ホームマーケット週次・月次市場情報先月のマーケットの振り返り(2017年12月)【マンスリー】

先月のマーケットの振り返り(2017年12月)【マンスリー】

2018年1月9日

1.概観

トピックス (1)2018年のドル円相場見通し
(2)2018年の日本株見通し
株式 米国の株式市場は、法人税減税を盛り込んだ税制改革法の早期成立期待等から、NYダウ、ナスダック指数等が史上最高値を更新しました。
欧州の株式市場は、欧州連合(EU)からの離脱交渉の進展を受けて英国のFTSE指数が上昇しましたが、ドイツのDAX指数は下落しました。日本の株式市場は、国内外の堅調な景気や為替相場の円安ドル高基調が支えとなり、日経平均株価が上昇を続けました。
債券 米国の長期金利は、減税を盛り込んだ税制改革法の成立や利上げ等の上昇要因と物価の安定という低下要因が拮抗し、前月末比ほぼ横這いでした。
欧州の長期金利は、欧州中央銀行(ECB)高官によるタカ派的な発言が相次いだため上昇、また日本の長期金利は、小幅ながら上昇しました。
為替 米ドルの対円相場は、米税制改革の進展や米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げを支えに底堅い展開となりました。一方、ユーロの対円相場は、好調なユーロ圏の経済指標等を受けて上昇しました。豪ドルの対円相場は、同国の主要輸出品である鉄鉱石価格の値上がり等から上昇しました。
商品 原油先物価格は、石油輸出国機構(OPEC)総会で、協調減産の期間延長に関する合意が成立したことから上昇しました。


(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1)2018年のドル円相場見通し

<注目点>

2017年はレンジ相場となりましたが、2018年にドル安・円高に振れるリスクとしては、中国景気の減速や朝鮮半島情勢の緊迫化などが挙げられます。中国経済の成長ペースは、足元でやや上振れ気味ですが、来年は安定水準とされる6.5%程度に減速すると予想します。減速しすぎれば、世界経済や金融市場に悪影響が及びますが、現時点でその可能性は低いと考えます。また、朝鮮半島情勢は難しい問題ですが、直ちに米朝が軍事衝突する公算は、現時点でまだ小さいとみています。

<ポイント>

2018年のドル円相場について、弊社では1ドル=108円から120円のレンジ推移を予想しています。なお、金融政策については、日銀が現行の緩和方針を維持する一方、FRBは緩やかなペースで利上げを継続するとみています。そのため、ドル円相場はレンジ推移ながらも、日米金融政策の方向性の違いにより、ややドル高・円安方向の動きが見込まれます。

(2)2018年の日本株見通し

<注目点>

2018年も、世界的に緩やかな景気回復と緩和的な金融環境が併存し、熱すぎる(強気すぎる)こともなく、冷たすぎる(弱気すぎる)こともない、ちょうどよい加減の「適温相場」が続くと思われます。弊社では、世界経済の成長率について、2016年の前年比+3.2%を底に、2017年は同+3.5%まで回復し、2018年は同+3.6%まで成長率が高まると予想しています。日本については、景気配慮型の金融・財政政策が当面維持され、2018年度の実質GDP成長率は前年度比+1.1%と、潜在成長率(弊社試算で年率+0.7%)を上回るとみています。世界的に適温相場が続くなかで、日本経済の底堅さが見込まれることから、2018年も日本株の上昇余地はあると考えます。

<ポイント>

2018年の日経平均株価について、弊社では21,700円から25,000円の予想レンジを設定しています。年前半は、企業業績の回復が続き、株価はそれを織り込む形で上昇する可能性が高いと考えます。ただし、年後半は不確実性の高まりから、上昇基調が一服しやすい時間帯になるとみています。不確実性とは、世界的な景気回復の持続性や、欧米金融政策の正常化による過剰流動性への影響などです。

3.景気動向

<現状>

米国は、ハリケーンの影響で一時的に景気・雇用が上下に大きく変動しましたが、拡大の基調そのものに変化は見られません。
欧州は、7-9月期の実質GDP成長率が前期比+0.6%となり、前期の同+0.7%とほぼ同様の伸び率となりました。
日本は、7-9月期の実質GDP成長率が前期比年率+2.5%と7四半期連続でプラスとなるなど、拡大局面が続いています。
中国は、7-9月期の実質GDP成長率が前年同期比+6.8%と、前期の同+6.9%から小幅鈍化しましたが、底堅さを維持しています。
豪州は、資源セクターが軟調ですが、非資源セクターが景気を下支えしています。


