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11月分鉱工業生産指数・速報値について

2015年12月28日

― 11月分鉱工業生産指数・前月比▲1.0%、15業種中10業種減少 ―
― 基調判断は「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に据え置き ―
― 実際は11月分一退、12月分不透明、1月分一進という感じか ―
― 11月分景気動向指数・一致CIは前月差下降に転じる見通し ―

鉱工業生産

●鉱工業生産指数・11月分速報値前月比は▲1.0%となった。3カ月ぶりの減少である。一方、前年同月比は+1.6%と5カ月ぶりの増加に転じた。

●11月分の生産を業種別にみると、15業種のうち増加が4業種、減少が10業種、横這いが1業種だった。はん用・生産用・業務用機械工業、化学工業(除.医薬品)、金属製品工業等が減少し、プラスチック製品工業、非鉄金属工業、その他工業等が増加した。

●前回の製造工業生産予測調査によると、11月分前月比は+0.2%増加であったが、実現率は▲2.0%の下振れだった。製造工業生産予測調査ベースの11月分前月比は▲1.8%減少が実績だった。

●今回の製造工業生産予測調査によると、12月分前月比は+0.9%、1月分は同+6.0%の見通しである。

●先行きの鉱工業生産指数を製造工業生産予測指数の前月比で延長計算すると、10~12月期は前期比+1.3%と3四半期ぶりの増加になる見込みだ。

●11月分速報値の鉱工業出荷指数・前月比は▲2.5%と3カ月ぶりの減少になった。減少率は生産より大きかった。そのため鉱工業在庫指数は前月比+0.4%と3カ月ぶりの増加になった。鉱工業在庫率指数は115.2、前月比+2.9%と3カ月ぶりの上昇になった。11月分の前月比ベースでは鉱工業全体で在庫調整が一服した月であるという感がある内容となった。

●しかし、大きな動きをチェックするために、鉱工業全体での縦軸に在庫の前年比をとった在庫サイクル図をみると10~11月分で変化が現れた。14年1~3月期では、出荷の前年比が+7.4%、在庫が同▲1.2%、と45度線を下回っていた。しかし、14年4~6月期では、在庫が前年同期比増加に転じ、出荷の前年比が+0.9%、在庫が同+3.1%、と45度線を上回ってしまい、在庫積み上がり局面に入った。15年7~9月期では、出荷の前年比が▲0.6%、在庫が同+2.1%、と在庫の前年比は鈍化してきたものの、まだ45度線を上回っていた。15年10~11月分では、出荷の前年比が▲0.1%、在庫が同▲0.5%とどちらの前年比もマイナスなものの、45度線を上回った。1年半ぶりに15年10~12月期で45度線を割り込む可能性が出てきた。

●経済産業省の基調判断は14年12月分で「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」に3カ月ぶりに上方修正された。15年1月分・2月分・3月分・4月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」で据え置きだった。しかし、5月分では「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に11カ月ぶりに下方修正された。「一進一退」の表現は14年11月分以来6カ月ぶりだった。6月分に続き7月分でも判断は「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に据え置かれた。8月分では14年8月分以来の「弱含み」に下方修正され、表現は「総じてみれば、生産は弱含んでいる」となった。

●しかし、9月分では「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」と上方修正され、7月分までの判断に戻るという明るい結果になり、前回10月分に続き今回11月分でも判断据え置きになった。

10~12月期のGDP予測

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の10~11月の対7~9月平均比は+2.8%の増加になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同+0.4%の増加だ。同じく供給サイドの関連データである商業動態統計・小売業販売指数の10~11月の対7~9月平均比は+1.2%の増加になった。供給サイドの伸び率は11月分の前月比がエルニーニョ現象による暖冬の影響などでマイナスになったことで、10月の対7~9月平均比よりも鈍化した。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の10~11月の対7~9月平均比は▲2.0%の減少だ。乗用車販売台数の10~11月の対7~9月平均比は+2.8%の増加だ。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)の10月の対7~9月平均比は▲0.2%だ。10~12月期第1次速報値の個人消費の前期比がプラスの伸び率になるか、マイナスの伸び率になるかは微妙な状況とみられる。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の10~11月の対7~9月平均比は▲2.0%の減少になった。資本財(除.輸送機械)は同+0.4%の増加である。また、建設財は同▲1.1%の減少になった。供給サイドから推計される10~12月期の実質設備投資・前期比も足元の実績だけから見ると、前期比がプラスの伸び率になるか、マイナスの伸び率になるかはまだ微妙な状況とみられる。

●実質輸出入の動向をみると輸出の10~11月の対7~9月平均比は+3.4%の増加になった。輸入は同▲1.0%の減少になっている。10~11月分のモノだけでみると、10~12月期第1次速報値の外需はかなりのプラス寄与になりそうだ。

●2月15日に発表される10~12月期の実質GDP第1次速報値・前期比は、これから出る12月分のデータなどによるので、予断を持つことなく注視していく必要がある状況だ。

11月分景気動向指数予測

●11月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲0.3程度と2カ月ぶりの低下になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列のうち、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列は前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、日経商品指数、マネーストックの5系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

●11月分の一致CIは前月差▲1.8程度と2カ月ぶりの低下になると予測する。まだ発表されていない中小企業出荷指数は鉱工業出荷指数と同じ前月比▲2.5%で伸ばしたので、前月差寄与度は▲0.43程度と見込んでいる。速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、中小企業出荷指数、有効求人倍率の全8系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

●11月分の景気動向指数で、一致CIを使った景気の基調判断は、「足踏みを示している」という判断が継続になろう。

●機械的な景気の基調判断が、「足踏み」から「改善」に上方修正されるには、前月差が上昇、かつ3カ月後方移動平均が3カ月連続上昇することが必要だ。11月分の3カ月後方移動平均の前月差が12月分速報値段階でプラスかマイナスかは、予断が持てない状況とみる。今回の製造工業生産予測指数で12月分前月比が+0.9%とプラスになったことや他の系列の反動も期待できることから、12月分の一致CI前月差が上昇する可能性は大きくなった。10月分から12月分までなんとか3カ月後方移動平均が3カ月連続上昇すれば、最速の「改善」への上方修正は、12月分が発表される2月5日ということになる。

●11月分の先行DIは44.4%程度と50%割れになると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、中小企業売上げ見通しDIの4系列がプラス符号に、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の5系列がマイナス符号になると予測する。

●11月分の一致DIは62.5%程度と予測する。2カ月連続で景気判断の分岐点となる50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列で、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率の5系列がプラス符号に、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、中小企業出荷指数の3系列がマイナス符号になると予測する。