した場合、10~12月期の前期比は+1.8%の増加になる見込みだ。いずれにせよ4~6月期以降10~12月期にかけ前期比プラスは3四半期連続になりそうだ。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をみると14年1~3月期では、出荷の前年比が+7.4%、在庫が同▲1.2%、と45度線を下回っていた。しかし、14年4~6月期では、在庫が前年同期比増加に転じ、出荷の前年比が+0.9%、在庫が同+3.1%、と45度線を上回ってしまい、在庫積み上がり局面に入った。15年10~12月期では、出荷の前年比が▲0.8%、在庫が同0.0%、と近づいたものの45度線をやや上回った。それ以降16年4~6月分(出荷の前年比が▲2.0%、在庫が同0.0%)までは45度線を上回ったままだった。16年7~9月期で出荷の前年比が▲0.6%、在庫が同▲2.0%と45度線を下回った。10月分も出荷の前年比が▲1.8%、在庫が同▲3.0%と45度線を下回った。在庫調整局面が終了し、生産が増加しやすくなる局面に入っていると言えよう。

●経済産業省の基調判断は16年8月分では「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断に2カ月ぶりに上方修正された。ついに15年5月分から1回を除き続いてきた「一進一退」の表現がなくなった。前回9月分、今回10月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断は維持された。今後、緩やかな持ち直しの動きがよりしっかりしたものになることが期待される状況だ。

(10~12月期のGDP予測)

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の10月分対7~9月分平均比は+6.7%の増加になった。また非耐久消費財出荷指数は同+2.2%の増加だ。同じく供給サイドの関連データである商業動態統計・小売業販売額指数の10月分対7~9月分平均比は+2.3%の増加だ。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の10月分対7~9月分平均比は▲0.9%の減少だ。乗用車販売台数の10月分対7~9月分平均比は+3.9%の増加だ。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)の7~9月期から10~12月期へのゲタは0.0%だ。予断を持つことなく見る必要はあるが、10月分だけから見ると供給サイドがプラス、需要サイドの家計調査がややマイナスで、総合的に判断すると、10~12月期の個人消費の前期比はプラスの伸び率になる可能性が大きいように思われる。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の10月分対7~9月分平均比は+1.4%の増加になった。資本財(除.輸送機械)は同+2.5%の増加である。また、建設財は同+1.7%の増加になった。この供給サイドのデータから推計される10~12月期の実質設備投資・前期比はプラスの伸び率になる可能性が大きいように思われる。

●実質輸出入の動向をみると輸出の10月分対7~9月分平均比は+1.1%の増加になった。輸入は同▲0.7%の減少になっている。10月分のモノの動向だけからみると、10~12月期の外需はプラス寄与になりそうなスタートだが、このところ実質輸出入はGDPの輸出入データと必ずしも連動していない面がある。

●10~12月期の実質GDP第1次速報値は、2月13日に発表されるが、10月分の関連指標からは前期比プラス成長が期待される状況だ。

(10月分景気動向指数予測)

●10月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+0.9程度と2カ月ぶりの前月差上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、11月30日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列で、最終需要財在庫率指数、新規求人数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列が前月差プラス寄与に、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数の2系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積1系列は前月差マイナス寄与になると予測した。

●10月分の一致CIは前月差+1.5程度と2カ月連続の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列中、11月30日午前9時時点で数値が判明しているのは、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列で、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の6系列が前月差プラス寄与に、商業販売額指数・卸売業1系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、中小企業出荷指数1系列が前月差プラス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断は15年5月分から16年9月分まで17カ月連続景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」だったが、10月分でようやく基調判断が景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に戻ることになるとみる。基調判断が景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に戻るには、「当月の前月差の符号がプラス。かつ原則として3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が上昇する」ことが必要だ。12月1日発表の中小企業出荷指数が考えられる範囲のどんな数字でも一致CIの10月分前月差の符号はプラスになろう。12月1日発表の7~9月期の営業利益がよほど悪化しなければ、8・9・10月分で3カ月連続して3カ月後方移動平均が上昇する。

●10月分の先行DIは88.9%程度と景気判断の分岐点の50%を2カ月連続して上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、11月30日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列で全てプラス符号になることが判明している。先行DIは88.9%以上100.0%以下と50%超が確定している。残る、新設住宅着工床面積1系列がマイナス符号になると予測する。

●10月分の一致DIは100.0%程度と景気判断の分岐点の50%を上回る数字になると超暫定的に予測する。速報値からデータが利用可能な8系列中、11月30日午前9時時点で数値が判明している7系列、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の全系列がプラス符号になることが判明している。一致DIは87.5%以上100.0%以下と50%超が確定している。残る、中小企業出荷指数は前月比が▲1.4%以上ならプラス符号になる。鉱工業出荷指数の前月比が+2.2%であるのでよほどのことがないかぎりプラス符号になると予測した。CIを使った機械的判断が公表される以前は、よく一致DIで景気局面の判断がなされていた。DIを使った景気拡張の目安であった3カ月連続50%超を、直近月が100.0%という最高のかたちで、10月分は達成することになりそうだ。