ホームマーケット週次・月次市場情報先月のマーケットの振り返り(2019年2月)

先月のマーケットの振り返り(2019年2月)

2019年3月5日

1.概観

株式 米国の株式市場は、米中通商協議に対する進展期待や、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ打ち止め観測の浮上などから、上昇しました。
欧州の株式市場は、米中通商協議に対する進展期待や、企業業績見通しの下方修正が一服したことなどから、上昇しました。
日本の株式市場は、米中通商協議の進展期待や、米国の金融引き締め終了観測の高まりなどから、上昇しました。
債券 米国の長期金利は、FRBが金融政策の正常化ペースを緩める姿勢を鮮明にしたことや、市場心理が改善し株式市場が堅調となったことから、上昇しました。
欧州の長期金利は、英国の合意なき欧州連合(EU)離脱に対する警戒感が和らぎ、離脱延期の可能性も示されたことから上昇しました。
日本の長期金利は、米長期金利の動向を睨みつつ、マイナス圏で推移しました。米社債については、国債との利回り格差が縮小しました。
為替 円は米ドル、ユーロに対して下落しました。米国の対中関税引き上げ延期を受けて通商リスクへの懸念が後退したことや、英国のEU離脱に対する警戒感が和らいだことによるものです。一方、豪州準備銀行(RBA)の政策スタンス変更を受けて、豪ドルは対円で下落しました。
商品 原油先物価格は、石油輸出国機構(OPEC)による協調減産が遵守されていることが確認され、上昇しました。

(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.景気動向

<現状>

米国は、18年10-12月期の実質GDP成長率が前期比年率+2.6%となり、7-9月期の同+3.4%からは鈍化したものの、設備投資が加速しました。
欧州は、18年10-12月期の実質GDP成長率が前期比年率+0.8%となり、7-9月期の同+0.6%から僅かながら加速しました。
日本は、18年10-12月期の実質GDP成長率が前期比年率+1.4%と、7-9月期の同▲2.6%から回復しました。個人消費が成長をけん引しました。
中国は、18年通年の実質GDP成長率が前年比+6.6%となり、政府の成長率目標である同+6.5%前後に沿った結果となりました。
豪州は、18年7-9月期の実質GDP成長率が前年比+2.8%と、4-6月期の同+3.1%から伸び率が鈍化しました。

<見通し>

米国は、製造業の調整から19年1-3月期にかけて減速する見込みですが、雇用・家計消費が安定していることから下振れは限定的と予想されます。
欧州は、米中貿易摩擦や自動車の生産調整などを受けて減速するものの、財政拡張などを背景に内需が下支えすると見込まれます。
日本は、海外景気鈍化の影響を受けて一時的に成長ペースが鈍化するものの、設備投資などの内需に支えられ、徐々に拡大基調に戻る見込みです。
中国は、対米貿易摩擦の影響から緩やかに成長が鈍化する見込みですが、政府による経済政策が下支えとなり、経済は次第に安定すると見込まれます。
豪州は、設備投資の回復が見込まれるものの、国内住宅投資や中国の景気減速などの影響から、成長ペースが鈍化すると予想されます。

3.企業業績と株式

<現状>

S&P500種指数の19年2月の1株当たり予想利益(EPS)は171.81米ドルでした。前年同月比の伸び率は+6.8%となりました。18年12月が同+18.0%、19年1月が同+9.5%と伸び率の低下が続いています。東証株価指数(TOPIX)の予想EPSは128.43円(同+0.1%)と、前月の同+5.3%から更に伸び率が鈍化しました(いずれも予想はリフィニティブI/B/E/Sベース)。   
2月の米国株式市場は、S&P500種指数で前月比+3.0%の上昇となりました。米中関係の改善および米中貿易摩擦の緩和への期待や米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ打ち止め観測の浮上などにより、市場心理が好転したことが背景です。日本株式市場もTOPIXで前月比+2.6%の上昇となりました。

 <見通し>

S&P500種指数採用企業のEPSは18年が前年比+23.7%、19年が同+4.0%と19年が前月の同+5.1%から下方修正されました(19年2月28日発表、リフィニティブI/B/E/Sベース)。一方、日本の予想経常利益増益率は18年度(19年3月期決算)が前年度比+5.1%と1月時点の同+7.1%から下方修正となりました。続く19年度(20年3月期決算)は同+7.1%と前月(同+7.5%)よりも若干下方修正となりました(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、19年2月28日現在)。米国及び日本の株式市場は、利益の成長率予想は足元では鈍化しているものの、当面、米中貿易交渉の進展などを睨みながらの展開が続く見通しです。

4.金融政策

<現状>

FRBは、1月29日、30日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利(FFレート)の誘導レンジを2.25%~2.50%に据え置きました。 
欧州中央銀行(ECB)は、1月24日の理事会で政策金利、預金ファシリティ金利(金融機関が手元資金をECBに預け入れる際の金利)を各々0.00%、▲0.40%に据え置きました。
日銀は1月22日、23日に開催した金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定しました。長期金利の操作目標である10年物国債利回りをゼロ%程度に操作する金融調節を継続し、長期国債を買い増すペースも引き続き年間約80兆円を目処にします。     

<見通し>

米国では、FRBが金融引き締めの終了を示唆しました。利上げは打ち止めとなり、バランスシートの縮小も年内に終了すると見られます。   
ユーロ圏では、量的緩和が終了した後も、しばらくECBは再投資により国債などの保有残高を維持する見込みです。政策金利は19年12月に預金ファシリティ金利の引き上げ、20年3月には主要リファイナンス金利の引き上げが予想されます。
日本は、経済が緩やかな拡大を続けるものの、物価上昇率が日銀の目標である2%に当面、到達しない見通しのため、金融政策を据え置く見込みです。

