ホームマーケット経済指標解説2016年3月分全国消費者物価指数について

2016年3月分全国消費者物価指数について

2016年4月28日

―総務省・総合・前年比は34カ月ぶりに低下、コア指数前年比は5カ月ぶりに低下―
―コアコア指数前年比は、17年7カ月ぶりの30カ月連続上昇―
―日銀流・コア前年比は2月と同じ、内閣府流・コア前年比0.1ポイント低下―
―4月分コア指数前年同月比は減少率拡大見通し、追加金融緩和期待高まる要因に―

●3月分の全国消費者物価指数・総合指数は2010年を100とした指数が、103.3となり、前月比は+0.1%上昇した。また、前年同月比は▲0.1%下落した。前年同月比がマイナスになったのは34カ月ぶりだ。

●生鮮食品の前年同月比は+5.5%上昇した。2月分は+5.8%上昇だったので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%となった。生鮮果物が前年同月比+11.9%と2ケタ上昇した。そのうち、いちごが前年同月比+9.2%上昇した。一方、エネルギー全体の前年同月比は▲13.3%下落した。2月分の▲10.9%下落からマイナス幅が拡大した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.22%と前年同月比の押下げ要因になった。

●エネルギー分野の中身は概ね押下げ要因になった。ガソリンの前年同月比は14年12月分で▲2.5%の下落と19カ月ぶりの下落となった後、前回の16年2月分では▲15.8%、今回の3月分では▲20.5%になった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.12%だった。灯油の前年同月比は14年12月分で▲3.4%の下落と28カ月ぶりの下落となった後、16年2月分では▲25.4%、今回の3月分では▲27.8%になった。前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%と押下げ要因になった。電気代の前年同月比は▲9.0%で、2月分の▲7.6%から下落率が拡大した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.06%だった。都市ガス代の前年同月比は▲15.3%と、2月分の▲13.1%から下落率が拡大した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.03%だった。

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は3月分では前年同月比+10.4%と1月分の+10.9%から上昇率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。そのうちテレビは2月分の前年同月比+15.7%から3月分は+15.2%と僅かに鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。また、家庭用耐久財は全体で前年同月比▲2.6%で、2月分の前年同月比+0.1%の上昇からマイナスに転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%だった。着実に進んできた脱デフレの動きが一服した感がある。

●3月分の宿泊料は前年同月比+0.2%で、2月分の前年同月比+2.9%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.03%だった。2月分は前年同月比+9.5%の上昇だった外国パック旅行は、3月分では同+6.3%と上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%だった。

●全国消費者物価指数・総合指数・前年同月比に対する財とサービスの2月分から3月分への寄与度差をみると、財は▲0.27%。サービスの総合指数・前年同月比に対する寄与度差は▲0.05%であった。

●3月分の生鮮食品を除く総合指数は2010年を100とした指数は102.7で、前月比は+0.1%上昇した。また、前年同月比は▲0.3%下落した。前年同月比の下落は5カ月ぶりだ。

●3月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は101.3で、前月比+0.3%の上昇。前年同月比は+0.7%の上昇となった。2月分の+0.8%から伸び率が若干鈍化したが、前年同月比は30カ月連続上昇した。30カ月連続前年同月比がプラスになったのは98年8月まで長期にわたって連続で上昇していた時以来で、17年7カ月ぶりである。

●3月分の総合指数の季節調整済み指数は103.5で前月比▲0.1%の下落。生鮮食品を除く総合指数の季節調整済み指数は102.9でこちらも前月比▲0.1%の下落。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数の季節調整済み指数は101.4で前月比▲0.2%の下落である。

●ESPフォーキャスト調査・4月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比は、16年4~6月期に▲0.12%まで下落したあと、7~9月期は+0.04%、10~12月期は+0.28%、17年1~3月期は+0.66%、と緩やかに上昇していく見込みだ。4~6月期は原油価格の前年水準が高かった反動の影響も大きいとみられる。

