ホームマーケット週次・月次市場情報先月のマーケットの振り返り(2014年7月)【マンスリー】/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

先月のマーケットの振り返り(2014年7月)【マンスリー】

2014年8月1日

1.概観

トピックス 米国の長期債利回りは低位で推移する一方、2年債や5年債の利回りは上昇しています。
中国では、4-6月期のGDP、6月の生産・投資・銀行貸出、7月の景況感などの各指標が持ち直しました。
株式 米国株は、堅調な企業業績などを背景に、月中に最高値を更新したものの、月末にかけ急落しました。
日本株は、ドル高円安傾向となったことなどを背景に、月末にかけて上昇しました。
債券 米国債利回りは雇用の改善などから、低位で一進一退となりました。欧州の利回りは低下を続けました。
為替 米と日・欧の金融政策の方向性の違いが意識され、円に対して、ドルは上昇、ユーロは下落しました。
商品 原油価格は、地政学リスクが残るものの、供給にさしあたっての懸念は無いとの見方から下落しました。

(出所)Bloombergのデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1)米金利は低位で一進一退、2年債では日米の金利差拡大。

<現状>

米国では、年初から長期金利(主に10年国債や30年国債の利回り)が低下してきましたが、7月は低位で一進一退となりました。景気回復への不透明感や地政学リスクの高まりなどの「金利低下要因」と、雇用情勢の改善、物価の上昇といった「金利上昇要因」が綱引きとなっています。一方、2年国債や5年国債は、先行きの利上げの織り込みなどから、利回りが上昇しました。

<見通し>

近年、異例の金融緩和で主要国の金利が低下し、「金利差」がドル、ユーロ、円の方向感に与える影響は低下していました。しかし、日本と米国などの金融政策の方向性に相対的な違いが出てきた現局面では、金利差の影響が再度強まることも想定されます。QE縮小のなか、米金利には緩やかな上昇圧力がかかっており、今後は日米の金利差やこう着状態にあるドル円が動意づくか、などに注目です。

(2)中国の景気底打ち観測、中国株は急上昇。

<現状>

中国では、4-6月期の実質GDP成長率が前年同期比+7.5%となりました。前期比では+2.0%と、足元の回復がより目立ちます。この背景には、①景気支援策の発表を受けて企業が増産、金融機関も貸出増に動いたこと、②不動産投資が鈍化する一方、インフラ投資が加速していること、③米欧の需要回復や人民元安で貿易黒字額が拡大していること、などが挙げられます。

<見通し>

中国株は7月に急上昇しました。景気底打ち観測に加え、①国有企業改革(民営化)への期待、②銀行間市場への潤沢な資金供給や当局指導・規制の緩和による資金繰り懸念の後退(金利も低下)、③香港・本土株式市場の相互乗り入れによる資金流入期待、などが挙げられます。習近平体制の権力強化で、改革への思惑が高まっており、市場では追加の政策発表に期待が高まっています。

3.景気動向

<現状>

米国は、寒波による景気鈍化が一時的となり、雇用の増加を伴う景気回復が続いています。
欧州は、プラス成長に転じたものの、低インフレ傾向が目立っており、ECBがマイナス金利などを採用しました。
日本は、消費税増税による各指標の振れを伴いながらも、基調としては景気回復が続いています。
中国は、政府が景気支援策の実施を表明した4月以降、生産や投資が底を打ち、銀行貸出も伸びました。
豪州は、1-3月期の資源輸出が好調で、景気は中銀や市場が予想していた以上に底堅く推移しています。

<見通し>

米国は、雇用情勢の堅調さに加え、住宅や自動車の販売の復調なども景気を支えそうです。
欧州は、ECBが貸出増加を促す緩和策を実行しており、景況感悪化や低インフレに歯止めがかかるか、注目です。
日本は、年半ば以降は個人消費や設備投資の底堅さ、公共投資などの経済対策により、景気回復が続きそうです。
中国は、インフラ投資拡充を伴う景気支援策の実行に伴い、年+7%台での高めの成長が続きそうです。
豪州は、今年の成長見通しが上振れしましたが、急落した資源価格や財政再建方針などによる影響に要注意です。

4.企業業績と株式

<現状>

主要米国企業の2014年4-6月期決算は、前年同期比+6.8%(7月31日時点、トムソン・ロイター集計に基づく)となっています。予想以上に底堅かった1-3月期の同+5.6%から、緩やかな持ち直しが続いています。日本の主要企業(東証1部、3月本決算、除く金融)の2014年4-6月期決算(7月29日時点)は、経常利益が前年同期比で約+12%と、増加が続いています。