5.債券

<現状>

米国では、堅調な株式市場などを背景に10年国債利回りが上昇しました。月中は一進一退の動きとなりましたが、米政府が対中関税の引き上げ延期を表明し、米中貿易交渉の合意が近いとの期待が高まったことなどから、月末にかけて上昇しました。月末は2.72%と、前月末比0.09%ポイントの上昇となりました。欧州では、景気に対する懸念を背景にユーロ圏の成長率見通しが引き下げられたことなどを受けて、2月8日にドイツ10年国債利回りが一時0.077%と、2016年10月以来の水準に低下しました。その後、米国が対中関税引き上げの延長を表明したことや、英国の合意なきEU離脱に対する警戒感が和らぎ、ドイツ10年国債利回りは上昇基調となり、月末には0.18%となりました。日本の10年国債利回りは、米長期金利の動向を睨みつつ、マイナス圏で推移しました。米国の社債については、国債との利回り格差が前月末に比べ縮小しました。

<見通し>

世界景気が緩やかながら拡大を続けるという想定のもとでは、欧米の長期金利はやや上昇すると予想されます。ただし、インフレが落ち着いているなか、FRBが景気下振れリスクの増大を理由に、政策金利引き上げに対する姿勢を更に慎重化させたこと、ECBによる利上げ開始の時期が2019年末以降となる見通しであることなどを踏まえると、上昇幅は限定的と考えられます。日本では、景気・物価の勢いが鈍化するとの想定のもと、現行の金融政策の枠組みが維持される可能性が高く、長期金利は低位での安定した推移となる見込みです。

6.為替

<現状>

2月は、円が米ドル、ユーロ、英ポンドに対して下落しました。米国が中国に対する関税引き上げの延期を表明し、米中貿易協議の進展が期待されたことや、メイ英首相がEU離脱延期の選択肢を示し、合意なきEU離脱に対する警戒感が和らいだことなどによるものです。一方、豪ドルは円に対して下落しました。RBAが金融政策に対するスタンスを利上げ方向から中立に変更したことや、中国の景気減速に対する懸念などが背景です。

<見通し>

円の対米ドルレートは、日米実質金利差(米ドル高円安要因)が米ドルの支援材料となる一方、日本の経常黒字、米国の双子の赤字(米ドル安円高要因)や、FRBが年内の政策金利を据え置くと予想されることなどが重石となり、110円を中心とするレンジでの推移となる見通しです。
ユーロは、日本の金融緩和継続に対して、ユーロ圏ではECBによる量的緩和策が18年に終了し、将来の利上げが意識されることが支援材料となる一方で、ユーロ圏の景気回復が緩慢なことや、英国のEU離脱問題を含む政治リスクが重石となり、対円でレンジ内の推移が続くと予想されます。
豪ドルの対円相場は、RBAが政策スタンスの変更が重石となる一方、資源価格が回復基調にあることから、レンジでの推移となる見通しです。

7.リート

<現状>

2月のグローバルリート市場(米ドルベース)は、米欧など主要国の長期金利が上昇したことなどから、小幅に下落しました。一方、円ベースの月間変化率は、為替効果がプラスに寄与したため+2%となりました。

<見通し>

景気は緩やかな拡大基調にありますが、物価の安定を背景にFRBが金融引き締めの終了を示唆したことなどを踏まえると、長期金利の上昇は限定的と考えられます。米国の不動産市況はピーク圏にあるものの、相対的に高い配当利回りが魅力のリートは、引き続き選好されると見られます。これらを受け、底堅い展開が予想されます。

8.まとめ

株式 S&P500種指数採用企業のEPSは、18年が前年比+23.7%、19年が同+4.0%と19年が前月の同+5.1%から下方修正されました(19年2月28日発表、リフィニティブI/B/E/Sベース)。一方、日本の予想経常利益増益率は18年度(19年3月期決算)が前年度比+5.1%と1月時点の同+7.1%から下方修正となりました。続く19年度(20年3月期決算)は同+7.1%と前月(同+7.5%)よりも若干下方修正となりました(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、19年2月28日現在)。米国及び日本の株式市場は、利益の成長率予想は足元では鈍化しているものの、当面、米中貿易交渉の進展などを睨みながらの展開が続く見通しです。
債券 世界景気が緩やかながら拡大を続けるという想定のもとでは、欧米の長期金利はやや上昇すると予想されます。ただし、インフレが落ち着いているなか、FRBが景気下振れリスクの増大を理由に、政策金利引き上げに対する姿勢を更に慎重化させたこと、ECBによる利上げ開始の時期が2019年末以降となる見通しであることなどを踏まえると、上昇幅は限定的と考えられます。  
日本では、景気・物価の勢いが鈍化するとの想定のもと、現行の金融政策の枠組みが維持される可能性が高く、長期金利は低位での安定した推移となる見込みです。
為替 日米実質金利差(米ドル高円安要因)が米ドルの支援材料になる一方、日本の経常黒字、米国の双子の赤字(米ドル安円高要因) やFRBの金利引き上げ打ち止め観測が重石となると見られ、円の対米ドルレートはレンジ内での動きが見込まれます。
ユーロは、ユーロ圏の景気回復が緩慢なことや、英国のEU離脱問題を含む政治リスクが重石となり、対円でレンジ内の推移が続くと予想されます。  
豪ドルの対円相場は、 RBAが政策スタンスの変更が重石となる一方、資源価格が回復基調にあることを踏まえて、レンジでの推移となる見通しです。
リート FRBが金融引き締めの終了を示唆したこと、世界景気の拡大をうけリートの業績も堅調な伸びが見込まれること等を踏まえると、底堅い展開が見込まれます。
  ※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。