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先月のマーケットの振り返り(2019年3月)

2019年4月3日

1.概観

株式 米国の株式市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)のハト派的な政策スタンスが好感された一方、世界経済の減速懸念が意識され、ほぼ横ばいとなりました。
欧州の株式市場は、英国の合意なき欧州連合離脱がひとまず回避されたことや、欧州中央銀行(ECB)の金融緩和姿勢への転換が好感されて上昇しました。
日本の株式市場は、世界経済減速への懸念や、為替市場で円高が進んだことなどから、下落しました。
債券 米国の長期金利は、FRBが景気や政策金利の見通しを下方修正したことからハト派姿勢を一段と強めたと受け止められ、大幅に低下しました。
欧州の長期金利は、ECBが金融緩和方向への早期転換を行ったことや、欧州の経済指標が悪化したことなどから、低下しました。
日本の長期金利は、FRBが年内の利上げ見送り方針を示し、世界的に金利低下圧力がかかったことから、低下しました。
米国社債については、国債との利回り格差が縮小しました。
為替 円は米ドル、ユーロ、英ポンド、豪ドルに対して上昇しました。世界景気の減速に対する懸念の高まりや、FRBやECBが金融政策に対するスタンスをより慎重化させたとの見方から、内外金利差の縮小を見込んで円が買われたことなどによるものです。
商品 原油先物価格は、石油輸出国機構(OPEC)による協調減産が遵守されていることや、一部産油国の供給不安が材料視され、大幅に上昇しました。

(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

2.景気動向

<現状>

米国は、18年10-12月期の実質GDP成長率が前期比年率+2.2%となり、速報値の同+2.6%から0.4ポイント下方修正されました。18年通年の実質GDP成長率は前年比+2.9%となりました。
欧州は、18年10-12月期の実質GDP成長率が前期比年率+0.9%となり、速報値の同+0.8%から上方修正されました。
日本は、18年10-12月期の実質GDP成長率が前期比年率+1.9%と、速報値の同+1.4%から上方修正されました。設備投資がけん引しました。
中国は、18年通年の実質GDP成長率が前年比+6.6%となり、政府の成長率目標である同+6.5%前後に沿った結果となりました。
豪州は、18年10-12月期の実質GDP成長率が前年比+2.3%と、7-9月期の同+2.7%から伸び率が鈍化しました。

<見通し>

米国は、米中関税引上げの影響が一旦出るものの、その後は金融環境の緩和や中国の財政支出増の恩恵を受け、景気は堅調さを取り戻すと見られます。
欧州は、新興国向けを中心に輸出が軟調となるものの、雇用拡大や賃金増加を背景とした個人消費の増加など、内需が下支えすると見込まれます。
日本は、海外景気減速の影響を受けた輸出の不調などから、19年1-3月期の成長率が減速する見込みです。その後も緩やかな成長に止まると見られます。
中国は、成長率が緩やかに減速すると見られますが、政府の積極的な景気刺激策が下支えとなり次第に安定すると見込まれます。
豪州は、設備投資の回復が見込まれるものの、可処分所得の鈍化や国内住宅投資の低下が続くことから、成長ペースが鈍化すると予想されます。

3.企業業績と株式

<現状>

S&P500種指数の3月の1株当たり予想利益(EPS)は172.83米ドル、前年同月比の伸び率は+6.6%でした。1月が同+9.5%、2月が同+6.8%と伸び率の鈍化が続いています。東証株価指数(TOPIX)の予想EPSは127.05円(同▲1.7%)と、前月の同▲0.4%から下落率が拡大しました(いずれも予想はリフィニティブI/B/E/Sベース)。3月の米国株式市場は、S&P500種指数で前月比+1.8%と上昇率は前月の同+3.0%より縮小したものの、3カ月連続の上昇となりました。回復期待が高まった半導体株が相場をけん引しました。下旬には米国の10年国債利回りと3カ月物財務省証券の利回りが逆転する「逆イールド」が発生し、景気後退への懸念が高まったことから一時下落しましたが、短期間のうちに落ち着きを取り戻しました。一方、日本株式市場は業績の見通しに対する不透明感が燻り、TOPIXで前月比▲1.0%と、小幅な下落となりました。

