先月のマーケットの振り返り(2014年9月)【マンスリー】
2014年10月1日
1.概観
トピックス |
円安ドル高が進行して約6年ぶりの水準となり、伸び悩んでいた日本株は上昇しました。 米国の利上げ前倒し観測に加え、地政学リスクの後退などから、米欧の国債利回りは上昇しました。 |
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株式 |
米国株は、景気や企業業績の回復期待から、月中に過去最高値を更新しました。 日本株は、円安や企業業績の上方修正期待などから、月中に年初来高値を更新しました。 |
債券 | 米国の利上げ前倒し観測に加え、地政学リスクの後退などから、米欧日の国債利回りは上昇しました。 |
為替 | 米国の利上げ前倒し観測などから、ドルは円に対して上昇しました。 |
商品 | 原油価格は先進国の需要見通しが弱含んだほか、地政学リスクが後退し、続落しました。 |
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
2.トピックス
(1)円安ドル高が進行、日経平均は年初来高値を更新。
<現状>
ドル円は一時109円台半ばと、2008年9月以来、約6年ぶりのドル高円安となり、出遅れ感のあった日本株は月中に年初来高値を更新する展開となりました。公的年金の運用改革により、年金資金が株式や外貨建て資産に向かいやすくなるとの期待が強まったことも、円安や株高を後押ししました。
<見通し>
金融政策については、米国が正常化を視野に入れる一方、ユーロ圏や日本では景気・物価の低迷から追加緩和期待があります。方向性が異なることから、ドル高観測は今後も根強いと思われます。また、慎重だった国内企業の業績見通しが上方修正される期待もあり、日本株は当面は底堅く推移するものと思われます。
(2)米国の利上げ前倒し観測などから、米欧の10年国債利回りは上昇。
<現状>
10年国債利回りは、米欧ともに上昇しました。8月後半から、米国の利上げが前倒しされるとの警戒が強まったことなどが背景です。加えて、ウクライナ東部を見据えた米欧とロシア間の緊張も緩和に向かい、リスク回避に伴う国債の買いが一服しました。
<見通し>
10月のFOMCでQEは終了すると見られ、これに伴って低金利環境を「相当な期間」続けるとのFRBの方針が変更されるとの見方も増えてきました。その方針が変更されれば、2015年前半に利上げが前倒しになるとの見方も強まりそうです。一方、FRB議長やNY連銀、シカゴ連銀総裁など、来年のFOMCで投票権を持つ幹部からは、ハト派と見られる意見が多く聞かれ、今後も国債利回りの上昇は緩やかになると思われます。
3.景気動向
<現状>
米国は、雇用の増加や住宅市場の持ち直しを伴う景気回復が続いています。
欧州は、成長率が再びゼロ近くに鈍化するなか、低インフレ傾向が目立ってきました。
日本は、消費税増税の前後から経済指標が大きく振れており、景気回復が一旦足踏みした格好です。
中国は、政府が景気支援策を表明した4月以降、生産や投資が底を打ったものの、その後の勢いを欠いています。
豪州は、雇用情勢や住宅市場が堅調で、中銀や市場が予想していた以上に底堅く推移しています。
<見通し>
米国は、雇用情勢の堅調さに加え、住宅価格・株価の上昇傾向を受けた個人消費などが景気を支えそうです。
欧州は、主要国ドイツにおける景況感も弱含んでおり、資産購入など一段と強力な追加緩和策が実施されそうです。
日本は、年後半には個人消費や設備投資の底堅さ、公共投資などの経済対策により、景気は再び持ち直しそうです。
中国は、輸出増が景気の下支え材料です。また、今年の+7%台の成長を確実にする景気支援策なども期待されます。
豪州は、年+3%前後のGDP成長率が見込まれます。豪ドルは金利差への注目などから、底堅い推移を続けそうです。
4.企業業績と株式
<現状>
主要米国企業の2014年4-6月期の増益率は、前年同期比+8.6%(9月29日時点、トムソン・ロイター集計に基づく)となり、1-3月期の同+5.6%から改善しています。日本の主要企業(東証1部、3月本決算、除く金融)の2014年4-6月期決算は、経常利益が前年同期比+5.4%と、前年を上回って推移しています。
<見通し>
主要米国企業の増益率予想は、今年10-12月期に2桁増へと回復していく見通しです。日本の主要企業の2014年度の経常利益は、円安基調や米国需要の回復などを背景に、増益基調を維持しそうです。企業業績が堅調なことに加え、低金利の長期化観測にも支えられ、日米ともに株価は底堅く推移すると思われます。
