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先月のマーケットの振り返り(2023年1月)

2023年2月2日

1.概観

株式

1月の主要国の株式市場は概ね上昇しました。米国株式市場は、インフレのピークアウト観測を背景に米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げペースを緩めるとの見方から、米長期金利が低下したことを支えに堅調な展開となりました。欧州の株式市場も、域内のエネルギー不安が後退したことや、中国がゼロコロナ政策を終了したことを受けて、景気への先行き懸念が後退したことから反発しました。日本の株式市場は、欧米の株式市場の上昇を受けて、投資家のリスク選好姿勢が強まり、上昇しました。中国株式市場は、ゼロコロナ政策終了に伴う経済活動の正常化や追加の景気刺激策による景気回復期待から、上海総合指数、香港ハンセン指数ともに上昇しました。

債券

米10年国債利回り(長期金利)は、12月の米雇用統計で賃金インフレへの懸念が弱まったことや、12月の米消費者物価上昇率が鈍化したことから、インフレのピークアウトが意識され、FRBが利上げペースを減速するとの見方が強まったため低下しました。ドイツの長期金利も、インフレが減速したことから、欧州中央銀行(ECB)が利上げペースを緩めるとの見方が台頭し、低下しました。一方、日本の長期金利は、日銀の金融緩和の修正観測から上昇しました。

為替

円相場は、インフレのピークアウト傾向を受けた米長期金利低下や先行きの日銀の政策修正観測から、対米ドルで続伸しました。

商品

原油価格は、月初に景気悪化懸念から急落したものの、中国のゼロコロナ政策終了に伴う原油需要の回復期待から買い戻され、小幅安となりました。

  (出所)FactSetのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

2.景気動向

<現状>

米国の10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.9%と、2四半期連続で堅調な成長でした。高インフレの下でも個人消費が底堅く推移しました。

欧州(ユーロ圏)の10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+1.9%となりました。インフレの加速や大幅利上げの影響で前期から減速しました。

日本の7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率▲0.8%でした。輸入の増加に伴う外需のマイナス寄与から2四半期ぶりにマイナス成長となりました。

中国の10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+2.9%と、前期から減速しました。ゼロコロナ政策の影響で経済活動が抑制されました。

豪州の7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比+5.9%でした。前期比では4四半期連続のプラスでしたが、個人消費がやや鈍化しました。

<見通し>

米国は、物価高による影響で消費が減速することや、FRBによる大幅な利上げの影響で、23年央にかけて景気後退局面入りするとみられます。ただし、過剰設備や金融バブルがみられないことから大幅なマイナス成長とはならず、グロース・リセッション的な状況になるとみています。

欧州は、暖冬やガス節減などを背景にガス不足への過度な懸念が後退していることから、景気は安定化に向かうとみられます。23年後半には金融引き締めによる景気抑制効果が強まるものの、労働市場の安定、財政の支援、インフレのピークアウトなどが支えとなり、緩やかな回復を続けるとみています。 

日本は、23年前半に欧米を中心とした海外景気の減速により、回復ペースが大きく鈍化する見通しです。ただ、年後半は、設備投資の回復や経済政策の効果に支えられ、内需を中心に緩やかに回復するとみています。

中国は、ゼロコロナ政策を終了したことから感染急拡大により23年初に景気は悪化するとみられます。ただし、時間の経過とともに集団免疫が獲得されることや、政府が景気対策を発動すること、リベンジ消費の増加が見込まれることから、23年春以降持ち直すとみています。

豪州は、世界経済の減速やインフレによる消費への下押し圧力を受けて成長率が鈍化するものの、緩やかな景気回復の流れが続く見通しです。企業の投資意欲、旺盛な求人を背景とした良好な雇用環境、コロナ下で積み上がった貯蓄が、引き続き豪州経済を支えるとみています。

3.金融政策

<現状>

FRBは、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を3.75~4.00%から4.25~4.50%へ引き上げました。利上げ幅は4会合続いた0.75%から0.50%に縮小しました。FOMCメンバーの政策金利見通し(ドットチャート)では、見通しの中央値が23年末5.125%、24年末4.125%と上方修正されました。ECBは12月の理事会で、預金ファシリティ金利などの0.50%引き上げと、23年3月から量的緩和で膨らんだ資産を縮小することを決めました。日銀は1月の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の維持を決めました。「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、物価上昇率見通しを22年度は3.0%、24年度は1.8%と前回から引き上げた一方、23年度は1.6%に据え置きました。

