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15年7~9月期法人企業統計・設備投資などについて

2015年12月1日

◎ 7~9月期設備投資(除くソフトウェア)前期比+5.4%、2四半期ぶりの増加に。
◎ 7~9月期実質GDP第2次速報値、設備投資上方修正、在庫投資下方修正か。

●15年7~9月期の法人企業統計調査(速報値)の全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の前年同期比は+11.2%と4~6月期の前年同期比+6.6%からは4.6ポイント上昇し、10四半期連続の増加となった。設備投資が一段と増加したという内容になった。これに、断層補正をおこなうと4~6月期からの前年同期比の上昇幅は上方修正になりそうだ。また、ソフトウェア投資額を含むベースでは7~9月期の全産業の前年同期比は+11.2%だった。4~6月期の前年同期比+5.6%からは5.6ポイント上昇した。資本金1000万円以上1億円未満の中小企業の前年同期比は+21.8%で、4~6月期の前年同期比+9.5%からは12.3ポイント上昇した。資本金1億円以上10億円未満の前年同期比は+4.8%で、4~6月期の前年同期比+8.0%からは3.2ポイント鈍化した。資本金10億円以上の前年同期比は+8.1%と、4~6月期の前年同期比+2.8%からは5.3ポイントの上昇となった。

●供給サイドのデータに基づいて算出した、15年7~9月期GDP第1次速報値では名目設備投資の前年同期比は+0.9%で、4~6月期の+2.6%から鈍化した。名目設備投資7~9月期の前期比は▲1.0%と、4~6月期の▲0.9%に続き2四半期連続減少している。7~9月期GDP第1次速報値で、供給サイドのデータに基づいて算出した、名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は▲1.5%、供給側推計値の情報を用いて仮置きした需要側推計値の名目原系列前期比は+11.5%の増加である。

●法人企業統計15年7~9月期の設備投資・季節調整済み前期比(ソフトウェア投資額を除くベース)は+5.4%で4~6月期の同▲2.7%から8.1ポイント改善し、2四半期ぶりにプラスに転じた。7~9月期の原数値の前期比(ソフトウェア投資額を除くベース)は+15.9%であり、+11.5%よりも大きい伸び率だ。また個人企業経済調査のデータも上方修正要因になりそうだ。一方、9月確報分が反映されるソフトウェア開発・プログラム作成は下方修正要因になりそうだ。これに、断層補正の影響などを考慮し、総合的に判断して、第2次速報値での実質ベースの設備投資の前期比は第1次速報値の▲1.3%から▲0.6%程度へとマイナス幅が縮小すると予測する。

在庫投資

●法人企業統計の仕掛品在庫をみると15年7~9月期は2628億円で14年7~9月期の7126億円から▲4498億円の減少となった。原材料在庫は15年7~9月期は▲4081億円で14年7~9月期の▲1507億円から▲2574億円の減少となった。合わせて▲7072億円、前年同期に比べ減少した。一方、15年7~9月期GDP第1次速報値の名目在庫投資・原数値は▲3023億円で14年7~9月期の▲4543億円より+1520億円の増加であった。15年7~9月期GDP第1次速報値では在庫投資・名目原数値・前年同期比寄与度は+0.1%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、仕掛品在庫だけが前年同期比小幅マイナス寄与だった模様だ。残りは全てプラス寄与で、原材料在庫、製品在庫の前年同期比寄与度がゼロに近いプラスだったようだ。流通在庫のプラス寄与度が一番大きかった模様だ。今回の法人企業統計からみると、仕掛品在庫・原材料在庫は下方修正要因になるとみられる。

●15年7~9月期GDP第1次速報値段階で民間在庫投資の実質・前期比寄与度は▲0.5%だった。民間在庫投資の内訳をみると、全てマイナス寄与で、製品在庫が前期比寄与度▲0.1%、仮置き値の原材料在庫は前期比寄与度▲0.1%、同じく仮置き値の仕掛品在庫も▲0.0%、残る流通在庫は前期比寄与度▲0.3%だった。第2次速報値段階で仕掛品在庫・原材料在庫は下方修正され、季節調整替えの影響でマイナスの拡大幅が緩やかになる可能性はあろうが、実質在庫投資は下方修正され、前期比寄与度は▲0.6%程度になるとみた。

15年7~9月期GDP・第2次速報値

●15年7~9月期GDP第2次速報値では、設備投資は前期比▲0.6%程度と第1次速報値の同▲1.3%からマイナス幅が縮小するとみた。また、法人企業統計により在庫投資は下方修正され前期比寄与度は▲0.6%程度になるとみた。また、公共工事出来高の前年同月比は7月分+4.4%、8月分+0.8%だったが、9月分の伸び率は▲3.5%だった。このことからみて第2次速報値での公共投資の前期比は第1次速報値の▲0.3%から▲0.6%程度に下方修正されるとみた。

●総合的に判断すると15年7~9月期実質GDP第2次速報値は前期比▲0.2%程度、前期比年率▲0.8%程度とみる。設備投資は法人企業統計での上方修正、在庫投資、公共投資は下方修正で中身は入れ替わるものの、第1次速報値の前期比▲0.2%、前期比年率▲0.8%と同程度の伸び率になると予測する。但し、7~9月期実質GDP第2次速報値発表時に、GDP統計は、13年度が確確報に、14年度が確報に更新される。過去の数字が大きく変わることの影響も受けることを念頭に置く必要があろう。