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先月のマーケットの振り返り(2023年2月)

2023年3月2日

1.概観

株式

2月の主要国の株式市場は高安まちまちとなりました。米国株式市場は、堅調な景気とインフレの高止まりを背景に米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ停止が遠のくとの見方が強まったことを嫌気して下落しました。一方、欧州の株式市場は、域内のエネルギー不安が後退したことや、中国がゼロコロナ政策を終了したことを受けた景気回復期待から上昇しました。日本の株式市場は膠着感の強い動きとなるなか、円安が進んだことに伴う業績改善期待などから小幅高となりました。中国株式市場では、中国の気球撃墜をめぐる米中関係の悪化懸念や米長期金利上昇による資金流出懸念などから、香港ハンセン指数が大きく下落しました。

債券

欧米の債券市場は、堅調な景気とインフレ高止まりによる米国の利上げ停止観測の後退から軟調な展開となりました。米国の10年国債利回り(長期金利)は市場予想を上回る経済指標が相次いだことを受け、大きく上昇しました。ドイツの長期金利も米長期金利の上昇に連動し、大きく上昇しました。一方、日本の長期金利は、日銀の金融緩和の修正観測から、長期金利の許容レンジ上限近くでもみ合いました。

為替

円は対米ドルで大幅に下落しました。堅調な経済指標を受けて米国の長期金利が大きく上昇したことから、日米金利差の拡大を意識した円売りが強まりました。

商品

原油価格は、FRBなど主要な中央銀行の利上げが長引き、世界景気が減速するとの懸念が高まったことから下落しました。

  (出所)FactSetのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

2.景気動向

<現状>

米国の10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.7%と、2四半期連続のプラス成長でした。高インフレの下でも個人消費が底堅く推移しました。

欧州(ユーロ圏)の10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+1.9%となりました。インフレの加速や大幅利上げの影響で前期から減速しました。

日本の10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.6%でした。全国旅行支援などから個人消費が伸び、2四半期ぶりにプラス成長となりました。

中国の10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+2.9%と、前期から減速しました。ゼロコロナ政策の影響で経済活動が抑制されました。

豪州の10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+2.7%と、前期から減速しました。インフレ上昇の影響で個人消費の伸びが鈍化しました。

<見通し>

米国は、物価高の影響に伴い消費が減速することや、FRBによる大幅な利上げで信用環境が引き締まり、企業業績が減速することから、23年後半に景気後退局面入りするとみられます。ただし、金融バブルがみられないことなどから大幅なマイナス成長とはならず、グロース・リセッション的な状況になるとみています。

欧州は、暖冬やガス節減などを背景にエネルギー不足への懸念が後退しているため、景気は持ち直すとみられます。23年後半には金融引き締めによる景気抑制効果が強まるものの、労働市場の安定、財政の支援、インフレのピークアウトなどが支えとなり、緩やかな回復を続けるとみています。 

日本は、インバウンド消費の回復、設備投資の増加、経済対策を下支えに景気回復が続く見通しです。ただし、23年度後半は欧米を中心とした海外景気の減速により、回復ペースが鈍化する見通しです。

中国は、ゼロコロナ政策を終了したことから経済正常化に向けた動きが続くとみられます。政府によれば既に集団免疫が獲得されたとみられるため、今後リベンジ消費が増加することや、政府が景気対策を発動することが見込まれることから、景気は持ち直すとみています。

豪州は、世界経済の減速やインフレによる消費への下押し圧力を受けて成長率が鈍化するものの、緩やかな景気回復の流れが続く見通しです。中国経済の再開や、企業の投資意欲、良好な雇用環境、コロナ下で積み上がった貯蓄が、豪州経済を支えるとみています。

3.金融政策

<現状>

FRBは、2月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.25~4.50%から4.50~4.75%へ引き上げました。利上げ幅を前回の0.50%から0.25%に縮小し、通常モードに戻しました。ECBは2月の理事会で、預金ファシリティ金利などの0.50%引き上げを決めました。声明文で次回3月も0.5%の利上げを実施することを示唆しました。日銀は1月の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の維持を決めました。「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、物価上昇率見通しを22年度は3.0%、24年度は1.8%と前回から引き上げた一方、23年度は1.6%に据え置きました。政府は2月、次期日銀総裁に経済学者の植田和男氏を起用する人事案を国会に提示しました。

 <見通し>

FRBは、3月と5月にそれぞれ0.25%の利上げを実施し、FF金利の最終的な到達点(ターミナルレート)として5.00~5.25%まで引き上げた後、年内はFF金利を据え置き、来年初に利下げに転じると想定しています。ECBは、高止まりしている食品価格やコアインフレを抑制するため、大幅な利上げを続ける見通しです。3月に0.5%、5月、6月、7月にそれぞれ0.25%の利上げを実施し、預金ファシリティ金利を3.75%まで引き上げると見込んでいます。日銀は、新総裁就任後の4-6月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)における長期金利の変動許容幅を±1%程度に拡大すると予想しています。

