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6月分景気動向指数(速報値)

2015年8月6日

-先行CI前月差+1.2で4カ月連続の上昇、一致CI前月差+0.7で2カ月ぶりの上昇-
-「足踏みを示している」で基調判断継続-

●今回6月分から第11次改定後の採用系列による景気動向指数の公表が行われている。

●6月分景気動向指数・速報値では、先行CIは前月差+1.2と4カ月連続の上昇となった。6月分の先行CIの指数水準は107.2だ。

●一致CIは前月差+0.7と2カ月ぶりの上昇になった。5月分の一致CIの指数水準は112.0である。東日本大震災発生時のボトムで直近のボトムである11年3月分の97.1よりは14.9ポイント高い水準だが、直近のピークである14年1月分の116.1よりは4.1ポイント低い水準だ。一致CIの3カ月後方移動平均の前月差は+0.37と4カ月ぶりの上昇に、7カ月後方移動平均の前月差は+0.03と2カ月ぶりの上昇になった。

●一致CIを使った景気の基調判断は、今回6月分では、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏みを示している」となった。

●最近の一致CIを使った景気の基調判断をみると、13年7月分で景気の基調判断が、景気拡張の可能性が高いことを示す「改善を示している」に上方修正された後、13年8月分~14年3月分でも「改善を示している」で据え置きだった。しかし、14年4月分で「足踏みを示している」に下方修正になり、5月分~7月分でも「足踏みを示している」に据え置きとなった。14年8月分で「下方への局面変化」にさらに下方修正され、9月分~11月分でも「下方への局面変化」で据え置きとなった。

●景気はそこで踏みとどまり「悪化」に転じることは回避された。14年12月分で、「改善を示している。ただし、基調判断に用いている3カ月後方移動平均のこのところの変化幅は、大きいものではない」に上方修正された。「改善を示している」に「下方への局面変化」から戻るのは異例のパスということだった。15年1月分で、但し書きは消えて、「改善を示している」という判断継続になった。15年2月分~4月分でも、「改善を示している」という判断継続になったが、前回5月分で景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏みを示している」に下方修正され、今回6月分でも判断据え置きとなった。

●次回7月分も、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」の判断が継続となろう。7・8月分の製造工業生産予測指数が2カ月連続前月比増加であることなどから、今後、一致CIは前月差上昇が見込まれるものの、判断が景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に戻るには、「当月の前月差の符号がプラス。かつ原則として3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が上昇する」ことが必要なので、早くても10月7日に発表される8月分になる。

●過去の一致CIの数値が変わらないことを前提にすれば、7月分の前月比が+1.6以上上昇しないと、7月分の3カ月後方移動平均が上昇しない。7月分の前月比が+1.5の上昇以下にとどまる場合は3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が上昇するのが8月分以降になるので、「改善」に戻るのは12月上旬に発表される10月分以降になる。

●万一、「下方への局面変化」に悪化するには、「当月の前月差の符号がマイナス。かつ7カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月、または3カ月の累積)が1標準偏差分(0.82)以上」であることが必要だ。仮に一致CI前月差が7月分以降▲1.0ポイントずつ下降したとすると、8月分で2カ月の累積が▲0.95になり、1標準偏差分(0.82)以上下方に振れることになる。

●今回6月分速報値では先行DIは88.9%と3カ月連続で景気判断の分岐点である50%を上回った。しかし、一致DIは50.0%で景気判断の分岐点にはなったものの、4カ月連続して50%超にはなっていない。

●6月分景気動向指数・改定値では、一致CIでは新たに加わる所定外労働時間指数の前月差寄与度は+0.05程度のプラス寄与になるとみる。生産指数などの確報値段階でのリバイス状況にもよるが、一致CI・改定値の前月差は+0.8程度の上昇と速報値の前月差+0.7から若干上方修正になると予測する。また一致DIでは所定外労働時間指数がマイナス符号で加わり、44.4%程度と速報値の50.0%から下方修正になると予測する。一致DIは4カ月連続で景気判断の分岐点である50%を下回ることになろう。

●先行CIでは新たに加わる実質機械受注(製造業)の前月差寄与度は▲0.38程度のマイナス寄与になるとみる。在庫率関連データなどが確報値段階でどうリバイスされるかにもよるが、先行CI・改定値の前月差は+0.8程度の上昇へと速報値の前月差+1.2の上昇から下方修正になるとみた。また、先行DIでは実質機械受注(製造業)がプラス符号で加わり、90.0%程度と速報値の88.9%から上方修正になると予測する。

●7月分の先行CIの採用系列で、現時点で数値が判明しているのは、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列である。この3系列は前月差マイナス寄与になることが判明している。残りの6系列次第ではあるものの、7月分の先行CI前月差は5カ月ぶりに下降に転じる可能性もありそうだ。

●また、7月分の先行DIでは、現時点で数値が判明している日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列のうち、東証株価指数1系列がプラス符号に、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの2系列がマイナス符号になることが判明している。このため7月分先行DI速報値は、11.1%以上77.8%以下が確定している。これから発表される残りの6系列中プラス符号が4系列になれば、4カ月連続して景気判断の分岐点である50%を上回ることになろう。