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先月のマーケットの振り返り(2025年11月)

2025年12月2日

1.概観


株式

11月の米国、日本の株式市場では、TOPIX、NYダウは上昇しましたが、一部AI関連銘柄の株価下落の影響が大きかった日経平均、ナスダック100は下落しました。米国では政策金利引き下げ期待が高まりS&P500は上昇し、日本では財政出動の拡大とガソリン減税など物価抑制策が決まり、業績回復期待からTOPIXは上昇しました。インドでは銀行、ソフトウェア株が上昇しました。豪州、ドイツ、英国ともにIT関連株や防衛関連株が利益確定売りで下落しましたが、英国は若干のプラスでした。香港市場では、中国自動車株とハイテク株などの利益確定売りで下落し、上海市場では不動産セクターも不振でした。

債券

米国の10年国債利回り(長期金利)は低下しました。 プライベートクレジットなどのリスクに対する警戒感から安全資産の需要が高まったことや政策金利引き下げ期待が要因のようです。ドイツでも、安全資産へのシフトや米国の長期金利低下から、一時長期金利は低下しましたが、底堅い景気と財政拡張に対する懸念から、月間では上昇しました。日本では、高市政権が積極的な財政政策をとる方針を示し、長期金利は上昇しました。

為替

米国では長期金利が低下しましたが、日本国債売りのキャピタルフライトなどから対外証券投資が増え、円安となりました。欧州では、政策金利の引き下げが一巡したと見られていることや長期金利が全般的に上昇したことから、ユーロはドルに対し底堅い展開となりました。

商品

主要産油国による増産で需給が緩和している模様で、原油価格は下落しました。ウクライナによるロシアタンカー攻撃には原油市場は反応薄でした。


 

(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

2.景気動向

<現状>

●米国の4-6月期の実質GDP確報値の成長率は前期比年率+3.8%でした。改定値の+3.3%から上方修正されました。

●欧州(ユーロ圏)の7‐9月期の実質GDP速報値の成長率は前期比年率+0.9%でした。4‐6月期の成長率は+0.5%でした。

●日本の7‐9月期の実質GDP1次速報値の成長率は前期比年率▲1.8%となりました。 4-6月期の成長率は+2.3%でした。

●中国の7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比+4.8%でした。4‐6月期の成長率は+5.2%でした。

●豪州の4-6月期の実質GDP速報値の成長率は前年同期比+1.8%でした。1‐3月期の成長率は+1.4%でした。

<見通し>

●米国の25年の実質GDP成長率見通しを+1.9%、26年見通しを+2.0%に上方修正しました。関税が米景気に与える影響は懸念していたよりも軽微にとどまっていることが成長率を見直した要因です。26年には減税等の効果もあらわれ、米国景気は持ち直すとの見方を維持します。政府機関閉鎖の影響で10-12月期の成長は下押しするでしょうが、26年1-3月期に再開に伴う成長加速で取り戻すことになるでしょう。

●欧州では、25年+1.4%、26年+1.2%の実質GDP成長率見通しを維持しました。25年後半は、米国の関税引き上げによる輸出下振れが見込まれます。しかし、①欧州中央銀行(ECB)の利下げの累積効果、②域内防衛費の拡大、③EUの財政支出拡大やドイツのインフラ投資拡大、などにより26年には成長率は、25年下期をボトムに回復に転じると予想します。フランスなどの緊縮財政は、リスク材料として注視しています。

●日本の実質GDP成長率見通しは、25年度を+0.9%とし、26年度を+0.8%に下方修正しました。25年度4-6月期が米関税前の駆け込み輸出等で上方修正されたことが要因です。責任ある積極財政のもと、ガソリン減税、電力・ガス料金補助の増額、おこめ券など重点支援地方交付金の拡充、などが決まりました。消費の持ち直しなどにより、マイナス成長となった25年度7-9月期をボトムにGDP成長率は改善に向かう見通しです。

●中国は25年+5.0%、26年+4.6%のGDP成長率見通しを維持します。ハイテク企業の生産拡大と公共投資の増加がサポート要因となる見込みです。26年も家計のバランスシート問題を背景に消費需要停滞が続きそうです。

