ホームマーケット週次・月次市場情報【マンスリー No.68】先月のマーケットの振り返り(2014年4月)/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

【マンスリー No.68】先月のマーケットの振り返り(2014年4月)

2014年5月1日

1.概観

トピックス ウクライナを巡り、米欧とロシアは対立の回避を目指したものの、混乱は続き、市場の懸念材料となりました。
中国では1-3月期の成長率が鈍化し、鉄道や中西部開発のテコ入れなどを含む景気支援策が示されました。
株式 米主要企業の1-3月期決算は概ね市場予想を上回りましたが、ウクライナ情勢が米欧の株価を抑えました。
日本株は、黒田日銀総裁の発言や物価動向から追加的な量的緩和への期待が後退し、下落しました。
債券 米QE縮小が進む一方、FRBは長期金利上昇を抑える姿勢を続けており、国債利回りは一進一退でした。
為替 ウクライナの混乱などから、リスク回避に伴って円が買われ、主要国通貨に対して小幅に上昇しました。
商品 原油価格はウクライナの混乱などを背景に上昇した後、米国での在庫増加観測が強まり、下落しました。

(出所)Bloombergのデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1) ウクライナ情勢を巡り、リスク回避の動きがくすぶる。

<現状>

ウクライナ南部だけでなく、東部でも親ロシア派による政府庁舎の占領などが見られ、これを排除しようとする政府との間で、激しい応酬がありました。米欧とロシア、ウクライナの4者会談により平和解決が模索されましたが、ウクライナ国内の混乱は続き、米国はロシアへの追加制裁をG7諸国に求めています。市場では、状況の好転と緊迫化が交錯するなか、リスクを取りにくい状況が続きました。

<見通し>

足元では、欧州の制裁対象はプーチン大統領と側近にとどまり、主要な経済人までを対象とするのは米国のみです。ドイツや日本は対話重視姿勢を示し続けており、欧米とロシアの対立の先鋭化は回避できるとの見方から、市場は冷静な対応を続けそうです。

(2) 中国経済は鈍化、政府は景気刺激策を発表。

<現状>

1-3月期の実質GDP成長率は、前期比+1.4%と大きく鈍化しました。何らかの景気刺激策が無ければ、通年の成長目標である「+7.5%前後」の達成は難しいとの見方が大勢です。こうしたなか、政府は鉄道建設や中西部開発へのテコ入れを含む刺激策を実施する方針を示しました。今後は、その実行時期や規模・対象の拡充の有無に注目です。

<見通し>

最も早期に政府の景気刺激策の具体化を確認できる指標は、固定資産投資(農村除く)における「新規着工計画」となりそうです。同指標は2012年までの20%超の水準から、2013年には10%台前半まで鈍化してきました。現水準のままでは景気の下振れは避けがたく、これが持ち直していくか否かが目先のポイントと見られます。

3.景気動向

<現状>

米国は、悪天候の影響が一巡し、雇用の緩やかな増加を伴う景気回復が続いています。
欧州は、景気回復が緩やかに留まるなか、低インフレが今後の成長を抑えるリスクが意識されています。
日本は、消費税増税による各指標の振れを伴いながらも、基調としては景気回復が続いています。
中国は、年初から主要な経済指標が弱含み、政府が景気刺激策の実施方針を表明しています。
豪州は、昨年後半から資源輸出が持ち直したほか、住宅市場の活況さもあり、景気は底堅く推移しています。

<見通し>

米国は、個人消費の底堅い推移が見込まれるほか、今年は財政の崖などの特殊な下押し要因も無く、景気は堅調と見込まれます。
欧州は、主要国の内需の回復や、輸出の増加による緩やかな景気回復が見込まれますが、低インフレは続きそうです。
日本は、消費税増税による消費の減速は一時的に留まり、賃金上昇や輸出の増加、政府の経済対策により景気回復が続きそうです。
中国は、インフラ投資拡充を伴う景気刺激策が比較的早期に実行され、年+7%台での高めの成長が続きそうです。
豪州は、住宅市場の活況さが当面続くと見られるなか、景気は底堅く、先行きでは成長ペースの若干の加速も見込まれます。

4.企業業績と株式

<現状>

4月30日時点で主要米国企業の2014年1-3月期決算は、前年同期比+4.1%(ブルームバーグ集計に基づく)となっています。10-12月期の同+9.9%から大きく鈍化しているものの、より厳しい内容を想定していた市場予想からは、若干上振れています。日本の主要企業(東証1部、3月本決算、除く金融、電気・ガス)の2013年10-12月期決算は、経常利益が前年同期比で約+50%と大幅に増加しました。

