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先月のマーケットの振り返り(2022年10月)

2022年11月2日

1.概観

株式

10月の主要国の株式市場は、中国を除いて大きく反発しました。米国株式市場は、米10年国債利回り(長期金利)が上昇したものの、米連邦準備制度理事会(FRB)が年内に利上げペースを鈍化させるとの見方が台頭したことから買い戻しが入り、大幅に上昇しました。欧州の株式市場は、欧州中央銀行(ECB)が大幅な連続利上げを決定しましたが、米国株式市場の反発を受けて反発しました。日本の株式市場も、欧米市場の反発に伴う投資家のリスク選好姿勢の回復から大きく上昇しました。一方、中国株式市場は、中国共産党の習近平総書記による3期目の最高指導部が習氏の側近らで占められたことを嫌気して、上海総合指数、香港ハンセン指数ともに大きく下落しました。

債券

米国の長期金利は、FRBが積極的な利上げを続けるとの見方が強まり、一時14年ぶりとなる4.2%台を付けましたが、FRBが年内に利上げペースを鈍化させるとの観測が浮上したため、月末にかけてやや低下して4.0%台で終了しました。ドイツの長期金利は、ECBが0.75%の連続利上げを決定したものの、ほぼ横ばいで終了しました。日本の長期金利は、日銀が許容変動幅の上限とする水準近辺で推移し、ほぼ横ばいでした。

為替

日米金利差を背景とした円売り圧力が続くなか、円は対米ドルで続落し、148円台で終了しました。円は、一時32年ぶりとなる151円台を付けました。

商品

原油価格は、石油輸出国機構(OPEC)プラスが減産を決めたことで、需給引き締まりを見込んだ買いが優勢となり、上昇しました。

  (出所)FactSetのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

2.景気動向

<現状>

米国の7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.6%となりました。3四半期ぶりにプラス成長となりましたが、個人消費は減速しました。

欧州(ユーロ圏)の7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.7%となりました。インフレが大幅に上昇するなか、前四半期から急減速しました。

日本の4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+3.5%となりました。新型コロナ対策のまん延防止等重点措置解除で消費が回復しました。

中国の7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比+3.9%となりました。前四半期からは持ち直したものの、ゼロコロナ政策は維持されています。

豪州の4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+3.6%でした。堅調な個人消費や資源の輸出に支えられ、伸び率が前期から加速しました。

<見通し>

米国は、物価高による実質所得の目減りを受けて消費が停滞することや、FRBによる大幅な利上げに伴い金融環境が引き締まることから、23年央にかけて減速するとみられます。ただし、過剰設備や金融バブルがみられないことから大幅なマイナス成長とはならず、グロース・リセッション的な状況になるとみています。

欧州は、供給制約やガス不足による製造業の停滞、エネルギー・食品価格の上昇による実質所得の減少などから、22年後半から23年初にかけてマイナス成長に陥るとみられます。ただし、労働市場の安定、財政の支援、ガス備蓄の進展、インフレのピークアウトなどから23年央には持ち直すとみています。 

日本は、設備投資の回復や経済政策の効果に支えられ、内需を中心に回復するとみています。ただし、23年前半は欧米を中心とした海外景気の減速により、回復ペースが大きく鈍化する見通しです。

中国は、政府が景気対策を発動することから23年に持ち直すものの、不動産市場の低迷やゼロコロナ政策の堅持が足かせとなり、回復ペースは力強さを欠くとみられます。習近平総書記への権力集中が強まり、経済政策面の安定性について不透明感が高まるリスクがあります。

豪州は、世界経済の減速を受けて成長率が鈍化するものの、景気回復の流れが続く見通しです。中国経済が停滞しても一定の資源需要は見込まれるほか、企業の投資意欲、旺盛な求人を背景とした良好な雇用環境、コロナ下で積み上がった貯蓄が、引き続き豪州経済を支えるとみています。

3.金融政策

<現状>

FRBは、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25~2.50%から3.00~3.25%へ、3会合連続で0.75%引き上げました。FOMC参加者の政策金利見通し(中央値)では、22年末に4.375%、23年末に4.625%まで金利を引き上げるシナリオが示されました。ECBは10月の理事会で、預金ファシリティ金利を2会合連続で0.75%引き上げることを決めました。日銀は10月の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策を維持しました。「展望リポート」では、22年度の物価上昇率の見通しを前年度比2.9%に引き上げました。

 <見通し>

FRBは、景気よりもインフレ抑制を優先し、今後もFOMCごとに利上げを実施すると予想しています。11月に0.75%、12月に0.50%の利上げを行い、来年1~3月も計0.50%の利上げを実施すると想定しています。ECBも、エネルギー価格の上振れによるインフレ抑制のため、大幅な利上げを行う見通しです。12月に0.75%、来年前半に計1.00%の利上げを実施すると想定しています。一方、日銀は、物価が相対的に低位にあるなか、現行の大規模金融緩和を継続する見通しです。