 <見通し>

FRBは、23年2月と3月にそれぞれ0.25%の利上げを実施し、FF金利の最終的な到達点(ターミナルレート)として4.75~5.00%に引き上げた後、年内それを維持すると想定しています。ECBは、高止まりしている⾷品価格やコアインフレを抑制するため、大幅な利上げを続ける見通しです。23年2月、3月に0.5%、5月、6月、7月にそれぞれ0.25%の利上げを実施し、預金ファシリティ金利を3.75%まで引き上げると見込んでいます。日銀は、黒田総裁退任後の23年4-6月に長短金利操作(イールドカーブコントロール)における長期金利の変動許容幅を±1%程度に拡大すると予想しています。

4.債券

<現状>

欧米の債券市場はインフレ懸念後退で堅調な展開となり、10年国債利回り(長期金利)は低下しました。前月末に3.9%程度だった米長期金利は、月末3.5%台で終了しました。12月の米雇用統計で賃金インフレへの懸念が弱まったことや、12月の米消費者物価上昇率が鈍化したことから、インフレのピークアウトが意識され、FRBが利上げペースを減速するとの見方が強まったため低下しました。ドイツの長期金利も、12月の消費者物価上昇率が市場予想以上に鈍化したことを受けて、インフレのピークアウトが意識され、ECBが利上げペースを緩めるとの見方から低下しました。一方、日本の長期金利は、日銀の金融緩和の修正観測から、長期金利の許容レンジ上限近くに上昇しました。投資適格社債については、投資家のリスク選好姿勢が強まるなか、国債と社債の利回り格差が縮小しました。

<見通し>

米国の長期金利は、インフレのピークアウトと景気減速の見通しから、FRBの利上げ打ち止めと先行きの利下げが意識されるため、もみ合いながらやや低下する展開を予想します。欧州の長期金利も、賃上げによるインフレ圧力などからECBが金融引き締めを続けるものの、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。日本の長期金利は、新総裁就任後の日銀の政策修正により長期金利の許容変動幅が拡大され、先行き上昇する展開を予想しています。

5.企業業績と株式

<現状>

S&P500種指数の1月の1株当たり予想利益(EPS)は227.2で、前年同月比+0.3%(前月同+3.2%)となりました。前月比は▲1.5%と5カ月連続のマイナスです。一方、TOPIXの予想EPSは156.6、伸び率は同+7.8%(前月同+10.0%)でした。前年比が1ケタ台の伸びとなったのは21年4月以来です。1月の米国株式市場は堅調でした。米国株式市場は、12月の消費者物価上昇率の伸び鈍化でインフレ懸念が後退したこと、主要企業の決算が好調なこと、10-12月期の実質GDP成長率が市場予想を上回り、景気後退懸念が和らいだこと、などが支えとなりました。NYダウは前月比+2.8%、S&P500種指数は同+6.2%、NASDAQ総合指数は同+10.7%でした。日本株式市場は米国のインフレ懸念の後退と米長期金利の低下が追い風となったものの、日銀の政策変更を睨み、米ドル/円レートが意識され、上値が抑えられました。ただ、中国のゼロコロナ政策の実質放棄が先行きの中国景気を押し上げるとの期待が下支え要因の1つになったと思われます。日経平均株価は前月比+4.7%、TOPIXは同+4.4%でした。

<見通し>

S&P500種指数採用企業の22年10-12月期決算発表がスタートしています。増益率(純利益ベース、TOPIXも同様)は前年同期比▲2.9%、除くエネルギーセクターで同▲7.1%と予想されます(23年1月27日時点。リフィニティブ集計で進捗率29%)。続く23年1-3月期は前年同期比▲1.2%、4-6月期が同▲2.0%となる見通しです。一方、除くエネルギーセクターの1-3月期見通しは同▲2.9%ですが、4-6月期には同+2.2%と5四半期ぶりに増益に転じる見通しです。一方、TOPIX採用企業の22年10-12月期の増益率は前年同期比+0.01%の見通しです(23年2月1日時点。除く金融、QUICK集計で進捗率26%)。日米ともに業績の方向性が注目されそうです。

6.為替

<現状>

円相場は対米ドルで続伸しました。先月末132円近辺だった円の対米ドルレートは、月末130円台で終了しました。円は、インフレのピークアウト傾向を受けた米長期金利低下や日銀の政策修正の思惑から月中旬に127円台まで上昇しました。しかし、日銀が金融政策を維持したことを受けて、その後は129~130円台を中心にもみ合う展開となりました。一方、円の対ユーロレートは下落し、1ユーロ=141円台で終了しました。欧州景気に対する過度な懸念が和らぎ、ユーロが堅調な展開となりました。また、中国景気回復期待などから円は豪ドルに対しても売られ、円の対豪ドルレートは1豪ドル=91円台に下落しました。

