ホームマーケット週次・月次市場情報先月のマーケットの振り返り(2015年5月)【マンスリー】/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

先月のマーケットの振り返り(2015年5月)【マンスリー】

2015年6月1日

1.概観

トピックス 日経平均株価は、円安進行、好調な企業決算の発表などから、今年1月以降5カ月連続して上昇しました。
ドイツ国債の利回りは、月前半に行き過ぎた低下の巻き戻しにより急上昇した後低下し、落ち着きつつあります。
株式 米国市場は、堅調な企業決算や原油価格の落ち着きなどから、月半ばに最高値を更新しました。
日本市場は、円安進行や堅調な企業決算の発表などから上昇し、日経平均株価は20,000円台を回復しました。
債券 ドイツ国債の利回りは、4月までの低下傾向が上昇に転じ、米国債もそれに連れた動きとなりました。
為替 米ドルは、米国の住宅着工などの経済指標の強さから年内の利上げが意識され、円やユーロに対して上昇しました。
商品 原油価格は、米国の在庫減少から原油の供給過剰懸念が後退し、上昇しました。

(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1)日経平均株価は、円安進行、好調な企業決算の発表などから、今年1月以降5カ月連続して上昇しました。

<現状>

日経平均株価は、5月の月間上昇幅が1,043円と21年ぶりの大きさとなりました。円安進行と好調な企業業績が主な上昇要因です。米ドル円レートは28日、2007年に付けた円の安値を更新し124円46銭を付けました。日銀が強力に金融緩和を続ける一方で、米国の年内利上げ観測が強まったことから、日米の金融政策の方向性の違いがあらためて意識されました。日本企業が発表した決算は好調で、株主を重視する経営者の姿勢も好感されました。

<見通し>

米国では景気が一時的な弱まりから回復するにつれ、年内の利上げが意識される展開が見込まれます。従って、日米の金融政策の方向性の違いから、米ドル円レートは当面円安傾向が意識され、また、円安による企業業績の上方修正も予想されます。株価は、企業業績に沿った底堅い展開が期待されます。

(2)ドイツ国債の利回りは、月前半に行き過ぎた低下の巻き戻しにより急上昇した後低下し、落ち着きつつあります。

<現状>

ドイツ国債の利回りは、4月の消費者物価指数の発表を契機としたデフレ懸念の後退などから、これまでの行き過ぎた利回りの低下が巻き戻され、月前半に急上昇しました。その後、欧州中央銀行(ECB)高官による、2%近くとする物価目標の達成が見通せるまで量的緩和を実施するとの発言を受けて、ドイツ国債の利回りは低下しました。米国の国債利回りも、ドイツの国債利回りに連動した動きとなりました。

<見通し>

ECBが今年の3月以降進めている月600億ユーロの国債などの買取による量的金融緩和は、2016年9月まで継続される見込みです。ドイツの消費者物価は、原油安の落ち着きや、ユーロ安による食料品価格の上昇などから上向き始めたものの、ユーロ圏の景気回復は緩やかで、物価も落ち着いた動きにとどまると見込まれます。ドイツ国債の利回りは、当面変動が大きくなる場面も想定されますが、低位での落ち着きどころを探る展開が予想されます。米国債利回りは米国の利上げ観測が強まるにつれ、緩やかな上昇方向の動きとなる見込みです。

3.景気動向

<現状>

米国は、1-3月期の実質GDP成長率が前期比年率▲0.7%と速報値から下方修正されましたが、雇用の底堅さは持続しています。
欧州は、1-3月期の実質GDP成長率が前期比+0.4%と加速し、景気は緩やかな回復傾向となっています。
日本は、1-3月期の実質GDP成長率が前期比年率+2.4%と加速し、企業部門から家計への好循環の広がりが見られます。
中国は、1-3月期の実質GDP成長率が前年同期比+7.0%に鈍化し、政策金利の引き下げなどの景気テコ入れが図られています。
豪州は、住宅価格の上昇による資産効果などから消費が回復傾向にあり、輸出にも底入れ感が出ています。

<見通し>

米国は、経済指標の下振れは一時的と見られ、消費が底堅く推移し、年+3%程度の成長が見込まれます。
欧州は、ECBの金融緩和により、輸出や個人消費の回復が期待され、緩やかな景気回復が持続する見通しです。
日本は、日銀の強力な金融緩和や所得増による消費の回復が期待され、景気は持ち直しが期待されます。
中国は、「新常態」を目指した経済構造改革の進展、追加金融緩和、財政支出などの景気対策などへの期待が高まっています。
豪州は、過去10年の平均成長率(+3%前後)を下回りそうですが、物価が安定し、消費と住宅が景気を下支えすると予想されます。

4.企業業績と株式

<現状>

主要米国企業の1-3月期の増益率は前年同期比+2.2%(5月29日付けのトムソン・ロイターの集計)と、前四半期の同+7.0%から鈍化しました。日本の主要企業(東証1部、3月期決算、除く金融)の2014年度は、経常利益が前年度比+2.8%程度の増益でした。

