先月のマーケットの振り返り(2015年9月)【マンスリー】
2015年10月1日
1.概観
トピックス |
主要国の株式市場は、資源価格の下落や新興国経済の減速観測などにより、下落しました。 主要国の製造業企業景況感は、新興国経済の減速観測や世界的な株安を背景に、総じて悪化しました。 |
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株式 | 日米欧の株式市場は、中国はじめ新興国経済の減速観測や資源価格の下落による関連企業の信用懸念の高まりなどにより、下落しました。 |
債券 | 米国やドイツの国債利回りは、新興国経済の減速観測などから投資家のリスク回避の動きが強まり、低下しました。 |
為替 | 米ドルは、米国の利上げ見送りになどにより、対円、対ユーロで下落しました。ユーロは金融緩和強化の観測から、対円で下落しました。 |
商品 | 原油価格は、米国の在庫水準や生産動向などを材料に1バレル40ドル台での動きのなか、供給過剰懸念から下落しました。 |

(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
2.トピックス
(1)主要国の株式市場は、資源価格の下落や新興国経済の減速観測などにより、下落しました。
<現状>
8月中旬以降いったん落ち着きかけた世界の株式市場は、9月に入り、資源価格の下落や新興国経済の減速観測などにより、再び下落しました。また、排ガス不正問題に関連して自動車関連銘柄が下落したことや、資源価格の下落により資源関連企業の信用不安が懸念されたことも影響しました。
<見通し>
中国の景気は、景気対策の余地から大きな下振れは回避されそうです。米国は、利上げが市場への影響を見極めながら行われる見通しで、流動性の縮小もまだ先と考えられます。欧州は、個別企業の業況悪化や経営不安が全体に波及する可能性はいまのところ小さいと考えられます。ただし、これらの不透明要因が解消され、市場が安定するには少し時間がかかりそうです。日本では、政府の補正予算による景気対策や日銀の追加緩和、欧州では欧州中央銀行(ECB)の金融緩和強化への期待が高まっており、これらが、株価反転のきっかけとして期待されます。

(2)主要国の製造業企業景況感は、新興国経済の減速観測や世界的な株安を背景に、総じて悪化しました。
<現状>
中国の9月の財新製造業PMIは47.2に3カ月連続して低下しました。石油、鉄鋼、自動車などの生産調整などが続いている影響と見られます。米国やユーロ圏でも、製造業景況感は前月から悪化傾向となりました。資源価格の下落が関連企業の収益を圧迫し、生産活動の低下につながっていることが背景です。日本でも、世界主要国経済の下振れ懸念により、悪化しました。
<見通し>
中国では、地方政府を中心に不動産投資などの抑制が続き、素材などの製造業を中心とした生産調整が当面続くと見られます。資源国、新興国では、中国の資源需要の減少を受けた資源輸出の低迷から、経済の下振れが懸念されます。ただし、中国では追加金融緩和と財政支出拡大の余地があり、景気の腰折れは回避されそうです。日欧でも金融緩和強化などの政策対応による景気サポートが期待されます。米国では雇用の順調な拡大から内需が底堅く推移しています。こうしたことから、世界的な景気回復への確信が増すにつれ、主要国の景況感も上向くことが期待されます。

3.景気動向
<現状>
米国は、4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率+3.9%となり、1-3月期の同+0.6%から回復しています。
欧州は、4-6月期の実質GDP成長率が前期比+0.4%となり、輸出や消費が主導し、緩やかな景気回復が持続しています。
日本は、4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率▲1.2%と消費や輸出が低迷し、マイナス成長となりました。
中国は、4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+7.0%と1-3月期比横ばいで、企業景況感が低下し、景気下振れ懸念が強まりました。
豪州は、 4-6月期の実質GDP成長率は前期比+0.2%にとどまり、資源輸出と設備投資が低迷の主因でした。
<見通し>
米国は、経済指標の下振れが一巡し、年+3%程度の成長が見込まれます。
欧州は、欧州中央銀行(ECB)の金融緩和の強化が予想され、輸出が主導する、緩やかな景気回復が持続する見通しです。
日本は、補正予算や追加金融緩和などが期待され、景気の再浮揚が見込まれます。
中国は、追加の金融緩和や財政出動などの景気対策が発動されれば、景気の下振れ懸念はいったんは和らぐと期待されます。
豪州は、過去10年の平均成長率(+3%前後)を下回りそうですが、物価が安定し、消費と住宅が景気を下支えすると予想されます。

4.企業業績と株式
<現状>
米国の主要企業の4-6月期の増益率は前年同期比+1.3%(トムソン・ロイター調べ、9月30日集計時点で約99%)と、当初の減益予想が上方修正され小幅ながら増益となりました。日本の主要企業(東証1部、3月期決算、除く金融)の2015年4-6月期は、経常利益が前年同期比約3割の増益で幅広い業種で前年比大きく改善しました。
<見通し>
米国企業の予想増益率は、7-9月期にはいったん落ち込むものの、年後半に向けて改善し、「エネルギー」セクターの大幅な減益を除けば概ね堅調な業績が見込まれています。日本の主要企業の2015年度の経常利益は、景気の緩やかな改善、円安傾向、米国景気の回復などから、前年度比+10%程度が見込まれます。ただし、日米ともに足元の資源価格の下落や中国などの新興国経済減速による業績予想の下方修正が強まると、株式市場の変動が大きくなる可能性があります。
株式市場は、世界的な景気見通しへの不透明感が和らぎ企業業績見通しへの信頼が高まるにつれ、企業業績拡大を背景とした底堅い推移が期待されます。

