ホームマーケット週次・月次市場情報先月のマーケットの振り返り(2015年12月)【マンスリー】/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

先月のマーケットの振り返り(2015年12月)【マンスリー】

2016年1月5日

1.概観

トピックス 米国は利上げ、ユーロ圏は追加緩和、日本は金融緩和の補完措置をそれぞれ発表し、米国と日欧の金融政策の方向性の違いが明確になりました。
原油価格は、OPEC総会で減産が合意されなかったことなどにより需給悪化懸念が強まり下落しました。
株式 米国株は、利上げの決定により金融政策への不透明感が後退したものの、原油安によるリスク回避の動きが強まり、下落しました。ドイツや日本は、金融政策に対する期待の剥落もあり下落しました。中国は、政策期待が強まり、上昇しました。
債券 米国債は、利上げの決定や物価上昇圧力の強まりなどから、利回りが小幅に上昇しました。ドイツ国債は、追加緩和が期待に届かなかったことや、米国債利回りの上昇などから、利回りが上昇しました。
為替 米ドルは、原油安を受けてリスク回避の動きが強まり、対円で下落しました。ユーロは、追加緩和が期待に届かなかったことを受けて、対ドル、対円で上昇しました。
商品 原油価格は、石油輸出国機構(OPEC)総会で減産が合意されなかったことなどから下落し、1バレル40ドルを下回りました。

(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1)米国は利上げ、ユーロ圏は追加緩和、日本は金融緩和の補完措置をそれぞれ発表し、米国と日欧の金融政策の方向性の違いがより明確になりました。

<現状>

米国では、15日~16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の0.25%引き上げが決まりました。08年12月以来の実質ゼロ金利政策から脱却しました。一方、欧州中央銀行(ECB)は3日、預金金利のマイナス幅拡大や資産購入策の期限延長と購入対象の拡大を柱とする追加緩和を決定しました。また日銀は、17日~18日の金融政策決定会合で、現行の「量的・質的金融緩和」の維持と、それを補完するための新たな措置の導入を決定しました。

<見通し>

米国は、労働市場の改善が進むと見られ、今後も利上げの継続が見込まれます。ただし、物価の上昇が緩やかと見られることから、利上げペースも緩やかと予想されます。ユーロ圏では、景気は緩やかな回復傾向にあるものの物価は低位で推移し、目標とする2%に近づくには時間がかかると見られることから、追加緩和が見込まれます。日本については、消費が底堅く推移していること、日銀が物価の基調判断を改善としていることから、追加緩和は当面行われず現行の金融緩和政策が継続する見込みです。米国と日欧で金融政策の方向性が異なる展開が続きそうです。

(2)原油価格は、OPEC総会で減産が合意されなかったことなどにより需給悪化懸念が強まり下落しました。

<現状>

12月3日の石油輸出国機構(OPEC)総会で減産が合意されなかったことをきっかけに、原油価格は下落しました。しかし、月の後半には急ピッチの下落の反動などにより、下落幅が縮小しました。資源国や新興国の通貨は、原油などの資源価格下落が一因となり、対円で下落しました。2015年通年では、原油価格は▲30.5%、ブラジルレアルは対円で▲32.6%、豪ドルは対円で▲10.4%それぞれ下落しました。

<見通し>

イランへの経済制裁解除による輸出拡大観測など、原油の需給緩和が意識される状況は当面続くと見られます。米国では原油輸出の解禁が決まり、米国内では在庫減少につながると見られるものの、米国外では供給増加要因と見られ、今後の展開が注目されます。需要側では、世界経済が米国などを中心に回復傾向にあることが需要増要因と見られますが、構造改革を進める中国経済の減速に左右される状況が続きそうです。資源国通貨は、原油や資源価格の影響を受ける展開が当面続きそうです。

