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10月分鉱工業生産指数・速報値について

2015年11月30日

- 10月分鉱工業生産指数・前月比+1.4%で2カ月連続増加 -
- 基調判断は「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に据え置き -
- 10月分景気動向指数は先行CI・一致CIとも、前月差上昇の見通し -

鉱工業生産

●鉱工業生産指数・10月分速報値前月比は+1.4%となった。2カ月連続の増加である。一方、前年同月比は▲1.4%と3カ月連続の減少になった。

●10月分の生産を業種別にみると、15業種のうち増加が7業種、減少が7業種、横這いが1業種だった。はん用・生産用・業務用機械工業、輸送機械工業、電子部品・デバイス工業等が増加し、化学工業(除.医薬品)、情報通信機械工業、非鉄金属工業等が減少した。

●前回の製造工業生産予測調査によると、10月分前月比は+4.1%増加であったが、実現率は▲1.7%の下振れだった。製造工業生産予測調査ベースの10月分前月比は+2.4%増加が実績だった。

●今回の製造工業生産予測調査によると、11月分前月比は+0.2%、12月分は同▲0.9%の見通しである。12月分のマイナス見通しが、景気動向指数の機械的景気判断の改善時期見通しに微妙に影響することになった。

●業種ごとにみると、輸送機械工業の生産は前月比+4.0%と2カ月連続の増加、出荷が前月比+2.7%と2カ月ぶりの増加、在庫の前月比が▲2.8%と4カ月連続の減少、在庫率指数が前月比+0.1%と4カ月ぶりのわずかな上昇だった。在庫調整が進んできた業種と言えよう。

●電子部品・デバイス工業の生産は前月比+2.4%と2カ月連続の増加、出荷は前月比+3.2%と3カ月連続の増加、在庫率指数は前月比▲5.9%と7カ月ぶりの低下となった。製造工業予測指数では11月の生産が前月比+1.1%、12月の生産が前月比▲1.8%の見込みとなっている。秋のスマートフォンの新機種発売に伴う動きになっている感じがする。

●7~9月期の鉱工業生産指数は前期比▲1.2%と2四半期連続の減少となったが、先行きの鉱工業生産指数の11、12月分を製造工業生産予測指数の前月比で延長計算すると、10~12月期は前期比+1.5%と3四半期ぶりの増加になる見込みだ。

●10月分速報値の鉱工業出荷指数・前月比は+2.1%と2カ月連続増加になった。鉱工業在庫指数は前月比▲1.9%と2カ月連続減少になった。鉱工業在庫率指数は112.0、前月比▲3.0%と2カ月連続の低下となった。鉱工業全体で在庫調整が進んだ感がある内容となった。

●経済産業省の基調判断は14年12月分で「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」に3カ月ぶりに上方修正された。15年1月分・2月分・3月分・4月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」で据え置きだった。しかし、5月分では「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に11カ月ぶりに下方修正された。「一進一退」の表現は14年11月分以来6カ月ぶりだった。6月分に続き7月分でも判断は「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に据え置かれた。8月分では14年8月分以来の「弱含み」に下方修正され、表現は「総じてみれば、生産は弱含んでいる」となった。

●しかし、前回9月分では「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」と上方修正され、7月分までの判断に戻るという明るい結果になり、今回10月分でも判断据え置きになった。

●鉱工業全体での縦軸に在庫の前年比をとった在庫サイクル図をみると、14年1~3月期では、出荷の前年比が+7.4%、在庫が同▲1.2%、と45度線を下回っていた。しかし、14年4~6月期では、在庫が前年同期比増加に転じ、出荷の前年比が+0.9%、在庫が同+3.1%、と45度線を上回ってしまい、在庫積み上がり局面に入った。15年4~6月期でも、出荷の前年比が▲0.3%、在庫が同+4.0%、と45度線を上回っていた。前の四半期に当たる15年7~9月期では、出荷の前年比が▲0.6%、在庫が同+2.1%、と在庫の前年比は鈍化してきているものの、まだ45度線を上回っていた。15年10月では、出荷の前年比が▲0.8%、在庫が同+0.2%、と在庫の前年比が急低下したものの、まだ45度線を上回っている。

