ホームマーケット経済指標解説2016年3月分鉱工業生産指数・速報値について

2016年3月分鉱工業生産指数・速報値について

2016年4月28日

3月分鉱工業生産指数・前月比+3.6%と2カ月ぶり増加

基調判断は「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に据え置き

4月分先行き試算値・最頻値は前月比+0.8%、熊本地震加味すれば下振れ

3月分景気動向指数・一致CI前月差は2カ月ぶり上昇に転じる見込み

鉱工業生産

●鉱工業生産指数・3月分速報値前月比は+3.6%となった。2カ月ぶりの増加である。前年同月比は+0.1%と4カ月ぶりに増加した。

●3月分の生産を業種別にみると、15業種のうち増加が12業種、減少が3業種だった。輸送機械工業、はん用・生産用・業務用機械工業、金属製品工業などが増加し、情報通信機械工業、窯業・土石製品工業、石油・石炭製品工業が減少した。

●前回の製造工業生産予測調査によると、3月分前月比は+4.2%増加であったが、実現率は+1.7%の上振れだった。製造工業生産予測調査ベースの3月分前月比は+6.0%の増加だった。

●情報通信機械工業の3月の実現率は▲11.4%だった。これで5カ月連続実現率が2ケタのマイナスだ。10日時点の見通しとその月の実績が大きく乖離している。

●今回の製造工業生産予測調査によると、4月分前月比は+2.6%、5月分は同▲2.3%の見通しである。熊本地震の影響は、含まれていない(提出が遅れた企業がある可能性があり100%含まないとは言えない)。

●経済産業省が公表している鉱工業生産指数の先行き試算値を経済産業省が公表するようになった。3月分の前月比は最頻値で+3.5%だったので、ほぼ予測通りの結果になった。

●4月分の前月比は最頻値で+0.8%、90%の確率に収まる範囲で▲0.2%~+1.8%になる見通しだ。熊本地震の影響は加味されていないという。

●先行きの鉱工業生産指数を、4月分先行き試算値最頻値前月比(+0.8%)で、5月分を製造工業予測指数前月比(▲2.3%)、6月分を前月比0.0%で延長した場合、4~6月期の前期比は▲0.1%とほぼ横ばいになる見込みだ。熊本地震の影響や、5月のゴールデンウィークの影響がどうなるかなど4~6月期は不透明材料が多く、予断をもつことなく生産等の動向に注視したい局面だ。

●3月分速報値の鉱工業出荷指数・前月比は+1.4%と2カ月ぶりの増加になった。鉱工業在庫指数は前月比+2.8%と3カ月ぶりの増加になった。鉱工業在庫率指数は118.5で前月比+3.5%と3カ月ぶりの上昇になった。2012年9月分の118.5以来の水準に上昇した。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体での縦軸に在庫の前年比をとった在庫サイクル図をみると14年1~3月期では、出荷の前年比が+7.4%、在庫が同▲1.2%、と45度線を下回っていた。しかし、14年4~6月期では、在庫が前年同期比増加に転じ、出荷の前年比が+0.9%、在庫が同+3.1%、と45度線を上回ってしまい、在庫積み上がり局面に入った。15年10~12月期では、出荷の前年比が▲0.8%、在庫が同0.0%、と近づいたものの45度線をやや上回った。16年1~3月期でも出荷の前年比が▲2.6%、在庫が同+1.7%、と45度線をかなり上回ったままとなった。

●経済産業省の基調判断は14年12月分で「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」に3カ月ぶりに上方修正された。15年1月分・2月分・3月分・4月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」で据え置きだった。しかし、5月分では「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に11カ月ぶりに下方修正された。「一進一退」の表現は14年11月分以来6カ月ぶりだった。6月分に続き7月分でも判断は「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に据え置かれた。8月分では14年8月分以来の「弱含み」に下方修正され、表現は「総じてみれば、生産は弱含んでいる」となった。

●その後、15年9月分では「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」と上方修正され、7月分までの判断に戻るという明るい結果になった。11月分・12月分・16年1月分・2月分に続き、3月分でも「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」という判断で据え置きになった。

3月分景気動向指数予測

●3月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲1.3程度と2カ月連続の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、4月28日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列で、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、マネーストックの4系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る新設住宅着工床面積1系列の前月差はマイナス寄与になると予測した。

●3月分の一致CIは前月差+1.2程度と2カ月ぶりの上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列で、4月28日午前9時時点で数値が判明しているのは、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列で、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率の4系列が前月差プラス寄与に、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の3系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、中小企業出荷指数1系列は前月差プラス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断は3月分でも、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」の判断が継続しそうだ。

●基調判断が景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に戻るには、「当月の前月差の符号がプラス。かつ原則として3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が上昇する」ことが必要だ。3月分一致CIの3カ月後方移動平均前月差は+0.40程度と5カ月ぶりの上昇になろう。熊本地震の影響が出る4月分では3カ月後方移動平均前月差は下降に転じそうだ。3カ月以上連続上昇の条件を満たすのは、早くても9月上旬発表の7月分になってしまう可能性が大きいだろう。

●一方、景気の基調判断が「下方への局面変化」に悪化するには、「当月の前月差の符号がマイナス。かつ7カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月、または3カ月の累積)が1標準偏差分(0.85)以上」であることが必要だ。3月分一致CIの7カ月後方移動平均前月差は3カ月の累積でも▲0.71程度にとどまるものとみられ、景気の基調判断の下方修正はないとみる。

●3月分の先行DIは景気判断の分岐点の27.8%程度で2カ月連続して景気の分岐点である50%割れになると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、4月28日日午前9時時点で数値が判明しているのは8系列で、そのうちマネーストック1系列がプラス符号に、消費者態度指数1系列が保合い、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは16.7%以上27.8以下と50%割れが既に確定している。残る、新設住宅着工床面積はプラス符号になると予測する。

●3月分の一致DIは43.8%程度で4カ月連続の50%割れというもたついた数字になると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列で、生産指数、有効求人倍率の2系列がプラス符号に、商業販売額指数・小売業1系列が保合いに、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の4系列がマイナス符号になることが判明している。一致DIは31.3%以上43.8%以下と50%割れが既に確定している。残る、中小企業出荷指数1系列はプラス符号になると予測する。