●豪州では、オーストラリア準備銀行(RBA)による11月の利下げは見送られましたが、雇用市場が改善傾向にあり、個人消費など内需の先行きは底堅さを保つと見られます。また、商品市況も底堅く推移しており、景気を下支えしそうです。

3.金融政策

<現状>

●9月の雇用統計が発表されましたが、米連邦準備制度理事会(FRB)メンバーの反応は割れています。雇用者数が増えたため雇用市場は堅調との見方と失業率の上昇や賃金伸び率低下を指摘し予防的利下げが必要との見方に分かれています。民間の調査では広がりはないと報告されていますが、大手企業で大規模なリストラの発表が続いていることを警戒するメンバーもいます。市場参加者は、月末にかけ12月利下げの見方に傾いたようです。

●ECBは、11月の理事会メンバーによる発言では物価と景気のリスクは均衡しているとの見方がほとんどで、年内の政策金利は据え置きとなりそうです。

●日銀の植田総裁は、来年度前半にかけコア物価上昇率(CPI)は2%を下回ると予想しています。さらに、高市政権はガソリン減税と電力・ガス補助金の増額でCPI上昇率の抑制を行いました。実質的な25年度の昇給率を示す8月の毎月勤労統計(社会保険料の軽減のため昇給分を7月にまとめて払う企業が多い)の賃金上昇率は低水準でした。関税の影響が大きい輸出企業などの来年の春闘の動向を見る時間が確保できました。

 <見通し>

●米国では、政府機関閉鎖の影響で10、11月の雇用統計が12月会合に間に合わないことから、弊社は12月の会合では利下げは見送られると見ていましたが、月後半は予防的利下げを主張するコメントばかりとなり、インフレ警戒のコメントは急減しました。弊社は、12月利下げに予想を変更します。

●ECBは、現状の2%をほぼ中立水準とみている模様で、25年中は政策金利を据え置くと予想します。26年には、EU、ドイツの国防支出やインフラ投資の拡大が成長率を押し上げ、インフレリスクも高まるとみられるため、ECBは予防的に4-6月と10-12月に利上げを実施すると予想します。

●高市政権の経済政策を注視する必要はありますが、日銀は物価や春闘の動向を確認しながら、26年1月、7月に利上げすると予想します。

4.債券

<現状>

●米国の10年国債利回り(長期金利)は、月間で低下しました。前半は利下げ期待の後退や相次ぐハイテク企業の大型起債から、もみ合い状態となりました。しかし、プライベートクレジット、仮想通貨などのリスクに対する警戒感が高まり安全資産需要が増えた模様で、金利は低下に転じました。雇用統計発表再開後には、失業率の上昇など雇用市場の減速に懸念を持つFRBメンバーが増え、利下げ観測が盛り返し、長期金利は低下しました。

●ドイツでは長期金利は上昇しました。一時欧州でも安全資産への回帰が見られましたが、株価の回復とともにリスク資産へのシフトが起きたようです。

●日本の10年国債利回りは上昇しました。日銀によるクレジットタイトニング(市中金利上昇要因)が進行する中、①日本国債売りの一方で、対外証券投資が拡大、②高市政権の積極財政による金利上昇、などが意識されたため10年国債の需給は悪化し、利回りは一時1.8%台に上昇しました。

●米国の投資適格社債については、前月比で社債利回りは若干上昇も、スプレッド(国債と社債の利回り差)は歴史的にみても低水準にあります。欧米の高格付け大企業が発行する社債の利回りの中には、参照される満期の国債利回りを下回る例が出ています。

