ホームマーケット週次・月次市場情報先月のマーケットの振り返り(2021年3月)

先月のマーケットの振り返り(2021年3月)

2021年4月5日

1.概観

株式

3月の株式市場は、月上旬に米長期金利上昇への懸念から下落する局面がありましたが、米連邦準備制度理事会(FRB)が緩和的な金融政策の継続を示したことや米国の1.9兆ドルの追加景気対策、新型コロナワクチン普及による景気回復期待などから持ち直し、堅調な展開となりました。米国はこれらの要因を受けて上昇し、NYダウが過去最高値を更新しました。欧州では新型コロナウイルス感染拡大が目立っていますが、株式市場は米国同様、概ね堅調でした。日本では、日銀が日経平均型のETFを買い入れ対象から外すと発表したことを受けて、日経平均株価の上値が重くなりました。

債券

主要先進国の10年国債利回り(長期金利)はまちまちの動きとなりました。米国では、1.9兆ドルの追加景気対策が可決されたことなどから景気回復期待が強まり、長期金利が大幅に上昇しました。国債利回りが上昇するなか、国債と社債の利回り格差はほぼ横ばいでした。一方、欧州では、新型コロナ感染の再拡大に伴いドイツやフランスなどが都市封鎖(ロックダウン)を再び実施したことから長期金利が低下しました。日本でも、日銀の金融政策決定会合を受けて、政策の点検結果が概ね市場の予想通りで警戒感が薄らいだことから、長期金利が低下しました。

為替

米長期金利の上昇を背景に円は対米ドルで下落し、約1年ぶりの110円台まで円安が進みました。

商品

原油価格は下落しました。3月初旬のOPECプラス会合で協調減産が継続されたものの、欧州のコロナ感染再拡大で需要見通しへの懸念が台頭しました。

  (出所)FactSetのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

2.景気動向

<現状>

米国の2020年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+4.3%となり、設備投資や住宅投資などが堅調に推移しました。

欧州(ユーロ圏)の2020年10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比▲4.9%と、感染拡大により行動規制が強化されマイナス成長となりました。

日本の2020年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+11.7%と、2期連続のプラス成長となりました。

中国の2020年10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+6.5%と、3期連続のプラス成長となり、コロナ禍からいち早く回復しました。

豪州の2020年10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比▲1.1%となりましたが、住宅投資や設備投資などが回復傾向にあります。

<見通し>

米国は回復基調にありますが、家計向け支援などの追加経済コロナ対策や、2022年度予算に組み込まれるインフラ投資を中心とした大型経済対策法案の実現などが今後の注目点となりそうです。他国より先行するワクチン普及が経済の回復へ波及するとみられ、景気の押し上げ材料が相次ぐことから2021年度の成長率の上振れが期待されます。

欧州は、厳しい行動規制が続くため2021年1-3月期もマイナス成長が見込まれますが、財政拡張や金融緩和によって昨年のように景気が大幅に落ち込む可能性は低いとみられます。夏に向けて行動規制が徐々に緩和するにつれて景気は回復に向かうと予想されます。

日本は、緊急事態宣言の影響により2021年1-3月期はマイナス成長が見込まれます。2021年4-6月期以降は同宣言の影響の反動や、追加経済対策や新型コロナワクチン普及が広がる可能性を踏まえて経済活動抑制が大きく緩和され、景気は回復に向かうと予想されます。

中国は、感染者数を抑制出来ており、2021年7-9月期以降は消費が明確に持ち直すと想定されます。米中対立などが懸念されるものの、景気対策としてハイテクなど高付加価値産業の育成を更に加速していくと期待されます。

豪州は、コロナ感染を低位に抑え込んでおり、政府の追加的な景気対策や新型コロナワクチンの普及によって、サービス消費などが押し上げ要因となり景気は緩やかに回復すると想定されます。

