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先月のマーケットの振り返り(2018年1月)【マンスリー】

2018年2月2日

1.概観

トピックス (1)日米欧為替協奏曲~リスクオンのドル安という旋律
(2)米暫定予算~今後のためのポイント整理
株式 米国の株式市場は、法人税減税を盛り込んだ税制改革の進展への期待から、NYダウ、S&P500種指数など主要指数が史上最高値を更新しました。
欧州の株式市場は、ポンド高の進行等により英国のFTSE指数が下落しましたが、良好な景気に支えられドイツのDAX指数は上昇しました。
日本の株式市場は、米国株式市場をはじめ世界的な株高や企業業績の上振れ期待を背景に上昇しました。
債券 米国の長期金利は、ISM指数をはじめ米景気の順調な拡大を示す指標の公表が相次いだことに加え、暫定予算が成立したことを受けて上昇しました。
欧州の長期金利は、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が経済成長や物価見通しに自信を示したことが上昇圧力となりました。
為替 円の対米ドル相場は、ムニューシン米財務長官によるドル安容認発言を受けて上昇しました。一方、対ユーロでは、ドラギECB総裁のユーロ高への牽制と、
良好な欧州経済といったユーロ高の促進が拮抗し、小動きとなりました。
商品 原油先物価格は、世界的な景気拡大による需要増と、石油輸出国機構(OPEC)、非OPEC諸国の協調減産による需給改善により、上昇しました。   


(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1)日米欧為替協奏曲~リスクオンのドル安という旋律

<注目点>

1月下旬は、為替レートに関する日米欧の要人発言が相次ぎ、為替相場は大きく反応しました。1月24日に、ムニューシン米財務長官が「弱いドルは貿易などの面で米国の利益になる」と発言すると、市場は「ドル安容認」と受け止め、対主要通貨でのドル安が進行しました。こうしたなか、ECBのドラギ総裁は1月25日、最近のユーロ高は物価の安定に影響を与えかねないと警戒感を示し、トランプ米大統領も同日、「私は強いドルが見たい」と述べ、前日のムニューシン発言を打ち消しました。これにより、ドル円相場も落ち着くかに見えましたが、黒田総裁が1月26日、日本は2%の物価目標にようやく近づいていると述べると、円は早期緩和解除の思惑から、対ドル、対ユーロで上昇しました。

<ポイント>

3通貨を強い順に並べると、円>ユーロ>ドルとなり、一見、円高の地合いに見えます。ただし、比較対象の通貨を広げて1月第4週の動きをみると、図表1の通り、やはりドル安地合いであることが分かります。世界の主要株価指数は「適温相場」のなか、年初から堅調に推移しており、とりわけ新興国の金融市場は総じて安定しています。つまり、足元のドル安は「リスクオンのドル安」であり、適温相場では米国が利上げ局面でも「ドル安」が進むことがあります。リスクオンのドル安であれば、ドル円において円が相対で上昇しても、日本株の調整は深刻なものにはなりにくいと考えます。

(2)米暫定予算~今後のためのポイント整理

<注目点>

米下院は1月18日、期限を2月16日までとする暫定予算案を可決しましたが、米上院では同案を採決できず、期限を2月8日までに短縮した暫定予算案についても採決に至りませんでした。その結果、暫定予算は失効し、1月20日から米政府機関の一部閉鎖が始まりました。しかしながら、上院与野党はその後の協議の結果、政府機関の一部閉鎖の解消で合意し、1月22日に期限を2月8日までとする暫定予算案を可決しました。同案は米下院でも可決されたため、暫定予算が成立し、政府機関の一部閉鎖は解消されることになりました。この背景には、移民政策を巡る与野党の対立があります。トランプ米大統領は、幼少期に親と不法入国した子供に、米国の滞在を認める制度「DACA」の撤廃を昨年9月に発表しています。一方、民主党はDACAの存続を主張しており、米議会が紛糾しています。与野党は今後、DACAに関する協議を行いますが、合意に達しなければ、2月8日に再び暫定予算が失効し、政府機関が一部閉鎖となる恐れがあります。

<ポイント>

仮に、2月8日に再び暫定予算が失効し、政府機関が一部閉鎖となっても、市場はすでに2013年10月の閉鎖を経験しているため、当時よりも落ち着いた反応になることが予想されます。与野党は、DACAの効力が認められる3月5日までの間、短期の暫定予算をつなぎながら、DACAに関する協議を行うと思われます。そのため、この協議である程度の着地点がみられるまで、2018年度の歳出予算法案の審議は先送りされる公算は大きいと考えます。ただ、足元の米景気は底堅く推移しており、歳出予算法案の遅れが市場に与える影響は限定的とみています。

