先月のマーケットの振り返り(2015年1月)【マンスリー】
2015年2月2日
1.概観
トピックス |
ユーロは、国債購入策の開始とギリシャ問題などから、米ドルなどの主要通貨に対して下落。 米国の主要企業の業績では、「エネルギー」セクター以外の2015年通年の見通しは概ね堅調。 |
---|---|
株式 |
米国株は、米ドル高などによる企業業績の悪化懸念から、下落しました。 日本株は、好調な企業業績や経済指標の改善を好感し、上昇しました。 |
債券 | ECBが国債購入に踏み切ったことなどから、日米欧の国債利回りは低下しました。 |
為替 | 米ドルは、リスク回避的な動きが強まり、円に対して下落しました。 |
商品 | 原油価格は、需給がさらに緩和する懸念が強まり、下落しました。 |
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
2.トピックス
(1)ユーロは、国債購入策の開始とギリシャ問題などから、米ドルなどの主要通貨に対して下落。
<現状>
ユーロは主要通貨に対して大きく下落しました。欧州中央銀行(ECB)が2015年3月より月600億ユーロの国債などを購入する量的金融緩和政策に踏み切ったことと、ギリシャで反財政緊縮を掲げる政権が誕生し、ギリシャ問題が再燃する可能性が高まったことが主な要因です。米国は利上げ方向にあり、米欧での金融政策の方向性が違うことも、米ドルに対するユーロ安に拍車をかけました。
<見通し>
ECBは物価目標の達成のために、金融緩和をさらに強化することも想定されます。加えて、ギリシャの新政権は、ユーロ圏残留の方針ではあるものの、債務の元本削減を求めており、EUなどとの交渉は難航が予想されます。米国は、利上げ開始が次第に意識される展開が予想されます。欧州の景気低迷などによる金融緩和の強化や政治的混乱の可能性、欧米の金融政策の方向性の違いから、ユーロは、米ドルなどの主要通貨に対して下落基調での推移が続くと見込まれます。
(2)米国の主要企業の業績では株式市場では、「エネルギー」セクター以外の2015年通年の見通しは概ね堅調。
<現状>
1月30日の原油価格は1バレル48.24米ドルと前月末比▲9.4%下落しました。原油安を受けて、S&P500種株価指数の「エネルギー」セクターは同▲4.9%下落し、「金融」セクターの同▲7.0%に次ぎ、市場の下落要因となりました。1月30日のトムソン・ロイター社の集計では、「エネルギー」セクターの2015年1-3月期の増益率は▲58.6%と全体(同▲0.5%)の増益率が大きく低下する主因となりました。
<見通し>
原油価格は底値を探る動きが当面続きそうですが、米国のシェールオイル生産の減少などにより、徐々に落ち着く見込みです。米国企業の「エネルギー」セクターの増益率は、2015年通年では▲45.8%と引き続き重石となる見込みですが、「エネルギー」以外のセクターは概ね好調で、全体では通年で+4.1%が見込まれています。原油安の消費などへの好影響も時間をかけて織り込まれると見られ、中長期的な業績見通しの改善が見込まれます。
3.景気動向
<現状>
米国は、雇用が改善し、住宅市場も持ち直し傾向にあり、景気の拡大が続いています。
欧州は、景気の回復が脆弱で、デフレ懸念の強まりから、ECBは国債購入に踏み切りました。
日本は、消費税増税後の消費マインドの回復が緩慢で、7-9月期は2四半期連続のマイナス成長となりました。
中国は、消費や投資といった内需が減速し、景気テコ入れのため政策金利が引き下げられました。
豪州は、低金利から雇用や住宅市場などが堅調で、物価も落ち着いており、底堅く推移しています。
<見通し>
米国は、雇用情勢の堅調さに加え、ガソリン価格下落による個人消費の回復から、年+3%程度の成長が見込まれます。
欧州は、ECBの金融緩和により、ユーロ安による輸出回復が期待されるものの、景気回復は緩慢となる見込みです。
日本は、日銀の強力な金融緩和や歳出規模が約3.1兆円の補正予算などにより、景気は再び持ち直すことが期待されます。
中国は、来年度の成長率目標は+7%前後と減速が見込まれます。また、景気対策などへの期待が高まっています。
豪州は、資源価格の下落により、過去10年の平均成長率(+3%前後)を下回りそうですが、物価が安定し消費は底堅いと予想されます。
4.企業業績と株式
<現状>
主要米国企業の2015年1-3月期の増益率は、前年同期比▲0.5%(1月30日時点のトムソン・ロイターの集計に基づく)と、10-12月期の+5.1%から鈍化する見込みです。日本の主要企業(東証1部、3月期決算、除く金融)の2014年度予想は、経常利益が前年度比+8%程度の増益となる見込みです。
