ホームマーケット経済指標解説2016年6月分景気動向指数(速報値)

2016年6月分景気動向指数(速報値)

2016年8月5日

先行CI前月差0.0で横這い、一致CI前月差+1.3と2カ月ぶり上昇
基調判断は紙一重で「改善」にならず、14カ月連続「足踏み」不透明状況継続

●6月分の景気動向指数・速報値では、先行CIは前月差0.0と横這いとなった。6月分の先行CIの指数水準は98.4となった。速報値からデータが利用可能な9系列では、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列が前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の6系列が前月差マイナス寄与になった。

●一致CIは前月差+1.3と2カ月ぶりの上昇になった。速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、中小企業出荷指数の6系列が前月差プラス寄与に、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の2系列が前月差マイナス寄与になった。6月分の一致CIの指数水準は110.5である。東日本大震災発生時のボトムで直近のボトムである11年4月分の96.1よりは14.4ポイント高い水準だが、直近のピークである14年3月分の116.6よりは6.1ポイント低い水準だ。

●一致CIの3カ月後方移動平均の前月差は+0.17と2カ月ぶりの上昇となった。7カ月後方移動平均の前月差は▲0.18と2カ月連続の下降となった。

●一致CIを使った景気の基調判断は、今回6月分でも、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏みを示している」で、14カ月連続で同じ判断となった。

●最近の一致CIを使った景気の基調判断をみると、14年12月分で、「改善を示している。ただし、基調判断に用いている3カ月後方移動平均のこのところの変化幅は、大きいものではない」に「下方への局面変化」から上方修正された。「下方への局面変化」から「改善を示している」に戻るのは異例のパスということだった。15年1月分で、但し書きは消えて、「改善を示している」という判断継続になった。15年2月分~4月分でも、「改善を示している」という判断継続になったが、5月分で景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏みを示している」に下方修正され、15年6月分~16年6月分でも判断据え置きで、1年超もの間、同じ判断が続いている。

●基調判断が景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に戻るには「当月の前月差の符号がプラス。かつ原則として3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が上昇する」ことが必要だ。一致CIは中小企業庁の中小企業出荷指数が平成17年基準から平成22年基準に改定されたことから過去に遡って改訂された。3カ月後方移動平均の前月差は4月分+0.20、5月分0.00、6月分+0.17となり、5月分が改定値段階の▲0.03から上方修正となったものの、紙一重で上昇になれず、3カ月連続下降はなかったものの「足踏み」継続となってしまった。「改善」となればポジティブ・サプライズで、人々の消費者心理に好影響を与えることもできたはずで、非常に悔しい結果である。

●4~6月分の営業利益の動向にもよるが、普通に考えると基調判断が「改善」に戻るには6・7・8月分で3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が上昇することが必要で、早くて10月7日発表の8月分となる。但し7月分で3カ月後方移動平均が上昇するための条件は6月分までの数字が変わらない場合7月分の前月差が+1.4以上必要で、ハードルはそれなりに高い。ここがクリアできないと、12月上旬発表の10月分まで持ち越しとなってしまう。

●一方、次回7月分で「下方への局面変化」に悪化するには、「当月の前月差の符号がマイナス。かつ7カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月、または3カ月の累積)が1標準偏差分(0.84)以上」であることが必要だ。6月分までの数字が変わらない場合7月分の前月差が▲1.2以上のマイナスだと7月分の7カ月後方移動平均前月差の3カ月の累積が▲0.84になり、1標準偏差分(0.84)以上下方に振れることになる。しかし、一致指数・第一系列の鉱工業生産指数は、経済産業省算出の5月分先行き試算値前月比・最頻値が+0.9%、90%の確率に収まる範囲で▲0.1%~+1.9%になる見通しだ。それから判断すると、一致CIの前月差が▲1.2下降し、「下方への局面変化」に悪化する可能性はほとんどないと思われる。15カ月連続の「足踏み」という不透明な状況が続いてしまおう。

●今回6月分速報値では先行DIは83.3%と2カ月連続して景気判断の分岐点である50%を上回った。また、一致DIは50.0%だった。

●6月分景気動向指数・改定値では、先行CIに新たに加わる実質機械受注(製造業)の前月差寄与度は▲0.01程度と若干のマイナス寄与になると予測する。指標発表日は8月10日である。在庫率関連データなどが確報値段階でどのようにリバイスされるかにもよるが、先行CI・改定値の前月差は0.0程度と速報値の0.0と同程度になるとみた。また、先行DIでは実質機械受注(製造業)の符号がマイナス符号になるとみて、50%超ながら、75.0%程度と速報値の83.3%から下方修正になると予測する。

●6月分景気動向指数・改定値では、一致CIは所定外労働時間指数が新たに加わる。確報値が本日発表された速報値と同じだとすれば所定外労働時間指数は前月差+0.33程度のプラス寄与になろう。指標発表日は8月23日である。一致CI前月差は+1.5程度と速報値の+1.3から上方修正となろう。また、一致DIでは所定外労働時間指数がマイナス符号で加わることになるため、他の指標の符号が不変なら、44.4%程度と速報値の50.0%から下方修正され、景気判断の分岐点である50%を割り込んでしまうと予測する。

●7月分の先行CIの採用系列で、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。このうち日経商品指数1系列が前月差プラス寄与に、消費者態度指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。4系列の前月差寄与度を合計すると▲0.73程度の下降になっている。

●また、7月分の先行DIでは、数値が判明している4系列のうち、消費者態度指数1系列がプラス符号に、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列がマイナス符号になることが判明している。このため、7月分先行DI速報値は、11.1%以上66.7%以下が確定している。