3.景気動向

<現状>

米国は、10-12月期の実質GDP成長率が前期比年率+2.6%でした。個人消費と設備投資は良好でしたが、在庫投資と純輸出が足枷となりました。
欧州は、10-12月期の実質GDP成長率が前期比年率+2.3%と堅調に推移しています。
日本は、7-9月期の実質GDP成長率が前期比年率+2.5%と7四半期連続でプラスとなるなど、拡大局面が続いています。
中国は、10-12月期の実質GDP成長率が前年同期比+6.8%と、前期と同じ伸び率となりました。
豪州は、資源セクターが軟調ですが、非資源セクターが景気を下支えしています。


<見通し>

米国は、個人消費と設備投資の二本の柱を軸に、緩やかな成長を維持する見通しです。トランプ大統領の税制改革(減税)の効果も見込まれます。
欧州は、内需の拡大に加え、アジア向けを牽引役とする輸出の増大により、+1%台前半と推計される潜在成長率を上回る成長が続く見通しです。
日本は、世界的な景気回復が続くなか、良好な雇用・所得環境を背景とした内需の拡大から、緩やかな成長が見込まれます。
中国は、政府による経済政策により景気の失速は避けられ、安定した成長を続けると予想されます。
豪州は、資源セクターの調整が一巡し、景気は拡大のペースを速める見込みです。

4.企業業績と株式

<現状>

S&P500指数の18年1月の1株当たり予想利益(EPS)は156.08米ドル(前年同月比+16.6%)と、16カ月連続で過去最高を更新し、かつ2カ月連続で前年同月比二桁の伸びとなりました。東証株価指数(TOPIX)の予想EPSは123.95円(同+16.5%)と、8カ月連続で二桁の伸びとなりました(いずれも予想はトムソン・ロイターズI/B/E/Sベース)。
米国株式市場は、税制改革法が可決した後初の決算を迎える中、税制改革による企業利益の上振れ期待を背景に株価上昇ピッチに拍車がかかりました。月末にかけては10年債利回りの上昇に伴い、株価が下落する局面もありました。一方、日本株式市場も、米国株式市場をはじめ世界的な株高や企業業績の上振れ期待を背景に上昇しました。ただ、月末にかけて、米国の長期金利が上昇し、円高・ドル安が進む中で、調整色を強めました。

<見通し>

S&P500指数採用企業の17年予想EPSは、18年1月31日時点で前年比+12.4%と二桁の増益が予想されています。続く18年はさらに加速し、同+17.2%の増益が予想されています(17年12月時点では同+12.0%予想でした。トムソン・ロイターズI/B/E/S)。一方、日本の予想経常利益増益率は、17年度が前年度比+16.9%(前月同+16.6%)、18年度が同+9.3%(前月同+9.2%)と、ともに若干上方修正されています(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、18年1月31日時点)。日米ともに企業業績に対する期待は依然強く、株式市場は堅調な推移が続く見通しです。

5.金融政策

<現状>

FRBは、1月30日~31日開催のFOMCで、政策金利(FFレート)の誘導レンジを1.25%~1.50%で据え置くことを、全会一致で決定しました。ECBは、1月25日の理事会で政策金利、預金ファシリティ金利をそれぞれ0.00%、▲0.40%に据え置きました。量的緩和政策については17年10月の決定通り、今年1月から月間購入額を従来の600億ユーロから300億ユーロに半減しました。
日本銀行は1月23日に開催した金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定しました。短期の政策金利を▲0.1%、長期金利である10年物国債利回りをゼロ%程度に操作する金融調節を維持します。長期国債を買い増すペースも年約80兆円を目処とすることを据え置きました。

<見通し>

米国では、景気拡大が続くものの、インフレ率の低位安定が見込まれるため、金融緩和の解除は引き続き緩やかなペースで進められると予想されます。
ユーロ圏では、ドラギ総裁が量的緩和策の終了から利上げまでの期間について、ある程度の長さが必要との見方を示しています。この点を踏まえると、ECBは18年9月に量的緩和を終了させた後、19年以降に利上げを行うと予想されます。
日本は、経済が緩やかな拡大を続け、物価上昇率も高まるものの、日銀が目標とする2%に到達するには時間がかかる見通しのため、当面金融政策を据え置く見込みです。

6.債券

<現状>

1月末の米国10年国債利回りは、前月末に比べ上昇しました。雇用統計やISM製造業指数といった指標が米景気の順調な拡大を示すものだったこと、短期間ながらも暫定予算の延長が可決されたことなどによるものです。10年国債利回りは、昨年12月末の2.41%から今年1月末には2.71%まで上昇しました。ドイツ10年国債利回りは、ドラギECB総裁が経済成長や物価見通しに自信を示したことを受けて上昇しました。他方、米国社債については、高い利回りを求める内外投資家からの需要が根強く、国債とのスプレッドが縮小しました。

