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先月のマーケットの振り返り(2019年7月)

2019年8月5日

1.概観

株式 米国の株式市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ期待や、主要企業の堅調な企業業績を受けて上昇しました。
欧州の株式市場は、英ポンド安が進んだことから英国株式市場が上昇したものの、ユーロ圏経済の先行き不透明感等からドイツ株式市場は下落しました。
日本の株式市場は、企業決算を控えた警戒感や日韓の関係悪化を懸念して下落する場面もありましたが、堅調な米国株につれて上昇しました。
債券 米国の長期金利は、予想を上回る米経済統計等を受けて利回りが上昇しましたがFRBによる利下げ観測等から月末にかけて低下傾向で推移し、ほぼ横ばいでした。
欧州の長期金利は、ユーロ圏の低調な経済指標や欧州中央銀行(ECB)理事会での利下げ期待を背景にドイツの10年国債利回りは低下しました。
日本の長期金利は、ほぼ横ばいでした。米国債の動向を睨みつつ利回りはマイナス圏で推移しました。
米国社債については、利回りを求める資金が流入し、国債との利回り格差が縮小しました。
為替 円は対米ドルで下落し、ユーロ、豪ドルに対し上昇しました。7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での大幅な利下げ観測が後退したことや米中協議の進展期待などから世界経済減速への警戒感がやや弱まり、円が売られました。ユーロ、豪ドルはECBの緩和期待や、豪中銀の低金利長期化観測等から下落しました。
商品 原油先物価格は、地政学リスクへの警戒や原油在庫減少による需給改善期待と世界経済減速による原油需要減少との綱引きとなり、月間では小幅な上昇でした。

(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

2.景気動向

<現状>

米国は、19年4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率+2.1%となりました。輸出や設備投資が下振れたものの、個人消費や政府支出が伸びました。
欧州は、19年4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率+0.8%となりました。前期に急増した英国向け輸出の反動や製造業の不振等から鈍化しました。
日本は、19年1-3月期の実質GDP成長率が前期比年率+2.2%となりました。輸入の減少幅が大きかったことから、実態よりも押し上げられました。
中国は、19年4-6月期の実質GDP成長率が前年同期比+6.2%となり、前期の同+6.4%から減速しました。内需を中心に景気が下振れました。
豪州は、19年1-3月期の実質GDP成長率が前年同期比+1.8%と、3期連続で伸びが減速しました。

<見通し>

米国は、海外景気の悪化や米中貿易摩擦の影響を受けた過剰在庫を背景に生産調整が続いていることから、景気の持ち直しには時間がかかると見られます。
欧州は、米中貿易摩擦の影響による輸出の鈍化など製造業を取り巻く環境が悪化しているため、景気回復時期は20年以降となる見込みです。
日本は、外部環境の不透明感が高まっていることなどから19年後半にかけて足踏みとなりそうです。その後も緩やかな成長に止まると見られます。
中国は、米中貿易摩擦やデレバレッジの影響などから景気に下押し圧力がかかると見られますが、政府の景気対策が下支えとなりそうです。
豪州は、設備投資の回復が見込まれるものの、可処分所得の鈍化や国内住宅投資の減速が続くことから、緩やかな成長が続くと予想されます。

3.金融政策

<現状>

FRBは、7月30、31日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利(FFレート)の誘導レンジを2.25~2.50%から2.00%~2.25%に引き下げました。また、保有資産の縮小を2カ月前倒して8月に終了することも決定しました。
ECBは、7月25日の理事会で政策金利、預金ファシリティ金利(金融機関が手元資金をECBに預け入れる際の金利)を各々0.00%、▲0.40%に据え置きました。一方、フォワードガイダンス(先行きの金融政策の指針)を変更し、利下げと量的緩和(QE)再開の可能性を示唆しました。
日銀は7月29、30日に開催した金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定しました。フォワードガイダンスを維持し、長期国債を買い増すペースやETF、リートの買入れ方針を据え置く一方、景気や物価の下振れリスクへの警戒姿勢をこれまで以上に強めていることを示しました。

 <見通し>

FRBは、今回の利下げは景気循環の途中の調整であり、長い利下げサイクルの始まりではないとしました。ただし、景気減速や米中貿易摩擦等の不透明感に起因する下振れリスクへの警戒は緩めていないと思われることから、米国では9月のFOMCで0.25%の追加利下げが行われるとみられます。
ユーロ圏では、米中貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱(Brexit)などの影響で先行きの景気や物価への懸念が強まっていることや、FRBの追加緩和期待などから次回9月の理事会で、預金ファシリティ金利の▲0.4%から▲0.5%への引き下げとQEの再開が発表されると見られます。
日本では、コア物価上昇率はゼロ近傍に鈍化するとみられ、日銀の追加緩和期待がくすぶりやすい状況が続くと予想されます。当面は現行の金融政策を維持すると見られますが、海外中銀の緩和を受けて急激な円高が進む場合はフォワードガイダンスの変更など追加緩和の検討もあり得ると考えます。

