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先月のマーケットの振り返り(2018年9月)【マンスリー】

2018年10月3日

1.概観

トピックス (1)日経平均24,000円~年初との違い
(2)18年9月FOMCの結果と市場の解釈
株式 米国の株式市場は、米中貿易摩擦への過度の警戒感が後退したこと等から、NYダウ、S&P500種指数がともに史上最高値を更新しました。
欧州の株式市場は、財政赤字拡大の方針を発表したイタリアと欧州連合(EU)の対立が懸念され、ドイツ等の主要市場で下落しました。
日本の株式市場は、米中貿易摩擦への過度の懸念が後退したこと等から上昇し、日経平均は26日に2万4,000円台を回復しました。
債券 米国の長期金利は、米景気の順調な拡大を示す経済指標の発表が相次いだこと、米中貿易摩擦への過度な警戒感が後退したこと、原油価格が上昇したこと等から、上昇しました。欧州の長期金利も、株式市場や米金利、原油価格の上昇等を受けて上昇しました。
為替 円は世界的な株高を背景にリスク選好が強まったことや、欧米の債券利回りが上昇したこと、トルコ中銀の大幅利上げで同国の金融政策への不信感が低下し、つれて新興国市場の米ドルに対する下落が一服したこと等を受け、米ドル、ユーロ、豪ドルといった主要通貨に対して下落しました。
商品 原油先物価格は、OPECや米シェールオイルの増産が進んでいないこと、米国の経済制裁によりイラン原油の供給が減少するとの懸念により上昇しました。

(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1)日経平均24,000円~年初との違い

<注目点>

日経平均株価は9月26日と27日、節目の24,000円水準での攻防が続きました。日経平均株価は今年1月にも24,000円台をつけています。今回は、1月につけた24,000円台と、足元でつけた24,000円台の相違点を検証し、日経平均株価の続伸余地を探ります。        

<ポイント>

日経平均株価は終値でみると、1月4日に23,000円台を回復した後、12営業日後の1月23日に24,000円台を回復しました。一方、足元の日経平均株価も終値でみると、9月14日に23,000円台を回復した後、6営業日後の9月26日に24,000円台を回復しました。つまり、23,000円台から24,000円台に乗せるまでの上昇ペースは、今回の方が速かったことになります。次に、日経平均株価を予想利益ベースの1株当たり利益(EPS)と株価収益率(PER)に分け、1月4日から1月23日までの期間と、9月14日から9月26日までの期間の推移を確認します。下図をみると、1月も9月も、業績を反映したEPS主導の株高ではなく、期待を反映したPER主導の株高であることが分かります。1月の日経平均株価は、その後3月にかけて、調整局面に入りました。そのため、足元の株高も、上昇ペースが1月よりも速い分、反動の大きさが懸念されます。しかしながら、今回の24,000円台回復と、1月の24,000円台回復では、大きな違いがあります。それは、EPSとPERの水準です。1月23日時点では、日経平均株価の予想利益ベースのEPSは1,525円、PERは15.82倍でした。この時の過去3年平均のPERは15.13倍です。これに対し、9月26日時点ではEPSが約1,735円、PERは13.85倍、過去3年平均のPERは14.43倍となっています。したがって、9月の株高は、利益予想に対して割安な株価水準の修正とみることができ、少なくとも1月のような大幅調整への懸念は不要と考えます。10月下旬からの中間決算発表で、業績予想の上方修正が顕著にみられれば、EPS主導で日経平均が一段高となる余地は広がるとみています。

(2)18年9月FOMCの結果と市場の解釈

<現状>

9月25日、26日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、予想通り0.25%の利上げが決定されました。なお、FOMCメンバーが適切と考える政策金利水準の分布図、「ドットチャート」が示唆する0.25%の年間利上げ回数は、2018年が4回、2019年が3回、2020年が1回となり、前回6月時点でドットチャートが示唆した回数から変化はありませんでした。なお、今回から新たに2021年末の見通しがドットチャートに加わりました。ドットの中央値は2020年と同じ3.375%となり、その結果、2020年での利上げ打ち止めが示された格好になりました。一方、長期(Longer run)のドット中央値は2.875%から3.00%に上昇しましたが、これは9月17日に米連邦準備制度理事会(FRB)副議長に就任したリチャード・クラリダ氏が3.00%予想を提示した可能性が高く、それが影響したものと推測されます。

<ポイント>

FOMCの結果を受けて、米長期金利は低下、ドル円はドル安・円高の反応となりました。これは、ドットチャートに関し、以下の2点が材料視されたことによるものと思われます。1つは、前述の通り、2020年で利上げ打ち止めが示唆されたという点です。もう1つは、2020年末のFF金利水準を3%未満と見込むメンバーが3名だったのに対し、2021年末は5名になり、2021年に利下げを見込むメンバーが増えたという点です。ただ、市場は足元の米国の好況と緩やかな利上げを重視すると思われ、米国で長期金利低下、ドル安、株安の動きが加速する恐れは小さいとみています。なお、弊社では、米国の利上げについて、年内は12月、来年は3月と6月に行われ、来年6月でいったん終了すると予想しています。ただし、米国の力強い景気拡大がこの先も継続すれば、来年の利上げ回数が3回になる可能性は徐々に高まると考えています。