<見通し>
主要米国企業の2015年の予想増益率は+4.1%と回復する見通しです。「エネルギー」セクターの大幅な減益を除けば概ね堅調な業績が見込まれています。日本の主要企業の2015年度の経常利益は、円安進展、米国景気の回復、消費税率引き上げ延期などから、2ケタに達する見込みです。日米ともに堅調な企業業績を背景に、株価は底堅い推移が見込まれます。
5.金融政策
<現状>
FRBは、低金利政策を忍耐強く行う考えです。ECBは毎月600億ユーロの国債などを購入する量的金融緩和に踏み切りました。日銀は、マネタリーベースを年間約80兆円拡大させる強力な金融緩和を続けていますが、物価見通しを下方修正しました。
<見通し>
米国の金利先物などから見ると、2015年半ばから後半の利上げ開始が織り込まれています。ECBは消費者物価上昇率を2%近くとする物価目標の達成のために、金融緩和をさらに進める可能性もあります。日銀は、物価目標達成時期の後ろ倒しも予想され、追加金融緩和の可能性が高まっています。
6.債券
<現状>
米国では、FRBが利上げに慎重なスタンスを継続したことなどから国債利回りは低下しました。欧州では、ECBが国債などの購入による量的金融緩和に踏み切り、国債の利回りは低下しました。日本では強力な金融緩和が継続され、国債の利回りは低下しました。米国の社債スプレッド(国債との利回り差)は、やや拡大したものの安定的に推移しました。
<見通し>
米国では今年半ばから後半の利上げ開始をにらんで、米国国債などの利回りには上昇圧力がかかるとみられますが、利回りの上昇は緩やかになるとみられます。日欧の国債の利回りは、追加金融緩和の可能性から、上昇しにくいと見込まれます。米国など主要国の社債市場では、企業の底堅い業績や慎重な財務運営などを背景に、利回りは低位で安定する見込みです。その結果、社債スプレッドは比較的底堅く推移すると思われます。
7.為替
<現状>
米ドルは投資家のリスク回避の動きの強まりから、円に対して下落しました。ユーロは、ECBが国債などの購入による量的金融緩和に踏み切ったことやギリシャの政治不安などから、主要通貨に対して下落しました。
<見通し>
米ドル円相場は、米経済の堅調さや金融政策の方向性の違いから、円が下落しやすい環境が継続する見込みです。日本では足元の原油安から物価見通しが下振れし、日銀の追加金融緩和も予想され、円の下落観測は根強く残る見込みです。ユーロ円相場は、日欧ともに金融緩和強化の方向にあることから、小幅の値動きが見込まれます。
8.リート
<現状>
リート価格は上昇しました。米国などの主要国の国債利回りの低下や低金利環境が長期化するとの観測が強まり、リートに資金が流入しやすい環境が続きました。また、米ドルが円に対して下落したことなどから、円ベースでの上昇は小幅となりました。
<見通し>
FRBは今年後半にかけて慎重に利上げを開始すると見込まれますが、低金利政策を維持する見込みであり、金利が急上昇するリスクは限定的とみられます。米国経済は緩やかに改善する見通しで、不動産市場の回復、資金調達コストの抑制という双方の面で、リートには好環境が続くと期待されます。
9.まとめ
株式 | 米国を中心に先進国景気は緩やかな回復が見込まれること、各国の企業業績が堅調に推移していること、世界的な低金利環境が続くと見られることなどに支えられ、先進国・新興国ともに、株価は緩やかな上昇基調が続くと思われます。 |
---|---|
債券 | 米国では緩やかな景気回復や雇用環境の改善が進み、今年後半の利上げ開始が見込まれます。ただし、FRBは金利を当面低めに維持すると見られること、ECBは物価見通しの達成のためには金融緩和の強化も予想されることなどから、主要国の国債利回りの上昇は緩やかと思われます。 |
為替 |
米ドル円相場は、米国の利上げ観測、日銀の追加金融緩和への期待を背景に、円安・米ドル高圧力が続く見込みです。 ユーロ円相場は、日欧ともに金融緩和強化の方向にあることから、小幅の値動きが見込まれます。 |
リート | 国債利回りが急上昇するリスクは限定的で、リートの資金調達環境もしばらくは良好と見られます。また、世界景気の緩やかな回復を背景に、賃料など不動産市場は堅調に推移すると見られ、リート市場は底堅い推移が見込まれます。 |
※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。 |