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先月のマーケットの振り返り(2023年3月)

2023年4月4日

1.概観

株式

3月の主要国の株式市場は高安まちまちとなりました。米国株式市場は、シリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻したことを受けて、金融システム全体に波及するリスクへの懸念が高まったことから一時急落しましたが、金融当局の迅速な対応により金融不安が和らいだことで買い戻され、小幅高となりました。欧州の株式市場も、スイス金融大手の株価急落で金融不安が高まり、下落しましたが、米株に連れて戻り歩調となりました。日本の株式市場は、欧米の株式市場が下落するなかでも比較的底堅く推移し、月末にかけ上昇して終了しました。中国株式市場では、米欧の金融不安への警戒が嫌気されたものの、経済再開への期待が支えとなり、上海総合指数がほぼ横ばい、香港ハンセン指数は上昇しました。

債券

主要国の債券市場は、SVBの経営破綻を契機とした金融不安の高まりで堅調な展開となり、10年国債利回り(長期金利)が大きく低下しました。米国の長期金利は、金融不安に伴い米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ停止が視野に入りつつあるとの見方から低下しました。ドイツの長期金利も、金融不安に伴う投資家のリスク回避姿勢が強まったことから低下しました。日本の長期金利も、欧米の金利低下に連れて低下しました。

為替

円は対米ドルで上昇しました。金融不安の高まりで安全通貨とされる円が買われたほか、米長期金利低下に伴う日米金利差縮小が上昇要因となりました。

商品

原油価格は、金融不安に伴い世界景気が減速するとの懸念が高まったことから下落したものの、金融不安が和らいだため値を戻し、小幅安となりました。

個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

  (出所)FactSetのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

2.景気動向

<現状>

米国の10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.7%と、2四半期連続のプラス成長でした。高インフレの下でも個人消費が底堅く推移しました。

欧州(ユーロ圏)の10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+1.9%となりました。インフレの加速や大幅利上げの影響で前期から減速しました。

日本の10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.1%でした。マイナス成長だった前期から横ばいで、景気回復力の鈍さが明らかになりました。

中国の10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+2.9%と、前期から減速しました。ゼロコロナ政策の影響で経済活動が抑制されました。

豪州の10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+2.7%と、前期から減速しました。インフレ上昇の影響で個人消費の伸びが鈍化しました。

<見通し>

米国は、物価高の影響で消費が減速することに加え、FRBによる大幅な利上げと金融不安で信用環境が引き締まり、企業業績が減速することから、23年末にかけ低成長が続くとみられます。ただし、雇用が堅調なことから大幅なマイナス成長とはならず、グロース・リセッション的な状況になるとみています。

欧州は、低成長ながら緩やかな回復を続けるとみています。欧州中央銀行(ECB)の利上げ継続で23年後半には金融引き締めによる景気抑制効果が強まるものの、労働市場の安定、財政の支援、エネルギー価格を中心としたインフレのピークアウトなどが景気を支えるとみています。 

日本は、インバウンド消費の回復、設備投資の増加、経済対策を下支えに緩やかな景気回復が続く見通しです。ただし、23年度後半は欧米を中心とした海外景気の減速により、回復ペースが鈍化するとみています。

中国は、ゼロコロナ政策を終了したことから経済正常化に向けた動きが続くとみられます。政府によれば既に集団免疫が獲得されたとみられるため、今後リベンジ消費が増加することや、政府が景気対策を発動することが見込まれることから、景気は持ち直すとみています。

豪州は、世界経済の減速やインフレによる消費への下押し圧力を受けて成長率が鈍化するものの、緩やかな景気回復の流れが続く見通しです。中国経済の再開や、企業の投資意欲、良好な雇用環境、コロナ下で積み上がった貯蓄が、豪州経済を支えるとみています。

3.金融政策

<現状>

FRBは、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.50~4.75%から4.75~5.00%へ引き上げました。米銀の相次ぐ破綻を受けて金融不安が高まりましたが、インフレの抑制を優先し、0.25%の利上げを実施しました。ECBは3月の理事会で、3会合連続となる0.50%の大幅利上げを決めました。保有資産の圧縮については、6月にかけて月150億ユーロ規模で削減する方針です。日銀は、黒田東彦総裁にとって最後の定例会合となる3月の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の維持を決めました。また、国会で次期日銀総裁として植田和男氏の起用が承認されました。

 <見通し>

FRBは、5月に0.25%の利上げを実施し、FF金利の最終的な到達点(ターミナルレート)として5.00~5.25%まで引き上げた後、年内はFF金利を据え置くと想定しています。ECBは、高止まりしている食品価格やコアインフレを抑制するため、利上げを続ける見通しです。5月、6月にそれぞれ0.50%の利上げ、7月に0.25%の利上げを実施し、預金ファシリティ金利を4.25%まで引き上げた後、据え置くと見込んでいます。日銀は、新総裁就任後の4-6月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)における長期金利の変動許容幅を±1%程度に拡大すると予想しています。