<見通し>

米国では、景気が底堅く推移するなか、緩慢なペースでの利上げ継続、FRBの資産圧縮などから、長期金利は緩やかにレンジを切り上げる見込みです。
欧州では、景気拡大が続くなか、物価上昇率も徐々に持ち直していくことが想定され、長期金利には上昇圧力がかかると予想されます。
日本では、物価上昇が緩慢なものにとどまるため、日銀の緩和的な金融政策は長期化し、長期金利は低位での安定した推移となる見込みです。
米国など主要国の社債市場は、企業の堅調な業績などを背景に、国債利回りとのスプレッドは引き続き安定的に推移する見通しです。

7.為替

<現状>

1月の円の対米ドル相場は、ムニューシン米財務長官による「米ドル安は米国にとってよいこと」等のドル安容認発言等を受けて、上昇しました。一方、対ユーロでは、ドイツの組閣に向けた連立協議の進展や、ドイツifo景況感指数をはじめ景気加速を示唆する経済指標の発表といったユーロ高要因と、ドラギECB総裁の「ユーロ高は不確実性の源」との発言等のユーロ安要因が拮抗し、小動きとなりました。豪ドルの対円相場は、鉄鉱石や石炭価格といった資源価格の持ち直し期待等により上昇しました。  

<見通し>

米景気は底堅く推移しており、FRBによる利上げ継続がドルの支援要因となる一方で、経常収支の不均衡是正を求める米国からの政治的圧力が意識されることから、円相場は対米ドルで一進一退の展開となる見通しです。対ユーロでは、良好な域内経済やECBの金融緩和縮小方針がユーロの支援材料になると予想されます。また、英国のEU離脱選択に伴う不透明感はあるものの、対英ポンドも当面レンジ内での推移となりそうです。一方、豪ドルの対円相場は、資源価格の持ち直しによる豪州経済の成長率加速や貿易収支の黒字基調の継続が見込まれること、豪州と日本の金融政策の方向性が異なること(日銀は緩和姿勢維持に対し、豪州準備銀行は据え置きの見通し)等から判断すると、底堅く推移すると考えられます。

8.リート

<現状>

グローバルリート市場は、世界的な長期金利の上昇を受け下落しました。為替効果はマイナスに寄与し、円ベースの月間下落率はドルベースの下落率を上回りました。

<見通し>

FRBによる利上げのペースは緩やかなものになると見られ、米長期金利は当面レンジ内の推移が見込まれます。世界的に緩和的な金融環境に依然変わりはなく、投資家が相対的に高い利回りを求める需要は根強いことが引き続きグローバルリート市場をサポートすると考えられます。世界的な景気拡大と低金利環境の下で、グローバルリート市場は底堅い展開が予想されます。

9.まとめ

株式 S&P500指数採用企業の17年予想EPSは、18年1月31日時点で前年比+12.4%と二桁の増益が予想されています。続く18年はさらに加速し、同+17.2%の増益が予想されています(17年12月時点では同+12.0%予想でした。トムソン・ロイターズI/B/E/S)。一方、日本の予想経常利益増益率は、17年度が前年度比+16.9%(前月同+16.6%)、18年度が同+9.3%(前月同+9.2%)と、ともに若干上方修正されています(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、18年1月31日時点)。日米ともに企業業績に対する期待は依然強く、株式市場は堅調な推移が続く見通しです。
債券 米国では、景気が堅調に推移するなか、FRBは資産圧縮など金融政策の正常化方針を継続する見通しです。長期金利は緩やかにレンジを切り上げていくと考えられます。
欧州では、景気拡大が続くなか、今後はECBの金融緩和姿勢が徐々に後退していくことが想定され、長期金利には上昇圧力がかかる見込みです。ただ、インフレの低位安定とユーロ高警戒感から、利上げは19年以降となる見込みです。長期金利の上昇は緩やかなものになると予想されます。
日本では、日銀のイールドカーブ・コントロールにより、長期金利は低位での安定した推移が予想されます。
米国など主要国の社債市場は、企業の堅調な業績などを背景に、社債スプレッドは引き続き安定的に推移する見通しです。
為替 経常収支不均衡問題や日銀の金融政策を巡る思惑が円を支える要因となる一方、FRBによる利上げ継続、早期の減税策可決を受けた海外景気・長期金利の上昇傾向が円安要因となり、両者の綱引きのもとでレンジ相場が続くと予想されます。
対ユーロでは、良好な域内経済やECBの金融緩和縮小方針がユーロの支援材料になると予想されます。一方、豪ドルの対円相場は、豪州の景気や国際収支の改善、世界的な景気回復を受けた商品市況の持ち直しを勘案すると、底堅く推移する見通しです。
リート FRBによる利上げのペースは緩やかなものになると見られ、米長期金利は当面レンジ内の推移が見込まれます。世界的に緩和的な金融環境に依然変わりはなく、相対的に高い利回りを求める投資家の需要が根強いことが、引き続きグローバルリート市場をサポートすると考えられます。世界的な景気拡大と低金利環境の下で、グローバルリート市場は底堅い展開が予想されます。
  ※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。