ホームマーケット週次・月次市場情報先月のマーケットの振り返り(2015年11月)【マンスリー】/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

先月のマーケットの振り返り(2015年11月)【マンスリー】

2015年12月1日

1.概観

トピックス 主要国の株式市場は、8月の世界同時株安(「チャイナ・ショック」)からの回復傾向が持続。
金融政策の方向性の違いが意識され、月間で、米ドル高・米国債利回り上昇、ユーロ安・ドイツ国債利回り低下。
株式 ドイツの株式市場は、金融緩和期待を背景に上昇。日本は、世界経済の回復期待や企業業績の底堅さなどから上昇。中国は、政策期待から小幅に上昇。米国は、12月の利上げ開始観測が重石となる場面もありましたが、景気の底堅さを背景に若干上昇。
債券 米国の国債利回りは12月の利上げ開始が意識され、上昇。ドイツ国債の利回りは金融緩和期待から、低下。
為替 米ドルは、12月の米利上げ観測の強まりや欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が追加緩和に前向きな発言を繰り返したことなどから、円やユーロに対して上昇。ユーロは対円でも、前月末比で下落。
商品 原油価格は、米国の在庫増加による需給悪化懸念などから、一時1バレル40ドルを下回る場面も見られ、下落。

(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1)主要国の株式市場は、8月の世界同時株安(「チャイナ・ショック」)からの回復傾向が持続。

<現状>

8月の上海総合指数の急落をきっかけとした世界同時株安は、10月以降回復傾向となり、主要国の株式市場は11月も大きな混乱がなく乗り切りました。米国の「早ければ9月」と予想されていた利上げ観測が「年内」に延びたことや、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が追加緩和に前向きな発言を繰り返したことなどから、投資家のリスク回避姿勢が後退しました。中国で、追加金融緩和や公共投資拡大などの政策期待から中国株式市場が落ち着きを取り戻したことも、市場を下支えしました。パリ同時多発テロなどで地政学リスクが意識された場面もありましたが、影響は総じて限定的でした。

<見通し>

中国経済は減速しつつも、2020年まで年6.5%以上の成長率目標が掲げられたことで、景気の底割れは回避されると見込まれます。米国経済はサービス業を中心とした景気の緩やかな加速が見込まれ、欧州も緩やかな回復が持続する見通しです。日本では新興国経済の落ち着きから、生産や輸出が回復しそうです。米国では利上げペースは緩やかで、日欧では緩和的な金融政策の継続が景気を下支えすると見込まれます。世界経済の緩やかな回復を背景に、企業収益も来年に向けて改善が見込まれ、世界の主要株式市場は底堅い展開が期待されます。

(2)金融政策の方向性の違いが意識され、月間で、米ドル高・米国債利回り上昇、ユーロ安・ドイツ国債利回り低下。

<現状>

10月27日~28日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)や11月6日公表の米雇用統計を受け、12月の利上げの可能性が高まったことから、月前半に、米国債利回りは上昇しました。しかしその後、パリ同時多発テロなどによる地政学リスクの高まりから、投資家のリスク回避姿勢が強まり、利回りの上昇幅は縮小しました。他方欧州では、ドイツ国債は月前半は米国債につれ利回りが上昇しました。しかし、中旬以降、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が追加緩和に前向きな発言を繰り返したことなどから、ドイツ国債の利回りは低下しました。米欧の金融政策の方向性の違いが意識され、為替市場では、ユーロ安・米ドル高傾向が強まっています。また、日銀は量的緩和を継続し、円に対しても米ドルは上昇しました。

<見通し>

12月3日に開催予定のECB理事会では、現行の量的緩和の規模拡大や期限延長に加え、中央銀行の市中銀行に対するマイナス金利のマイナス幅拡大が予想されています。12月15日~16日に開催されるFOMCでは、利上げの開始が見込まれます。欧米の金融政策の方向性が異なる展開が続くと見られ、債券市場では欧米での国債利回り格差の拡大や、為替市場では対米ドル、対円でのユーロ安が意識されると見込まれます。