●全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の16年度の上昇率は+0.22%、17年度(消費増税の影響を除くベース)の上昇率は+0.87%が予測平均値だ。なお、原油価格(WTI)の予測平均値は16暦年37.28ドル/バレル、17暦年42.99ドル/バレル。円相場の予測平均値は16年度1ドル=114円30銭、17年度1ドル=116円12銭となっている。

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算で15年10~12月期は▲1.6%と、15年7~9月期の▲1.2%からマイナス幅が拡大した。需給ギャップの改善のもたつきは、足元の消費者物価指数の前年同月比の上昇抑制要因になると思われる。

(日銀:消費者物価の基調的な変動)

●総務省の発表を受け、日銀が発表した「消費者物価の基調的な変動」によると、3月分の総合(除く生鮮食品・エネルギー)の前年同月比は+1.1%で、2月分の+1.1%と同じだった。

(内閣府:消費者物価指数:生鮮食品、石油製品及びその他特殊要因を除く総合)

●また、内閣府も、日銀同様の独自のコア指数をこれまで「月例経済報告」の中で公表してきたが、先月から総務省の発表日にHPに掲載するようになった。内閣府流のコア指数は、消費者物価指数・生鮮食品を除く総合から、石油製品、電気代、都市ガス代、米類、切り花、鶏卵、固定電話通信料、診療代、介護料、たばこ、公立高校授業料、私立高校授業料を除いたものだ。内閣府流コア指数(固定基準)2月分の前年同月比は、日銀のコア指数と同じ+1.1%だったが、3月分は+1.0%と0.1ポイント鈍化した。

(4月分の暫定的予測)

●4月分の全国消費者物価指数・総合の前年同月比は、3月分の▲0.1%からマイナス幅が拡大し、▲0.4%程度になると予測する。前月比は0.0%程度とみる。

●4月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同月比は、3月分の▲0.3%からマイナス幅が拡大し▲0.5%程度になると予測する。前月比は+0.1%程度とみる。同指数の前年同月比マイナス幅が拡大すれば、目先、追加の金融緩和期待が高まる要因のひとつとなろう。

●また、4月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合の前年同月比は+0.7%程度と3月分と同程度の伸び率になると予測する。前年同月比は98年8月までの連続上昇以来、17年8カ月ぶりの31カ月連続プラスになりそうだ。前月比は+0.4%程度になろう。

●関連データである4月分の東京都区部消費者物価指数(速報)では、総合の前年同月比は▲0.4%と3月分の▲0.1%から下落率が拡大した。3月分で+3.9%の上昇だった生鮮食品の前年同月比は▲2.8%の下落に転じた。生鮮食品の総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.27%になり前年同月比の下落要因になった。エネルギー全体の前年同月比は▲16.4%で3月分の下落率の同▲16.0%からマイナス幅がやや拡大した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%で、下落要因になった。一方、4月分ではテレビの前年同月比は+10.8%で3月分同+11.9%から上昇率がやや鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。4月分の宿泊料は前年同月比+1.9%で、3月分の前年同月比+0.2%から伸び率が上昇した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%になった。4月分の消費者物価指数・総合の東京都区部(速報)の前月比は0.0%だった。また、大阪市の総合4月分前年同月比は+0.1%と3月分の同+0.6%から伸び率が鈍化したものの、35カ月連続の上昇になった。4月分の前月比は0.0%だった。

●4月分の生鮮食品を除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は▲0.3%で3月分の▲0.3%と同じだった。4カ月連続の下落だ。4月分の前月比は+0.1%だった。大阪市の生鮮食品を除く総合の4月分前年同月比は0.0%で3月分の+0.3%から伸び率が鈍化し、先月まで続いていた35カ月連続の上昇は3年ぶりに途絶えた。4月分の前月比は0.0%だった。

●4月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合の4月分前年同月比は、東京都区部(速報)は+0.6%で3月分の+0.6%と同じだった。これで12カ月連続の上昇になった。4月分の前月比は+0.3%だった。また、大阪市では4月分前年同月比は+0.7%で3月分と同じの伸び率になり、31カ月連続の上昇となった。4月分の前月比は+0.2%だった。