ホームマーケット週次・月次市場情報【マンスリー No.65】先月のマーケットの振り返り(2014年1月)/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

【マンスリー No.65】先月のマーケットの振り返り(2014年1月)

2014年2月3日

1.概観

トピックス 米国のQE3の縮小や新興国景気への懸念を背景に、新興国通貨が急落しました。
IMFは、2014年の世界経済の成長率の見通しを上方修正しました。
株式 新興国通貨が急落したことなどにより投資家のリスク回避姿勢が強まり、主要国の株価は下落しました。
日本株は、円が米ドルやユーロなどに対して上昇したことも加わり、相対的に大きく下落しました。
債券 投資家のリスク回避姿勢が強まったことなどを背景に、主要国の国債利回りは低下しました。
為替 投資家のリスク回避姿勢が強まったことなどを背景に、円は主要国通貨に対して上昇しました。
商品 石油製品の在庫の増加や投資家のリスク回避姿勢の強まりなどを背景に、原油価格は下落しました。

(出所)Bloombergのデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1)米国のQE3縮小や新興国景気への懸念を背景に、新興国通貨が急落。

<現状>

2014年に入り、市場では新興国経済が従来ほど堅調ではなくなるとの見方が徐々に増えていました。これは、FRBが昨年12月からQE3縮小を決定したこと(新興国からの資金逃避)、タイやトルコなどいくつかの新興国で政情不安が見られていることなどが要因です。1月23日にはアルゼンチンの通貨ペソが対ドルで前日比▲12%急落するなど、新興国の通貨が下落しました。投資家のリスク回避姿勢が強まり、為替市場で円はほぼ全面高となりました。

<見通し>

米国のQE3縮小はドル買い、新興国通貨売りの一因です。1月のアルゼンチンペソはやや極端な例と見られますが、今後も経常収支の赤字国や外貨準備の不足が意識される国では為替が不安定となる可能性があります。ただし、通貨が下落した際は、輸入物価上昇による成長抑制が懸念されるものの、輸出競争力の回復や投資先としての利回り向上につながると思われます。輸出競争力の回復などから経常収支の改善期待が高まれば、新興国の為替市場は徐々に落ち着きを取り戻すと思われます。

(2)IMFは、2014年の世界経済の成長率見通しを上方修正。

<現状>

IMFは、2014年の世界経済の成長率見通しを前回見通しから+0.1%修正し+3.7%、2015年を修正なしの+3.9%としました。2014年の上方修正は、米国の財政協議合意の寄与や、日本の景気刺激策の反映などが主な要因です。新興国では、投資主導により景気が底堅く回復しつつある中国が上方修正されました。

<見通し>

世界経済は先進国の寄与も加わり成長が続くと見込まれますが、その前提には各国の政策対応が不可欠と思われます。特に先進国の金融政策については、日米欧が総じて低インフレ環境が続いていることから、低金利政策などの金融緩和姿勢が当面続きそうです。

3.景気動向

<現状>

米国は、大寒波の影響により一時的に経済指標が鈍化したものの、景気の緩やかな回復基調は続いていると見られます。
欧州は、ドイツの製造業受注が市場予想を上回って増加するなど、景気は緩やかに持ち直しつつあります。
日本は、輸出、生産が回復基調にあることに加え、消費の持ち直しも継続しており、景気回復が続いています。
中国は、生産活動がやや減速しているものの、個人消費や輸出が持ち直しており、景気は底堅く推移しています。
豪州は、雇用情勢が引き続き弱含んでいるものの、個人消費や輸出の改善が続いており、景気は底堅く推移しています。

<見通し>

米国は、雇用情勢の改善を背景とした個人消費の底堅い推移が見込まれることなどから、景気の緩やかな回復が続くと思われます。
欧州は、ドイツを中心とした域内内需の持ち直しや、南欧諸国の財政緊縮ペースの緩和などにより、景気は徐々に回復しそうです。
日本は、輸出、生産の回復が続くと見込まれるうえ、消費税増税前の駆け込み需要や公共投資で年度の後半も景気は回復しそうです。
中国は、2014年の投資の規模が注目されますが、新都市化の実現には投資が欠かせず、年7%台程度の成長が続きそうです。
豪州は、住宅市場や個人消費の回復の継続に加え資源輸出の底堅い推移が見込まれることから、景気は次第に持ち直すと思われます。

4.企業業績と株式

<現状>

市場予想(1月24日時点)によると、主要米国企業の2013年10-12月期決算の増益率は前期から上昇する見込みです。日本の主要企業(東証1部、3月本決算、除く金融、電気・ガス)の2013年10-12月期決算は、経常利益が前期に続いて二桁増益となっています(1月31日時点)。