4.企業業績と株式

<現状>

S&P500種指数の7月の1株当たり予想利益(EPS)は176.18米ドル、前年同月比の伸び率は+2.9%でした。東証株価指数(TOPIX)の予想EPSは123.01円(同▲7.0%)で、6カ月連続のマイナスでした(いずれも予想はリフィニティブI/B/E/Sベース)。7月の米国株式市場は主要指標が史上最高値を更新しました。これは、6月末に米中首脳会談が実現し、米中の対立が軟化したことで市場心理が好転する中、月末に開催されるFOMCでの利下げに対する期待が強まったことが背景です。ただ、FOMC後のパウエルFRB議長の会見で追加利下げに対する期待が後退したことから、米国株式市場は調整色を強めました。S&P500種指数は前月比で+1.3%、ナスダック総合指数は同+2.1%、NYダウは同+1.0%上昇しました。一方、日本株式市場も米中交渉の進展や米国の利下げに対する期待から上昇しました。ただ、始まった4-6月期企業業績発表がやや低調で、業績の底入れが後ずれする可能性が強まったことなどから、上昇幅が限られました。TOPIXは前月比+0.9%、日経平均株価は同+1.2%でした。

<見通し>

S&P500種指数採用企業の予想EPS増益率は19年が前年比+1.9%(前月同+2.4%)、20年が同+11.3%(同+11.5%)と小幅下方修正となりました(19年7月31日発表、リフィニティブI/B/E/Sベース)。一方、日本の予想経常利益増益率は19年度(20年3月期決算)が前年度比+4.0%(前月同+2.9%)、20年度(21年3月期決算)が同+7.7%(前月同+6.7%)(東証一部除く金融、QUICKコンセンサスベース、19年7月31日現在)と上方修正されました。ただ、米中貿易摩擦が再び激化するリスクが高まっており、日本の収益見通しが再び慎重となる可能性があります。日米ともに業績の見通しに対する不透明感が強まると考えられ、日米株式市場は上値の重い展開となりそうです。

5.債券

<現状>

米国では、10年国債利回りはほぼ横ばいでした。雇用統計や消費者物価指数など予想を上回る経済指標を受けて月中に利回りが上昇しましたが、7月末のFOMCを控えて、月末にかけてはFRBによる利下げ期待の高まりから金利が低下傾向で推移しました。
欧州では、米国債利回りに追随して上昇する場面があったものの、9月のECB理事会での利下げ期待を背景にドイツの10年国債利回りは低下しました。月末にはユーロ圏の低調な経済指標を受けて、ドイツ10年国債利回りは過去最低を更新しました。
日本の10年国債利回りは、米国債の動向を睨みつつマイナス圏で推移しました。米国の社債については、国債との利回り格差が縮小しました。

<見通し>

米国では、FRBが7月に続き9月にも利下げを行うと見られることから当面低位での推移が続くと見られます。景気が持ち直しに向かえば緩やかにレンジを切り上げる見通しですが、米中通商問題の行方には注視が必要です。
欧州では、コアインフレ率が下振れ傾向にあることや、通商問題やBrexitを巡る懸念が企業心理悪化を通じてマイナス要因となっていることから、ECBは9月に利下げやQE再開のアナウンスを行う見込みです。このことから、金利は低位での推移が続くと見られます。
日本では、コア物価上昇率がゼロ近傍に鈍化する見通しです。秋には消費増税も予定されており、日銀への追加緩和期待がくすぶり続けること等から、長期金利は当面マイナス圏での推移が継続する見通しです。

6.為替

<現状>

円は対米ドルで下落しました。7月のFOMCでの大幅な利下げ観測が後退したことや米中協議の進展期待などから世界経済減速への警戒感がやや弱まり、円が売られました。一方、円は対ユーロ、豪ドル、英ポンドで上昇しました。ユーロ圏では低調な経済指標を受けてECBによる利下げ期待が高まりました。英国では、与党・保守党の新党首にボリス・ジョンソン氏が就任し、欧州連合(EU)からの合意なき離脱(Brexit)への警戒感が高まりました。また、豪州では豪州準備銀行(RBA)のロウ総裁が金利は長期にわたり低水準で維持されるとの見通しを示したことなどから豪ドルが下落しました。

