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8月分機械受注について

2015年10月8日

― 8月分機械受注(除船電民需)は中国ショックで前月比▲5.7%と3カ月連続減少 ―
― 7~9月分機械受注(除船電民需)は5四半期ぶりの前期比減少に ―
― 内閣府判断は「機械受注は、足踏みがみられる」に2カ月連続で下方修正 ―

●8月分機械受注(除く船舶電力の民需ベース、以下、除船電民需と表記)の前月比は▲5.7%と3カ月連続の減少になった。6・7月分の反動で増加にはならなかった。また、機械受注(除船電民需)前年同月比は▲3.5%と9カ月ぶりの減少に転じた。

●機械受注(除船電民需)の大型案件は8月分も6・7月分と同様にゼロだった。これで3カ月連続のゼロだ。8月には中国ショックで先行きの景気減速懸念が生じたため、企業が受注に対し慎重になったのだろう。但し、8月分では特段の大型のキャンセルはなかったという。株式市場の落ち着きなどを受け9月分で足踏みから脱却する動きがみられるかどうか注目される。

●機械受注の除船電民需以外の大型案件は全部で7件だったということだ。内訳をみると、非製造業の電力業で⽕水力原動機2件、その他重電機1件の計3件の大型案件があった。官公需でその他産業機械1件だったという。外需は7月分では化学機械3件、航空機1件、船舶5件の合計9件大型案件があったが、8月分では発電機1件、化学機械1件、航空機1件の合計3件にとどまった。

●8月分の製造業の前月比は▲3.2%と3カ月連続の減少になった。製造業15業種中、6業種が増加で9業種が減少だった。

●8月分の非製造業(除船電民需)の前月比は▲6.1%と2カ月連続の減少になった。非製造業全体では、前月比は▲1.7%と2カ月連続の減少である。前月比+40.6%の電力業が入ると減少率は小幅になる。非製造業12業種中、4業種が増加で8業種が減少となった。

●7~9月期の機械受注(除船電民需)の見通しは前期比+0.3%と小幅な増加である。この見通しを達成するには9月分で前月比+43.4%程度の高い伸び率が必要だ。また9月分が仮に前月比+10.0%でも7~9月期の機械受注(除船電民需)前期比は▲9.3%程度になる。実績は5四半期ぶりの減少になってしまうとみられる。

●これまで7~9月期に関しては実績が見通しから上振れる傾向があった。2009年(平成21年)5月15日に達成率の計算手法に季節調整値を使用するという変更が行われて以降、2009年(平成21年)~14年(平成26年)の6年間では全て「実績」が「見通し」を上回っている。平均で4.9ポイント上回っており、見通し計算のかさ上げ分4.0ポイントを上回っている。今年は、中国発の世界同時株安などで先行きの景気減速懸念が生じたため、例年のように実績が見通しから上振れることはなさそうだ。

●8月分の外需は、前月比▲26.1%と中国の動向など世界経済の見通しが一段と不透明になる中、4カ月ぶりの減少となった。7~9月期見通しは前期比+8.0%の増加だが、この見通しを達成するには9月分で前月比+13.7%程度の伸び率が必要だ。9月分が持ち直して見通しが達成されるかどうか注目される。

●8月分での唯一明るい数字は、中小企業の動きを反映している部分がある代理店受注の8月分前月比が+18.2%と2カ月ぶりの増加になったことだ。7~9月期の見通しは▲2.1%の減少だが、この見通しを達成するには9月分が前月比▲24.3%程度の伸び率でよい。9月分で前月比▲18.6%以上なら実績が2四半期連続の増加になる。そうなれば中小企業の機械の設備投資が底堅いことの裏付けとなろう。

●内閣府の基調判断は、14年7月分では「機械受注は、一進一退で推移している」であったが、8月分では「機械受注は、緩やかな持ち直しの動きがみられる」と5カ月ぶりの上方修正になり、9月分・10月分では据え置きとなった。11月分では「機械受注は、持ち直しの動きに足踏みがみられる」に3カ月ぶりに下方修正されたが、それも一時的で、12月分では「機械受注は、緩やかな持ち直しの動きがみられる」と、2カ月ぶりに上方修正され、8~10月分と同じ判断に戻った。15年1月分・2月分・3月分と「機械受注は、緩やかな持ち直しの動きがみられる」と判断据え置きになっていたが、4月分で「機械受注は、持ち直している」に4カ月ぶりに上方修正され、5月分と6月分では据え置かれていた。

●前回7月分では「機械受注は、持ち直しの動きに足踏みがみられる」に8カ月ぶりの下方修正となった。今回8月分では「機械受注は、足踏みがみられる」に連続して下方修正となった。8月には中国発世界同時株安など企業心理を冷え込ませる状況が生じたためだが、昨年末のように基調判断が早めに上方修正されることを期待したい。

●8月分景気動向指数・CI改定値で新たに改定値から加わる系列として、先行系列では実質機械受注(製造業)がある。前月差寄与度は▲0.13程度のマイナス寄与になるとみる。その他の系列の改定値が速報値から変わらないとすると、先行CI・改定値の前月差は速報値の▲1.5の下降から下方修正され▲1.7程度になるとみる。また、先行DIでは実質機械受注(製造業)がマイナス符号で加わり、35.0%程度と速報値の38.9%から下方修正になると予測する。