先月のマーケットの振り返り(2014年12月)【マンスリー】
2015年1月5日
1.概観
トピックス |
原油安の明暗:先進国の株高基調・債券(国債)利回りの低位安定、資源国の株安・通貨安。 金融政策の方向性の違いから、米ドル高傾向。米国では今年半ば以降に利上げ、日欧では金融緩和強化見込み。 |
---|---|
株式 |
米国株は、原油価格の大幅な下落などから投資家のリスク回避的な動きが強まり、下落しました。 日本株は、欧米株式の下落などにより、リスク回避の動きが強まり、下落しました。 |
債券 | 日欧の追加金融緩和期待の強まりなどから、日米欧の国債利回りは低下しました。 |
為替 | 日銀の追加金融緩和の決定を受けた動きが継続し、円は米ドルに対して下落しました。 |
商品 | 原油価格はOPECの減産見送りによる供給過剰懸念が強まり、大きく下落しました。 |
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
2.トピックス
(1)原油安の明暗:先進国の株高基調・債券(国債)利回りの低位安定、資源国の株安・通貨安。
<現状>
2014年末の原油価格(NY先物)は2013年末のおよそ半値と、大きく下落しました。米国などエネルギーを多く消費する国では、企業や家計の受けるメリットへの期待から株価が上昇し、また期待インフレ率が抑制されて国債の利回り低下の一因となりました。一方、資源国の株式や通貨は下落し、投資家のリスク回避的な動きの拡大から、新興国国債やハイ・イールド債券などの格付けが低い債券の価格が下落しました。
<見通し>
原油需要が急速に上向くことは当面見通しにくく、OPEC加盟国はシェールオイルなどの非在来型原油の生産調整を求めていることから、原油の供給過剰感が当面継続する見込みです。足元ではシェールオイルの生産調整の動きが見え始めており、2015年中にも需給の緩みが解消に向かうと見られます。

(2)金融政策の方向性の違いから、米ドル高傾向。米国では今年半ば以降に利上げ、日欧では金融緩和強化見込み。
<現状>
米ドルは円やユーロに対して上昇しました。米国は量的金融緩和を終え、12月のFOMCでは低金利を忍耐強く維持しながら、利上げに向かう方針を示しました。ECBは12月の理事会で、1兆ユーロの金融緩和に向かう意図を明確にし、日銀は年間80兆円の金融緩和を継続しています。米国と日欧で金融政策の方向性が異なることが、これらの通貨に対する米ドルの上昇の大きな要因と見られます。
<見通し>
米国は経済や雇用環境の改善が見込まれ、2015年半ば以降に慎重に利上げすると見られます。一方、デフレ脱却を掲げる日銀やデフレ懸念が強まるユーロ圏は、金融緩和の強化に向かうと見込まれます。金融政策の方向性が違う状態が続くと見込まれ、米ドルは、円やユーロに対して底堅く推移するとみられます。

3.景気動向
<現状>
米国は、雇用環境が堅調で住宅市場も持ち直し傾向にあり、景気の改善が続いています。
欧州は、ドイツなどの企業景況感は改善を示していますが、原油安などから物価上昇率は低下し、デフレ懸念が強まっています。
日本は、消費税増税後の消費マインドの回復が緩慢で、7-9月期は2四半期連続のマイナス成長となりました。
中国は、消費や投資といった内需が減速し、政策金利を引き下げて景気をテコ入れする方針です。
豪州は、低金利から雇用や住宅市場などが堅調で、物価も落ち着いており、底堅く推移しています。
<見通し>
米国は、雇用情勢の堅調さに加え、住宅価格・株価の上昇、ガソリン価格下落により、個人消費が景気を支える見込みです。
欧州は、主要国ドイツなどの景気回復が緩慢で、ECBによる追加緩和の期待が高まっています。
日本は、日銀の強力な金融緩和や消費税増税先送りなどから、景気は再び持ち直すことが期待されます。
中国は、来年度の成長率目標は+7%前後と減速が見込まれます。また、小規模な景気対策などへの期待が高まっています。
豪州は、資源価格の下落により、過去10年の平均成長率(+3%前後)を下回りそうですが、物価が安定し内需は底堅いと予想されます。