3.金融政策

<現状>

3月は日米欧の金融政策会合が開催されました。米連邦準備制度理事会(FRB)は16~17日の連邦公開市場委員会(FOMC)で経済見通しを引き上げたものの、2023年末までのゼロ金利継続を示唆するなど、景気支援に向けた金融緩和政策を維持しました。欧州中央銀行(ECB)は11日に理事会を開き、主要政策金利を据え置く一方で、緩和的な金融環境を維持するため、今後3カ月間の資産購入(パンデミック緊急購入プログラム(PEPP))をこれまでより速いペースで実施することを決めました。日銀は18~19日に行われた金融政策決定会合で、緩和の長期化による副作用が懸念されている、現在の大規模金融緩和策に対する点検結果を公表し、政策の微修正を決めました。緩和策の柱である長短金利操作は、大枠を維持した上で、長期金利の変動幅を広げました。また、原則年6兆円としていたETFの買い入れ目安の撤廃や、マイナス金利深堀の際に金融機関の収益への悪影響を緩和する「貸出促進付利制度」の導入などを決めました。

 <見通し>

主要中央銀行は金融政策を「緊急緩和」から「緩和的金融環境を維持」の状態にシフトしており、主要先進国の政策金利は相当期間、現状維持が続くとみられます。FRBは2022年初以降、債券購入ペースの減額(テーパリング)を開始する可能性がありますが、雇用回復や金融市場安定のため市場とのきめ細かいコミュニケーションを通じて、柔軟なかじ取りを行う見通しです。ECBは緩和的な金融環境維持に向けた政策運営を続ける見通しです。日銀は金融緩和の持続性を高めるため政策の微修正を行っており、大枠では現行の大規模金融緩和を継続するとみられます。

4.債券

<現状>

主要先進国の10年国債利回り(長期金利)はまちまちの動きとなりました。米国では、バイデン大統領の1.9兆ドルの追加景気対策や新型コロナ感染者数が減少したことなどから景気回復期待が強まり、長期金利が大幅に上昇しました。国債利回りが上昇するなか、国債と社債の利回り格差はほぼ横ばいでした。欧州では、新型コロナ感染の再拡大に伴いドイツやフランスなどが都市封鎖(ロックダウン)を再び実施したことから長期金利が低下しました。一方、日本では、日銀の金融政策決定会合を受けて、政策の点検結果が概ね市場の予想通りで警戒感が薄らいだことから、長期金利が低下しました。

<見通し>

米国の10年国債利回りは徐々にレンジを切り上げる動きを想定します。ただしFRBは実質金利の急上昇は回避するように政策運営を行うとみられ、財政政策や新型コロナワクチンの普及による景気回復期待が金利上昇要因となる一方、新型コロナによる労働市場へのダメージやそれを意識したFRBの粘り強い緩和姿勢が金利上昇抑制要因となり、しばらくは一進一退の綱引き状態が続くとみられます。欧州の10年国債利回りは低インフレやECBの金融緩和継続が上昇抑制要因となり、大局的には低水準で推移するものの、先行きは新型コロナワクチンの普及や景気回復期待から緩やかに水準を切り上げると予想します。日本の10年国債利回りは、景気が力強さを欠くため日銀の大規模金融緩和策が継続され、変動幅が若干拡大するものの、低位での推移が続くとみられます。

5.企業業績と株式

<現状>

S&P500種指数の3月の1株当たり予想利益(EPS)は181.9で、前年同月比+9.3%(前月同+0.1%)と2カ月連続のプラス転換となりました。予想EPSの水準は5月(142.5)を底に10カ月連続の上昇で、過去最高を更新しました。一方、TOPIXの予想EPSは113.4で、伸び率は同▲2.1%(前月同▲9.3%)と、昨年7月を底に回復基調が続いています(FactSet集計)。米国株式市場は、長期金利の上昇を意識しながらの展開となりましたが、追加経済対策やワクチン接種の進展による経済活動の回復期待を軸に上昇する展開でした。NYダウは29日に3万3,171.37ドルと史上最高値を更新しました。月間ではNYダウが前月比+6.6%、S&P500種指数が同+4.2%、ナスダック総合指数は同+0.4%でした。一方、日本株式市場は、米国の長期金利と株式市場の動きに左右される展開となりましたが、大枠で金融緩和政策の持続が確認されたことなどで次第に安心感が広がりました。ただ、月末にかけて、欧州などで変異ウイルスを含めた新型コロナ感染の広がりが伝えられると、景気敏感株などを中心に弱含む展開となりました。月間では日経平均株価が+0.7%、TOPIXが前月比+4.8%でした。