10~12月期のGDP予測

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の10月の対7~9月平均比は+5.1%の増加になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同+1.0%の増加だ。同じく供給サイドの関連データである商業動態統計・小売業販売指数の10月の対7~9月平均比は+1.6%の増加になった。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の10月の対7~9月平均比は▲1.1%の減少だ。乗用車販売台数の10月の対7~9月平均比は+6.1%の増加だ。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベースの)7~9月期から10~12月期へのゲタは+0.3%だ。10月分は需要サイドの家計調査の弱さが気懸かりだが、関連データから総合的に考えると、10~12月期第1次速報値の個人消費は、前期比で2四半期連続プラスの伸び率になる可能性があるとみられる。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の10月の対7~9月平均比は+0.9%の増加になった。資本財(除.輸送機械)は同+1.2%の増加になった。また、建設財は同+1.2%の増加になった。供給サイドから推計される10~12月期の実質設備投資・前期比はまだ3四半期ぶりにプラスの伸び率になる可能性があるとみられる。

●実質輸出入の動向をみると輸出の10月の対7~9月平均比は+2.4%の増加になった。輸入は同▲0.8%の減少になっている。10月分のモノだけでみると、10~12月期第1次速報値の外需はかなりのプラス寄与になりそうだ。

●2月15日に発表される10~12月期の実質GDP第1次速報値・前期比は、7~9月期の実質GDP第2次速報値やこれから出る11・12月分のデータなどによるので、予断を持つことなく注視していく必要があるが、スタート段階ではまずまずの結果と言えそうだ。

10月分景気動向指数予測

●10月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが4カ月ぶりに前月差+1.9程度の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列の中で、11月30日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列である。これらのうち最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列は前月差プラス寄与に、日経商品指数、マネーストックの2系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積は微妙だが前月差マイナス寄与となると予測した。

●10月分の一致CIは前月差+1.9程度の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列の中で、11月30日午前9時時点で数値が判明している、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の6系列が前月差プラス寄与に、有効求人倍率1系列が前月差マイナス寄与となっている。残る、中小企業出荷指数は前月差プラス寄与になるとみた。

●一致CIを使った景気の基調判断は、9月分の「足踏みを示している」という判断が10月分でも継続になろう。機械的な景気の基調判断が「足踏み」から「改善」に上方修正されるには、前月差が上昇、かつ3カ月後方移動平均が3カ月連続上昇することが必要だ。今回予測通りなら、10月分3カ月後方移動平均の前月差は上昇が見込まれ、12月分までは3カ月連続上昇の可能性が大きそうだ。最も早い「改善」への上方修正は12月分が発表される2月上旬になる可能性があるだろうが、製造工業生産予測調査によると、11月分前月比は+0.2%増加、12月分は同▲0.9%の見通しであることから、12月分の一致CIの前月差がマイナスになってしまい条件を満たさない可能性が出てきた。機械的な景気判断の改善時期も不透明な状況と言えそうだ。

●10月分の先行DIは44.4%程度になると予測する。4カ月連続景気判断の分岐点である50%を下回ろう。速報値からデータが利用可能な9系列中、11月30日午前9時時点で数値が判明している8系列では、最終需要財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列がプラス符号に、鉱工業生産財在庫率指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の4系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは44.4%以上55.6%以下が確定している。残る、新設住宅着工床面積はマイナス符号になると予測する。

●10月分の一致DIは56.3%程度と、4カ月ぶりに景気判断の分岐点である50%を上回ろう。足元の景気の改善の動きを示唆する数字となろう。速報値からデータが利用可能な8系列では11月30日午前9時時点で数値が判明している7系列のうち、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、有効求人倍率の4系列がプラス符号に、商業販売額指数・小売業生産指数1系列が保合いに、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の2系列がマイナス符号になることが判明している。一致DIは56.3%以上68.8%以下と50%超が確定している。残る、中小企業出荷指数は微妙だがマイナス符号になるとみた。