ホームマーケット週次・月次市場情報先月のマーケットの振り返り(2016年2月)【マンスリー】/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

先月のマーケットの振り返り(2016年2月)【マンスリー】

2016年3月2日

1.概観

トピックス 日本の10年国債の利回りはマイナスとなり、米国債やドイツ国債の利回りも低下しました。
日米中の株式市場は、原油価格の変動や世界経済の下振れ懸念を背景に、振れ幅の大きな展開となりました。
株式 主要国の株式市場は、月初、リスク回避の動きが強まり下落しました。中旬から後半にかけて、原油価格の反発によるリスク回避の動きの後退により、米国は上昇に転じました。日本は対ドルでの円高進行、ドイツは製造業の活動の下振れなどから、下落幅が縮小するにとどまりました。
債券 米国債やドイツ国債は、原油安の進行や欧州の銀行の財務懸念などにより、リスク回避の動きが強まり、利回りが低下しました。日本は、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」がスタートし、幅広い年限で国債利回りが低下しました。
為替 円の対米ドル、対ユーロレートは、原油安の進行などによるリスク回避の動きの強まりにより、上昇(円高)しました。 米ドルは前半は冴えない経済指標による利上げ後ずれ観測によりユーロに対して下落(米ドル安)したものの、後半は欧州の追加緩和期待の高まりにより下落幅が縮小しました。
商品 原油価格は、前半は下落したものの、後半にかけて産油国の生産量維持への協調や米国在庫の減少を材料に上昇しました。

(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1)日本の10年国債の利回りはマイナスとなり、米国債やドイツ国債の利回りも低下しました。

<現状>

日本国債は、1月29日に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」導入を発表以降、利回りが幅広い年限で低下し、2月末の時点で残存期間10年までの国債利回りがマイナスとなりました。欧米でも国債利回りは低下しました。原油安の進行や欧州銀行のリスクの高い債券の償還が不安視され、リスク回避の動きが強まったことなどが要因です。中旬以降、産油国の協調を材料に原油価格は反発したものの、米国は経済指標が冴えず、利上げ先送り観測により米国債の利回りは低位で推移しました。ドイツ国債は、企業景況感下振れにより欧州中央銀行(ECB)の追加金融緩和への期待が高まり、国債利回りがさらに低下しました。

<見通し>

日本国債は、物価目標の達成にはかなりの時間が必要と見られ、金融緩和のさらなる強化も予想されることから、利回りは低位での推移が予想されます。欧州でも、物価が目標を下回り、金融政策が緩和強化の方向にあることから、ドイツ国債の利回りは低位での推移が見込まれます。米国債は、利上げペースが緩やかと見られるため、利回りは横ばい圏と見込まれます。

(2)日米中の株式市場は、原油価格の変動や世界経済の下振れ懸念を背景に、振れ幅の大きな展開となりました。

<現状>

日米中の株式市場は、年初から変動の大きな展開が月半ばまで続きました。日米の市場は、月初は原油安の進行により、リスク回避の動きが強まり、株式市場は下落しました。その後中旬から月末にかけて、主要産油国の協調への期待や米国の原油在庫減少などを材料に、原油価格は反発し、NYダウも上昇に転じました。ただし、日経平均株価は、為替市場の円高から、反発は小幅にとどまりました。
中国は、8日から12日までの春節の祝日後、政策期待などにより上昇しました。しかし、月末にかけ、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議や3月の全人代(全国人民代表大会)を控えて様子見姿勢が強まるなか、利益確定の売りなどに押され下落しました。

<見通し>

原油価格は、産油国の減産をめぐる思惑や、米国の原油在庫の増減を材料に、一進一退の動きが予想されます。一方、シェールオイル企業の収益が悪化し、設備投資が減少して、米国の原油生産の減少が加速することも期待されます。原油や資源価格の値動きが安定すれば、企業業績は安定に向かい、株式市場は企業業績の拡大に沿った展開となることが予想されます。