5.金融政策
<現状>
米連邦準備制度理事会(FRB)は、9月の利上げを見送り、雇用や経済指標の改善を確認して年内に利上げを開始するタイミングを慎重に見極めています。欧州中央銀行(ECB)は月約600億ユーロの国債などを購入する量的金融緩和を継続しています。日銀は、マネタリーベースを年間約80兆円拡大させる強力な金融緩和を続けています。
<見通し>
米国の利上げは年内開始が見込まれるものの、利上げペースは緩やかと見込まれます。ECBは、9月の消費者物価上昇率が前年同月比▲0.1%とマイナスとなったこともあり、現行の国債購入と長期リファイナンスオペ(TLTRO)による金融緩和がさらに強化されることにより、景気や物価をサポートすることが見込まれます。日銀は、新興国経済の下振れなどから足元の景気の勢いが弱まっていることから、追加金融緩和の可能性が高まっています。米国と日欧での金融政策の方向性の違いが引き続き意識される展開が続く見込みです。

6.債券
<現状>
米国債の利回りは低下しました。米国の9月の利上げが見送られたことや、主要国の景況感も悪化傾向を示したことなどからリスク回避の動きが強まったことが要因です。ドイツ国債の利回りは、景気や物価の下振れ懸念から欧州中央銀行(ECB)による金融緩和強化の観測が高まり、低下しました。米国の社債スプレッド(国債との利回り差)は、リスク回避の動きの強まりから拡大しました。
<見通し>
米国債利回りは年内の利上げ開始が意識され緩やかに上昇する展開が見込まれます。しかし、米国の物価見通しの落ち着きから、国債利回りの上昇は緩やかにとどまると予想されます。ドイツ国債の利回りは、投資家の格付けの高い国債への需要が底堅いことや、ECBの金融緩和強化が見込まれ、低位での推移が予想されます。米国など主要国の社債市場は、不安定な金融市場の影響を受けるものの、総じて企業の底堅い業績や慎重な財務運営などを背景に、利回りの上昇は限定的となり、その結果、社債スプレッドは比較的安定的に推移すると見込まれます。

7.為替
<現状>
米ドルは、比較的狭いレンジでの動きのなか、対円で下落しました。米国の9月利上げの見送りに加え、新興国経済の減速や主要国の景況感悪化によりリスク回避の動きが強まったことが要因です。ユーロは、欧州中央銀行(ECB)の金融緩和強化の観測が強まり、米ドルや円に対して下落しました。
<見通し>
米ドル円相場は、日米の金融政策の方向性の違いが引き続き意識され、円が下落しやすい環境が継続する見込みです。ただし、中国などの新興国経済の減速懸念の高まりや原油・資源価格の下落などにより、リスク回避の動きが強まる場合には、円高が進む場面も想定されます。ユーロ円相場は、日欧ともに金融緩和の方向にあることから、方向感が出にくいと見込まれます。

8.リート
<現状>
リート市場は上昇しました。米国債の利回りが低下し、リートの相対的な利回りの高さが意識されました。米ドルは円に対して下落したことから、円ベースのリート指数は現地通貨ベースを下回りました。
<見通し>
米国の物価見通しが落ち着いていることから、米国の利上げペースは緩やかにとどまり、金利が急上昇するリスクは限定的とみられます。世界的に不動産市場の回復が見込まれることから、資金調達コスト抑制などリート市場にとっての好環境が意識され、リート市場は底堅い展開が予想されます。

9.まとめ
株式 | 日米ともに足元の資源価格の下落や中国などの新興国経済減速による業績予想の下方修正が強まると、株式市場の変動が大きくなる可能性があります。株式市場は、世界的な景気見通しへの不透明感が和らぎ企業業績見通しへの信頼が高まるにつれ、企業業績拡大を背景とした底堅い推移が期待されます。 |
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債券 |
米国債利回りは年内の利上げ開始が意識され緩やかに上昇する展開が見込まれます。しかし、米国の物価見通しの落ち着きから、国債利回りの上昇は緩やかにとどまると予想されます。 ドイツ国債の利回りは、投資家の格付けの高い国債への需要が底堅いことや、ECBの金融緩和強化が見込まれ、低位での推移が予想されます。 |
為替 |
米ドル円相場は、日米の金融政策の方向性の違いが引き続き意識され、円が下落しやすい環境が継続する見込みです。ただし、中国などの新興国経済の減速懸念の高まりや原油・資源価格の下落などにより、リスク回避の動きが強まる場合には、円高が進む場面も想定されます。 ユーロ円相場は、日欧ともに金融緩和の方向にあることから、方向感が出にくいと見込まれます。 |
リート |
米国の物価見通しが落ち着いていることから、米国の利上げペースは緩やかにとどまり、金利が急上昇するリスクは限定的とみられます。世界的に不動産市場の回復が見込まれることから、資金調達コスト抑制などリート市場にとっての好環境が意識され、リート市場は底堅い展開が予想されます。 ※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。 |