3.景気動向

<現状>

米国は、7-9月期の実質GDP成長率が前期比年率+2.1%となり、在庫調整などの影響により前期の同+3.9%から減速しました。
欧州は、7-9月期の実質GDP成長率が前期比+0.3%と前期から鈍化しましたが、消費が下支えとなり、緩やかな景気回復が持続しています。
日本は、7-9月期の実質GDP成長率が前期比年率▲0.8%と2四半期連続のマイナス成長となりました。
中国は、7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比+6.9%と前期から鈍化しました。消費は底堅いものの、生産や投資が下振れしました。
豪州は、4-6月期の実質GDP成長率は前期比+0.2%にとどまり、資源輸出と設備投資が低迷の主因でした。

<見通し>

米国は、良好な雇用環境を背景にサービス業が好調で、景気は年+2%台後半の成長に向けて緩やかな加速が見込まれます。
欧州は、欧州中央銀行(ECB)の金融緩和の強化が予想され、消費が主導する緩やかな景気回復が持続する見通しです。
日本は、消費の持ち直しは緩慢なものの、輸出や生産が底打ちし、景気の再浮揚が見込まれます。
中国は、年6.5%以上の成長率目標が掲げられ追加緩和や公共投資による下支えにより、景気下振れはいったん和らぐことが期待されます。
豪州は、過去10年の平均成長率(+3%前後)を下回りそうですが、物価が安定し、消費と住宅に支えられ、景気は緩やかに加速しそうです。

4.企業業績と株式

<現状>

米国の主要企業の7-9月期の増益率は前年同期比▲0.8%(トムソン・ロイター調べ、11月30日集計時点)と、マイナス幅は10月1日時点の予想から縮小しました。日本の主要企業(東証1部、3月期決算、除く金融)の7-9月期の経常利益は、前年同期比+2.4%程度の増益で、前期から減速する見込みです。

<見通し>

米国企業の予想増益率は、10-12月期にかけて引き続きマイナスが予想されますが、来年に向け回復が見込まれています。日本の主要企業の2015年度の経常利益は、景気の緩やかな改善や米国景気の回復などから、前年度比+9%台が見込まれます。ただし、日米ともに資源価格の下落や中国などの新興国経済減速による業績予想の下方修正が強まると、株式市場の変動が大きくなる可能性があります。株式市場は、世界的な景気見通しへの不透明感が和らぎ企業業績見通しへの信頼が高まるにつれ底堅い推移が期待されます。

5.金融政策

<現状>

10月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録で、大半のメンバーが12月の利上げに必要な経済面での条件が満たされる可能性が高いと予想しているとされ、利上げ開始の可能性が高まりました。欧州中央銀行(ECB)は月約600億ユーロの国債などを購入する量的金融緩和を継続しています。日銀は、マネタリーベースを年間約80兆円拡大させる強力な金融緩和を続けています。

<見通し>

12月のFOMCで利上げ開始が見込まれるものの、物価の落ち着きからその後の利上げペースは緩やかと見込まれます。ECBは、景気と物価の下振れから12月に現行の国債購入策の拡充やマイナスとなっている預金金利の一層の引き下げなどを議論する見込みです。日銀は、生産や輸出の回復が期待されることから、追加金融緩和には当面慎重と見られます。

6.債券

<現状>

米国債の利回りは小幅に上昇しました。月前半の上昇は、堅調な雇用環境などから12月の利上げ観測が高まったことが要因です。しかしその後、金融当局者の緩やかな利上げペースを支持する発言や、パリ同時多発テロなどによる地政学リスクの高まりによる投資家のリスク回避姿勢の強まりなどにより、利回りの上昇幅は縮小しました。ドイツ国債の利回りは、米雇用統計公表後に米国債の利回り上昇に連れて上昇する場面も見られましたが、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が繰り返し12月の追加緩和を示唆したことを受けて、低下しました。

