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2016年6月分全国消費者物価指数について

2016年7月29日

―総務省・総合・前年同月比、コア指数前年同月比とも4カ月連続下落―
―総務省・総合・前年同月比、財は▲1.4%、サービスは+0.5%―
―コアコア指数前年同月比は、17年10カ月ぶりの33カ月連続上昇―
―総務省・東京都区部コア指数・前年同月比・7月分は前月よりマイナス幅縮小―
―日銀流コア前年比6月分は前月から不変、内閣府流コア前年比は0.2ポイント低下―

●6月分の全国消費者物価指数・総合指数は2010年を100とした指数が、103.3となり、前月比は▲0.2%下落、前年同月比は▲0.4%下落した。前年同月比がマイナスになったのは4カ月連続だ。

●生鮮食品の前年同月比は+0.3%の上昇に転じた。5月分は▲1.2%下落だったので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.07%と上昇要因になった。一方、エネルギー全体の前年同月比は▲11.8%下落した。5月分は▲12.6%下落だったので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.07%と上昇要因になった。

●エネルギー分野の各項目をみると、総合指数の前年同月比に対する寄与度差がプラスに働くようになった。ガソリンの前年同月比は14年12月分で▲2.5%の下落と19カ月ぶりの下落となった後マイナスが続き、前回の16年5月分では▲16.1%になったが、今回6月分では▲13.9%になった。前月比は+4.7%だった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.04%と僅かに物価押上げ要因になった。灯油の前年同月比は14年12月分で▲3.4%の下落と28カ月ぶりの下落となった後マイナス継続で、16年5月分では▲26.9%だったが、今回の6月分では▲25.6%になった。前年同月比に対する寄与度差は+0.01%と上昇要因だった。電気代の前年同月比は▲9.5%で、5月分の▲9.6%から下落率がやや縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%と物価押上げ要因になった。都市ガス代の前年同月比は▲16.0%と、5月分の▲16.6%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。

●なお、レギュラーガソリンの価格は3月7日の112円/ℓを底に6月20日・27日には124.0円/ℓまで上昇した。但し、その後は下落に転じ、7月25日は122.2円/ℓになった。

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は6月分では前年同月比▲2.8%と5月分の+5.3%から上昇から下落に転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.09%だった。そのうちテレビは5月分の前年同月比+5.2%の上昇から6月分は▲7.8%へと下落に転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.08%だった。再びデフレ的な価格設定になってきている可能性がある。また、家庭用耐久財は全体で前年同月比▲2.6%で、5月分の前年同月比▲1.4%からマイナス幅が拡大した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。

●6月分の宿泊料は前年同月比+4.0%で、5月分の前年同月比+6.6%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.03%だった。一方、5月分は前年同月比+9.4%の上昇だった外国パック旅行は、6月分では同+14.2%と上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%だった。

●6月分の全国消費者物価指数・総合指数・前年同月比は財が▲1.4%と下落、一方サービスは+0.5%の上昇であった。

●全国消費者物価指数・総合指数・前年同月比に対する財とサービスの5月分から6月分への寄与度差をみると、財は+0.04%。一方、サービスの総合指数・前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%であった。

●6月分の生鮮食品を除く総合指数は2010年を100とした指数は103.0で、前月比は▲0.1%下落、前年同月比は▲0.5%下落した。13年3月の▲0.5%以来、3年3カ月ぶりの下落幅である。前年同月比の下落は4カ月連続だ。

●6月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は101.6で、前月比は▲0.2%下落、前年同月比は+0.4%の上昇となった。5月分の+0.6%から伸び率は鈍化したものの、前年同月比は33カ月連続上昇した。33カ月連続前年同月比がプラスになったのは98年8月まで長期にわたって連続で上昇していた時以来で、17年10カ月ぶりである。

●6月分の総合指数の季節調整済み指数は103.2で前月比▲0.2%下落。生鮮食品を除く総合指数の季節調整済み指数は102.9でこちらは前月比+0.1%上昇。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数の季節調整済み指数は101.6でこちらは前月比横ばいである。

●ESPフォーキャスト調査・7月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比は、16年4~6月期に▲0.33%まで下落したあと、7~9月期は▲0.17%、10~12月期は+0.10%、17年1~3月期は+0.51%と緩やかに上昇していく見込みだ。

