インフラ投資の国際原則策定

2019年6月7日

初めに

5月24日の読売新聞は6月8日、9日に福岡で開かれる主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が「質の高いインフラ投資」を推進するための国際原則を採択する見通しになったと報じました。今回はこの国際原則を設ける理由やその内容、経済や株式市場などへの影響について考えてみます。

中国のインフラ投資への批判

今回の原則策定の理由は、中国のインフラ投資が問題につながっていると見られていることです。ここ数年中国は巨大経済圏構想「一帯一路」に沿ってアジアを中心に新興国でのインフラ投資を積極化しています。しかし、この中国主導のインフラ投資は受け入れ国に対するインフラ整備のための資金供与を伴うことがあり、借り手が過剰債務に陥ってしまうこともあります。例えばスリランカは、港湾整備のために中国から資金を調達しましたが、その返済に行き詰まり、港の経営権を99年間中国に譲渡することになりました。モルディブも似た状況になったことがあるとの報道もあります。国際社会では中国が新興国を「借金漬け」にしているとの疑念が広まっているとの一部報道もありますが、こうした中国のインフラ投資をこのまま放置できないというのが、今回の国際原則策定の理由です。また中国は状況に応じて大国と新興国の立場を使い分けているとの見方もありますが、その中国に大国としての自覚と責任感を持つよう促すことも狙いの1つとの見方もあります。

原則の内容

報じられている原則の内容で最も重要なのがインフラ投資の債務持続可能性です。これは既に述べたスリランカのように借り手国が返済不能に陥ることを防ぐものです。具体的には入札の活用や情報公開の拡充により、インフラ投資に関する情報の透明性を高め、中国など特定の国だけが利益を得ることをけん制することになると思われます。その他の項目も地域の利益や地球環境などにも配慮したものとなっており、評価できると考えています。

実現性、実効性、金融市場への影響など

事務レベルの協議まで、中国から反対は出ていないようです。条件付となる可能性はありますが、現在の国際情勢を考えると、中国が採択に賛成する可能性はあると考えています。また採択された場合、短期的に経済や株式市場への影響は限定的と思われますが、長期的には東南アジアや南アジアの成長への期待が高まることが予想されることから、アジア関連を中心に日本株にもプラスになると思われます。

門司総一郎(調査部 シニアストラテジスト)

略歴

東京大学法学部卒業
 1985年大和証券入社
 1987年大和投資顧問(現、三井住友DSアセットマネジメント)転籍
 雑誌、新聞の執筆、テレビ出演も多数あり、わかりやすい説明に定評がある

趣味:一宮の御朱印集め
座右の銘:見えている悪材料は悪材料に非ず 見えている好材料は好材料に非ず
つぶやき   :「若者の株式離れ」がいわれますが、銘柄選択の楽しさを若い方にも味わってもらえる株式市場になって欲しいと願っています。