3.景気動向

<現状>

米国は、10-12月期の実質GDP成長率が前期比年率+1.0%と、設備投資の下振れにより、前期の同+2.0%から減速しました。
欧州は、10-12月期の実質GDP成長率が前期比+0.3%と前期から横ばいで、消費が下支えする緩やかな景気回復が持続しています。
日本は、10-12月期の実質GDP成長率が前期比年率▲1.4%と、個人消費が減少し、マイナス成長となりました。
中国は、10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+6.8%と前期から鈍化しました。消費は底堅いものの、生産や投資が下振れしました。
豪州は、10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+3.0%と前期から加速しました。消費などの内需がけん引しました

<見通し>

米国は、製造業の活動が一時的に弱まるものの、堅調な雇用を背景にサービス業が景気を支え、年+2%台前半の安定した成長が見込まれます。
欧州は、欧州中央銀行(ECB)の追加緩和や、財政拡大が予想され、消費が主導する緩やかな景気回復が持続する見通しです。
日本は、所得の低迷により消費が抑制され力強さに欠くものの、政策に後押しされ、1-3月期以降はプラス成長に転ずると予想されます。
中国は、年6.5%以上の成長率目標が掲げられ追加緩和や公共投資の下支えにより、景気の大きな下振れは回避されることが期待されます。
豪州は、中国の景気安定化や緩和的な金融環境などから、今年後半から景気が加速すると見込まれます。

4.企業業績と株式

<現状>

米国の主要企業の10-12月期の増益率は前年同期比▲3.1%(トムソン・ロイター調べ、2月29日集計時点)と、エネルギー業種の大幅な減益の影響が残りました。日本の主要企業(東証1部、3月期決算、除く金融)の10-12月期の経常利益の前年同期比は、製造業が減益、非製造業が増益となり、総合するとほぼ横ばいとなったようです。

<見通し>

米国企業の前年比増益率がプラスに転じる時期は、原油安の影響の長期化などから今年7-9月期に遅れるものの、2016年は+2.9%程度の増益が見込まれています。日本の主要企業の2015年度の経常利益は、+5%台半ばと見込まれています。日米ともに原油など資源価格の下落や中国などの新興国経済減速による業績予想の下方修正などから、株式市場の変動が大きくなる可能性には注意が必要と見られますが、世界的な景気見通しへの不透明感が和らぎ企業業績見通しへの信頼が高まるにつれ、株式市場は底堅い推移となることが期待されます。

5.金融政策

<現状>

2月は日米欧いずれも金融政策を決める定例会合は開催されませんでした。米国は1月の会合で資産規模を維持し、緩やかなペースの利上げを続ける方針です。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、3月の理事会で景気と物価見通しを見直すとし、追加緩和を示唆しました。ECBはマイナスの預金金利や月600億ユーロの資産購入による量的金融緩和を行っています。日銀は、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入し、年間80兆円のマネタリーベースの拡大を続けています。

<見通し>

米国は、労働市場の改善が進むと見られ、今後も利上げの継続が見込まれます。ただし、物価の上昇が緩やかと見られることや、製造業の活動も足元で勢いを欠くことから、利上げペースは緩やかと見られます。ユーロ圏では、景気は緩やかな回復傾向にあるものの2月の物価上昇率は前年同月比▲0.3%と再びマイナスとなり、目標とする2%に近づくには時間がさらにかかると見られ、追加緩和が見込まれます。日本は、黒田日銀総裁が1月の会見で「必要な場合は追加的な金融緩和措置を講じる」との考えを示しており、金融緩和のさらなる強化も予想されます。
米国と日欧で、金融政策の方向性の違いが意識される展開が続くと見られます。

6.債券

<現状>

日米欧の国債利回りは低下しました。欧米では、原油安の進行や欧州銀行のリスクの高い債券の償還が不安視され、リスク回避の動きが強まったことなどが要因です。中旬以降、産油国の協調を材料に原油価格は反発したものの、米国の経済指標が冴えず、利上げ先送り観測により米国債の利回りは低位で推移しました。ドイツ国債は、企業景況感下振れにより欧州中央銀行(ECB)の追加金融緩和への期待が高まり、国債利回りがさらに低下しました。日本国債は、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」がスタートし、幅広い年限にわたり、国債利回りが低下しました。