<見通し>

主要米国企業の4-6月期の予想増益率は前年同期比▲2.8%と低調ですが、年後半に向けて改善し、通年では+1.3%程度となっています。「エネルギー」セクターの大幅な減益を除けば概ね堅調な業績が見込まれています。日本の主要企業の2015年度の経常利益は、景気の緩やかな改善、円安傾向、米国景気の回復などから、前年度比+9%程度が見込まれます。日米ともに堅調な企業業績を背景に、株価は底堅く推移することが期待されます。 

5.金融政策

<現状>

FRBは、低金利政策を維持しつつ、年内の利上げ開始のタイミングを慎重に見極めています。ECBは月約600億ユーロの国債などを購入する量的金融緩和を継続しています。日銀は、マネタリーベースを年間約80兆円拡大させる強力な金融緩和を続けています。

<見通し>

米国の利上げペースは緩やかと見込まれます。ECBは消費者物価上昇率を2%近くとする物価目標の達成が見通せるまで、現行の国債購入と長期リファイナンスオペ(TLTRO)による金融緩和を継続し、必要に応じさらに強化するとしています。日銀は5月21日~22日の金融政策決定会合で景気見通しを小幅に上方修正し、現行の強力な金融緩和を当面維持する方針としました。米国と日欧での金融政策の方向性の違いが意識される展開が当面続く見込みです。

6.債券

<現状>

ドイツ国債の利回りは大きく上昇し、米国債利回りはそれに連動して上昇しました。欧州中央銀行(ECB)の国債購入による強力な量的緩和とデフレ懸念の強まりなどから、ドイツ国債利回りは4月中旬まで低下を続けていました。しかし、4月のドイツの消費者物価の上昇でデフレ懸念が後退すると利回りは上昇に転じ、米国債などに波及しました。日本では日銀の強力な金融緩和の継続を背景に、国債の利回りは低下しました。米国の社債スプレッド(国債との利回り差)は、ほぼ横ばいに推移しました。

<見通し>

ドイツ国債の利回りは、ECBの国債購入が物価見通しの達成が見通せるまで継続されるとされ、低位での落ち着きどころを探る展開が予想されます。米国債利回りは年内の利上げ開始が意識され緩やかに上昇する展開が見込まれます。しかし、米国の物価見通しの落ち着きから、国債利回りの上昇は緩やかにとどまると予想されます。米国など主要国の社債市場では、企業の底堅い業績や慎重な財務運営などを背景に、利回りの上昇は限定的となり、その結果、社債スプレッドの比較的安定的な推移が見込まれます。

7.為替

<現状>

米ドルは、対円で上昇し、28日に2007年に付けた円の安値を更新し124円46銭を付けました。米国の住宅着工件数や耐久財受注などの強めの経済指標公表で、米国の年内の利上げが意識され、主要通貨に対して上昇しました。ユーロは、対米ドルで金融政策の方向性の違いなどから下落しましたが、対円では、円の対米ドルでの下落の影響から、ユーロが上昇しました。

<見通し>

米ドル円相場は、日米の金融政策の方向性の違いが引き続き意識され、円が下落しやすい環境が継続する見込みです。ただし、急激な円安への警戒もあり、米ドルの上値は重くなると見られます。ユーロ円相場は、日欧ともに金融緩和強化の方向にあることから、方向感が出にくいと見込まれます。

8.リート

<現状>

リート市場は下落しました。主要国の国債利回りが上昇したことが影響しました。しかし、米ドルは円に対して上昇したことから、円ベースのリート指数は上昇しました。

<見通し>

米国の物価見通しが落ち着いていることから、FRBの利上げペースは緩やかにとどまり金利が急上昇するリスクは限定的とみられます。米国の1-3月期GDPはマイナス成長となりましたが、景気の下振れは一時的と見られ、4-6月期以降は回復しそうです。消費の底堅さから、経済は年後半に年+3%程度の成長に向かうと見られます。不動産市場の回復、資金調達コスト抑制などリート市場にとっての好環境は今後も続くことが期待され、リート市場は底堅い展開が予想されます。

9.まとめ

株式 米国1-3月期の実質GDPはマイナス成長に下方修正されましたが、景気の下振れは一時的で、年後半に+3%程度の成長に向かうと見られます。各国の企業業績は堅調に推移していること、世界的な低金利環境が続くと見られることなどに支えられ、先進国、新興国ともに、株価は緩やかな上昇基調が続くと期待されます。
債券 米国債利回りは米国の年内の利上げ開始が意識され緩やかに上昇する展開が見込まれます。しかし、米国の物価見通しの落ち着きから、国債利回りの上昇は緩やかにとどまると予想されます。
ドイツ国債の利回りは、ECBの国債購入が物価見通しの達成が見通せるまで継続されるとされ、低位での落ち着きどころを探る展開が予想されます。
為替 米ドル円相場は、日米の金融政策の方向性の違いが引き続き意識され、円が下落しやすい環境が継続する見込みです。ただし、急激な円安への警戒もあり、米ドルの上値は重くなると見られます。
ユーロ円相場は、日欧ともに金融緩和強化の方向にあることから、方向感が出にくいと見込まれます。
リート 国債利回りが急上昇するリスクは限定的で、リートの資金調達環境もしばらくは良好と見られます。また、世界景気の緩やかな回復を背景に、賃料など不動産市場は堅調に推移すると見られ、リート市場は底堅い推移が見込まれます。
※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。