<見通し>

主要米国企業の増益率予想は、1-3月期に一旦鈍化した後は上昇傾向に転じ、今年後半には二桁増に回復する見通しです。日本では、主要企業の2013年度の経常利益は円高修正などが寄与し、前年度比で+30%程度の大幅増益となる見込みです。堅調な企業業績が下支えし、主要国の株価は底堅く推移すると思われます。ただし、ウクライナ情勢などにより、短期的に上値が抑えられる可能性もあります。

5.金融政策

<現状>

米連邦制度理事会(FRB)は、4月29日~30日の連邦公開市場委員会(FOMC)でQE3縮小やゼロ金利政策の継続を決定しました。欧州中央銀行(ECB)は、政策金利を過去最低の0.25%に据え置きました。日銀は、2013年4月4日に導入した「量的・質的金融緩和」を維持しました。また今年4月の展望レポートでは成長見通しを引き下げた一方、物価の見通しは概ね据え置きました。

<見通し>

景気の回復基調を背景に、FRBは今後も100億ドルずつQE3を縮小し、今秋にもQE3は終了する見込みです。足元の市場は、その後2015年半ば~後半に利上げ開始を織り込んでいます。ECBは景気と物価を下支えするため、資産購入などの量的緩和の検討を続けそうです。日銀は2%の物価上昇率などの意欲的な目標の達成に向けて「量的・質的金融緩和」を続けており、拡充する可能性もありそうです。

6.債券

<現状>

米国では、着実な景気回復の一方、FRBが利上げを急がない姿勢を示して長期金利上昇をけん制し、国債利回りはやや低下しました。日本では、株安や円高でリスク回避姿勢がくすぶるなか、国債利回りはやや低下しました。ウクライナ情勢が懸念された欧州では、国債利回りの低下が続きました。ウクライナ情勢への懸念の一方、企業業績は底堅く、米国企業の社債スプレッド(国債との利回り差)はやや縮小しました。

<見通し>

米国の景気回復に伴って、米国債などの利回りには上昇圧力がかかると見込まれます。ただし、FRBはゼロ金利政策を長期にわたり維持すると見られることから、利回りの上昇は緩やかなものに留まると思われます。米国など主要国の社債市場については、企業の底堅い業績や慎重な財務運営、社債への旺盛な需要などを背景に、社債スプレッドは安定的に推移すると見込まれます。

7.為替

<現状>

世界景気の緩やかな回復などを背景に、先行きでは円安との見方は根強いものの、4月は日銀の量的緩和拡充への期待が後退したこと、ウクライナ情勢への懸念がくすぶったことなどから、円は主要通貨に対して小幅に上昇しました。

<見通し>

米ドル円相場は、日銀による大規模な金融緩和策の継続や、米国のQE3縮小などを背景に、円安・米ドル高観測が根強く残ると思われます。ユーロ円相場は、日銀の大規模な金融緩和策に加え、ユーロ圏の緩やかな景気回復期待などから、円安に振れやすいと思われます。

8.リート

<現状>

リート価格は上昇しました。ウクライナ情勢を巡る不透明感が継続したものの、米国などでは景気回復を背景にオフィス賃料の上昇が続くなど、不動産市場のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は概ね底堅く推移しました。また、欧州の金融システムへの信頼が回復するなど、世界的に資金調達環境は改善傾向にあり、リート市場の追い風です。

<見通し>

米国の実質ゼロ金利政策の長期化が見込まれていることから、国債利回りが急上昇するリスクは限定的と見られます。また、世界景気の緩やかな回復を背景に、不動産市場のファンダメンタルズは堅調に推移すると見られることから、リート市場は底堅く推移すると見込まれます。

9.まとめ

株式 米国を中心に世界景気は緩やかに回復すると見込まれることや、企業業績が堅調に推移していることなどにより、主要国の株式市場は底堅く推移すると思われます。ただし、ウクライナ情勢の動向などにより、短期的に上値が抑えられる可能性もあります。
債券 米国の景気回復に伴って、米国債などの利回りには上昇圧力がかかると見込まれます。ただし、FRBはゼロ金利政策を長期にわたり維持すると見られることから、利回りの上昇は緩やかなものに留まると思われます。
為替 米ドル円相場は、日銀による大規模な金融緩和策の継続や、米国のQE3縮小などを背景に、円安・米ドル高観測が引き続き根強く残ると思われます。ユーロ円相場は、日銀の大規模な金融緩和策に加え、ユーロ圏の緩やかな景気回復期待などから、円安に振れやすいと思われます。
リート 米国の実質ゼロ金利政策の長期化が見込まれていることから、国債利回りが急上昇するリスクは限定的と見られます。世界景気の緩やかな回復を背景に、不動産市場のファンダメンタルズは堅調に推移すると見られることから、リート市場は底堅く推移すると見込まれます。

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。