<見通し>

米国では、S&P500種指数採用企業の20年10-12月の純利益の成長率(一部予想を含む)が前年同期比+3.8%と、昨年末の同▲10.3%予想から増益へ転換しました。21年1-3月は同+23.9%(前月同+21.6%)、4-6月は同+53.5%(同+50.9%)、7-9月は同+19.1%(同+17.6%)、10-12月は同+13.1%(同+11.7%)と、特に1-3月から7-9月までは大幅な上方修正です(リフィニティブ集計。3月26日)。一方、日本の純利益の成長率は20年の見込みが▲14.6%と前月(同▲25.5%)よりも減益幅が縮小しました。続く21年は同+27.0%と好調に推移する見通しです(FactSet調べ。3月31日)。株式市場は、日米ともに業績の回復度合いを反映して推移しています。4-6月以降の業績は上振れが予想されており、どの程度の上振れとなるのか、また、日米の長期金利は上昇ピッチを早めるのか、などが注目されます。

6.為替

<現状>

米景気回復期待の高まりに伴う米長期金利の上昇を背景に円は対米ドルで下落し、約1年ぶりの110円台後半まで円安が進みました。一方、円は対ユーロで概ね横ばいでした。これは、米国と欧州の長期金利差が拡大したことに加えて、欧州各国で新型コロナの感染拡大が再燃したことや米国に比べワクチン接種が遅れていることを受けて、円同様に、ユーロが対ドルで下落したためです。また、円は対豪ドルで続落しました。豪州は新型コロナ感染を抑制できており、景気回復期待から豪ドルは対円で引き続き堅調に推移しました。

<見通し>

円の対米ドルレートは、緩やかな円安を予想します。ただし、コロナワクチンの普及や大規模な財政支出は米ドルにプラスに働く一方、米経常赤字の拡大や、FRBのゼロ金利政策長期化から上値も抑制されるとみられます。当面は米国景気の上振れが見込まれるため、円高リスクは後退しており、円/米ドルレートは100~115円のレンジを想定します。円の対ユーロレートは、当面は一進一退の動きを想定します。年後半は、市場のリスク許容度の改善や、復興基金、新型コロナワクチン普及による景気回復などからユーロが徐々にレンジを切り上げると予想します。円の対豪ドルレートは、緩やかな下落を予想します。米長期金利の上昇を受け、当面、対米ドルでの豪ドル高はやや抑制されるかもしれませんが、世界経済の回復や商品市況の堅調推移が豪ドルをサポートするとみられます。

7.リート

<現状>

グローバルリート市場(米ドルベース)は堅調に推移しました。各国での新型コロナワクチンの普及や、米国の追加財政政策への期待、好調な決算などから株式市場が好調に推移するなか、リート市場も追随する形となり、前月末比+3.1%の上昇率となりました。円ベースの月間変化率では、円安米ドル高となったため、同+6.9%の上昇となりました。

<見通し>

グローバルリート市場は長期金利の上昇が緩やかになると見込まれるなか、緩やかに上昇すると予想します。米国では、足元のコロナ感染状況は縮小傾向にあり、新型コロナワクチンの普及や大規模な財政政策などから、景気は当面比較的強い回復基調を辿るとみられます。経済正常化期待を背景に、これまで出遅れていた商業施設リートの堅調推移が期待され、米国リート市場の見通しは良好と考えます。欧州では、新型コロナワクチン接種が米国などに比べ遅れており、感染再拡大からロックダウンが行われるなど、当面、景気回復は緩慢なものになると予想します。ただし、中国などの外需回復による域内製造業を中心とした景気の回復傾向は欧州リート市場のプラス材料です。また、世界経済の回復や商品市況の上昇を受けて、豪州景気が回復していることから豪州リート市場も底堅い展開を見込みます。