4.債券

<現状>

米国の10年国債利回り(長期金利)は、上昇しました。米長期金利は月初に一時3.6%台に低下しましたが、その後は、米雇用統計で労働市場の強さが示されたことや消費者物価指数が市場予想を上回ったことを受けて、FRBが積極的な利上げを続けるとの見方が強まり、再び上昇基調となりました。21日には、14年ぶりに4.2%台を付けました。しかし、FRBが年内に利上げペースを鈍化させるとの観測が浮上し、債券の買い戻しが入ったため、月末にかけてやや低下して4.0%台で終了しました。ドイツの長期金利は、ECBが10月の理事会で2会合連続の0.75%の利上げを決定したものの、概ね織り込み済みでほぼ横ばいで終了しました。日本の長期金利は、日銀が許容変動幅の上限とする水準近辺で推移し、ほぼ横ばいでした。投資適格社債については、国債と社債の利回り格差は、前月比ほぼ横ばいでした。

<見通し>

米国の長期金利は、FRBの金融引き締めが続くなかで上昇圧力を受けるものの、大幅利上げに伴い先行きの景気減速が意識されるため、もみ合う展開を予想します。欧州の長期金利は、エネルギー価格上昇に伴うインフレ圧力によりECBが金融引き締めを強めるなか、当面は上昇地合いが続く展開を予想します。日本の長期金利は、日銀の大規模金融緩和策が継続されるため、低水準での横ばい推移が続くと予想します。

5.企業業績と株式

<現状>

S&P500種指数の10月の1株当たり予想利益(EPS)は232.4で、前年同月比は+6.7%(前月同+10.5%)となりました。前月比は▲1.9%とマイナス幅が拡大しました(前月同▲0.4%)。一方、TOPIXの予想EPSは157.9で、伸び率は同+15.6%(前月同+16.0%)でした。10月前半の米国株式主要3指数は、9月の雇用統計やCPIが市場予想を上回り、引き締め的な金融政策の継続が意識されたことから、ザラ場ベースで年初来安値を更新しました。しかし、後半は、7-9月期の決算が市場の想定ほど悪くなかったことや金融政策の「ピボット(転換)」期待の高まり、財政悪化懸念で混乱していた欧州市場の落ち着きなどを背景に大幅な上昇となりました。NYダウが前月比+14.0%、S&P500種指数が同+8.0%、NASDAQ総合指数が同+3.9%でした。一方、日本株式市場も前半は値の重い展開でしたが、後半は米長期金利の低下や米国株式市場の上昇にけん引され、堅調に推移しました。日経平均株価は前月比+6.4%、TOPIXは同+5.1%でした。

<見通し>

S&P500種指数採用企業の22年7-9月期の増益率(当期利益)は前年同期比+4.1%、除くエネルギーセクターで同▲3.5%と、前月末時点予想の同+4.6%、同▲1.9%からいずれも下方修正されました(10月28日。リフィニティブ集計)。また、除くエネルギーセクターは10-12月期も同▲1.5%と前月の同2.1%から減益予想に転換しました。米国株式市場は、業績の悪化を織り込みつつ、下値離れの展開となっています。しかし、引き締め的な金融政策は維持され、景気が悪化するのはむしろこれからと予想されており、株価回復の持続性が改めて問われそうです。一方、TOPIX採用企業の7-9月期決算(前年同期比)は、売上高が+24.1%、営業利益が+10.8%、経常利益が+14.5%、当期利益が+9.4%です(11月1日現在。3月期決算、銘柄数進捗率28.8%、除く金融、QUICK集計)。4-6月期と比べると、現時点では、売上高、営業利益が前期を上回る一方、経常利益、当期利益は下回っています。22年度後半の収益環境は必ずしも明るいものではないだけに、日本株式市場についても業績の方向性が注目されそうです。

6.為替

<現状>

日米金利差を背景とした円売り圧力が続くなか、円は対米ドルで続落しました。月上旬は、前月に日銀による円売り介入が行われた145円水準が意識され、144円台でもみ合いましたが、徐々に日米金利差拡大を見込んだ円売りが優勢となり、146円台を抜けると勢いがつき、下落基調が強まりました。21日には、一時32年ぶりとなる151円台を付けましたが、日銀が再び円売り介入を実施したことで、反発しました。その後円は146円近辺(一部報道では144円台)まで値を戻しましたが、月末にかけ売られ、148円台に下落して終了しました。円は対ユーロでも下落し、1ユーロ=147円台近辺で終了しました。また、円は資源国通貨とされる豪ドルに対しても売られ、95円台に下落しました。