4.債券

<現状>

欧米の債券市場は、堅調な景気とインフレ高止まりによる米国の利上げ停止観測の後退から軟調な展開となり、10年国債利回り(長期金利)が大きく上昇しました。米国の長期金利は、2月1日のFOMCを受け、FRBの利上げ終了が近いとの見方が強まり、3.4%程度に低下して始まりました。しかし、米雇用統計で雇用者数が市場予想を大幅に上回ったことを受けて、上昇に転じました。さらに米消費者物価指数などの経済指標が市場予想以上に堅調だったため、利上げ停止観測が後退し、3.9%台に大きく上昇しました。ドイツの長期金利も、米長期金利の上昇に連動し、大きく上昇しました。一方、日本の長期金利は、日銀の金融緩和の修正観測から、長期金利の許容レンジ上限近くでもみ合いました。投資適格社債については、国債と社債の利回り格差が小幅に拡大しました。

<見通し>

米国の長期金利は、底堅い雇用や粘着質のインフレを背景にFRBの引き締め姿勢が続くため当面高止まりするものの、先行きはインフレの鈍化と景気減速が見込まれることから、もみ合いながら緩やかに低下する展開を予想します。欧州の長期金利も、賃上げによるインフレ圧力などからECBが金融引き締め姿勢を続けるものの、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。日本の長期金利は、次期日銀総裁就任後の日銀の政策修正により長期金利の許容変動幅が拡大され、先行き上昇する展開を予想しています。

5.企業業績と株式

<現状>

S&P500種指数の2月の予想1株当たり利益(EPS)は227.3で、前年同月比▲0.9%(前月同+0.2%)と21年1月以来のマイナスとなりました。一方、TOPIXの予想EPSは155.6、伸び率は同+5.8%(同+7.7%)でした。米国では1日のFOMCで利上げ幅が0.25%に縮小されたこととパウエルFRB議長が会見で「ディスインフレのプロセスが始まった」などと述べたことから長期金利が低下し、米国株式市場は堅調となりました。しかし、3日に発表された1月の雇用統計で労働市場の強さが示されると、利上げ継続懸念の再燃から長期金利が上昇し、米国株式市場は軟調な展開に転じました。NYダウは前月比▲4.2%、S&P500種指数は同▲2.6%、NASDAQ総合指数は同▲1.1%でした。日本株式市場は伸び悩みましたが円安・ドル高が進んだことが下支えとなりました。米国の利上げ継続懸念に加え、次期日銀総裁候補である植田和男氏が現在の金融緩和政策を当面続ける見通しであることから日米金利差が拡大したことが背景です。日経平均株価は前月比+0.4%、TOPIXは同+0.9%でした。

<見通し>

S&P500種指数採用企業の22年10-12月期の増益率(純利益ベース)は前年同期比▲3.2%、除くエネルギーセクターで同▲7.4%でした(2月24日。リフィニティブ集計で進捗率93%)。続く23年1-3月期は前年同期比▲4.3%、4-6月期は同▲3.5%と、先月の見通し(それぞれ同▲1.2%、同▲2.0%)から下方修正となりました。除くエネルギーセクターも1-3月期が同▲6.2%(先月同▲2.9%)、4-6月期が同+0.7%(先月同+2.2%)と下方修正となりました。一方、TOPIX採用企業の22年10-12月期の純利益は前年同期比▲22.7%となりました(3月1日。3月期決算企業で除く金融、QUICK集計で進捗率99%)。売上高は同+16.2%、営業利益は同+4.8%でしたが、為替差損の発生に加え、電力会社などの大幅赤字が影響しました。続く23年1-3月期は電気・ガス業や陸運業、空運業などの黒字転換も予想されるなど非製造業がけん引し、TOPIX採用企業の業績は回復傾向を強めると期待されます。日米株式市場ともに業績の底入れ時期が注目されます。

6.為替

<現状>

円相場は対米ドルで大幅に下落しました。堅調な米雇用統計をはじめ市場予想を上回る米経済指標の発表が相次ぎ、米長期金利が大きく上昇したことから、日米金利差の拡大を意識した円売りが加速しました。植田次期日銀総裁候補が大規模な金融緩和策を続ける考えを示したことも円の弱材料となりました。先月末130円近辺だった円の対米ドルレートは、月末136円台で終了しました。欧州の長期金利も大きく上昇したため、円は対ユーロレートでも下落し、1ユーロ=144円台で終了しました。一方、円の対豪ドルレートは1豪ドル=91円台で概ね横ばいでした。失業率の悪化などから豪ドルが対米ドルで下落したことが背景です。