8.まとめ

債券

米国の10年国債利回りは徐々にレンジを切り上げる動きを想定します。ただしFRBは実質金利の急上昇は回避するように政策運営を行うとみられ、財政政策や新型コロナワクチンの普及による景気回復期待が金利上昇要因となる一方、新型コロナによる労働市場へのダメージやそれを意識したFRBの粘り強い緩和維持姿勢が金利上昇抑制要因となり、しばらくは一進一退の綱引き状態が続くとみられます。欧州の10年国債利回りは低インフレやECBの金融緩和継続が上昇抑制要因となり、大局的には低水準で推移するものの、先行きは新型コロナワクチンの普及や景気回復期待から緩やかに水準を切り上げると予想します。日本の10年国債利回りは、景気が力強さを欠くため日銀の大規模金融緩和策が継続され、変動幅が若干拡大するものの、低位での推移が続くとみられます。

株式

米国では、S&P500種指数採用企業の20年10-12月の純利益の成長率(一部予想を含む)が前年同期比+3.8%と、昨年末の同▲10.3%予想から増益へ転換しました。21年1-3月は同+23.9%(前月同+21.6%)、4-6月は同+53.5%(同+50.9%)、7-9月は同+19.1%(同+17.6%)、10-12月は同+13.1%(同+11.7%)と、特に1-3月から7-9月までは大幅な上方修正です(リフィニティブ集計。3月26日)。一方、日本の純利益の成長率は20年の見込みが▲14.6%と前月(同▲25.5%)よりも減益幅が縮小しました。続く21年は同+27.0%と好調に推移する見通しです(FactSet調べ。3月31日)。株式市場は、日米ともに業績の回復度合いを反映して推移しています。4-6月以降の業績は上振れが予想されており、どの程度の上振れとなるのか、また、日米の長期金利は上昇ピッチを早めるのか、などが注目されます。

為替

円の対米ドルレートは、緩やかな円安を予想します。ただし、コロナワクチンの普及や大規模な財政支出は米ドルにプラスに働く一方、米経常赤字の拡大や、FRBのゼロ金利政策長期化から上値も抑制されるとみられます。当面は米国景気の上振れが見込まれるため、円高リスクは後退しており、円/米ドルレートは100~115円のレンジを想定します。円の対ユーロレートは、当面は一進一退の動きを想定します。年後半は、市場のリスク許容度の改善や、復興基金、新型コロナワクチン普及による景気回復などからユーロが徐々にレンジを切り上げると予想します。円の対豪ドルレートは、緩やかな下落を予想します。米長期金利の上昇を受け、当面、対米ドルでの豪ドル高はやや抑制されるかもしれませんが、世界経済の回復や商品市況の堅調推移が豪ドルをサポートするとみられます。

リート

グローバルリート市場は、長期金利の上昇が緩やかになると見込まれるなか、緩やかに上昇すると予想します。米国では、足元のコロナ感染状況は縮小傾向にあり、新型コロナワクチンの普及や大規模な財政政策などから、景気は当面比較的強い回復基調を辿るとみられます。経済正常化期待を背景に、これまで出遅れていた商業施設リートの堅調推移が期待され、米国リート市場の見通しは良好と考えます。欧州では、新型コロナワクチン接種が米国などに比べ遅れており、感染再拡大からロックダウンが行われるなど、当面、景気回復は緩慢なものになると予想します。ただし、中国などの外需回復による域内製造業を中心とした景気の回復傾向は欧州リート市場のプラス材料です。また、世界経済の回復や商品市況の上昇を受けて、豪州景気が回復していることから豪州リート市場も底堅い展開を見込みます。

  ※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。