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2月分鉱工業生産指数・速報値について

2015年3月30日

- 2月分鉱工業生産指数・前月比▲3.4%で3カ月ぶりに減少 -
- 3カ月移動平均増加継続で、生産の基調判断は「緩やかな持ち直し」で据え置き -
- 1~3月期実質GDPは予想外に弱い、ゼロ%台成長か? -

鉱工業生産

●鉱工業生産指数・2月分速報値は製造工業生産予測指数の前月比+0.2%に比べかなり低い▲3.4%と3カ月ぶりの減少になった。前月比は14年6月分の▲3.4%以来の減少率である。また、前年同月比は昨年2月分が大雪の影響で低水準だった反動で1月分より減少率はやや縮小したが▲2.6%と2カ月連続の減少になった。
●鉱工業生産指数・季節調整値の3カ月後方移動平均値は14年8月分の96.3をボトムに6カ月連続増加し、2月分で100.0になった。1月分で大きく伸びた反動が出ているはん用・生産用・業務用機械工業など一部業種の動きにより、振れがあるものの、緩やかな増加基調は維持している。
●2月分の生産を業種別にみると、15業種のうち増加が2業種、保合いが1業種、減少が12業種だった。はん用・生産用・業務用機械工業、輸送機械工業、電子部品・デバイス工業等、大半の業種が減少、石油・石炭製品工業、パルプ・紙・紙加工品工業が増加した。
●2月分速報値の鉱工業生産指数は98.9で昨年12月分の98.7以来の低い水準になった。13年度の平均と同水準である。
●製造工業生産予測調査によると、3月分前月比は▲2.0%の減少、4月分は前月比+3.6%の増加である。はん用・生産用・業務用機械工業など一部業種の動きに減少の後の2ケタ増加など引き続き振れがある動きがみられる。
●製造工業の実現率は11カ月連続のマイナスで▲2.5%になった。
●製造工業の予測修正率は▲1.3%と13カ月連続のマイナスになった。
●先行きの鉱工業生産指数を3・4月分の製造工業生産予測指数の前月比、5・6月分を0.0%の前月比で延長すると、1~3月期は前期比+1.1%、4~6月期は前期比+1.0%となる。3四半期連続の増加になる見込みだ。
●但し、1~3月期の前期比は10~12月期の前期比+1.7%より低い伸び率になる見込みだ。

●なお、4月15日発表の2月分確報値段階で年間補正が行われ、過去の季節調整値も修正される。東日本大震災の後、企業の生産パターンが変わってきていることもあり、どのように修正されるかにも留意しておくことが肝要だろう。
●1月分速報値の鉱工業出荷指数・前月比は▲3.4%と3カ月ぶりの減少になった。鉱工業在庫指数は前月比+0.5%と3カ月ぶりの増加になった。鉱工業在庫率指数は112.8、前月比+4.3%で3カ月ぶりの上昇となった。
●経済産業省の基調判断は14年3月分まで、「総じてみれば、生産は持ち直しの動きで推移している」とされていたが、消費税率引き上げがあった14年4月分で「総じてみれば、生産は横ばい傾向」と下方修正された。5月分でも同じ判断継続となった。6月分で12年8月分以来の表現である「総じてみれば、生産は弱含みで推移している」に下方修正され、7月分・8月分と判断継続となった。9月分で「総じてみれば、生産は一進一退にある」に上方修正され、10月分・11月分と据え置かれた。8月分を底に生産は増加傾向なので、12月分で判断は「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しがみられる」に3カ月ぶりに上方修正された。15年1月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しがみられる」で据え置きだった。今回2月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しがみられる」で据え置かれた。
●鉱工業全体での縦軸に在庫の前年比をとった在庫サイクル図をみると、13年10~12月期では、出荷の前年比が+6.4%、在庫が同▲4.3%、14年1~3月期でも、出荷の前年比が+7.4%、在庫が同▲1.4%、と45度線を下回っていた。しかし、14年4~6月期では、在庫が6四半期ぶりに前年同期比増加に転じ、出荷の前年比が+1.3%、在庫が同+2.8%、と45度線を上回ってしまった。14年7~9月期でも、出荷の前年比が▲0.5%、在庫が同+4.0%、と45度線を上回り、14年10~12月期でも、出荷の前年比が▲1.5%、在庫が同+6.1%、と45度線を上回っている。15年1~2月分でも、出荷の前年比が▲2.6%、在庫が同+7.3%、と45度線を上回っている。在庫の前年比は足元も高めで推移している感じがある。在庫サイクル図からは、依然、在庫積み上がり局面にあると言える。