●全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の16年度の上昇率は+0.03%、17年度の上昇率は+0.72%が予測平均値だ。なお、原油価格(WTI)の予測平均値は16暦年44.17ドル/バレル、17暦年50.67ドル/バレル。円相場の予測平均値は16年度1ドル=104円66銭、17年度1ドル=106円44銭となっている。

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算で16年1~3月期は▲1.1%と、15年10~12月期の▲1.5%からマイナス幅が縮小している。需給ギャップの改善は、足元の消費者物価指数の前年同月比の上昇要因になっていくと思われる。

(日銀:消費者物価の基調的な変動)

●総務省の発表を受け、日銀が発表した「消費者物価の基調的な変動」によると、6月分の総合(除く生鮮食品・エネルギー)の前年同月比は+0.8%で、5月分と同じ伸び率だった。なお4月分は15年7月分の+0.9%以来の+1.0%割れだ。足元、日経ナウキャスト日次物価指数T指数の前年比が+0.1%~+0.2%台で推移しており、7月分は6月分のT指数の前年比+0.40%を下回るとみられる。7月分の総合(除く生鮮食品・エネルギー)の前年同月比は+0.8%を下回る可能性もありそうだ。

(内閣府:消費者物価指数:生鮮食品、石油製品及びその他特殊要因を除く総合)

●また、内閣府流のコア指数は、消費者物価指数・生鮮食品を除く総合から、石油製品、電気代、都市ガス代、米類、切り花、鶏卵、固定電話通信料、診療代、介護料、たばこ、公立高校授業料、私立高校授業料を除いたものだ。内閣府流コア指数(固定基準)3月分の前年同月比は、+1.0%だったが、4月分で15年6月の+0.9%以来の1.0%割れとなった。今回6月分は+0.6%で、日銀流コア指数とは異なり5月分から0.2ポイントも鈍化した。15年4月(+0.6%)以来の低い伸び率である。

(7月分の暫定的予測)

●7月分の全国消費者物価指数・総合の前年同月比は、6月分の▲0.4%からマイナス幅が拡大し、▲0.6%程度になると暫定的に予測する。前月比は▲0.2%程度とみる。なお、次回7月分からはこれまでの2010年基準から2015年基準に変わる。5年に1度の改定だ。8月12日に新基準での2015年1月~2016年6 月分までの遡及データが発表されるので、この段階で改定幅がある程度予想できるが、今回は過去2回のような大幅な下方修正はないとみられる。

●7月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同月比は、6月分と同じ▲0.5%程度になると予測する。前月比は▲0.1%程度とみる。

●また、7月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合の前年同月比は+0.3%程度と6月分の同+0.4%の伸び率から鈍化すると予測する。但し、前年同月比は98年8月までの連続上昇以来、17年11カ月ぶりの34カ月連続プラスと、連続プラス記録は維持しそうだ。前月比は▲0.1%程度になろう。

●関連データである7月分の東京都区部消費者物価指数(速報)では、総合の前年同月比は▲0.4%と6月分の▲0.5%から下落率が縮小したものの、5カ月連続の下落だ。生鮮食品の前年同月比は+0.4%で6月分の▲0.7%の下落から上昇に転じた。生鮮食品の総合指数・前年同月比に対する寄与度差は+0.04%だった。エネルギー全体の前年同月比は▲13.7%で6月分の下落率の同▲15.3%からマイナス幅がやや縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.13%で、上昇要因になった。また、7月分ではテレビの前年同月比が▲5.9%と6月分同▲6.2%に続き下落だった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%で、物価の中立要因になった。7月分の宿泊料は前年同月比+0.5%で、6月分の前年同月比+4.0%から伸び率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.05%になった。7月分の消費者物価指数・総合の東京都区部(速報)の前月比は▲0.2%だった。また、大阪市の総合7月分前年同月比は▲0.2%と6月分の同▲0.3%から下落率が縮小した。7月分の前月比は▲0.1%だった。

●7月分の生鮮食品を除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は▲0.4%で6月分の同▲0.5%から下落率が縮小したものの、7カ月連続の下落だ。7月分の前月比は▲0.1%だった。大阪市の生鮮食品を除く総合の7月分前年同月比は▲0.4%と6月分と同じ下落率だった。7月分の前月比は0.0%だった。

●7月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は+0.3%で6月分の+0.4%からやや鈍化したものの、これで15カ月連続の上昇になった。7月分の前月比は▲0.1%だった。また、大阪市では7月分前年同月比は+0.1%で6月分と同じになった。これで34カ月連続の上昇となった。7月分の前月比は0.0%だった。