5.金融政策
<現状>
FRBは、9月のFOMCにおいても、QE縮小の継続を決定しました。ECBは9月から、新たな資金供給措置(TLTRO)を開始しましたが、これに加えて、資産購入による一段と強力な景気支援を検討しています。日銀は、物価見通しを据え置いているものの、景気は足踏み状態にあり、消費税率の再引き上げを見据えた、追加緩和策の有無が注目されています。
<見通し>
10月のFOMCでQEは終了すると見られます。金利先物などから見ると、市場は2015年半ばから後半の利上げ開始が織り込まれています。ドイツ景気の弱含み、TLTRO利用の低調さ、物価の低迷などから見て、ECBが資産購入などの追加策を行う可能性は高まっています。日銀は年+2%の物価上昇という目標に加え、消費税率の再引き上げの影響を和らげるためにも、緩和策を拡充する可能性があります。
6.債券
<現状>
米国では、早期利上げが意識され、10年国債利回りは上昇しました。欧州では、ECBが資産購入を拡大することが発表されましたが、利益確定の売りから、国債利回りは小幅に上昇しました。日本でも、米欧の金利上昇の影響などから、国債利回りは上昇しました。米国の社債スプレッド(国債との利回り差)は、大型の社債発行の増加により需給が緩和したことなどから、スプレッドは拡大しました。
<見通し>
米国の景気回復や将来の利上げ観測が強まるにつれ、米国債などの利回りには上昇圧力がかかりそうです。ただし、FRBはゼロ金利政策を長期にわたり維持すると見られ、利回りの上昇は緩やかに留まると思われます。米国など主要国の社債市場は、底堅い企業業績や慎重な財務運営、旺盛な社債への需要などを背景に、利回りは低位で安定しそうです。その結果、社債スプレッドは安定的な推移を続けると思われます。
7.為替
<現状>
米国と日欧の金融政策の方向性の違いが意識され、円に対して、ドルは大きく上昇、ユーロは小幅な上昇に留まりました。
<見通し>
ドル円相場は、QEを終了させると見られる10月にかけ、先行きの利上げや日米の金利差拡大などが意識されやすい状況が続きそうです。9月のドル高円安が急だったこともあり、一旦の足踏みなども見込まれるものの、ドル高観測は根強く続きそうです。ユーロ円相場は、ECBの追加緩和策への思惑が強まる一方、日銀も大規模な緩和姿勢を示しており、一進一退の推移となりそうです。
8.リート
<現状>
リート価格は下落しました。米国など先進国の国債利回りの上昇が影響したとみられます。ただし、世界的に資金調達環境が改善していることや先進国の低金利環境が続くなか、新たな投資先を求めた資金が流入しやすいことが下支えとなったとみられます。
<見通し>
FRBは出口戦略の検討を始める一方、金利上昇を抑制する姿勢を維持しています。金利が急上昇するリスクが限定的であることは、景気の安定化、資金調達コストの抑制という、双方の面からリートの好材料となります。また、景気の緩やかな回復を背景に、不動産市場は今後も緩やかな改善を続けると見込まれ、リート市場は底堅く推移しそうです。
9.まとめ
株式 | 米国を中心に先進国景気は緩やかな回復が見込まれること、各国の企業業績が堅調に推移していること、低金利環境が続くと見られることなどに支えられ、先進国・新興国ともに、株価は緩やかな上昇基調が続くと思われます。 |
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債券 | 米雇用の回復や将来の利上げ観測の高まりにつれ、米国債などの利回りに上昇圧力がかかると見込まれます。一方、FRBは長期間にわたり金利を低めに維持すると見られること、ECBが金融緩和を強化していることなどから、利回りの上昇は緩やかと思われます。 |
為替 | 米ドル円相場は、米国のQE終了後の利上げへの思惑、日銀の金融緩和策の継続などを背景に、円安・米ドル高観測が続きそうです。ユーロ円相場は、ECBの追加緩和策への思惑が強まる一方、日銀も大規模な金融緩和を続けており、一進一退の推移となりそうです。 |
リート | 国債利回りが急上昇するリスクは限定的で、リートの資金調達環境もしばらくは良好と見られます。また、世界景気の緩やかな回復を背景に、賃料など不動産市場は堅調に推移すると見られ、リート市場は底堅い推移が見込まれます。 |
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※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。 |