ホームマーケット週次・月次市場情報【マンスリー No.70】先月のマーケットの振り返り(2014年6月)/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

【マンスリー No.70】先月のマーケットの振り返り(2014年6月)

2014年7月1日

1.概観

トピックス ECBのマイナス金利導入、FRBの成長見通し下方修正などから、低金利の長期化が意識されました。
ウクライナ情勢がやや落ち着く一方、イラク情勢が混乱し、原油高やリスク回避につながりました。
株式 米国株は、企業収益の拡大観測、低金利の長期化観測などから、月中に最高値を更新しました。
日本株は、相対的な割安感に加え、年金資金運用改革や法人税減税への期待もあり、上昇しました。
債券 ECBの追加緩和によりユーロ圏の国債利回りは低下しました。日・米は一進一退の推移となりました。
為替 日・米・欧の金融政策に対する思惑が交錯し、円は主要通貨に対して方向感の無い推移となりました。
商品 原油価格は、イラク情勢の混乱に伴う供給懸念などを背景に、上昇しました。

(出所)Bloombergのデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1)ECBはマイナス金利導入、FRBは景気見通しを引き下げ

<現状>

6月のECB理事会では、マイナス金利の導入や、銀行貸出を促す新たな資金供給措置が決定されました。決定後は金利が短期、長期ともに低下し、ユーロ高を抑える要因ともなりました。また、米国ではFRBが毎四半期の見通しにおいて、2014年の成長見通しを大きく引き下げました。市場では、欧米ともに低金利の期間が長引くとの見方が強まりました。

<見通し>

米国の2014年の成長見通しが引き下げられたのは、主に寒波の影響を反映したためです。QEが今秋に終了し、利上げが視野に入る時期には、米国経済が力強く回復するとも見込まれており、米金利や米ドルは緩やかな上昇基調に戻りそうです。株価は金利の低位安定と企業業績の拡大を受け、底堅く推移しそうです。また、欧州では、低インフレ傾向に歯止めがかかっておらず、低金利環境が続きそうです。

(2) イラク情勢を懸念し、原油価格が上昇

<現状>

イラクでは、マリキ政権に不満を持つイスラム教スンニ派武装勢力が、政府軍と衝突しました。これに乗じ、従来から独立・自治権の拡大を望んでいたクルド自治政府の治安部隊が一部の原油生産拠点を勢力下に置くなど、混乱が続いています。米国はマリキ氏から空爆支援を要請されましたが、専門家や国務長官を派遣するに留めています。市場では、早期解決のメドが立たないとの見方から、原油価格が上昇しました。

<見通し>

イラクの主な油田は南部にあり、現時点で大きな混乱は及んでいません。同国石油相は、6月はむしろ原油生産が急増し、7月の輸出量は増えるとしています。また、価格への影響が大きい米国の在庫は潤沢であり、原油価格の上昇圧力を和らげています。ただし、日米の足元のガソリン小売価格はすでに高値圏にあります。一段の価格上昇があれば、実体経済にも影響を及ぼしかねず、今後も中東情勢は注目されそうです。

3.景気動向

<現状>

米国は、寒波による景気鈍化が一時的となり、雇用の増加を伴う景気回復が続いています。
欧州は、プラス成長が続いていますが、その水準はなお低く、低インフレ脱却が課題となっています。
日本は、消費税増税による各指標の振れを伴いながらも、基調としては景気回復が続いています。
中国は、景気の鈍化を受けて、政府が景気支援策の実施方針を表明しており、景況感は底を打っています。
豪州は、1-3月期の資源輸出が好調で、景気は中銀や市場が予想していた以上に底堅く推移しています。

<見通し>

米国は、雇用情勢の堅調さに加え、住宅や自動車の販売の復調なども景気を支えそうです。
欧州は、ECBが貸出の増加を促す緩和策を実行しており、景気や物価への影響が注目されます。
日本は、賃金の上昇や輸出の増加に加え、公共投資などの経済対策により景気回復が続きそうです。
中国は、インフラ投資拡充を伴う景気支援策が実行され、年+7%台での高めの成長が続きそうです。
豪州は、今年の成長見通しが上振れしましたが、急落した資源価格や財政再建方針などによる影響に要注意です。

4.企業業績と株式

<現状>

主要米国企業の2014年1-3月期決算は、前年同期比+5.6%(6月27日時点、トムソン・ロイター集計に基づく)となっています。10-12月期の同+9.9%からは鈍化したものの、一時は同+1%前後まで低下した事前の市場予想からは、大きく上振れました。日本の主要企業(東証1部、3月本決算、除く金融)の2013年度決算は、経常利益が前年同期比で約+40%超と、大幅に増加しました。