<見通し>

円の対米ドルレートは、FRBの追加利下げが見込まれる一方、日銀の緩和余地が限られていると見られることから、一時的に円高傾向で推移する可能性があります。しかし、米国の景気が底堅いことから大局的にはレンジの範囲で推移することが想定されます。ただし、米中通商問題の行方には注視が必要です。
円の対ユーロレートは、欧州景気の低迷を背景にECBが9月ないし12月に利下げを行うと見られることや、イタリアやBrexitなど政治的な不透明感がユーロ圏の上値を抑制すると見られます。加えて、米中通商問題の行方には注視が必要です。
円の対豪ドルレートは、豪の消費セクターの弱さなどを背景とする追加利下げ観測に加え、米中通商問題によるセンチメントの悪化や中国経済への悪影響が懸念されることが豪ドルの重石となる見通しです。中国を含めたグローバル経済が持ち直しに向かえば、豪ドルは底堅さを取り戻していくと見られます。

7.リート

<現状>

グローバルリート市場(米ドルベース)は、欧米をはじめ世界的に中銀が金融緩和方向へシフトする中、長期金利が概ね低下傾向に動いたことから相対的に利回りの高いリートが選好され、前月末比で0.42%上昇しました(現地通貨ベース)。一方、円ベースの月間変化率では、米ドルが主要通貨に対して上昇し円安となったため、為替はプラスに寄与し、円ベースでは前月比1.20%の上昇となりました。

<見通し>

FRBが7月末の利下げに続き9月にも追加利下げをすると見られることや、ECBが9月に利下げや量的緩和再開のアナウンスを行うと見込まれることなどから、低金利環境が当面継続すると予想され、リートにとって好材料となりそうです。一方で、中期的に見れば米国の不動産市況はピーク圏にあり、その市況の下支えとなる経済成長はペース鈍化の流れにあることは重石となりそうです。ただし、リートの安定的な賃貸収入や相対的に高い利回りは着目されやすい展開が続くと見られ、リートが選好されやすい状況が続くと考えられます。

8.まとめ

株式 S&P500種指数採用企業の予想EPS増益率は19年が前年比+1.9%(前月同+2.4%)、20年が同+11.3%(同+11.5%)と小幅下方修正となりました(19年7月31日発表、リフィニティブI/B/E/Sベース)。一方、日本の予想経常利益増益率は19年度(20年3月期決算)が前年度比+4.0%(前月同+2.9%)、20年度(21年3月期決算)が同+7.7%(前月同+6.7%)(東証一部除く金融、QUICKコンセンサスベース、19年7月31日現在)と上方修正されました。ただ、米中貿易摩擦が再び激化するリスクが高まっており、日本の収益見通しが再び慎重となる可能性があります。日米ともに業績の見通しに対する不透明感が強まると考えられ、日米株式市場は上値の重い展開となりそうです 。
債券 米国では、FRBが7月に続き9月にも利下げを行うと見られることから当面低位での推移が続くと見られます。景気が持ち直しに向かえば緩やかにレンジを切り上げる見通しですが、米中通商問題の行方には注視が必要です。
欧州では、コアインフレ率が下振れ傾向にあることや、通商問題やBrexitを巡る懸念が企業心理悪化を通じてマイナス要因となっていることから、ECBは9月に利下げやQE再開のアナウンスを行う見込みです。このことから、金利は低位での推移が続くと見られます。
日本では、コア物価上昇率がゼロ近傍に鈍化する見通しです。秋には消費増税も予定されており、日銀への追加緩和期待がくすぶり続けること等から、長期金利は当面マイナス圏での推移が継続する見通しです。
為替 円の対米ドルレートは、FRBの追加利下げが見込まれる一方、日銀の緩和余地が限られていると見られることから、一時的に円高傾向で推移する可能性があります。しかし、米国の景気が底堅いことから大局的にはレンジの範囲で推移することが想定されます。ただし、米中通商問題の行方には注視が必要です。
円の対ユーロレートは、欧州景気の低迷を背景にECBが9月ないし12月に利下げを行うと見られることや、イタリアやBrexitなど政治的な不透明感がユーロ圏の上値を抑制すると見られます。加えて、米中通商問題の行方には注視が必要です。
円の対豪ドルレートは、豪の消費セクターの弱さなどを背景とする追加利下げ観測に加え、米中通商問題によるセンチメントの悪化や中国経済への悪影響が懸念されることが豪ドルの重石となる見通しです。中国を含めたグローバル経済が持ち直しに向かえば、豪ドルは底堅さを取り戻していくと見られます。
リート FRBが7月末の利下げに続き9月にも追加利下げをすると見られることや、ECBが9月に利下げや量的緩和再開のアナウンスを行うと見込まれることなどから、低金利環境が当面継続すると予想され、リートにとって好材料となりそうです。一方で、中期的に見れば米国の不動産市況はピーク圏にあり、その市況の下支えとなる経済成長はペース鈍化の流れにあることは重石となりそうです。ただし、リートの安定的な賃貸収入や相対的に高い利回りは着目されやすい展開が続くと見られ、リートが選好されやすい状況が続くと考えられます。
  ※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。