<見通し>

米国債の利回りは、物価見通しの落ち着きから、利上げ開始後の上昇は緩やかにとどまると見込まれます。ドイツ国債の利回りは、投資家の格付けの高い国債への需要が底堅いことや、ECBの追加緩和が見込まれることから、低位での推移が予想されます。米国など主要国の社債市場は、企業の底堅い業績や慎重な財務運営などを背景に、社債へのニーズは底堅く、社債スプレッドは比較的安定的に推移すると見込まれます。

7.為替

<現状>

米ドルは、12月の利上げ観測の強まりから、対円や対ユーロで上昇しました。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が追加緩和に前向きな発言を繰り返したことから、特にユーロに対して大きく上昇しました。13日のパリ同時多発テロや24日のトルコによるロシア機撃墜などの地政学リスクの高まりで、円が対ドルで一時的に買われる場面もありましたが、影響は限定的でした。

<見通し>

米ドル円相場は、日米の金融政策の方向性が異なることから、引き続き米ドル高圧力がかかりやすい環境です。しかし、米国の利上げペースは緩やかと見られることや、日銀は追加緩和に慎重な姿勢であることから、大きな方向感は出ないと見込まれます。ただし、中国などの新興国経済の減速懸念の高まりや原油・資源価格の下落などにより、リスク回避の動きが強まる場合には、円高が進む場面も想定されます。
ユーロ円相場は、ECBが金融緩和に積極的と見られ、ユーロ安方向の動きが予想されます。

8.リート

<現状>

リート市場は小幅に下落しました。月前半は、12月の米国の利上げ観測の高まりにより、主要株式市場が下落したことに加え、米国債利回りの上昇が相場の下落要因となりました。しかしその後、金融当局者の緩やかな利上げペースを支持する発言などにより、米国債利回りの上昇幅は縮小し、リート相場の下落も縮小しました。円ベースでは、米ドルが円に対して上昇したため、若干のプラスとなりました。

<見通し>

米国の物価見通しが落ち着いていることから、米国の利上げペースは緩やかにとどまり、金利が急上昇するリスクは限定的とみられます。世界的に不動産市場の回復が見込まれることに加え、資金調達コスト抑制などリート市場にとっての好環境が意識されることなどから、リート市場は底堅い展開が予想されます。

9.まとめ

株式 株式市場は、世界的な景気見通しへの不透明感が和らぎ企業業績見通しへの信頼が高まるにつれ底堅い推移が期待されます。ただし、日米ともに資源価格の下落や中国などの新興国経済減速による業績予想の下方修正が強まると、株式市場の変動が大きくなる可能性があります。
債券 米国債の利回りは、物価見通しの落ち着きから、利上げ開始後の上昇は緩やかにとどまると見込まれます。
ドイツ国債の利回りは、投資家の格付けの高い国債への需要が底堅いことや、ECBの追加緩和が見込まれることから、低位での推移が予想されます。
米国など主要国の社債市場は、企業の底堅い業績や慎重な財務運営などを背景に、社債へのニーズは底堅く、社債スプレッドは比較的安定的に推移すると見込まれます。
為替 ドル円相場は、日米の金融政策の方向性が異なることから、引き続き米ドル高圧力がかかりやすい環境です。しかし、米国の利上げペースは緩やかと見られることや、日銀は追加緩和に慎重な姿勢であることから、大きな方向感は出ないと見込まれます。ただし、中国などの新興国経済の減速懸念の高まりや原油・資源価格の下落などにより、リスク回避の動きが強まる場合には、円高が進む場面も想定されます。
ユーロ円相場は、ECBが金融緩和に積極的と見られ、ユーロ安方向の動きが予想されます。
リート 米国の物価見通しが落ち着いていることから、米国の利上げペースは緩やかにとどまり、金利が急上昇するリスクは限定的とみられます。世界的に不動産市場の回復が見込まれることに加え、資金調達コスト抑制などリート市場にとっての好環境が意識されることなどから、リート市場は底堅い展開が予想されます。

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。