<見通し>

米国債は、利上げペースが緩やかと見られるため、利回りは横ばい圏での推移が継続すると見込まれます。欧州でも、物価が目標を下回り、金融政策が緩和強化の方向にあることからり、ドイツ国債の利回りは低位での推移が見込まれます。日本国債は、物価目標の達成にはかなりの時間が必要で、金融緩和のさらなる強化も予想されていることから、利回りは低位での推移が見込まれます。米国など主要国の社債市場は、企業の底堅い業績や慎重な財務運営などを背景に、社債スプレッドは比較的安定的に推移すると見込まれます。

7.為替

<現状>

2月中旬にかけて、原油安や欧州の銀行のリスクの高い債券の償還が不安視され、リスク回避の動きが強まり、円は対米ドルや対ユーロで上昇しました。円は2月11日に、一時対米ドルで111円を下回る場面も見られました。しかし中旬から後半にかけて、原油価格の反発や欧州の銀行財務の健全性などが再認識され、リスク回避の動きが後退しました。しかし、安全資産としての円への需要は根強く、円は対米ドルで111円~114円のレンジで推移し、1月に比べ円高水準で推移しています。ユーロは、米ドルに対して米利上げの後ずれ観測により月初は上昇しましたが、後半は欧州中央銀行(ECB)の追加金融緩和期待が高まり、上昇幅を縮小しました。

<見通し>

米ドル円相場は、日米の金融政策の方向性が異なることから、中期的には米ドル高圧力が意識されやすい環境です。しかし、米国の利上げペースは緩やかと見られ、米ドル円相場の方向性に目先はっきりした方向感は出にくいと見込まれます。一方、中国などの新興国経済の減速懸念の高まりや原油・資源価格の下落などにより、リスク回避の動きが強まる場合には、円高が進むリスクも考えられます。
ユーロ円相場は、ECBと日銀の金融政策の方向性が同じであることから、総じて横ばいの動きが予想されます。

8.リート

<現状>

リート市場は小幅に上昇しました。月初は原油安の進行などによる世界的な株式市場の下落を受け、リート市場も下落しました。しかし月後半にかけて、原油価格の反発、米国株式市場の上昇を受け、下落を打ち消し上昇しました。

<見通し>

米国では物価見通しが落ち着いていることから利上げペースが緩やかにとどまり、金利が急上昇するリスクは限定的とみられます。世界的に不動産市場の回復が見込まれることに加え、資金調達コストの抑制などリート市場にとっての好環境が意識されることなどから、各国のリート市場は底堅い展開が予想されます。

9.まとめ

株式 株式市場は、世界的な景気見通しへの不透明感が和らぎ企業業績見通しへの信頼が高まるにつれ、株式市場は底堅い推移となることが期待されます。ただし、原油など資源価格の下落や中国などの新興国経済減速などから業績予想の下方修正などにより、株式市場の変動が大きくなる可能性には注意が必要と見られます。
債券 米国債は、利上げペースが緩やかと見られるため、利回りは横ばい圏での推移が継続すると見込まれます。
ドイツ国債は、物価が目標を下回り、金融政策が緩和強化の方向にあることから、利回りは低位での推移が見込まれます。
日本国債は、物価目標の達成にはかなりの時間が必要で、金融緩和のさらなる強化も予想されていることから、利回りは低位での推移が見込まれます。
米国など主要国の社債市場は、企業の底堅い業績や慎重な財務運営などを背景に、社債スプレッドは比較的安定的に推移すると見込まれます。
為替 米ドル円相場は、日米の金融政策の方向性が異なることから、中期的には米ドル高圧力が意識されやすい環境です。しかし、米国の利上げペースは緩やかと見られ、米ドル円相場の方向性に目先はっきりした方向感は出にくいと見込まれます。一方、中国などの新興国経済の減速懸念の高まりや原油・資源価格の下落などにより、リスク回避の動きが強まる場合には、円高が進むリスクも考えられます。
ユーロ円相場は、ECBと日銀の金融政策の方向性が同じであることから、総じて横ばいの動きが予想されます。
リート 米国では物価見通しが落ち着いていることから利上げペースが緩やかにとどまり、金利が急上昇するリスクは限定的とみられます。世界的に不動産市場の回復が見込まれることに加え、資金調達コストの抑制などリート市場にとっての好環境が意識されることなどから、各国のリート市場は底堅い展開が予想されます。

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。