先月のマーケットの振り返り(2015年2月)【マンスリー】
2015年3月2日
1.概観
トピックス |
日米欧の株価は、企業業績の拡大期待、低金利環境の継続、景気の回復傾向から堅調に上昇しました。 ギリシャは、欧州連合(EU)と、同国支援策の協議を6月末まで延長することで合意しました。 |
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株式 |
米国株は、企業業績の底堅さ、低金利環境の継続観測から月後半に史上最高値を更新しました。 日本株は、欧米株の上昇、好調な企業業績、景気回復を示す経済指標などから約15年ぶりの高値となりました。 |
債券 | リスク回避の動きが後退し、日米欧の国債利回りは上昇しました。 |
為替 | 米ドルは、米国経済の堅調さなどから円に対して上昇しました。 |
商品 | 原油価格は、米国の掘削設備の稼働数減少により需給が緩和する懸念が後退し上昇しました。 |
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
2.トピックス
(1)日米欧の株価は、企業業績の拡大期待、低金利環境の継続、景気の回復傾向から堅調に上昇しました。
<現状>
2月25日に米国NYダウが、27日に欧州ユーロストックスがそれぞれ史上最高値を更新しました。また日経平均株価は約15年ぶりの高値に達しました。いずれの市場も企業業績の堅調さ、景気の回復、緩和的な金融環境の継続観測が株価上昇の背景です。原油安による企業のコスト軽減や家計の購買力は向上、インフレの抑制傾向なども株価を支えていると見られます。
<見通し>
米国経済は年率3%程度の成長が見込まれます。日本や欧州は、好調な米国向けの輸出が経済をけん引し、原油安や量的金融緩和が引き続き景気を後押しすると予想されます。景気拡大を背景に、日米欧の主要企業の業績は2015年も引き続き底堅く、株価を下支える見込みです。低金利環境の継続観測も、リスク選好の動きを後押しすることが期待されます。
(2)ギリシャは、欧州連合(EU)と、同国支援策の協議を6月末まで延長することで合意しました。
<現状>
反財政緊縮を掲げるギリシャと、欧州連合(EU)などとのギリシャ支援を巡る交渉は、交渉期限を6月末に延長することで合意に至りました。ギリシャの銀行から預金流出が止まらず、財政破たんやユーロ圏からの離脱の憶測が強まる局面もありましたが、最終的にはギリシャが大きく譲歩しました。2月のギリシャの株価(アテネ総合指数)は前月末比約22%上昇、ギリシャ10年国債の利回りは9.4%と前月末から低下しました。
<見通し>
ギリシャの銀行の資金繰りは、欧州中央銀行(ECB)の緊急流動性支援(ELA)に大きく依存する状況が続いています。今年3月中旬に、国際通貨基金(IMF)への約15億ユーロの債務返済が近づいており、ギリシャ政府の対応次第によっては、再び金融不安が再燃する可能性があります。4月末を期限にEUなどは支援延長後の具体的なギリシャの改革案を承認するスケジュールとなっています。ギリシャは反緊縮財政の方針を撤回すれば国内世論の反発を招く可能性がある一方、EUとしてもギリシャのユーロ離脱は回避したく、双方の歩み寄りによって、欧州全体が前回のように大きな危機に巻き込まれる可能性は限定的と見られています。
3.景気動向
<現状>
米国は、雇用が改善し、住宅市場も持ち直し傾向にあり、景気の拡大が続いています。
欧州は、中核であるドイツの景気回復が強まり、ユーロ圏全体としても金融緩和などを背景に緩やかな景気回復が持続しています。
日本は、強力な金融緩和などから、10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.2%とプラスに転じ、生産も上向きとなっています。
中国は、消費や投資といった内需が減速し、2月は2回の金融緩和が決定され、景気のテコ入れが行なわれています。
豪州は、利下げを好感し消費者信頼感指数が上昇、物価も低下基調にあり、景気は底堅く推移しています。
<見通し>
米国は、雇用の回復やガソリン価格下落などにより消費が底堅く推移し、年+3%程度の成長が見込まれます。
欧州は、ECBの金融緩和により、ユーロ安による輸出回復が期待されるものの、景気回復は緩慢となる見込みです。
日本は、日銀の強力な金融緩和や来年度予算のスムーズな可決などによる財政刺激から、景気は再び持ち直すことが期待されます。
中国は、2015年の成長率目標は+7%前後と減速が見込まれることから、景気対策などへの期待が高まっています。
豪州は、資源価格の下落により、過去10年の平均成長率(+3%前後)を下回りそうですが、物価が安定し消費は底堅いと予想されます。
4.企業業績と株式
<現状>