<見通し>

円の対米ドルレートは、緩やかな下落を予想します。日米の金融政策の方向性の違いや資源価格高に伴う日本の貿易収支悪化から、円安圧力は継続すると考えられます。ただし、米国の景気とインフレがピークアウトする見通しであることから、米ドルの上値は徐々に抑制されてくるとみています。円の対ユーロレートは、緩やかな下落を予想します。ユーロは、欧州復興基金による景気回復やインフレ上昇によるECBの金融引き締めから徐々にレンジを切り上げるとみています。また、円の対豪ドルレートも日豪金利差や資源価格高から緩やかな下落を予想します。

7.リート

<現状>

10月のグローバルリート市場(米ドルベース)は反発しました。FRBの金融引き締めの長期化が意識され、米長期金利が上昇したものの、FRBが年内に利上げペースを鈍化させるとの見方が浮上し、株式市場が上昇したことを好感して、米国リート市場は上昇しました。投資家のリスク回避姿勢が後退したことから、欧州のリート市場も月末にかけて買い戻しが入り、上昇しました。S&Pグローバルリート指数(米ドルベース)のリターンは前月末比+4.0%となりました。また、為替効果がプラスに寄与し、円ベースは同+6.8%となりました。

<見通し>

米国リート市場は、FRBによる金融政策の引き締め加速により景気後退が意識されるなか、投資家の慎重姿勢は継続するとみられるため、当面不安定な動きが続くと思われます。ただし、米国経済は低成長ながら底堅く推移すると想定していることから、米国リート市場は中長期的には緩やかに上昇するとみています。欧州リート市場は、短期的にはウクライナ情勢やエネルギー不足に伴う景気悪化懸念から弱含みの展開を想定しますが、中長期では財政支出による景気回復とともに持ち直すとみています。日本リート市場は、経済再開の動きから上昇するとみています。アジア・オセアニアリート市場は、景気回復に伴いシンガポール中心に上昇するとみています。

8.まとめ

債券

米国の長期金利は、FRBの金融引き締めが続くなかで上昇圧力を受けるものの、大幅利上げに伴い先行きの景気減速が意識されるため、もみ合う展開を予想します。欧州の長期金利は、エネルギー価格上昇に伴うインフレ圧力によりECBが金融引き締めを強めるなか、当面は上昇地合いが続く展開を予想します。日本の長期金利は、日銀の大規模金融緩和策が継続されるため、低水準での横ばい推移が続くと予想します。

株式

S&P500種指数採用企業の22年7-9月期の増益率(当期利益)は前年同期比+4.1%、除くエネルギーセクターで同▲3.5%と、前月末時点予想の同+4.6%、同▲1.9%からいずれも下方修正されました(10月28日。リフィニティブ集計)。また、除くエネルギーセクターは10-12月期も同▲1.5%と前月の同2.1%から減益予想に転換しました。米国株式市場は、業績の悪化を織り込みつつ、下値離れの展開となっています。しかし、引き締め的な金融政策は維持され、景気が悪化するのはむしろこれからと予想されており、株価回復の持続性が改めて問われそうです。一方、TOPIX採用企業の7-9月期決算(前年同期比)は、売上高が+24.1%、営業利益が+10.8%、経常利益が+14.5%、当期利益が+9.4%です(11月1日現在。3月期決算、銘柄数進捗率28.8%、除く金融、QUICK集計)。4-6月期と比べると、現時点では、売上高、営業利益が前期を上回る一方、経常利益、当期利益は下回っています。22年度後半の収益環境は必ずしも明るいものではないだけに、日本株式市場についても業績の方向性が注目されそうです。

為替

円の対米ドルレートは、緩やかな下落を予想します。日米の金融政策の方向性の違いや資源価格高に伴う日本の貿易収支悪化から、円安圧力は継続すると考えられます。ただし、米国の景気とインフレがピークアウトする見通しであることから、米ドルの上値は徐々に抑制されてくるとみています。円の対ユーロレートは、緩やかな下落を予想します。ユーロは、欧州復興基金による景気回復やインフレ上昇によるECBの金融引き締めから徐々にレンジを切り上げるとみています。また、円の対豪ドルレートも日豪金利差や資源価格高から緩やかな下落を予想します。

リート

米国リート市場は、FRBによる金融政策の引き締め加速により景気後退が意識されるなか、投資家の慎重姿勢は継続するとみられるため、当面不安定な動きが続くと思われます。ただし、米国経済は低成長ながら底堅く推移すると想定していることから、米国リート市場は中長期的には緩やかに上昇するとみています。欧州リート市場は、短期的にはウクライナ情勢やエネルギー不足に伴う景気悪化懸念から弱含みの展開を想定しますが、中長期では財政支出による景気回復とともに持ち直すとみています。日本リート市場は、経済再開の動きから上昇するとみています。アジア・オセアニアリート市場は、景気回復に伴いシンガポール中心に上昇するとみています。