ホームマーケット週次・月次市場情報先月のマーケットの振り返り(2015年3月)【マンスリー】/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

先月のマーケットの振り返り(2015年3月)【マンスリー】

2015年4月1日

1.概観

トピックス 欧州中央銀行(ECB)の国債購入開始や経済指標の上振れが好感され、欧州株式は上昇しました。
上海総合指数は、全国人民代表大会開催に際し政策期待が高まったことなどから大きく上昇しました。
株式 米国株は、米ドル高の企業業績への影響が懸念されたことなどから下落しました。
日本株は、企業業績の拡大期待などから上昇しました。
債券 国債利回りは、米国では景気の下振れ懸念の高まり、ドイツではECBの国債購入開始などにより、低下しました。
為替 米ドルは、金融政策の方向性の違いなどから円やユーロに対して上昇しました。
商品 原油価格は、米国や中東などにおける原油需給の悪化懸念から下落しました。

(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1)欧州中央銀行(ECB)の国債購入開始や経済指標の上振れが好感され、欧州株式は上昇しました。

<現状>

欧州の株式市場はECBの国債購入開始の公表以降堅調さが続いています。3月9日にECBが開始した国債購入が、公表されていた月600億ユーロのペースで実行されていることが伝わり、ユーロ安による企業業績や景気回復への好影響が意識されたことが背景です。ギリシャ支援を巡る協議が徐々に進展していることから、ユーロ圏離脱などの事態は避けられそうとの見通しも株式市場を支えました。

<見通し>

ECBは必要に応じ金融緩和を強化する姿勢を見せていることや、ドイツの輸出や景況感が上向いていることから、企業業績の拡大に沿った株式市場の展開が続くと見込まれます。ギリシャはIMFへの返済を予定通り行っていることから、資金繰りは次第に厳しさを増しており、欧州連合(EU)などとの協議の難航は引き続き市場の不安定要因と見られます。また、中東やロシアなどの地政学リスクも、市場の不安定要因として引き続き注意が必要です。

(2)上海総合指数は、全国人民代表大会開催に際し政策期待が高まったことなどから大きく上昇しました。

<現状>

中国では、3月5日の全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)開催から月末まで、約14%上昇しました。全人代では2015年の経済成長率目標は「7%前後」と引き下げられたものの、構造改革と安定成長の両立する新常態を目指す方針が正式に決定されました。投資や消費は減速するものの、積極的な財政政策や緩和的な金融政策が示され、政策期待から株式市場は大きく上昇しました。

<見通し>

全人代以降、経済構造改革を進める政府方針が明確に示され、成長政策への期待も高まっています。これまでの労働集約的な製造業から、ITや先端技術を活用した付加価値の高い製造業への転換を狙う「メードインチャイナ2025」による企業の成長力を高める戦略や自由貿易区の創設、現代版シルクロード(一帯一路)の構築やアジアインフラ投資銀行(AIIB)創設をにらんだインフラ拡充策が今後打ち出されると見られます。株式市場は引き続きこれらを好感しそうです。ただし、上昇ペースが速かったことから短期的には高値警戒感が強まることも想定されます。

3.景気動向

<現状>

米国は、生産関連の指標が在庫調整から弱めのものが多くなっていますが、雇用環境が改善し、景気の拡大が続いています。
欧州は、金融緩和を背景としたユーロ安による輸出の回復にけん引され、景気は緩やかな回復傾向となっています。
日本は、海外景気の緩やかな回復から輸出が回復傾向にあり、企業部門の好調さから所得が増加する兆しが出てきています。
中国は、消費や投資が減速し、生産も弱めで、3月は利下げや不動産市場のテコ入れ策が公表されました。
豪州は、利下げを好感して消費者信頼感指数が上昇傾向にあり、物価も低下基調で、景気は底堅く推移しています。

<見通し>

米国は、雇用の回復やガソリン価格下落などにより消費が底堅く推移し、年+3%程度の成長が見込まれます。
欧州は、ECBの金融緩和により、ユーロ安による輸出回復が期待され、緩やかながらも景気回復が持続する見通しです。
日本は、日銀の強力な金融緩和や所得増による消費の回復が期待され、景気は持ち直しが期待されます。
中国は、新常態を目指す政府方針が決定し、経済構造改革の進展や景気対策などへの期待が高まっています。
豪州は、過去10年の平均成長率(+3%前後)を下回りそうですが、物価が安定し消費は底堅いと予想されます。

4.企業業績と株式

<現状>

主要米国企業の2015年1-3月期の増益率は前年同期比▲2.8%(3月30日付けのトムソン・ロイターの集計に基づく)と、前四半期の同+7.0%から鈍化する見込みです。日本の主要企業(東証1部、3月期決算、除く金融)の2014年度予想は、経常利益が前年度比+7.8%程度の増益となる見込みです。