主要米国企業の2015年1-3月期の増益率は前年同期比▲2.7%(2月27日付けのトムソン・ロイターの集計に基づく)と、前期の同+6.9%から鈍化する見込みです。日本の主要企業(東証1部、3月期決算、除く金融)の2014年度予想は、経常利益が前年度比+3.2%程度の増益となる見込みです。
<見通し>
主要米国企業の2015年の予想増益率は前年比+1.7%と低調ですが、「エネルギー」セクターの大幅な減益を除けば概ね堅調な業績が見込まれています。日本の主要企業の2015年度の経常利益は、円安進展、米国景気の回復、消費税率引き上げ延期などから、2ケタに達する見込みです。日米ともに堅調な企業業績を背景に、株価は底堅く推移することが見込まれます。
5.金融政策
<現状>
FRBは、低金利政策を当面継続する考えです。ECBは毎月600億ユーロの国債などを購入する量的金融緩和を決定し、3月から国債購入を開始します。日銀は、マネタリーベースを年間約80兆円拡大させる強力な金融緩和を続けています。
<見通し>
米国の金利先物などから見ると、2015年半ばから後半の利上げ開始が織り込まれています。ECBは消費者物価上昇率を2%近くとする物価目標の達成のために、金融緩和をさらに進める可能性もあります。日銀は2%の物価目標達成のため、現行の強力な金融緩和を当面維持すると予想されますが、追加金融緩和の可能性は幾分後退しました。
6.債券
<現状>
米国では、投資家のリスク回避の後退や年後半の利上げ開始観測などから国債利回りは上昇しました。欧州では、ギリシャへの支援を協議する期限が延長されたことなどから、投資家の不安心理が後退し、国債の利回りは上昇しました。日本では日銀の追加金融緩和期待の後退から、国債の利回りは上昇しました。米国の社債スプレッド(国債との利回り差)は、やや縮小しました。
<見通し>
米国では今年半ば以降の利上げ開始をにらんで、米国国債などの利回りには上昇圧力がかかるとみられますが、物価上昇率が低位にあることなどから利回りの上昇は緩やかになるとみられます。日欧の国債の利回りは、強力な量的金融緩和が推し進められ、上昇しにくいと見込まれます。米国など主要国の社債市場では、企業の底堅い業績や慎重な財務運営などを背景に、利回りは低位で安定する見込みです。その結果、社債スプレッドは比較的底堅く推移すると思われます。
7.為替
<現状>
米ドルは米国経済の堅調さなどから、円やユーロに対して上昇しました。ユーロは、ギリシャ問題に対する不安がいったん後退したことなどから、円に対して上昇しました。
<見通し>
米ドル円相場は、米国経済の堅調さや日米の金融政策の方向性の違いから、円が下落しやすい環境が継続する見込みです。日本では足元の原油安から物価見通しが下振れし、日銀の強力な金融緩和の継続が予想され円の下落観測は根強く残る見込みです。ユーロ円相場は、日欧ともに金融緩和強化の方向にあることから、方向感が出にくいと見込まれます。
8.リート
<現状>
リート市場は下落しました。米国などの主要国では低金利環境が長期化するとの観測は根強かったものの、国債利回りが上昇したことから、リート市場は下落しました。米ドルが円に対して上昇したことなどから、円ベースでの下落は小幅となりました。
<見通し>
FRBは今年半ばから後半にかけて慎重に利上げを開始すると見込まれますが、低金利政策を維持する見込みであり金利が急上昇するリスクは限定的とみられます。米国は雇用環境の改善から景気も底堅い展開が見込まれ、不動産市場の回復、資金調達コストの抑制などのリート市場にとっての好環境は今後も続くと期待されます。
9.まとめ
株式 | 米国を中心に先進国景気は緩やかな回復が見込まれること、各国の企業業績が堅調に推移していること、世界的な低金利環境が続くと見られることなどに支えられ、先進国・新興国ともに、株価は緩やかな上昇基調が続くと思われます。 |
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債券 | 米国では景気回復や雇用環境の改善が進み、今年半ばから後半の利上げ開始が見込まれます。ただし、FRBは金利を当面低めに維持すると見られること、ECBは物価見通しの達成のためには金融緩和の強化も予想されることなどから、主要国の国債利回りの上昇は緩やかと思われます。 |
為替 |
米ドル円相場は、米国の利上げ観測期待、日銀の強力な金融緩和の維持を背景に、円安・米ドル高圧力が続く見込みです。 ユーロ円相場は、日欧ともに金融緩和強化の方向にあることから、方向感が出にくいと見込まれます。 |
リート | 国債利回りが急上昇するリスクは限定的で、リートの資金調達環境もしばらくは良好と見られます。また、世界景気の緩やかな回復を背景に、賃料など不動産市場は堅調に推移すると見られ、リート市場は底堅い推移が見込まれます。 |
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※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。 |