ホームマーケット週次・月次市場情報先月のマーケットの振り返り(2014年11月)【マンスリー】/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

先月のマーケットの振り返り(2014年11月)【マンスリー】

2014年12月1日

1.概観

トピックス 日銀による強力な金融緩和により、円はドルに対して下落、株価は上昇。
追加緩和期待の高まりから、日欧の株式相場が堅調。
株式 米国株は、堅調な経済指標や日銀や中国の金融緩和を好感し上昇しました。
日本株は、日銀の金融緩和の決定による円安進行や原油価格下落を受けて、上昇しました。
債券 日欧の追加金融緩和期待を受けて、日米欧の国債利回りは低下しました。
為替 日銀の金融緩和の決定を受けた動きが継続し、円はドルやユーロに対して大きく下落しました。
商品 原油価格はOPECの減産見送りによる供給過剰懸念が強まり、大きく下落しました。

(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1)日銀によるによる強力な金融緩和により、円はドルに対して下落、株価は上昇。

<現状>

10月31日の日銀による予想外の量的・質的金融緩和拡充以降、円は米ドルやユーロなどの主要通貨に対して下落しています。米ドル円レートは一時、119円に近づき、 2007年半ば以来の米ドル高円安水準をつけました。日本に続き中国の予想外の利下げや原油価格の下落なども加わり、日経平均株価の終値は11月28日に17,459.85円と年初来高値を付けました。

<見通し>

OPECの減産見送りから足元では原油価格が大きく下落し、日銀は目標とする2%のインフレ目標の達成のために追加緩和に踏み切るとの観測も高まってきました。衆議院解散という政治的な不透明さはありますが、景気後退からの脱却のための補正予算の可能性や円安による企業業績改善期待から、株式市場は堅調な展開が続くと見込まれます。

(2)追加緩和期待の高まりから、日欧の株式相場が堅調。

<現状>

日欧の株式市場は堅調な相場が継続しています。景気の回復は緩慢なものの、金融緩和が金融当局によって強力に推進され、追加緩和期待があることがその背景です。また、原油価格などのエネルギー価格が下落していることも、景気や企業業績にプラス材料となっています。米国でも、量的緩和終了後のFRBの金融政策に対する不透明感は薄らぎ、足元では低金利環境が続いていることが投資家に安心感を与えています。

<見通し>

日欧では、足元の原油価格の下落からインフレ期待が抑制されることから、追加金融緩和への期待が高まっています。エネルギーコストの低下は企業業績や個人消費にもプラスの影響を与えるとみられ、緩やかながらも景気は回復方向に進むとの見通しです。しかし、行き過ぎた原油安は、資源輸出に依存する新興国などの経常収支の悪化要因となることから、世界経済の不安定要因ともなりえます。米国での利上げが近づくにつれ、市場の変動が高まる可能性もあり、原油価格の下落の影響を慎重に見極めることが必要と思われます。

3.景気動向

<現状>

米国は、雇用環境が堅調で住宅市場も持ち直し傾向にあり、景気の改善が続いています。
欧州は、ドイツなどの企業景況感には改善を示すものが見られていますが、物価上昇率は低下し、デフレ懸念が強まっています。
日本は、消費税増税後の消費マインドの回復が見られず、2四半期連続のマイナス成長となりました。
中国は、消費や投資といった内需が減速し、政策金利を引き下げて景気をテコ入れする方針に転じました。
豪州は、低金利から雇用情勢や住宅市場などの内需が堅調で、物価も落ち着いており、底堅く推移しています。

<見通し>

米国は、雇用情勢の堅調さに加え、住宅価格・株価の上昇傾向を受けた個人消費などが景気を支える見込みです。
欧州は、主要国ドイツなどの景気回復が緩慢で、ECBによる追加緩和策の期待が高まっています。
日本は、日銀の強力な金融緩和や消費税増税先送りなどから、景気は再び持ち直すことが期待されます。
中国は、来年度の成長率目標は+7%前後と減速が見込まれます。また、小規模な景気対策などへの期待が高まっています。
豪州は、年+3%前後のGDP成長率が見込まれます。豪ドルは金利差への注目などから、底堅い推移を続けそうです。

4.企業業績と株式

<現状>

主要米国企業の7-9月期の増益率は、前年同期比+10.2%(11月26日時点速報、トムソン・ロイター集計に基づく)となり、4-6月期の同+8.6%から加速しました。日本の主要企業(東証1部、3月期決算、除く金融、11月19日時点速報)の7-9月期決算は、経常利益が前年同期比+17%程度の増益となっています。