<見通し>

●米国では、長期金利は短期的にもみ合い、中期的には上昇すると予想します。FRBの利下げは、予防的なもので相場に織り込み済みと見ています。

●欧州では、長期金利はレンジ内での推移を予想します。政策金利が据え置かれ、欧州の財政赤字拡大から期間プレミアムは高止まりする見込みです。

●日本の長期金利は、追加利上げ観測を背景に緩やかに上昇すると予想します。26年1月利上げを見込んでいますが、為替動向には要注意です。

5.企業業績と株式

<現状>

●米ファクトセット(FactSet)によれば、日米の企業業績の見通しは堅調です。11月末の米S&P500種指数の予想1株当たり純利益(EPS)は前年同月比+12.3%、TOPIXの予想EPSは同+9.5%となりました。

●米国株式市場は、AI相場の先導役がエヌビディアとオープンAIからグーグルの親会社のアルファベットに代わりました。グーグルの最新AIモデルであるジェミニ3とチップセット(集積回路)のテンソル・プロセッシング・ユニット(TPU)の評価が急上昇したことが要因です。アップルがグーグルのAIモデルを採用するとの観測記事も先導役交代の一因のようです。7-9月期の業績は金融、ハイテク企業を中心に事前予想を上回った企業が多く、見通しも引き上げ方向が優勢でした。NYダウは前月比+0.32%、S&P500種指数は同+0.13%上昇でしたが、ナスダック100は▲1.64%下落でした。

●日本株式市場では、アドバンテストやソフトバンクなど日経平均の値動きに大きな影響を与える銘柄が調整し、NT倍率が低下しました。上半期の業績は想定よりも堅調でした。TOPIXは+1.4%の上昇でした。日経平均は月間で▲4.12%下落ですが、月初に一時最高値を更新しました。

<見通し>

●米国株式市場では、AIやデータセンター関連銘柄の選別基準が学習から推論へ、モデルやハードの性能の良し悪しよりもどれくらいユーザーから収益を上げられるかに関心が移っているようです。第4四半期も企業業績は増益見通しですが、政府機関閉鎖の悪影響などで、伸び率は鈍化見込みです。

●日本株式市場では、高市政権により、①ガソリン減税、②電力・ガス料金補助の増額、③おこめ券など重点支援地方交付金の拡充、など物価上昇を抑制しつつ、消費を活性化する政策が導入されました。原油安などエネルギーコストの低下、円安の進行により輸出採算の改善も見込まれ、26年度の企業業績は改善に向かう見通しです。自社株買いなどさらなる株主還元強化への期待も、株価の上昇要因です。

                                                                                                                                                                                               

6.為替

<現状>

●円の対米ドルレートでは、日銀の利上げ観測が後退し、円安が進みました。円安要因として、AI株の上昇や日米金利差の大きさや米国の政策金利引き下げ期待を背景に日本からの対外証券投資が拡大していることも見逃せません。金融政策が現状維持される中での財政支出拡大は、実質金利の上昇を通じ自国通貨高要因ですが、対外証券投資の拡大やクレジットタイトニングによって打ち消されているようです。

●ユーロ・米ドルレートでは、米国の利下げ期待の後退や米国株の調整などからレンジ内で上下しましたが、月末に米国の利下げ期待が再び高まりユーロ高となりました。ユーロ・円レートでは、日銀の利上げ観測が後退した影響や対外証券投資の増加から大きく円安となりました。

●円の対豪ドルレートは円安となりました。豪州では月前半、米国と同様に追加利下げ期待が後退し、豪ドルは対米ドルでほぼ横ばいで推移しました。

<見通し>

●円の対米ドルレートでは、日銀の利上げ観測が後退し円安となっています。しかし、弊社は今後利上げ観測は再び強まるとみており、対米ドルレートは徐々に修正されると予想しています。ただし、日米金利差の大きさや対米投資の拡大を考慮すると、円高圧力は限定的になりそうです。

●円の対ユーロレートでは、もみ合いの展開を予想します。FRBの利下げ観測が高まる中、ECBの利下げは一巡したとみられ、ユーロは米ドルに対し上昇すると見込まれます。円も米ドルに対し緩やかな円高を予想するため、円の対ユーロレートはもみ合いとなる見通しです。