1~3月期のGDP予測

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の1~2月分平均対10~12月分平均比は+10.3%の大幅増加になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同+2.7%の増加だ。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の1~2月分平均対10~12月分平均比は▲0.7%の減少になった。乗用車販売台数の1~2月分平均対10~12月分平均比は、年末の軽自動車の販売促進の反動などで2カ月連続して前月比が減少しているので、▲9.6%の減少になった。供給サイドのデータの方が需要サイドのデータより強い感じでスタートしている。さらにGDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)1月分対10~12月分平均比は▲0.3%の減少になった。総合的に考えると、1~3月期第1次速報値の個人消費は、前期比で良くて横這いになる可能性があるとみられる。
●設備投資の関連データである資本財出荷指数の1~2月分平均対10~12月分平均比は+2.6%の増加になった。資本財(除.輸送機械)は同+5.9%の増加になった。また、建設財は同+1.7%の増加になった。総合的に考えると、供給サイドから推計される1~3月期の実質設備投資は前期比増加となりそうだ。
●実質輸出入の動向をみると輸出の1~2月分平均対10~12月分平均比(2月分確報値は30日午後発表のため速報値段階)は+2.5%の増加になった。輸入は同+5.2%の増加になっている。モノだけでみると外需はマイナス寄与になる。非居住者家計の国内での直接購入はサービス面で輸出の伸びにプラス寄与するが14年10~12月期時点で、実質GDPの輸出の2%程度に過ぎないことも考慮して、1~3月期の外需の前期比寄与度は4四半期ぶりで前期比マイナス寄与になる可能性が出てきたと判断する。
●総合的に判断すると、5月20日に発表される1~3月期の実質GDP第1次速報値は3月分のデータにもよるが、これまで言われたのとは異なり弱いゼロ%近傍の成長率になる可能性がありそうだ。1~3月期の前期比年率が10~12月期の前期比年率+1.5%より低い伸び率になりそうなことは、鉱工業生産指数の伸び率の見込みと同様の動きだ。

2月分景気動向指数予測

●2月分の景気動向指数・速報値では、先行CIは前月差▲1.1程度と2カ月連続の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列では、3月30日午前9時現在、消費者態度指数、日経商品指数、長短金利差、東証株価指数の4系列が前月差プラス寄与、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積1系列は前月差マイナス寄与になると予測した。
●2月分の一致CIは前月差▲2.7程度と3カ月ぶりの下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な10系列では、3月30日午前9時現在、商業販売額指数・小売業1系列が前月差プラス寄与に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、大口電力使用量、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、所定外労働時間指数、中小企業出荷指数の2系列はマイナス寄与になると予測する。
●一致CIを使った景気の基調判断は12月分でそれまでの「下方への局面変化」から景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に上方修正された。前回1月分も判断継続になった。2月分が予測通りなら、3カ月連続「改善」の判断になろう。一致CIの前月差は下降だが、3カ月後方移動平均は前月差で6カ月連続の上昇に、7カ月後方移動平均は前月差で2カ月連続の上昇と、2つの後方移動平均はどちらも上昇トレンドを維持しよう。

●2月分の先行DIは44.4%程度と2カ月ぶりに景気の分岐点である50%を下回ると予測する。3月30日午前9時現在、速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、東証株価指数の4系列がプラス符号、新規求人数、日経商品指数、長短金利差、中小企業売上げ見通しDIの4系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは44.4%以上55.6%以下が確定している。残る、新設住宅着工床面積1系列はマイナス符号になると予測する。

●2月分の一致DIは70.0%程度と景気の分岐点である50%を6カ月連続で上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な10系列では、3月30日午前9時現在、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の6系列がプラス符号に、大口電力使用量、商業販売額指数・小売業の2系列がマイナス符号になることが判明している。一致DIは60.0%以上80.0%以下と50%超が確定している。残る2系列では、所定外労働時間指数がマイナス符号に、中小企業出荷指数はプラス符号になると予測した。