<見通し>

主要米国企業の2015年4-6月期の予想増益率は前年同期比▲0.3%と低調ですが、後半に向けて改善し、通年では+1.8%程度と「エネルギー」セクターの大幅な減益を除けば概ね堅調な業績が見込まれています。日本の主要企業の2015年度の経常利益は、景気の緩やかな改善、円安傾向、米国景気の回復などから、前年度比+17%程度に達する見込みです。日米ともに堅調な企業業績を背景に、株価は底堅く推移することが見込まれます。 

5.金融政策

<現状>

FRBは、低金利政策を当面継続する考えです。ECBは月600億ユーロペースで国債などを購入する量的金融緩和を開始しました。日銀は、マネタリーベースを年間約80兆円拡大させる強力な金融緩和を続けています。

<見通し>

米国の金利先物などから見ると、今年後半から利上げが開始され、緩やかな利上げペースが見込まれます。ECBは消費者物価上昇率を2%近くとする物価目標の達成のために、現行の国債購入と長期リファイナンスオペ(TLTRO)を継続し、必要に応じさらに強化するとしています。日銀は2%の物価目標達成のため、現行の強力な金融緩和を当面維持すると予想されますが、追加金融緩和の可能性は後退しています。

6.債券

<現状>

米国では、早期利上げ観測の後退や投資家のリスク回避の強まりなどから国債利回りは低下しました。欧州では、ECBによる国債購入の開始などから、国債の利回りは低下しました。日本では日銀の追加金融緩和期待の後退から、国債の利回りは上昇しました。米国の社債スプレッド(国債との利回り差)は、若干拡大しました。

<見通し>

米国では今年後半の利上げ開始をにらんで、米国国債などの利回りには上昇圧力がかかるとみられます。ただし、物価上昇率が低位にあることなどから、利上げ開始後の上昇ペースは緩やかにとどまりそうです。日欧の国債利回りは、強力な量的金融緩和が継続し、上昇しにくいと見込まれます。米国など主要国の社債市場では、企業の底堅い業績や慎重な財務運営などを背景に、利回りの上昇は限定的となる見込みです。その結果、社債スプレッドは比較的安定的に推移すると見られます。

7.為替

<現状>

米ドルは、米国と日欧の金融政策の違いから円やユーロに対して上昇しました。ユーロは、ECBの国債購入などによる強力な量的金融緩和から、円や米ドルに対して下落しました。

<見通し>

米ドル円相場は、日米の金融政策の方向性の違いが引き続き意識され、円が下落しやすい環境が継続する見込みです。ただし、120円以上の水準では、上値が重くなると見られます。ユーロ円相場は、日欧ともに金融緩和強化の方向にあることから、方向感が出にくいと見込まれます。

8.リート

<現状>

リート市場は小幅に下落しました。中東情勢の緊迫化などからリスク回避の動きが強まり、リート市場は下落しました。また、米ドルが円に対して上昇したことなどから、円ベースでの下落は米ドルベースよりも小幅となりました。

<見通し>

FRBは今年後半に慎重に利上げを開始すると見込まれますが、その後の利上げペースは緩やかにとどまり金利が急上昇するリスクは限定的とみられます。米国は雇用環境の改善から景気も底堅い展開が見込まれ、不動産市場の回復、資金調達コスト抑制などリート市場にとっての好環境は今後も続くことが期待されます。

9.まとめ

株式 米国を中心に先進国景気は緩やかな回復が見込まれること、各国の企業業績が堅調に推移していること、世界的な低金利環境が続くと見られることなどに支えられ、先進国・新興国ともに、株価は緩やかな上昇基調が続くと思われます。
債券 米国では景気回復や雇用環境の改善が進み、今年後半の利上げ開始が見込まれます。ただし、利上げペースは緩やかで、FRBは金利を当面低めに維持すると見られること、ECBは物価見通しの達成のためには金融緩和の強化も予想されることなどから、主要国の国債利回りの上昇は緩やかと思われます。
為替 米ドル円相場は、米国の利上げ観測、日銀の強力な金融緩和の維持を背景に、円安・米ドル高圧力が続く見込みです。
ユーロ円相場は、日欧ともに金融緩和強化の方向にあることから、方向感が出にくいと見込まれます。
リート 国債利回りが急上昇するリスクは限定的で、リートの資金調達環境もしばらくは良好と見られます。また、世界景気の緩やかな回復を背景に、賃料など不動産市場は堅調に推移すると見られ、リート市場は底堅い推移が見込まれます。
※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。