4.債券

<現状>

主要国の債券市場は、SVBの経営破綻を契機とした金融不安の高まりで堅調な展開となり、10年国債利回り(長期金利)が大きく低下しました。米国の長期金利は、3月10日にSVBが破綻したことを受けて、金融システム全体に波及するリスクへの懸念が高まり、安全資産とされる債券の買いが膨らんだことから、急低下しました。FRBは22日のFOMCで0.25%の利上げを実施したものの、先行きの利上げ停止が意識され、米長期金利は低水準でもみ合いました。ドイツの長期金利も、金融不安に伴うリスク回避姿勢の高まりで、大きく低下しました。日本の長期金利も、欧米の金利低下を受けて、大幅に低下しました。投資適格社債については、金融不安の高まりから国債と社債の利回り格差が拡大しました。

<見通し>

米国の長期金利は、振れを伴いながら緩やかに低下する展開を予想します。底堅い雇用や粘着質のインフレが続くものの、金融不安の高まりで金融環境が引き締まることから、FRBの利上げ停止が視野に入ってきたとみられます。先行きはインフレの鈍化と景気減速が見込まれ、緩やかに低下する展開を予想します。欧州の長期金利も、賃上げによるインフレ圧力などからECBが金融引き締め姿勢を続けるものの、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。日本の長期金利は、新総裁就任後の日銀の政策修正により長期金利の許容変動幅が拡大され、先行き上昇する展開を予想しています。

個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

5.企業業績と株式

<現状>

S&P500種指数の3月の予想1株当たり利益(EPS)は228.0で、前年同月比▲2.2%(前月同▲0.9%)と2カ月連続のマイナスとなりました。しかし、前月比では+0.4%と2カ月連続でプラスとなっており、どうやら減益傾向に歯止めがかかり始めているようです。一方、TOPIXの予想EPSは155.5、伸び率は同+2.6%(同+5.6%)とプラスに転じました。前月比は+0.1%と3カ月ぶりにプラスに転換しました。

米国はSVBの経営破綻をきっかけに金融不安が広がりましたが、当局の迅速な支援が好感され、また、年内の利下げ観測も強まったことで、主要3指数は上昇して取引を終えました。NYダウは前月比+1.9%、S&P500種指数は同+3.5%、NASDAQ総合指数は同+6.7%でした。日本株式市場も欧米を中心に金融不安が広がったものの、円安や株価純資産倍率(PBR)の1倍割れの議論などから底堅く推移しました。日経平均株価は前月比+2.2%、TOPIXは同+0.5%でした。

<見通し>

S&P500種指数採用企業の22年10-12月期の増益率(純利益ベース)は23年1-3月期の増益率(純利益ベース)は前年同期比▲4.6%、除くエネルギーセクターで同▲6.2%の見通しです(3月24日。リフィニティブ集計)。一方、TOPIX採用企業の22年10-12月期の純利益は前年同期比▲22.9%となりました(3月期決算企業で除く金融、QUICK集計)。続く23年1-3月期は同+32.7%と大きく上昇する見通しです。

今後は米国での金融不安の行方、日本のマクロ指標が注目されそうです。米国では金融不安は一旦落ち着きを取り戻しつつありますが、預金の流出懸念が残る米中小銀行が貸出態度を厳しくするとの指摘もあります。年後半にかけて、借入コストの上昇など企業業績に悪影響が及ぶ懸念があり、株価の上値が重くなる可能性があります。一方、日本では1-3月期以降の生産や輸出などマクロ指標が注目されます。日本経済が回復を続けることで年後半に向けて企業業績の回復に対する信頼感が醸成されれば、株価は堅調さを維持すると思われます。

個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

6.為替

<現状>

円相場は米ドルに対し上昇しました。SVBの破綻を契機に金融不安が高まったことから投資家がリスク回避姿勢を強めるなか、安全通貨とされる円が買われました。金融不安の高まりでFRBの利上げ長期化観測が後退し、米長期金利が大きく低下したことを受けて、円の対米ドルレートは、前月末の136円台から、一時130円台まで上昇しました。その後金融不安が和らいだことから反落し、月末は1ドル=133円台で終了しました。一方、円の対ユーロレートはほぼ横ばいでした。ECBが利上げを継続し、高い金利水準を維持するとの見方からユーロが対米ドルで上昇したことが背景とみられます。また、円は、利上げ観測が後退した豪ドルに対し大きく上昇しました。

<見通し>

円の対米ドルレートは、FRBの利上げが最終段階に入りつつあるとみられることから、もみあいながら緩やかに上昇する展開を予想します。FRBの利上げは継続しているものの、先行きは米国の景気とインフレが鈍化するため、FRBの利上げ停止が意識され、円が小幅に上昇する展開を予想しています。円の対ユーロレートは、概ねレンジ内でもみ合いながら、緩やかに上昇すると予想します。ECBのタカ派姿勢がユーロのサポート要因となる一方、日銀の金融政策修正が円の買い材料となるとみています。また、円の対豪ドルレートは、もみ合う展開を予想しています。相対的に堅調な豪州景気がサポート要因となる一方、日銀の金融政策修正が意識されるためです。