3.景気動向

<現状>

米国は、18年4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率+4.2%となり、1-3月期の同+2.2%から急加速しました。
欧州は、18年4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率+1.5%となりました。+1%台前半とみられる潜在成長率並みの成長を続けています。
日本は、18年4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率+3.0%と、2四半期振りにプラス成長となりました。
中国は、18年4-6月期の実質GDP成長率が前年同期比+6.7%と、18年における政府の成長目標値+6.5%前後を上回りました。
豪州は、18年4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率+3.5%と、7四半期連続のプラス成長となりました。

 <見通し>

米国は、財政支出増加や減税に支えられ、個人消費を軸に順調な成長を続ける見通しです。
欧州は、雇用、賃金の増加や財政・金融政策の支えによるサービス業の堅調な拡大等から、緩やかな成長を続ける見通しです。
日本は、良好な雇用・所得環境を背景とした内需の拡大から、緩やかな成長軌道を辿ると見込まれます。
中国は、政府による経済政策やIT産業の高成長により、安定した成長を続けると予想されます。
豪州は、資源セクターの調整が一巡するため、景気拡大の足取りが、よりしっかりする見込みです。

4.企業業績と株式

<現状>

S&P500種指数の18年9月の1株当たり予想利益(EPS)は173.85米ドル(前年同月比+22.2%)と、23カ月連続で過去最高を更新し、かつ11カ月連続で前年同月比二桁の伸びとなりました。東証株価指数(TOPIX)の予想EPSは132.73円(同+13.0%)と、16カ月連続で二桁の伸びとなりました(いずれも予想はトムソン・ロイターズI/B/E/Sベース)。
米国株式市場は、前半やや上値の重い展開となりましたが、後半は対中制裁関税第3弾の税率が10%にとどまったこと等で貿易戦争への過度な警戒感が後退、NYダウが約8カ月ぶりに史上最高値を更新したほか、S&P500種指数も約1か月ぶりに最高値を更新しました。一方、日本株式市場は、13日に米政府による中国への閣僚級協議の再開打診が伝わったことや同日のトルコ中銀の大幅利上げで新興国通貨安不安が一服したこと、さらに米国の対中制裁の税率が年内は軽微となったこと等で悪材料が一巡し、堅調に推移しました。月末、日経平均株価は1月以来となる2万4,000円台で引けました。

<見通し>

S&P500種指数採用企業のEPSは18年が前年比+23.2%、19年が同+10.2%の増益が予想されています(18年9月28日現在、トムソン・ロイターズI/B/E/Sベース)。一方、日本の予想経常利益増益率は18年度(19年3月期決算)が前年度比+9.4%、19年度(20年3月期決算)が同+8.4%と予想されます(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、18年9月28日現在)。業績はおおむね好調です。米中貿易摩擦は一先ず第3弾の税率が10%と低位にとどまったものの、来年年初には25%に引き上げられる予定であり、引き続き注意が必要です。

5.金融政策

<現状>

FRBは、9月25日、26日に開催したFOMCで、政策金利(FFレート)の誘導レンジを0.25%引き上げ、2.00%~2.25%とすることを決定しました。
欧州中央銀行(ECB)は、9月13日の理事会で政策金利、預金ファシリティ金利(金融機関が手元資金をECBに預け入れる際の金利)をそれぞれ0.00%、▲0.40%に据え置きました。量的緩和政策である資産購入プログラムについては、予定通り10月に規模を現行の月間300億ユーロから同150億ユーロへと縮小し、2018年末まで継続する方針です。
日本銀行は9月19日に開催した金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定しました。長期金利の操作目標である10年物国債利回りをゼロ%程度に操作する金融調節を継続し、長期国債を買い増すペースも引き続き年間約80兆円を目処にします。

<見通し>

米国では、景気、雇用が順調に拡大していることから、3%程度と推計される中立金利を目処に緩やかなペースでの利上げが継続される見通しです。   
ユーロ圏では、18年末に量的緩和が終了した後も、しばらくECBは再投資により国債等の保有残高を維持する見込みです。政策金利は19年9月に預金ファシリティ金利の引き上げ、同年12月には主要リファイナンス金利の引き上げが予想されます。
日本は、経済が緩やかな拡大を続け、物価上昇率は高まるものの、日銀が目標とする2%に到達するには時間がかかる見通しのため、当面、金融政策を据え置く見込みです。