 <見通し>

S&P500種指数採用企業のEPSは18年が前年比+24.1%、19年が同+3.3%です(19年3月29日発表、リフィニティブI/B/E/Sベース)。一方、日本の予想経常利益増益率は18年度(19年3月期決算)が前年度比+4.6%、19年度(20年3月期決算)は同+7.0%です(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、19年3月29日現在)。米国の予想EPSは前月比伸び率は鈍化しているものの、1月の171.66を底に上昇に転じてきました。収益環境が改善するかが注目されます。一方、日本の予想EPSは下方修正が続いており、収益環境の改善にはまだ時間がかかりそうです。

4.金融政策

<現状>

FRBは、3月19日、20日に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利(FFレート)の誘導レンジを2.25%~2.50%に据え置きました。また、バランスシートの縮小ペースを5月から徐々に緩め、9月には縮小を終了することを発表しました。 
ECBは、3月7日の理事会で政策金利、預金ファシリティ金利(金融機関が手元資金をECBに預け入れる際の金利)を各々0.00%、▲0.40%に据え置きました。また、利上げ開始時期の先送りと、景気支援策として銀行への新たな資金供給制度の導入を発表しました。
日銀は3月14日、15日に開催した金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定しました。長期金利の操作目標である10年物国債利回りをゼロ%程度に操作する金融調節を継続し、長期国債を買い増すペースも年間約80兆円の目処を継続しました。

<見通し>

米国では、FRBが金融政策に対するスタンスを慎重化させており、景気の減速に歯止めがかかっても当面は現行の政策金利を据え置くと見られます。
ユーロ圏では、 ECBが19年の成長率見通しを大幅に引き下げました。政策金利の引き上げは従来見通しより後ずれが見込まれ、預金ファシリティ金利の引き上げは20年4-6月頃、主要リファイナンス金利の引き上げは20年7-9月頃になると見られます。なお、量的緩和終了後もECBは再投資により、国債などの保有残高を維持する見込みです。 
日本は、物価上昇率が日銀の目標である2%に当面、到達しない見通しのため、金融政策を据え置く見込みです。

5.債券

<現状>

米国では、10年国債利回りが大幅に低下しました。3月のFOMCで、FRBが景気や政策金利の見通しを下方修正したことから、ハト派姿勢を一段と強めたと受け止められました。また、10年国債利回りが3カ月物財務省証券の利回りを約11年半ぶりに下回る「逆イールド」が発生し、先行きの景気後退を示唆するとして警戒感が高まりました。欧州では、ECBが金融緩和方向への早期転換を行ったことや、ドイツの3月製造業購買担当者景気指数(PMI)悪化などを受けて、3月22日にドイツ10年国債利回りが2016年10月以来となるマイナス水準に低下しました。その後、月末にかけて下げ幅を広げました。日本の10年国債利回りは、上旬にはプラス圏に上昇する場面もあったものの、米長期金利の動向を睨みつつ、月間を通じて概ねマイナス圏で推移しました。米国の社債については、国債との利回り格差が前月末に比べ縮小しました。

<見通し>

当面は、景気の下振れリスクが金利の下押し要因として意識される可能性があります。インフレ圧力が依然として力強さに欠ける中、FRBやECBなどは政策スタンスを慎重化させており、米欧の金利は低位での推移が続くと予想されます。日本では、景気・物価の勢いが鈍化するとの想定のもと、日銀の追加緩和観測が高まる可能性がありますが、当面は現行の金融政策の枠組みは維持されると見られ、長期金利は低位での安定した推移となる見込みです。

6.為替

<現状>

円は米ドル、ユーロ、英ポンド、豪ドルに対して上昇しました。世界景気の減速に対する懸念の高まりや、FRBやECBが金融政策に対するスタンスを、より慎重化させたとの見方から、内外金利差の縮小を見込んで円が買われたことなどによるものです。特に、ユーロは、ドイツの長期金利が2年5カ月ぶりにマイナス圏に低下するなど欧州金利の低下を受けて、月間では対円で1.83%下落しました。ポンドは、英国の欧州連合離脱を巡る不透明感から、対円で2.22%下落しました。

