ホームマーケット経済指標解説2016年7月分景気動向指数(速報値)

2016年7月分景気動向指数(速報値)

2016年9月7日

先行CI前月差▲0.7で2カ月ぶり下降、一致CI前月差+0.7と2カ月連続上昇
基調判断は15カ月連続「足踏み」、景気の不透明状況が継続

●7月分の景気動向指数・速報値では、先行CIは▲0.7と2カ月ぶりの前月差下降となった。7月分の先行CIの指数水準は100.0となった。速報値からデータが利用可能な9系列では、新規求人数、日経商品指数の2系列が前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの7系列が前月差マイナス寄与になった。

●一致CIは前月差+0.7と2カ月連続の上昇になった。速報値からデータが利用可能な7系列では、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業の3系列が前月差プラス寄与に、生産指数1系列が前月差寄与ゼロに、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の3系列が前月差マイナス寄与になった。7月分の一致CIの指数水準は112.8である。東日本大震災発生時のボトムで直近のボトムである11年4月分の96.4よりは16 .4ポイント高い水準だが、直近のピークである14年3月分の117.9よりは5.1ポイント低い水準だ。

●なお、一致CI採用系列の中小企業出荷指数7月分速報値は100.2(6月分は100.5)と、いったん「規模別製造工業生産指数(7月分速報)」の中の数字として8月31日15時に公表されたが、「規模別製造工業生産指数(7月分速報)の公表資料 (統計表)」につき、一部訂正を要する箇所が確認されたため、公表資料が一旦取り下げられるという異例な扱いになったため、今回の一致CI7月分速報値には含まれていない。

●一致CIの3カ月後方移動平均の前月差は0.00と横這いになった。7カ月後方移動平均の前月差は+0.18と3カ月ぶりの上昇になった。

●一致CIを使った景気の基調判断は、今回7月分でも、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏みを示している」で、15カ月連続で同じ判断となった。

●最近の一致CIを使った景気の基調判断をみると、14年12月分で、「改善を示している。ただし、基調判断に用いている3カ月後方移動平均のこのところの変化幅は、大きいものではない」に「下方への局面変化」から上方修正された。「下方への局面変化」から「改善を示している」に戻るのは異例のパスということだった。15年1月分で、但し書きは消えて、「改善を示している」という判断継続になった。15年2月分~4月分でも、「改善を示している」という判断継続になったが、5月分で景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏みを示している」に下方修正され、15年6月分~16年7月分でも判断据え置きで、1年3カ月もの間、同じ判断が続いている。

●基調判断が景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に戻るには「当月の前月差の符号がプラス。かつ原則として3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が上昇する」ことが必要だ。7月分が速報値段階の横ばいから僅かでも上向けばから6・7・8月分で3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が上昇する可能性がないわけではないが、所定外労働時間指数の動向などを考えると基調判断が「改善」に戻るには8・9・10月分で3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が上昇することが必要になりそうだ。「改善」に戻るのは早くて12月上旬発表の10月分になるとみる。

●一方、次回8月分で「下方への局面変化」に悪化するには、「当月の前月差の符号がマイナス。かつ7カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月、または3カ月の累積)が1標準偏差分(0.84)以上」であることが必要だ。7月分までの数字が変わらない場合、7カ月後方移動平均前月差は6月分が▲0.10、7月分が+0.18なので、8月分で▲0.84のマイナスになる必要がある。この場合8月分の前月差が▲6.4以上のマイナスが必要で、実現の可能性はほぼゼロだろう。8月分の基調判断も、16カ月連続の「足踏み」という状況が続いてしまおう。

●今回7月分速報値では先行DIは33.3%と4カ月ぶりに景気判断の分岐点である50%を下回った。また、一致DIは57.1%と2カ月連続で50%超になった。昔だったら、景気が拡張局面にあることを示唆する3カ月連続にあと一歩というシグナル点灯である。

●7月分景気動向指数・改定値では、先行CIに新たに加わる実質機械受注(製造業)の前月差寄与度は▲0.32程度とマイナス寄与になると予測する。指標発表日は9月12日である。在庫率関連データなどが確報値段階でどのようにリバイスされるかにもよるが、先行CI・改定値の前月差は▲1.0程度と速報値の▲0.7から下方修正となろう。また、先行DIでは実質機械受注(製造業)の符号がプラス符号になるとみて、40.0%程度と速報値の33.3%から上方修正になると予測する。

●7月分景気動向指数・改定値では、一致CIは所定外労働時間指数が新たに加わる。確報値が速報値と同じだとすれば所定外労働時間指数は前月差▲0.26程度のマイナス寄与になろう。指標発表日は9月23日である。一致CI前月差は+0.4程度と速報値の+0.7から下方修正となろう。今回採用されなかった7月分中小企業出荷指数は一時的に前月比マイナスとなっていた。鉱工業出荷指数は前月比プラスで真逆の動きだった。このことから、中小企業出荷指数が一致CIの前月差寄与度でどのようになるかは全く不透明だ。また、一致DIでは所定外労働時間指数と今回採用されなかった中小企業出荷指数はどちらもマイナス符号で加わる可能性が大きいとみられるため、他の指標の符号が不変なら、44.4%程度と速報値の57.1%から下方修正され、景気判断の分岐点である50%を割り込んでしまうと予測する。

●8月分の先行CIの採用系列で、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。このうち消費者態度指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列が前月差プラス寄与に、日経商品指数1系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。4系列の前月差寄与度を合計すると+2.2程度の上昇になっている。

●また、8月分の先行DIでは、数値が判明している4系列のうち、消費者態度指数、中小企業売上げ見通しDIの2系列がプラス符号に、日経商品指数、東証株価指数の2系列がマイナス符号になることが判明している。このため、8月分先行DI速報値は、22.2%以上77.8%以下が確定している。