6.債券

<現状>

9月の米10年国債利回りは、前月末に比べ上昇しました。雇用統計やISM指数をはじめとして米景気が順調に拡大していることを示す景気指標の発表が相次いだこと、米中貿易摩擦への過度な警戒感が後退したこと、S&P500種指数やダウ平均が史上最高値を更新したこと等によるものです。欧州では、株高に加え、米金利の上昇、原油価格の値上がり等から、ドイツ10年国債利回りが上昇しました。日本でも、日米の株価上昇等により、長期債利回りが小幅ながら上昇しました。

<見通し>

米国では、インフレの安定が続く見通しのなか、金融政策の正常化が継続することで、長期金利はレンジを小幅に切り上げると予想されます。
欧州では、景気拡大が続くなか物価の緩やかな上昇、ECBによる緩和縮小の推進が想定され、長期金利も緩やかに水準を切り上げる見通しです。
日本では、物価上昇が緩慢なものにとどまるため、日銀の緩和的な金融政策は長期化し、長期金利は低位での安定した推移となる見込みです。
米国など主要国の社債市場は、企業の堅調な業績などを背景に、国債利回りとのスプレッドは安定的に推移する見通しです。

7.為替

<現状>

9月は、円が米ドル、ユーロ、豪ドルといった主要通貨に対して下落しました。世界的な株高を背景にリスク選好が強まったことや、欧米の債券利回りが上昇したこと、トルコ中銀が政策金利を大幅に引き上げたことを契機に新興国市場全般への懸念が後退したこと等によるものです。

<見通し>

円の対米ドルレートは、米景気の強さや日米実質金利差(米ドル高円安要因)と、日本の経常黒字、米国の双子の赤字(米ドル安円高要因)の綱引きとなり、レンジでの推移となる見通しです。
ユーロは、イタリアの政治リスク等により短期的には頭を抑えられる可能性がありますが、やや長い目で見れば、高水準にあるユーロの経常黒字、ECBの金融緩和縮小方針等がユーロの支援材料になる見込みです。
一方、豪ドルの対円相場は、豪州景気の堅調さが増すと見られることや、先行きは豪日間の金利差が広がると予想されること等を踏まえると、底堅い推移が見込まれます。

8.リート

<現状>

9月のグローバルリート市場は、日米豪といった主要国の長期金利上昇を受けて、下落しました。円ベースの月間下落率は、為替効果がプラスに寄与したため、ドルベースの下落率よりも小幅にとどまりました。

<見通し>

利上げの継続、FRBの資産圧縮などから、米長期金利には上昇圧力がかかりますが、物価が落ち着いているため、レンジを多少切り上げるにとどまる見通しです。相対的に高い利回りを求める投資家からの需要は根強く、これが引き続きグローバルリート市場を支援すると考えられます。世界的な景気拡大と低金利環境の下で、グローバルリート市場は底堅い展開が予想されます。

9.まとめ

株式 S&P500指数採用企業のEPSは18年が前年比+23.2%、続く19年は同+10.2%が予想されています(予想はトムソン・ロイターズI/B/E/S、18年9月28日現在)。一方、日本の予想経常利益増益率は、18年度(19年3月期決算)が前年度比+9.4%、19年度(20年3月期決算)は同+8.4%の見込みです(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、18年9月28日現在)。業績は概ね良好ですが、米中間の貿易摩擦には引き続き注意が必要です。
債券 米国では、利上げやFRBの資産圧縮など金融政策を正常化する動きが継続する見通しです。長期金利には上昇圧力がかかると考えられますが、インフレが抑制された状況が続くと予想されることから、多少レンジを切り上げる程度にとどまりそうです。
欧州では、ECBが18年末に量的緩和政策を終了し、19年秋以降に利上げを実施する見込みです。インフレが緩やかに持ち直していくとともに、長期金利も徐々に水準を切り上げていくと予想されます。
日本では、日銀の緩和的な金融政策が長期化する見通しです。債券需給の逼迫もあり、長期金利は低位での安定した推移が予想されます。
米国など主要国の社債市場は、企業の堅調な業績などを背景に、社債スプレッドは安定的に推移する見通しです。
為替 米景気の強さや日米実質金利差(米ドル高円安要因)と、日本の経常黒字、米国の双子の赤字(米ドル安円高要因)の綱引きとなり、円の対米ドルレートはレンジ内での動きが見込まれます。
対ユーロでは、堅調な域内経済やECBの金融緩和縮小の方針がユーロの支援材料になると予想されます。一方、豪ドルの対円相場は、豪州景気の堅調さが増すと見られること、先行きは豪日間の金利差が広がると予想されること等を踏まえると、今後、底堅い推移が見込まれます。
リート 利上げの継続、FRB資産の圧縮などから、米長期金利は緩やかにレンジを切り上げる見通しですが、金融環境は依然として緩和的です。相対的に高い利回りを求める投資家からの需要が根強いことが、引き続きグローバルリート市場をサポートすると考えられます。世界的な景気拡大と低金利環境の下で、グローバルリート市場は底堅い展開が予想されます。
  ※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。