<見通し>

主要米国企業は10-12月期も7-9月期も1ケタ後半の増益率を確保する見通しです。日本の主要企業の2014年度の経常利益は+4.1%と下方修正されました。増税後の景気の足踏みはあるものの、円安基調や米国景気の回復などを背景に、増益基調を維持しそうです。日米ともに堅調な企業業績を背景に、株価は底堅い推移が見込まれます。

5.金融政策

<現状>

FRBは来年半ば以降の利上げについて、経済の改善度合いを慎重に検討し決める考えを示しました。ECBは資産購入の拡大を開始し、金融緩和を拡大しています。日銀は、デフレマインドの転換が遅延するリスクから、量的・質的金融緩和の拡充を決めました。

<見通し>

米国の金利先物などから見ると、2015年半ばから後半の利上げ開始が織り込まれています。欧州ではドイツの景気弱含み、物価上昇率の低下などから、ECBが資産購入の拡大などの追加策を実施する可能性が高まっています。日銀は量的・質的金融緩和の拡充を決めましたが、原油価格の下落から物価が想定を下回る可能性もあり、追加金融緩和の可能性もあるとみられます。

6.債券

<現状>

米国では、FRBが来年半ば以降に利上げをするとみられるものの、低金利を継続するとみられ、10年国債利回りは低下しました。欧州では、ECBが資産購入を拡大し、金融緩和を強化するとの観測から、国債の利回りは低下しました。日本では量的・質的緩和の拡充から、国債の利回りは低下しました。米国の社債スプレッド(国債との利回り差)は、国債利回りの低下が大きく、拡大しました。

<見通し>

米国では来年半ばの利上げをにらんで、米国国債などの利回りには上昇圧力がかかるとみられます。ただし、FRBは低金利を相当な期間維持するとみられ、利回りの上昇は緩やかになるとみられます。米国など主要国の社債市場では、企業の底堅い業績や慎重な財務運営などを背景に、利回りは低位で安定する見込みです。その結果、社債スプレッドは安定して推移すると思われます。

7.為替

<現状>

日銀の量的・質的金融緩和の決定以降、円に対して、米ドルやユーロなどの主要通貨の上昇が続いています。

<見通し>

米ドル円相場は、日本の量的・質的金融緩和の進展に沿って、円が下落しやすい環境が継続する見込みです。日銀の追加緩和決定後の動きが大きく、一時的な足踏みなども見込まれますが、円の下落観測は根強く続きそうです。ユーロ円相場は、ECBの追加緩和策への思惑も強まる可能性があり、ドルに対する下落に比べて相対的に小さな動きとなりそうです。

8.リート

<現状>

リート価格は上昇しました。米国などの主要国の国債利回りの低下や低金利環境が長期化するとの観測が強まり、リートに資金が流入しやすい環境が続きました。また、為替では円の米ドルに対する下落から、円ベースでは上昇が大きくなりました。

<見通し>

FRBは相当な期間低金利を維持する見込みであり、金利が急上昇するリスクは限定的とみられます。景気の安定化、資金調達コストの抑制という双方の面で、リートには好環境が期待されます。また、景気の緩やかな回復を背景に、不動産市場は今後も緩やかな上昇を続けると見込まれ、リート市場は底堅く推移しそうです。

9.まとめ

株式 米国を中心に先進国景気は緩やかな回復が見込まれること、各国の企業業績が堅調に推移していること、日本や中国の予想外の金融緩和もあり低金利環境が続くと見られることなどに支えられ、先進国・新興国ともに、株価は緩やかな上昇基調が続くと思われます。
債券 米国の雇用回復や利上げ時期が早まるとの観測が高まると、米国の国債などの利回りに上昇圧力がかかると見込まれます。ただし、FRBは長期間にわたり金利を低めに維持すると見られること、ECBが金融緩和を強化していることなどから、利回りの上昇は緩やかと思われます。
為替 米ドル円相場は、米国の利上げ観測、日銀の量的・質的金融緩和の拡充を背景に、円安・米ドル高圧力が続く見込みです。
ユーロ円相場は、ECBが金融緩和策強化の方向性にあるとみられ、ドルに対してよりも小幅の値動きが見込まれます。
リート 国債利回りが急上昇するリスクは限定的で、リートの資金調達環境もしばらくは良好と見られます。また、世界景気の緩やかな回復を背景に、賃料など不動産市場は堅調に推移すると見られ、リート市場は底堅い推移が見込まれます。

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。