<見通し>

主要米国企業の増益率予想は、今年後半に二桁増へと回復していく見通しです。日本の主要企業の2014年度の経常利益は、円高是正による大幅な押し上げ効果は一巡するものの、緩やかな円安基調や米国需要の回復などを背景に、増益基調を維持しそうです。企業業績が堅調なことに加え、低金利の長期化観測にも支えられ、日米ともに株価は底堅く推移すると思われます。

5.金融政策

<現状>

FRBは、7月29日~30日の連邦公開市場委員会(FOMC)においても、QE縮小の継続を決定しました。ECBは7月の理事会で、新たな資金供給措置の詳細を発表しました。今後2年間での供給規模は、4月末のデータに基づけば最大4,000億ユーロとなりますが、ドラギ総裁は最終的に1兆ユーロに達する可能性がある、としました。日銀は、物価見通しを据え置いており、早期の追加緩和への期待は後退しています。

<見通し>

FRBは今後も100億ドルずつQEを縮小し、10月に終了させる見込みです。金利先物などから見ると、2015年半ばから後半に利上げが開始されると、市場は織り込んでいます。ECBは景気と物価が上向く兆しが無ければ、資産購入などの追加策を導入する可能性があります。日銀は年+2%の物価上昇という目標に向けて量的・質的金融緩和を続けており、緩和策を拡充する可能性もありそうです。

6.債券

<現状>

米国では、7月に10年国債利回りの低下に歯止めがかかりました。欧州では、ECBの金融緩和策や、対ロ制裁の強化と緊張の高まりなどを受け、国債利回りの低下が続きました。日本では、世界的な金融緩和環境の影響を受け、国債利回りがやや低下しました。米国の社債スプレッド(国債との利回り差)は、社債利回りの低下が米国債利回りと同様に下げ止まり、スプレッドは若干拡大しました。

<見通し>

米国の景気回復や将来の利上げ観測が強まるにつれ、米国債などの利回りには上昇圧力がかかりそうです。ただし、FRBはゼロ金利政策を長期にわたり維持すると見られ、利回りの上昇は緩やかに留まると思われます。米国など主要国の社債市場は、底堅い企業業績や慎重な財務運営、旺盛な社債への需要などを背景に、利回りは低位で安定しそうです。その結果、社債スプレッドは安定的な推移を続けると思われます。

7.為替

<現状>

米と日・欧の金融政策の方向性の違いが意識され、円に対して、ドルは上昇、ユーロは下落しました。

<見通し>

米ドル円相場は、米国のQEが終了する今秋にかけ、先行きの利上げや日米の金利差拡大などが意識されやすくなると見られ、やや後退していた円安・米ドル高観測が強まる局面もありそうです。ユーロ円相場は、日銀の大規模な金融緩和姿勢の一方、ECBも追加の金融緩和を実施する可能性があり、一進一退となりそうです。

8.リート

<現状>

リート価格は上昇しました。不動産市場のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は改善傾向にあり、賃料などにも上昇が見られます。また、主要先進国の低金利が続いていること、世界的に資金調達環境が改善していることなど、金融面も好材料です。加えて、先進国の低金利環境が続くなか、新たな投資先を求めた資金が流入しやすいことも、追い風となっています。

<見通し>

FRBは出口戦略の検討を始める一方、金利上昇を抑制する姿勢を維持しています。金利が急上昇するリスクが限定的なことは、景気の安定化、資金調達コストの抑制という、双方の面からリートの好材料となります。また、景気の緩やかな回復を背景に、不動産市場のファンダメンタルズは今後も緩やかな改善を続けると見込まれ、リート市場は底堅く推移しそうです。

9.まとめ

株式 米国を中心に先進国景気は緩やかな回復が見込まれること、中国の景気底打ち観測が強まったこと、各国の企業業績が堅調に推移していること、低金利環境が続くと見られることなどに支えられ、先進国・新興国ともに、株価は緩やかな上昇基調が続くと思われます。
債券 米雇用の回復や将来の利上げ観測の高まりにつれ、米国債などの利回りに上昇圧力がかかると見込まれます。一方、FRBは長期間にわたり金利を低めに維持すると見られること、ECBが金融緩和を強化していることなどから、利回りの上昇は緩やかと思われます。
為替 米ドル円相場は、米国のQE縮小や利上げ時期へ思惑、日銀の金融緩和策の継続などを背景に、円安・米ドル高観測が続きそうです。
ユーロ円相場は、日銀の大規模な金融緩和姿勢の一方、ECBも追加の金融緩和を行う可能性があり、一進一退の推移となりそうです。
リート 国債利回りが急上昇するリスクは限定的で、リートの資金調達環境もしばらくは良好と見られます。また、世界景気の緩やかな回復を背景に、賃料など不動産市場のファンダメンタルズは堅調に推移すると見られ、リート市場は底堅く推移すると見込まれます。
※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。