<見通し>

円の対米ドルレートは、レンジを切り上げつつ緩やかに上昇する展開を予想します。日米金利差の絶対水準や資源価格高に伴う日本の貿易収支悪化から、円の上昇余地は限られるものの、米国のインフレがピークアウトするなか、FRBの利上げ打ち止めと日銀の金融引き締めが意識され、米ドルは弱含む展開を予想しています。円の対ユーロレートは、レンジ内のもみ合いを予想します。ECBのタカ派姿勢がユーロのサポート要因となる一方、日銀の政策修正も意識されるためです。また、円の対豪ドルレートも、相対的に堅調な豪州景気がサポート要因となる一方、日銀の金融政策修正が意識されるため、もみ合う展開を予想しています。

7.リート

<現状>

グローバルリート市場(米ドルベース)は上昇しました。米国のリート市場は、インフレのピークアウト観測を背景にFRBが利上げペースを減速するとの見方が強まり、米長期金利が低下したことや米株式市場が上昇したことを好感して大きく上昇しました。欧州のリート市場やアジアのリート市場も長期金利の低下と株式市場の上昇を受けて、上昇しました。一方、日本のリート市場は、1月の金融政策決定会合で日銀が金融政策を維持したものの、先行きの政策修正が意識され、続落しました。S&Pグローバルリート指数(米ドルベース)のリターンは前月末比+9.2%となりました。一方、為替効果はマイナスに寄与し、円ベースのリターンは同+7.7%となりました。

<見通し>

米国リート市場は、FRBの大幅な利上げを受けた景気後退が意識され、当面不安定な動きになることが見込まれます。ただし、米国経済はリセッションに陥るとしても、比較的軽微な景気後退にとどまるとみられます。FRBのタカ派姿勢が和らげば、米国リート市場は緩やかに上昇するとみています。欧州リート市場は、ECBによる引き締め強化から上値の重い展開を想定します。ただし、中長期では財政支出による景気回復とともに持ち直すとみています。日本リート市場は、景気回復の動きが続くものの、日銀の金融政策の不透明感から当面レンジ内でもみ合うとみています。アジア・オセアニアリート市場は、景気回復に伴いシンガポール中心に緩やかに上昇するとみています。

8.まとめ

債券

米国の長期金利は、インフレのピークアウトと景気減速の見通しから、FRBの利上げ打ち止めと先行きの利下げが意識されるため、もみ合いながらやや低下する展開を予想します。欧州の長期金利も、賃上げによるインフレ圧力などからECBが金融引き締めを続けるものの、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。日本の長期金利は、新総裁就任後の日銀の政策修正により長期金利の許容変動幅が拡大され、先行き上昇する展開を予想しています。

株式

S&P500種指数採用企業の22年10-12月期決算発表がスタートしています。増益率(純利益ベース、TOPIXも同様)は前年同期比▲2.9%、除くエネルギーセクターで同▲7.1%と予想されます(23年1月27日。リフィニティブ集計で進捗率29%)。続く23年1-3月期は前年同期比▲1.2%、4-6月期が同▲2.0%となる見通しです。一方、除くエネルギーセクターの1-3月期見通しは同▲2.9%ですが、4-6月期には同+2.2%と5四半期ぶりに増益に転じる見通しです。一方、TOPIX採用企業の22年10-12月期の増益率は前年同期比+0.01%の見通しです(23年2月1日。除く金融、QUICK集計で進捗率26%)。日米ともに業績の方向性が注目されそうです。

為替

円の対米ドルレートは、レンジを切り上げつつ緩やかに上昇する展開を予想します。日米金利差の絶対水準や資源価格高に伴う日本の貿易収支悪化から、円の上昇余地は限られるものの、米国のインフレがピークアウトするなか、FRBの利上げ打ち止めと日銀の金融引き締めが意識され、米ドルは弱含む展開を予想しています。円の対ユーロレートは、レンジ内のもみ合いを予想します。ECBのタカ派姿勢がユーロのサポート要因となる一方、日銀の政策修正も意識されるためです。また、円の対豪ドルレートも、相対的に堅調な豪州景気がサポート要因となる一方、日銀の金融政策修正が意識されるため、もみ合う展開を予想しています。

リート

米国リート市場は、FRBの大幅な利上げを受けた景気後退が意識され、当面不安定な動きになることが見込まれます。ただし、米国経済はリセッションに陥るとしても、比較的軽微な景気後退にとどまるとみられます。FRBのタカ派姿勢が和らげば、米国リート市場は緩やかに上昇するとみています。欧州リート市場は、ECBによる引き締め強化から上値の重い展開を想定します。ただし、中長期では財政支出による景気回復とともに持ち直すとみています。日本リート市場は、景気回復の動きが続くものの、日銀の金融政策の不透明感から当面レンジ内でもみ合うとみています。アジア・オセアニアリート市場は、景気回復に伴いシンガポール中心に緩やかに上昇するとみています。