4.企業業績と株式
<現状>
主要米国企業の10-12月期の増益率は、前年同期比+4.3%(12月31日時点のトムソン・ロイターの集計に基づく)と、7-9月期の+10.3%から鈍化すると見込まれています。日本の主要企業(東証1部、3月期決算、除く金融)の2014年度予想は、経常利益が前年比+9%程度の増益となっているようです。
<見通し>
主要米国企業の2015年の予想増益率は+8.1%と2014年の+7.5%から小幅に加速する見通しです。日本の主要企業の2015年度の経常利益は、円安進展、米国景気の回復、消費税率引き上げ延期などから、2ケタに達する見込みです。日米ともに堅調な企業業績を背景に、株価は底堅い推移が見込まれます。

5.金融政策
<現状>
FRBは、低金利政策を忍耐強く行う考えです。ECBは2015年1-3月期にこれまでの金融緩和を見直し、資産購入を拡大する方針です。日銀は、マネタリーベースを年間約80兆円拡大させる強力な金融緩和を続けています。
<見通し>
米国の金利先物などから見ると、2015年半ばから後半の利上げ開始が織り込まれています。日欧では、景気の低迷に加え、原油安による物価見通しの低下から、金融緩和拡大への期待が高まっています。ECBは資産購入対象を社債や国債に拡大すると見込まれます。日銀は、4月の物価見通しの下方修正が予想され、追加金融緩和の可能性が高まっています。

6.債券
<現状>
米国では、FRBが来年半ば以降に慎重に利上げするとみられるものの、当面は低金利政策を継続するとみられ、10年国債利回りは低下しました。欧州では、ECBが金融緩和を強化する観測が強まり、国債の利回りは低下しました。日本では強力な量的・質的緩和が継続され、国債の利回りは低下しました。米国の社債スプレッド(国債との利回り差)は、国債利回りの低下が大きかったため、拡大しました。
<見通し>
米国では来年半ば以降の利上げをにらんで、米国国債などの利回りには上昇圧力がかかるとみられますが、利回りの上昇は緩やかになるとみられます。日欧の国債の利回りは、原油安や追加金融緩和から、上昇しにくいと見込まれます。米国など主要国の社債市場では、企業の底堅い業績や慎重な財務運営などを背景に、利回りは低位で安定する見込みです。その結果、社債スプレッドは比較的底堅く推移すると思われます。

7.為替
<現状>
日銀の量的・質的金融緩和の決定以降、円に対して、米ドルやユーロなどの主要通貨の上昇が続いています。ユーロは、米ドルに対して大きく下落し、円に対しても下落しました。
<見通し>
米ドル円相場は、米経済の堅調さや金融政策の方向性の違いから、円が下落しやすい環境が継続する見込みです。足元の原油安から物価見通しが下振れし、日銀の追加金融緩和も予想され、円の下落観測は根強く続く見込みです。ユーロ円相場は、日欧ともに金融緩和強化の方向にあることから、小幅の値動きが見込まれます。

8.リート
<現状>
リート価格は上昇しました。米国などの主要国の国債利回りの低下や低金利環境が長期化するとの観測が強まり、リートに資金が流入しやすい環境が続きました。また、米ドルが円に対して上昇したことなどから、円ベースでは上昇が大きくなりました。
<見通し>
FRBは今年半ば以降に慎重に利上げすると見込まれますが、低金利環境を維持する見込みであり、金利が急上昇するリスクは限定的とみられます。米国経済は緩やかに改善する見通しで、世界景気の安定、資金調達コストの抑制という双方の面で、リートには好環境が続くと期待されます。不動産市場の回復もリート市場を後押しすると見られます。

9.まとめ
株式 | 米国を中心に先進国景気は緩やかな回復が見込まれること、各国の企業業績が堅調に推移していること、世界的な低金利環境が続くと見られることなどに支えられ、先進国・新興国ともに、株価は緩やかな上昇基調が続くと思われます。 |
---|---|
債券 | 米国の緩やかな景気回復や雇用環境の改善が進み、今年半ば以降の利上げが見込まれます。ただし、FRBは金利を当面低めに維持すると見られること、ECBが金融緩和を強化していることなどから、利回りの上昇は緩やかと思われます。 |
為替 |
米ドル円相場は、米国の利上げ観測、日銀の追加金融緩和への期待を背景に、円安・米ドル高圧力が続く見込みです。 ユーロ円相場は、日欧ともに金融緩和強化の方向にあることから、小幅の値動きが見込まれます。 |
リート |
国債利回りが急上昇するリスクは限定的で、リートの資金調達環境もしばらくは良好と見られます。また、世界景気の緩やかな回復を背景に、賃料など不動産市場は堅調に推移すると見られ、リート市場は底堅い推移が見込まれます。 ※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。 |