<見通し>

円の対米ドルレートは、 FRBが年内の政策金利据え置きを示唆したことや、米景気の下振れ懸念が米ドル安圧力となる一方、日米実質金利差は米ドルの支援材料となると考えられることから、110円を中心とするレンジでの推移となる見通しです。
ユーロは、ユーロ圏のさらなる景気下振れ懸念が意識されやすくなると見られることや、英国の欧州連合離脱問題を巡る混乱の収束が依然見通せないことが不透明要因です。ECBも緩和的な政策を続けると見られることから、対円で125円を中心としたレンジ内の推移が続くと予想されます。
豪ドルの対円レートは、豪州準備銀行(RBA)が政策スタンスを中立に転換し、政策金利の据え置きが長期化すると見込まれるため、上値の重い展開が続くと予想されます。一方、鉄鉱石など資源価格の上昇は豪ドルの支援材料となりそうです。

7.リート

<現状>

3月のグローバルリート市場(米ドルベース)は、米欧など主要国の長期金利が低下したことなどから、相対的な分配金利回りの高さに着目したリートが買われて上昇し、前月比+2.42%となりました。一方、円ベースの月間変化率は、為替効果がマイナス寄与となったため、同+1.84%となりました。

<見通し>

世界景気減速への警戒感から長期金利の上昇は限定的と考えられます。米国の不動産市況はピーク圏にあり、賃料の伸びは、横ばいから今後は軟化する方向に向かうと見込まれますが、相対的に高い配当利回りが魅力のリートは、引き続き選好されると見られます。これらを受け、リートは底堅い展開が予想されます。

8.まとめ

株式 S&P500種指数採用企業のEPSは18年が前年比+24.1%、19年が同+3.3%です(19年3月29日発表、リフィニティブI/B/E/Sベース)。一方、日本の予想経常利益増益率は18年度(19年3月期決算)が前年度比+4.6%、19年度(20年3月期決算)は同+7.0%です(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、19年3月29日現在)。米国の予想EPSは前月比伸び率は鈍化しているものの、1月の171.66を底に上昇に転じてきました。収益環境が改善するかが注目されます。一方、日本の予想EPSは下方修正が続いており、収益環境の改善にはまだ時間がかかりそうです。
債券 当面は、景気の下振れリスクが金利の下押し要因として意識される可能性があります。インフレ圧力が依然として力強さに欠ける中、FRBやECBなどは政策スタンスを慎重化させており、米欧の金利は低位での推移が続くと予想されます。日本では、景気・物価の勢いが鈍化するとの想定のもと、日銀の追加緩和観測が高まる可能性がありますが、当面は現行の金融政策の枠組みは維持されると見られ、長期金利は低位での安定した推移となる見込みです。
為替 円の対米ドルレートは、 FRBが年内の政策金利据え置きを示唆したことや、米景気の下振れ懸念が米ドル安圧力となる一方、日米実質金利差は米ドルの支援材料となると考えられることから、110円を中心とするレンジでの推移となる見通しです。
ユーロは、ユーロ圏のさらなる景気下振れ懸念が意識されやすくなると見られることや、英国の欧州連合離脱問題を巡る混乱の収束が依然見通せないことが不透明要因です。ECBも緩和的な政策を続けると見られることから、対円で125円を中心としたレンジ内の推移が続くと予想されます。
豪ドルの対円レートは、豪州準備銀行(RBA)が政策スタンスを中立に転換し、政策金利の据え置きが長期化すると見込まれるため、上値の重い展開が続くと予想されます。一方、鉄鉱石など資源価格の上昇は豪ドルの支援材料となりそうです。
リート 世界景気減速への警戒感から長期金利の上昇は限定的と考えられます。米国の不動産市況はピーク圏にあり、賃料の伸びは、横ばいから今後は軟化する方向に向かうと見込まれますが、相対的に高い配当利回りが魅力のリートは、引き続き選好されると見られます。これらを受け、リートは底堅い展開が予想されます。
  ※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。