3.景気動向

<現状>

米国は、7-9月期の実質GDP成長率が前期比年率+2.0%となり、在庫調整などの影響により前期の同+3.9%から減速しました。
欧州は、7-9月期の実質GDP成長率が前期比+0.3%と前期から鈍化しましたが、消費が下支えとなり、緩やかな景気回復が持続しています。
日本は、7-9月期の実質GDP成長率が前期比年率+1.0%に改定され、前期のマイナス成長からプラスに転じました。
中国は、7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比+6.9%と前期から鈍化しました。消費は底堅いものの、生産や投資が下振れしました。
豪州は、7-9月期の実質GDP成長率は前期比+0.9%と前期から加速しました。輸出や消費がけん引しました。

<見通し>

米国は、良好な雇用環境を背景にサービス業が好調で、景気は年+2%台半ばの安定した成長が見込まれます。
欧州は、欧州中央銀行(ECB)の追加緩和や、財政拡大が予想され、消費が主導する緩やかな景気回復が持続する見通しです。
日本は、消費が底堅く、輸出や生産の底打ちもあり、景気の再浮揚が見込まれます。
中国は、年6.5%以上の成長率目標が掲げられ追加緩和や公共投資による下支えにより、景気の大きな下振れは回避されることが期待されます。
豪州は、過去10年の平均成長率(+3%前後)を下回りそうですが、物価が安定し、消費と住宅に支えられ、景気は緩やかに加速しそうです。

4.企業業績と株式

<現状>

米国の主要企業の7-9月期の増益率は前年同期比▲0.8%(トムソン・ロイター調べ、12月31日集計時点)と、マイナス幅は10月1日時点の予想から縮小しました。日本の主要企業(東証1部、3月期決算、除く金融)の7-9月期の経常利益は、前年同期比+2.4%程度の増益で、前期から減速する見込みです。

<見通し>

米国企業の予想増益率は、10-12月期にかけて引き続きマイナスが予想されますが、2016年は+7%台半ばの増益が見込まれています。日本の主要企業の2015年度の経常利益は、景気の緩やかな改善や米国景気の回復などから、前年度比+9%台が見込まれます。ただし、日米ともに資源価格の下落や中国などの新興国経済減速による業績予想の下方修正が強まると、株式市場の変動が大きくなる可能性があります。株式市場は、世界的な景気見通しへの不透明感が和らぎ企業業績見通しへの信頼が高まるにつれ、底堅い推移が期待されます。

5.金融政策

<現状>

米国では、15日~16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の0.25%引き上げが決まりました。08年12月以来の実質ゼロ金利政策から脱却しました。一方、欧州中央銀行(ECB)は3日、預金金利のマイナス幅拡大や月約600億ユーロの国債などを購入する資産購入策の期限延長と購入対象の拡大を柱とする追加緩和を決定しました。また日銀は、17日~18日の金融政策決定会合で、現行のマネタリーベースを年間約80兆円拡大させる強力な「量的・質的金融緩和」の維持と、それを補完するための新たな措置の導入を決定しました。

<見通し>

米国は、労働市場の改善が進むと見られ、今後も利上げの継続が見込まれます。ただし、物価の上昇が緩やかと見られることから、利上げペースも緩やかと予想されます。ユーロ圏では、景気は緩やかな回復傾向にあるものの物価は低位で推移し、目標とする2%に近づくには時間がかかると見られることから、追加緩和が見込まれます。日本については、消費が底堅く推移していること、日銀が物価の基調判断を改善としていることから、追加緩和は当面行われず現行の金融緩和政策が継続する見込みです。

6.債券

<現状>

米国債利回りは小幅に上昇しました。3日の欧州中央銀行(ECB)による追加緩和が市場の期待に届かなかったことから、ドイツ国債の利回りが上昇し、米国債もつれ利回りが上昇しました。その後、原油安の進行からリスク回避の動きが強まり、国債利回りが低下する場面もありましたが、利上げの決定や物価圧力の強まりを示す指標の公表や原油価格の反発などから、徐々に利回りが上昇しました。利上げは緩やかなペースにとどまるとの観測が強く、上昇は小幅にとどまりました。ドイツ国債は、追加緩和が期待に届かなかったことや、米国債利回りの上昇などから、利回りが上昇しました。