個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

7.リート

<現状>

グローバルリート市場(米ドルベース)は、欧米の金融不安の高まりで、投資家のリスク回避姿勢が強まったことから下落しました。米国のリート市場は、FRBの利上げ停止観測から米長期金利が大きく低下したものの、金融不安に伴う信用収縮などを懸念した売りが優勢となり、下落しました。欧州のリート市場も金融不安の高まりを嫌気して下落しました。日本やアジアのリート市場も同様に、軟調な展開となりました。S&Pグローバルリート指数(米ドルベース)のリターンは前月末比▲3.5%となりました。また、為替効果がマイナスに寄与し、円ベースのリターンは同▲5.7%となりました。

<見通し>

米国リート市場は、FRBの利上げ打ち止め観測と先行きの景気後退が意識され、当面不安定な動きになることが見込まれます。ただし、米国経済はリセッションに陥るとしても、比較的軽微なものにとどまるとみられます。景気後退懸念が和らげば、米国リート市場は緩やかに上昇するとみています。欧州リート市場は、ECBによる引き締め姿勢から上値の重い展開を想定します。ただし、中長期では財政支出による景気回復とともに持ち直すとみています。日本リート市場は、景気回復の動きが続くものの、日銀の金融政策の不透明感から当面レンジ内でもみ合うとみています。アジア・オセアニアリート市場は、景気回復に伴いシンガポール中心に緩やかに上昇するとみています。

8.まとめ

債券

米国の長期金利は、振れを伴いながら緩やかに低下する展開を予想します。底堅い雇用や粘着質のインフレが続くものの、金融不安の高まりで金融環境が引き締まることから、FRBの利上げ停止が視野に入ってきたとみられます。先行きはインフレの鈍化と景気減速が見込まれ、緩やかに低下する展開を予想します。欧州の長期金利も、賃上げによるインフレ圧力などからECBが金融引き締め姿勢を続けるものの、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。日本の長期金利は、新総裁就任後の日銀の政策修正により長期金利の許容変動幅が拡大され、先行き上昇する展開を予想しています。

株式

S&P500種指数採用企業の22年10-12月期の増益率(純利益ベース)は23年1-3月期の増益率(純利益ベース)は前年同期比▲4.6%、除くエネルギーセクターで同▲6.2%の見通しです(3月24日。リフィニティブ集計)。一方、TOPIX採用企業の22年10-12月期の純利益は前年同期比▲22.9%となりました(3月期決算企業で除く金融、QUICK集計)。続く23年1-3月期は同+32.7%と大きく上昇する見通しです。今後は米国での金融不安の行方、日本のマクロ指標が注目されそうです。米国では金融不安は一旦落ち着きを取り戻しつつありますが、預金の流出懸念が残る米中小銀行が貸出態度を厳しくするとの指摘もあります。年後半にかけて、借入コストの上昇など企業業績に悪影響が及ぶ懸念があり、株価の上値が重くなる可能性があります。一方、日本では1-3月期以降の生産や輸出などマクロ指標が注目されます。日本経済が回復を続けることで年後半に向けて企業業績の回復に対する信頼感が醸成されれば、株価は堅調さを維持すると思われます。

為替

円の対米ドルレートは、FRBの利上げが最終段階に入りつつあるとみられることから、もみあいながら緩やかに上昇する展開を予想します。FRBの利上げは継続しているものの、先行きは米国の景気とインフレが鈍化するため、FRBの利上げ停止が意識され、円が小幅に上昇する展開を予想しています。円の対ユーロレートは、概ねレンジ内でもみ合いながら、緩やかに上昇すると予想します。ECBのタカ派姿勢がユーロのサポート要因となる一方、日銀の金融政策修正が円の買い材料となるとみています。また、円の対豪ドルレートは、もみ合う展開を予想しています。相対的に堅調な豪州景気がサポート要因となる一方、日銀の金融政策修正が意識されるためです。

リート

米国リート市場は、FRBの利上げ打ち止め観測と先行きの景気後退が意識され、当面不安定な動きになることが見込まれます。ただし、米国経済はリセッションに陥るとしても、比較的軽微なものにとどまるとみられます。景気後退懸念が和らげば、米国リート市場は緩やかに上昇するとみています。欧州リート市場は、ECBによる引き締め姿勢から上値の重い展開を想定します。ただし、中長期では財政支出による景気回復とともに持ち直すとみています。日本リート市場は、景気回復の動きが続くものの、日銀の金融政策の不透明感から当面レンジ内でもみ合うとみています。アジア・オセアニアリート市場は、景気回復に伴いシンガポール中心に緩やかに上昇するとみています。