<見通し>

円の対米ドルレートは、レンジを切り上げつつ緩やかに上昇する展開を予想します。FRBの利上げは当面継続するものの、先行きは米国の景気とインフレが鈍化するため、FRBの利上げ停止と日銀の金融引き締めが意識され、米ドルが弱含む展開を予想しています。円の対ユーロレートは、レンジ内のもみ合いを予想します。ECBのタカ派姿勢がユーロのサポート要因となる一方、日銀の政策修正も意識されるためです。また、円の対豪ドルレートも、もみ合う展開を予想しています。相対的に堅調な豪州景気がサポート要因となる一方、日銀の金融政策修正が意識されるためです。

7.リート

<現状>

グローバルリート市場(米ドルベース)は下落しました。米国のリート市場は、堅調な米経済指標の発表が相次ぎ、FRBの利上げ停止が遠のいたとの観測から米長期金利が大きく上昇したことを嫌気して下落しました。一方、株価の上昇を好感して欧州のリート市場は上昇しました。日本のリート市場は、植田次期日銀総裁候補が金融緩和政策を継続する考えを示したことを受けて反発しました。S&Pグローバルリート指数(米ドルベース)のリターンは前月末比▲4.6%となりました。一方、為替効果はプラスに寄与し、円ベースのリターンは同▲0.1%となりました。

<見通し>

米国リート市場は、FRBの利上げ長期化観測と先行きの景気後退が意識され、当面不安定な動きになることが見込まれます。ただし、米国経済はリセッションに陥るとしても、比較的軽微なものにとどまるとみられます。FRBのタカ派姿勢が和らげば、米国リート市場は緩やかに上昇するとみています。欧州リート市場は、ECBによる引き締め強化から上値の重い展開を想定します。ただし、中長期では財政支出による景気回復とともに持ち直すとみています。日本リート市場は、景気回復の動きが続くものの、日銀の金融政策の不透明感から当面レンジ内でもみ合うとみています。アジア・オセアニアリート市場は、景気回復に伴いシンガポール中心に緩やかに上昇するとみています。

8.まとめ

債券

米国の長期金利は、底堅い雇用や粘着質のインフレを背景にFRBの引き締め姿勢が続くため当面高止まりするものの、先行きはインフレの鈍化と景気減速が見込まれることから、もみ合いながら緩やかに低下する展開を予想します。欧州の長期金利も、賃上げによるインフレ圧力などからECBが金融引き締め姿勢を続けるものの、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。日本の長期金利は、次期日銀総裁就任後の日銀の政策修正により長期金利の許容変動幅が拡大され、先行き上昇する展開を予想しています。

株式

S&P500種指数採用企業の22年10-12月期の増益率(純利益ベース)は前年同期比▲3.2%、除くエネルギーセクターで同▲7.4%でした(2月24日。リフィニティブ集計で進捗率93%)。続く23年1-3月期は前年同期比▲4.3%、4-6月期は同▲3.5%と、先月の見通し(それぞれ同▲1.2%、同▲2.0%)から下方修正となりました。除くエネルギーセクターも1-3月期が同▲6.2%(先月同▲2.9%)、4-6月期が同+0.7%(先月同+2.2%)と下方修正となりました。一方、TOPIX採用企業の22年10-12月期の純利益は前年同期比▲22.7%となりました(3月1日。3月期決算企業で除く金融、QUICK集計で進捗率99%)。売上高は同+16.2%、営業利益は同+4.8%でしたが、為替差損の発生に加え、電力会社などの大幅赤字が影響しました。続く23年1-3月期は電気・ガス業や陸運業、空運業などの黒字転換も予想されるなど非製造業がけん引し、TOPIX採用企業の業績は回復傾向を強めると期待されます。日米株式市場ともに業績の底入れ時期が注目されます。

為替

円の対米ドルレートは、レンジを切り上げつつ緩やかに上昇する展開を予想します。FRBの利上げは当面継続するものの、先行きは米国の景気とインフレが鈍化するため、FRBの利上げ停止と日銀の金融引き締めが意識され、米ドルが弱含む展開を予想しています。円の対ユーロレートは、レンジ内のもみ合いを予想します。ECBのタカ派姿勢がユーロのサポート要因となる一方、日銀の政策修正も意識されるためです。また、円の対豪ドルレートも、もみ合う展開を予想しています。相対的に堅調な豪州景気がサポート要因となる一方、日銀の金融政策修正が意識されるためです。

リート

米国リート市場は、FRBの利上げ長期化観測と先行きの景気後退が意識され、当面不安定な動きになることが見込まれます。ただし、米国経済はリセッションに陥るとしても、比較的軽微なものにとどまるとみられます。FRBのタカ派姿勢が和らげば、米国リート市場は緩やかに上昇するとみています。欧州リート市場は、ECBによる引き締め強化から上値の重い展開を想定します。ただし、中長期では財政支出による景気回復とともに持ち直すとみています。日本リート市場は、景気回復の動きが続くものの、日銀の金融政策の不透明感から当面レンジ内でもみ合うとみています。アジア・オセアニアリート市場は、景気回復に伴いシンガポール中心に緩やかに上昇するとみています。