<見通し>

米国債利回りは、物価見通しの落ち着きから、今後の利上げペースは緩やかにとどまると見込まれます。ドイツ国債の利回りは、投資家の格付けの高い国債への需要が底堅いことや、ECBの追加緩和が見込まれることから、低位での推移が予想されます。米国など主要国の社債市場は、企業の底堅い業績や慎重な財務運営などを背景にニーズは底堅く、社債スプレッドは比較的安定的に推移すると見込まれます。

7.為替

<現状>

米ドルの対円レートは、米国の利上げの決定や日銀の補完措置発表を挟み、一時的に大きく振れる場面もありましたが、総じて下落しました。原油価格の下落による投資家のリスク回避的な動きから円が買われたことや、米国の利上げを前に米ドル買いが進んでいたことの持ち高調整が利上げ後に起こったことなどが、円高米ドル安の背景です。ユーロは、3日の欧州中央銀行(ECB)の追加緩和が期待に届かなかったことから、米ドルや円に対して大きく上昇しました。その後は、持ち高調整などの動きから、ユーロは対米ドル、対円での上昇幅を縮小させました。

<見通し>

米ドル円相場は、日米の金融政策の方向性が異なることから、引き続き米ドル高圧力がかかりやすい環境です。しかし、米国の利上げペースは緩やかと見られることや、日銀は追加緩和に慎重な姿勢であることから、大きな方向感は出ないと見込まれます。ただし、中国などの新興国経済の減速懸念の高まりや原油・資源価格の下落などにより、リスク回避の動きが強まる場合には、円高が進む場面も想定されます。
ユーロ円相場は、ECBと日銀の金融政策の方向性が同じであることから、総じて横ばいの動きが予想されます。

8.リート

<現状>

リート市場は小幅に上昇しました。月前半は、米国の堅調な雇用増が確認され月内の米国の利上げが濃厚となるなか、主要株式市場が下落傾向となり、リート市場も下落しました。しかし米国の利上げ決定後は、利上げペースは緩やかとの観測が強まり、市場の不透明感が薄れ、リート市場は上昇に転じました。円ベースでは、米ドルが円に対して下落したため、マイナスとなりました。

<見通し>

米国の物価見通しが落ち着いていることから、米国の利上げペースは緩やかにとどまり、金利が急上昇するリスクは限定的とみられます。世界的に不動産市場の回復が見込まれることに加え、資金調達コストの抑制などリート市場にとっての好環境が意識されることなどから、リート市場は底堅い展開が予想されます。

9.まとめ

株式 株式市場は、世界的な景気見通しへの不透明感が和らぎ企業業績見通しへの信頼が高まるにつれ、底堅い推移が期待されます。ただし、日米ともに資源価格の下落や中国などの新興国経済減速による業績予想の下方修正が強まると、株式市場の変動が大きくなる可能性があります。
債券 米国債利回りは、物価見通しの落ち着きから、今後の利上げペースは緩やかにとどまると見込まれます。
ドイツ国債の利回りは、投資家の格付けの高い国債への需要が底堅いことや、ECBの追加緩和が見込まれることから、低位での推移が予想されます。
米国など主要国の社債市場は、企業の底堅い業績や慎重な財務運営などを背景にニーズは底堅く、社債スプレッドは比較的安定的に推移すると見込まれます。
為替 米ドル円相場は、日米の金融政策の方向性が異なることから、引き続き米ドル高圧力がかかりやすい環境です。しかし、米国の利上げペースは緩やかと見られることや、日銀は追加緩和に慎重な姿勢であることから、大きな方向感は出ないと見込まれます。ただし、中国などの新興国経済の減速懸念の高まりや原油・資源価格の下落などにより、リスク回避の動きが強まる場合には、円高が進む場面も想定されます。
ユーロ円相場は、ECBと日銀の金融政策の方向性が同じであることから、総じて横ばいの動きが予想されます。
リート 米国の物価見通しが落ち着いていることから、米国の利上げペースは緩やかにとどまり、金利が急上昇するリスクは限定的とみられます。世界的に不動産市場の回復が見込まれることに加え、資金調達コストの抑制などリート市場にとっての好環境が意識されることなどから、リート市場は底堅い展開が予想されます。

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。