<見通し>

今後の主要米国企業の増益率予想は上昇傾向を続け、今年後半には二桁増に回復する見通しです。日本では、主要企業の2013年度の経常利益は円高修正などが寄与し、前年度比で+20%超の大幅増益となる見込みです。足元の新興国通貨を中心とした金融市場の変動の影響は限定的と見られ、堅調な企業業績が下支えすることで主要国の株価は底堅く推移すると思われます。

5.金融政策

<現状>

FRBは、1月28日~29日の連邦公開市場委員会(FOMC)でQE3の縮小継続を決定しました。2014年2月から資産購入額を従来の750億ドルから650億ドルに減額する方針です。欧州中央銀行(ECB)は、政策金利を過去最低の0.25%に据え置きました。日銀は、2013年4月4日に導入した「量的・質的金融緩和」を維持しています。

<見通し>

FRBは、今後の経済指標を見極めながらQE3の縮小ペースを判断すると見られます。政策金利は、インフレ率が2%を下回る場合、失業率が6.5%を下回った後も現行水準で据え置く方針です。ECBは緩和的な金融政策を当面維持し、景気と物価を下支えすると見られます。日銀は2%の物価上昇率などの意欲的な目標の達成に向け「量的・質的金融緩和」を引き続き強力に進め、拡充する可能性もありそうです。

6.債券

<現状>

米国で寒波の影響もあり雇用者数の増勢が鈍化したことや、アルゼンチンペソの急落をきっかけに投資家のリスク回避姿勢が強まったことから、米国債などの利回りは低下しました。米国企業の社債スプレッド(国債との利回り差)は、社債への旺盛な需要などから安定的に推移しました。

<見通し>

米国の景気回復に伴って、米国債などの利回りには上昇圧力がかかると見込まれます。ただし、FRBはゼロ金利政策を長期にわたり維持すると見られることから、利回りの上昇は緩やかなものになると思われます。米国など主要国の社債市場については、企業の底堅い業績や慎重な財務運営、社債への旺盛な需要などから、社債スプレッドは安定的に推移すると見込まれます。

7.為替

<現状>

米国のQE3縮小や新興国の景気に対する懸念などを背景に、アルゼンチンペソなどの新興国通貨が急落しました。これを受け、投資家のリスク回避姿勢が強まり、円は米ドルなどの主要国通貨に対して上昇しました。

<見通し>

足元ではアルゼンチンペソの下落は一服したと見られ、他の新興国への一段の波及は限定的と思われます。世界の金融市場は徐々に落ち着きを取り戻し、為替市場では主要国の金融政策や景気の強さなどに注目が移ってくると思われます。米ドル円相場は、日銀による大規模な金融緩和策の継続や、米国のQE3の縮小などを背景に、円安・米ドル高観測が引き続き根強く残ると思われます。ユーロ円相場は、日銀の大規模な金融緩和策に加え、ユーロ圏の緩やかな景気回復期待などから、円安に振れやすいと思われます。

8.リート

<現状>

新興国通貨が急落したことなどを受け、主要国の国債利回りが低下したことなどにより、リート市場は上昇しました。景気の緩やかな回復を背景に、主要国の不動産市場のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は概ね底堅く推移しています。

<見通し>

QE3の縮小ペースは景気動向に応じて柔軟に判断される見通しであり、政策金利については、実質ゼロ金利政策の長期化が見込まれていることから、国債利回りが急上昇するリスクは限定的と見られます。世界景気の緩やかな回復を背景に、不動産市場のファンダメンタルズは堅調に推移すると見られることから、リート市場は底堅く推移すると見込まれます。

9.まとめ

株式 新興国通貨を中心とした金融市場の変動の影響は限定的と見られ、米国を中心に世界景気は緩やかに回復していることや、企業業績が堅調に推移していることなどにより、主要国の株式市場は底堅く推移すると思われます。
債券 米国の景気回復に伴って、米国債などの利回りには上昇圧力がかかると見込まれます。ただし、FRBはゼロ金利政策を長期にわたり維持すると見られることから、利回りの上昇は緩やかなものになると思われます。
為替 米ドル円相場は、日銀による大規模な金融緩和策の継続や、米国のQE3の縮小などを背景に、円安・米ドル高観測が根強く残ると思われます。ユーロ円相場は、日銀の大規模な金融緩和策に加え、ユーロ圏の緩やかな景気回復期待などから、円安に振れやすいと思われます。
リート FRBが景気に十分配慮して金融政策を運営する姿勢を示していることから、国債利回りが急上昇するリスクは限定的と見られます。世界景気の緩やかな回復を背景に、不動産市場のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は堅調に推移すると見られることから、リート市場は底堅く推移すると見込まれます。
※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。