ホームマーケット経済指標解説15年4~6月期実質GDP(第2次速報値)について

15年4~6月期実質GDP(第2次速報値)について

2015年9月8日

●4~6月期の実質GDP・第2次速報値は、前期比▲0.3%、前期比年率▲1.2%と、第1次速報値の前期比▲0.4%、前期比年率▲1.6%から、3四半期ぶりのマイナス成長ながら、上方修正となった。筆者は伸び率は変わらないという予測だったが、市場予想は大方が下方修正予測だったので市場予想平均との比較では予想外の結果だろう。

●4~6月期の実質GDP・第2次速報値では、小数点第一位までの前期比(在庫投資は前期比寄与度)は、個人消費、民間在庫投資、政府最終消費で上方修正された。住宅投資、公的在庫投資、輸出、輸入は第1次速報値と変わらず、設備投資、公共投資が下方修正された。

●また、名目GDP・第2次速報値は、前期比+0.1%、前期比年率+0.2%と、第1次速報値の前期比0.0%、前期比年率+0.1%から上方修正となった。

●4~6月期・第2次速報値の実質GDPの上方修正の主因は、実質民間在庫投資だ。前期比寄与度は+0.3%と、第1次速報値の同+0.1%から0.2ポイントの上方修正となった。前期比寄与度の内訳をみると、製品在庫は+0.3%で第1次速報値の+0.2から上方修正となった。流通在庫は第1次速報値では前期比寄与度0.0%だったが、第2次速報値では+0.1%とプラス寄与になった。仕掛品在庫は▲0.0%で第1次速報値(仮置き値)の▲0.1%から上方修正、原材料在庫も▲0.0%で第1次速報値(仮置き値)の▲0.1%から上方修正された。在庫投資の上方修正は法人企業統計の使用で上方修正となった仕掛品在庫と原材料在庫以外の、製品在庫と流通在庫も上方修正された。

●4~6月期の実質個人消費・第2次速報値は、前期比▲0.7%と、第1次速報値の前期比▲0.8%からマイナス幅が縮小した。▲0.7%は8月21日に発表された消費総合指数の前期比と同じ伸び率である。

●4~6月期の名目設備投資・第2次速報値は、前期比▲0.7%と、第1次速報値の前期比+0.2%から下方修正となった。実質設備投資・第2次速報値は、前期比▲0.9%と、第1次速報値の前期比▲0.1%から下方修正となった。

●4~6月期GDP第1次速報値で、名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は▲2.0%の減少で、需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は▲29.9%の減少であったが、今回第2次速報値で、供給サイドのデータに基づいて算出した、名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は▲1.1%の減少で、また需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は▲32.5%の減少である。法人企業統計で設備投資・原数値・前期比(ソフトウェア投資額を除くベース)は4~6月期▲30.9%であった。断層補正をおこなうことで伸び率はマイナス幅が拡大したとみられる。

●4~6月期GDP第1次速報値では在庫投資・名目原数値・前年同期比寄与度は▲0.2%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、流通在庫だけが前年同期比プラス寄与だった模様だ。残りマイナス寄与の中では、製品在庫の前年同期比寄与度が一番小さくほぼゼロに近かったようだ。仮置きの原材料在庫、仕掛品在庫はどちらも製品在庫より前年同期比マイナス寄与度は大きく、原材料在庫の方がマイナス寄与度は大きかった模様だ。第2次速報値では名目民間在庫投資・前年同期比寄与度は0.0%となった。前年同期比寄与度の内訳をみると、流通在庫だけがプラスだったという。残りは全てマイナス寄与になった。マイナス寄与が一番大きいのが仕掛品在庫で、次が原材料在庫ということだ。法人企業統計が出たことで第1次速報値から最も上方修正されたのが原材料在庫だったようだ。製品在庫はゼロに近いマイナス寄与だったようだ。

●内閣府が「今週の指標」で発表しているGDPギャップは、4~6月期(第1次速報値段階)は▲1.7%だったが、今回の第2次速報値を反映すると、マイナス幅が若干縮小することになりそうだ。

●次の7~9月期の統計は、まだ主に7月分のデータだけしか発表されていない。8月の中国発世界同時株安の影響などがまだわからないので、7~9月期の実質GDPの見通しに関しては不透明な面が多い。

●ARIMAモデルにより内閣府が現時点での情報を使って算出・公表した、7~9月期の原材料在庫の季調済実質値前期差は▲8011億円、仕掛品在庫の季調済実質値前期差は+268億円である。

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の7月分の対4~6月平均比は反動増で+3.7%の増加になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同▲0.4%の減少だ。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の7月分の対4~6月平均比は0.0%の横這いになった。乗用車販売台数の7月分の対4~6月平均比は▲1.0%の減少になった。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)4~6月期から7~9月期へのゲタは▲0.3%だ。雇用・所得環境が緩やかに改善している中、関連データから総合的に考えると、7~9月期第1次速報値の個人消費は、前期比で若干のプラスの伸び率になる可能性が大きいとみられる。

●但し、最近の株価動向などで先行きの景気に対する不透明感が大きくなっている。9月6日で終わった週の関東地区テレビ視聴率で「笑点」が7~9月期で初めて「その他娯楽番組」の第1位となった。日曜日の夕方、家にいて番組を見ている人が増えた可能性もあり、当面、身近な指標の動向から目が離せない。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の7月分の対4~6月平均比は+0.8%の増加になった。資本財(除.輸送機械)は同+1.7%の増加になった。また、建設財は同+0.8%の増加になった。総合的に考えると、最終的に供給サイドから推計される4~6月期の実質設備投資・前期比はプラスの伸び率になる可能性が大きいとみられる。

●輸出の7月分の対4~6月平均比は▲0.5%の減少になった。輸入は同+1.1%の増加になっている。中国経済の動向と併せ考えると、7~9月期のモノだけでみると外需はマイナス寄与になる可能性が大きそうだ。

●9月7日に発表された日本経済研究センター「ESPフォーキャスト調査」9月調査によると7~9月期実質GDP成長率(前期比年率)の予測平均値は+1.67%のプラス成長になるという見通しである。

●現状では不透明要素が大きいものの、総合的に判断すると、11月16日に発表される7~9月期の実質GDP第1次速報値は2四半期ぶりのプラス成長率には戻るだろう。但し、かなり緩やかな伸び率にとどまるものと予測される。

●15年度実質GDP成長率に関して14年度から15年度のゲタは+0.9%になった。14年度の4~6月期が今回も下方修正になったので、ゲタは第1次速報値の+0.88%から+0.89%と僅かに増えた。15年度の残りの3四半期の前期比が+0.6%・前期比年率+2.3%だと、内閣府年央試算の15年度実質経済成長率+1.5%程度を達成できる。15年度の残りの3四半期の前期比が0.0%だと15年度の実質GDP成長率は+0.6%成長になる。15年度の各四半期の前期比が+0.3%だと15年度の実質GDP成長率は+1.0%成長になる。