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15年4~6月期実質GDP(第1次速報値)について

2015年8月17日

●15年4~6月期実質GDP成長率・第1次速報値は前期比▲0.4%、前期比年率▲1.6%と、個人消費や輸出が減少したことを主因に、3四半期ぶりのマイナス成長になった。

●民間エコノミストのコンセンサス調査であるESPフォーキャスト調査・8月調査では15年4~6月期実質GDP成長率の平均予測値は前期比年率▲1.55%であり、今回の▲1.6%という結果は予測平均値とほぼ同じだった。

●4~6月期第1次速報値でGDPの約6割を占める個人消費(民間最終消費支出:表参照)が▲0.8%だったことは関連指標を使った予想を下回る結果と言えるだろう。ESPフォーキャスト調査の平均予測値は▲0.28%の減少予測だった。GDP統計の実質個人消費に近い考え方で算出されている消費総合指数の4~6月期の前期比は8月13日に公表されたが▲0.6%の減少であった。本日発表された民間最終消費支出の4~6月期の前期比は▲0.8%で0.2ポイント下振れた。

●4~6月期の名目GDP成長率は前期比+0.0%、前期比年率+0.1%と、微増ながら、こちらは3四半期連続の前期比プラス成長になった。

●約6割のウエイトがある最大の需要項目の実質個人消費の4~6月期は前期比▲0.8%で4四半期ぶりの減少となった。実質雇用者報酬は前期比▲0.2%で2四半期ぶりの減少になった。名目雇用者報酬は前期比+0.2%なので、物価上昇の方が大きかったようだ。実質個人消費の内訳をみると、耐久財の前期比は▲2.2%と3四半期ぶりの減少になった。税制が変わった軽自動車などの購入が減少したことなどが要因だろう。半耐久財の前期比は▲3.9%と2四半期ぶりの減少になった。非耐久財の前期比は▲0.6%で4四半期ぶりの減少になった。サービスの前期比は▲0.1%で3四半期ぶりの減少になった。

●実質設備投資4~6月期の前期比は▲0.1%と3四半期ぶりの減少になった。ESPフォーキャスト調査の平均予測値は+0.17%の増加予測だった。設備投資は季節調整替えの影響などもあって、このところ結構発表の度に振れが大きい。1~3月期第1次速報値では4四半期ぶりに前期比+0.4%の増加となった。1~3月期第2次速報値では3四半期連続前期比増加で前期比は+2.7%の増加となった。今回は4四半期ぶりの減少で良いはずが、過去の数字が変更になった関係で、3四半期ぶりの減少になった。なお、名目設備投資4~6月期の前期比は+0.2%と4四半期連続増加だ。

●供給サイドのデータに基づいて算出した、名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は▲2.0%の減少で、また需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は▲29.9%の減少であると公表された。法人企業統計が出たときに比較することで、15年4~6月期実質GDP成長率・第2次速報値での設備投資の予測に参考となる数字だ。なお、法人企業統計の類似データと言われている建設物価調査会・設備投資調査(土地・ソフトウエア除く)(調査時点6月1日)の発表は今回も遅れている。8月下旬頃公表とのことで、現時点での法人企業統計の予測などには使えない。

●住宅投資は前期比+1.9%と、どちらも2四半期連続の増加になった。政府最終消費は前期比+0.4%と5四半期連続増加。公共投資は、前期比+2.6%と2四半期ぶりの増加だった。

●民間在庫投資の実質・前期比寄与度は+0.1%だった。内訳をみると、製品在庫だけがプラス寄与で前期比寄与度+0.2%、仮置き値の原材料在庫は前期比寄与度▲0.1%、同じく仮置き値の仕掛品在庫も▲0.1%とマイナス寄与で、残る流通在庫は前期比寄与度0.0%だった。

●外需(純輸出)の前期比寄与度は▲0.3%と2四半期連続のマイナス寄与になった。実質輸出は前期比▲4.4%と6四半期ぶりの減少になった。財は前期比▲5.0%と4四半期ぶりの減少、サービスは前期比▲3.0%と3四半期ぶりの減少だった。実質輸入の前期比は▲2.6%と4四半期ぶりの減少になった。財に関しては前期比▲3.0%と4四半期ぶりの減少、サービスは前期比▲0.2%と2四半期ぶりに減少に転じた。

●4~6月期のGDPデフレーターの前年同期比は+1.6%で、6四半期連続プラスの伸び率になった。輸入デフレーターが原油価格下落の影響で1~3月期は前年同期比▲6.9%と10四半期ぶりにマイナスに転じたことなどで、GDPデフレーターの前年同期比は+3.5%に上昇したが、4~6月期の輸入デフレーターは前年同期比▲4.7%とマイナス幅が縮小している。国内需要デフレーターの前年同期比は+0.1%と、8四半期連続プラスの伸び率だが、1~3月期の+1.5%から鈍化したこともGDPデフレーターの前年同期比鈍化要因になった。一方、4~6月期の季節調整済み前期比をみると、GDPデフレーターは+0.4%で3四半期連続のプラス、国内需要デフレーターの前期比は+0.2%で2四半期ぶりにプラスに転じた。

●15年度実質GDP成長率の政府見通しは+1.5%だが、各四半期の前期比が+0.7%(小数点第二位までだと+0.65%)で達成される。14年度から15年度へのゲタは+0.9%になった。4~6月期実質GDPは足踏み状態になったが、7~9月期以降は景気の好循環の流れを反映しプラス成長が続くものと予測する。15年度は最初の四半期である4~6月期のマイナスが響き、15年度の実質成長率は政府見通しをやや下回りそうだ。

●9月8日に発表される4~6月期第2次速報値では9月1日の法人企業統計の発表を受けて、設備投資や在庫投資などを中心に改定されるので、法人企業統計の内容が注目される。

●法人企業統計では在庫投資の伸び率は名目の前年同期比で発表される。GDPの第1次速報値では在庫投資・名目原数値・前年同期比寄与度は+0.2%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、流通在庫だけが前年同期比プラス寄与だった模様だ。残りマイナス寄与の中では、製品在庫の前年同期比寄与度が一番小さくほぼゼロに近かったようだ。仮置きの原材料在庫、仕掛品在庫はどちらも製品在庫より前年同期比マイナス寄与度は大きく、原材料在庫の方がマイナス寄与度は大きかった模様だ。