●円の対豪ドルレートでは、豪ドルには商品市況上昇などの上昇要因がありますが、日銀の利上げ観測が円高要因となり、レンジ取引となりそうです。

7.リート

<現状>

●グローバルリート市場(米ドルベース)では、米国、日本などのリート市場が好調でした。一方、CPIの上振れから政策金利の引き下げ期待がなくなった豪州市場が軟調でした。米国では、高齢者向け賃貸住宅や専門看護施設などヘルスケアセクターのリートが上昇を支えました。ヘルスケアセクターは、リテール、インダストリアル(倉庫など)セクターに次ぎウェイトの大きいセクターです。

●日本では、オフィス賃貸市場のファンダメンタルズ改善を背景にリート指数は堅調な展開が続いています。東証の投資家主体別売買動向によると、10月、海外投資家が利益確定売りから3カ月ぶりに売り越しましたが、証券会社の自己売買部門、銀行、生損保が買い越しとなりました。S&Pグローバルリート指数の11月のリターンは、構成比の大きい米国が上昇し前月末比+1.6%となりました。月間の換算用の円ドルレートは円安となり、円ベースのリターンは同+2.9%となりました。

<見通し>

●グローバルリート市場は、日米の金融政策や長期金利動向に左右される展開が想定されます。ただし、米国では国内景気が減速している模様ですが、金利低下期待と出遅れ感が相場を支える見込みです。その他の市場では、保有不動産の質や分配金の安定性や成長性も重視する必要があります。中国や香港では、中国当局による政策期待は一巡したようです。

●日本では、良好なファンダメンタルズを背景に緩やかな回復が続くと予想します。増資を行う企業が増加しており、需給面では注意する必要がありますが、成長のための投資が増加する見込みです。また、分配金成長目標を掲げるリートが増えています。

8.まとめ


債券

●米国では、長期金利は短期的にもみ合い、中期的には上昇すると予想します。FRBの利下げは、予防的なもので相場に織り込み済みと見ています。

●欧州では、長期金利はレンジ内での推移を予想します。政策金利が据え置かれ、欧州の財政赤字拡大から期間プレミアムは高止まりする見込みです。

●日本の長期金利は、追加利上げ観測を背景に緩やかに上昇すると予想します。26年1月利上げを見込んでいますが、為替動向には要注意です。

株式

●米国株式市場では、AIやデータセンター関連銘柄の選別基準が学習から推論へ、モデルやハードの性能の良し悪しよりもどれくらいユーザーから収益を上げられるかに関心が移っているようです。第4四半期も企業業績は増益見通しですが、政府機関閉鎖の悪影響などで、伸び率は鈍化見込みです。

●日本株式市場では、高市政権により、①ガソリン減税、②電力・ガス料金補助の増額、③おこめ券など重点支援地方交付金の拡充、など物価上昇を抑制しつつ、消費を活性化する政策が導入されました。原油安などエネルギーコストの低下、円安の進行により輸出採算の改善も見込まれ、26年度の企業業績は改善に向かう見通しです。自社株買いなどさらなる株主還元強化への期待も、株価の上昇要因です。

為替

●円の対米ドルレートでは、日銀の利上げ観測が後退し円安となっています。しかし、弊社は今後利上げ観測は再び強まるとみており、対米ドルレートは徐々に修正されると予想しています。ただし、日米金利差の大きさや対米投資の拡大を考慮すると、円高圧力は限定的になりそうです。

●円の対ユーロレートでは、もみ合いの展開を予想します。FRBの利下げ観測が高まる中、ECBの利下げは一巡したとみられ、ユーロは米ドルに対し上昇すると見込まれます。円も米ドルに対し緩やかな円高を予想するため、円の対ユーロレートはもみ合いとなる見通しです。

●円の対豪ドルレートでは、豪ドルには商品市況上昇などの上昇要因がありますが、日銀の利上げ観測が円高要因となり、レンジ取引となりそうです。

リート

●日本では、良好なファンダメンタルズを背景に緩やかな回復が続くと予想します。増資を行う企業が増加しており、需給面では注意する必要がありますが、成長のための投資が増加する見込みです。また、分配金成長目標を掲げるリートが増えています。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。