<見通し>

主要米国企業の増益率予想は、今年後半には二桁増に回復していく見通しです。日本の主要企業の2014年度の経常利益は、円高是正による大幅な押し上げ効果は一巡するものの、緩やかな円安基調や米国需要の回復などを背景に、増益基調を維持しそうです。企業業績が堅調なことに加え、低金利の長期化観測にも支えられ、日米ともに株価は底堅く推移すると思われます。

5.金融政策

<現状>

FRBは、6月17日~18日の連邦公開市場委員会(FOMC)でQE縮小方針の継続を決定しました。ECBは6月の理事会において、小幅な利下げとマイナス金利、新たな資金供給措置の採用を決定しました。日銀は、物価の見通しを据え置いていることから、早期の追加緩和への期待はやや後退しています。

<見通し>

FRBは今後も100億ドルずつQEを縮小し、今秋にも終了させると見られます。金利先物などから見ると、2015年半ばから後半に利上げが開始されると、市場は織り込んでいます。ECBは景気と物価が上向く兆しが無ければ、資産購入などの追加策を導入する可能性があります。日銀は年+2%の物価上昇という目標に向けて量的・質的金融緩和を続けており、緩和策を拡充する可能性もありそうです。

6.債券

<現状>

米国では、国債利回りが前月まで低下を続け、6月も低水準で一進一退となりました。欧州では、ECBの金融緩和策を受け、国債利回りの低下が続きました。日本では、米欧の国債利回りの低下傾向の影響を受け、国債利回りがやや低下しました。社債スプレッド(国債との利回り差)は、社債利回りが一進一退だった一方、国債利回りの低下傾向を受けて、拡大しました。

<見通し>

米国の景気回復や将来の利上げ観測が強まるにつれ、米国債などの利回りには上昇圧力がかかりそうです。ただし、FRBはゼロ金利政策を長期にわたり維持すると見られ、利回りの上昇は緩やかに留まると思われます。米国など主要国の社債市場は、底堅い企業業績や慎重な財務運営、旺盛な社債への需要などを背景に、利回りは低位で安定しそうです。その結果、社債スプレッドは安定的な推移を続けると思われます。

7.為替

<現状>

日・米・欧の金融政策への思惑が交錯し、円は主要通貨に対して、方向感の無い展開となりました。

<見通し>

米ドル円相場は、米国のQE3が終了する今秋にかけ、先行きの利上げなどが意識されやすくなると見られ、円安・米ドル高観測が根強く残ると思われます。ユーロ円相場は、日銀の大規模な金融緩和姿勢の一方、ECBも追加の金融緩和を実施する可能性があり、一進一退となりそうです。

8.リート

<現状>

リート価格は上昇しました。不動産市場のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)はグローバルに改善傾向にあり、賃料などにも上昇が見られます。また、主要先進国の低金利が続いていること、欧州の金融システムが安定化してきたことなど、世界的に資金調達環境が改善していることも好材料です。

<見通し>

FRBは出口戦略の検討を始める一方、金利上昇を抑制する姿勢を維持しています。金利が急上昇するリスクが限定的なことは、リートの好材料です。また、世界景気の緩やかな回復を背景に、不動産市場のファンダメンタルズは今後も緩やかな改善を続けると見込まれ、リート市場は底堅く推移しそうです。

9.まとめ

株式 米国を中心に世界景気は緩やかに回復すると見込まれること、各国の企業業績が堅調に推移していること、低金利環境が長期化すると見られることなどに支えられ、先進国の株価は底堅く推移すると思われます。
債券 米国の景気回復や将来の利上げ観測が強まるにつれ、米国債などの利回りには上昇圧力がかかると見込まれます。ただし、FRBはゼロ金利政策を長期にわたり維持すると見られることから、利回りの上昇は緩やかなものに留まると思われます。
為替 米ドル円相場は、日銀の大規模な金融緩和策の継続や、米国のQE縮小などを背景に、円安・米ドル高観測が根強く残ると思われます。ユーロ円相場は、日銀の大規模な金融緩和姿勢の一方、ECBも追加の金融緩和を行う可能性があり、一進一退の推移となりそうです。
リート 国債利回りが急上昇するリスクは限定的で、リートの資金調達環境もしばらくは良好と見られます。また、世界景気の緩やかな回復を背景に、賃料など不動産市場のファンダメンタルズは堅調に推移すると見られ、リート市場は底堅く推移すると見込まれます。

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。