<見通し>

米国は、個人消費と設備投資の二本の柱を軸に、緩やかな成長を維持する見通しです。トランプ大統領の税制改革(減税)の効果も見込まれます。
欧州は、内需の拡大に加え、アジア向けを牽引役とする輸出の増大により、+1%台前半と推計される潜在成長率を上回る成長が続く見通しです。
日本は、世界的な景気回復が続くなか、良好な雇用・所得環境を背景とした内需の拡大から、緩やかな成長が見込まれます。
中国は、政府による経済政策により景気の失速は避けられ、安定した成長を続けると予想されます。
豪州は、資源セクターの調整が一巡し、景気は拡大のペースを速める見込みです。

4.企業業績と株式

<現状>

S&P500指数の17年12月の1株当たり予想利益(EPS)は147.03米ドル(前年同月比+10.2%)と、15カ月連続で過去最高を更新し、かつ11年12月以来の前年同月比二桁の伸びとなりました。東証株価指数(TOPIX)の予想EPSは122.05円(同+17.1%)と、7カ月連続で二桁の伸びとなりました(いずれも予想はトムソン・ロイターズI/B/E/Sベース)。
米国株式市場は、税制改革の進展への期待から月初より堅調に推移しました。米連邦公開市場委員会(FOMC)では市場予想通りに0.25%の利上げが決定し、今後の金融政策についてもハト派的な内容であったことも株価の支援材料となりました。S&P500指数は18日に2,690.16と、NYダウは28日に2万4,837.51ドルとそれぞれ史上最高値を更新しました。一方、日本株式市場は、上旬に先物主導で調整する場面もありましたが、米国で税制改革法案の年内成立が濃厚となり、米株の堅調な推移を好感して堅調に推移しました。ただ、日経平均株価は2万3,000円が壁となり、25日に2万2,939.18円の高値を付けた後、年末は2万2,764.94円で引けました。TOPIXも25日に年初来高値の1,831.93を付けた後、年末は1,817.56で引けました。

<見通し>

S&P500指数採用企業の17年予想EPSは、17年12月29日時点で前年比+12.0%と二桁の増益が予想されています。続く18年も17年と同じ、同+12.0%の増益が予想されています(トムソン・ロイターズI/B/E/S)。一方、日本の予想経常利益増益率は、17年度が前年度比+16.6%(前月同+16.2%)、18年度が同+9.2%(前月同+8.9%)と、ともに若干上方修正されています(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、17年12月29日時点)。日米ともに企業業績に対する期待は依然強く、株式市場は堅調な推移が続く見通しです。

5.金融政策

<現状>

FRBは、12月12日~13日開催のFOMCで、政策金利(FFレート)の誘導レンジを0.25%引き上げ、1.25%~1.50%とすることを決定しました。利上げの決定に対しては、据え置きを主張して2票の反対票が投じられました。10月から   
ECBは、12月14日の理事会で政策金利、預金ファシリティ金利をそれぞれ0.00%、▲0.40%に据え置きました。量的緩和政策については変更なく、18年1月以降の月間購入額を従来の600億ユーロから300億ユーロに半減し、18年9月まで続ける方針です。
日本銀行は12月21日に開催した金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定しました。短期の政策金利を▲0.1%、長期金利である10年物国債利回りをゼロ%程度に操作する金融調節を維持しました。長期国債を買い増すペースも年約80兆円を目処とすることを据え置きました。

<見通し>

米国では、景気拡大が続くものの、インフレ率の低位安定が見込まれるため、利上げは引き続き緩やかなペースで行われると予想されます。
ユーロ圏では、ECBが18年1月から9月末まで月間購入額を300億ユーロに削減し、量的緩和政策を縮小します。利上げは、19年以降に行われる見通しです。
日本は、経済が緩やかな拡大を続け、物価上昇率も高まるものの、日銀が目標とする2%に到達するには時間がかかる見通しのため、当面金融政策を据え置く見込みです。

6.債券

<現状>

12月の米国10年国債利回りは、前月末比ほぼ横這いとなりました。12月12日~13日のFOMCでの利上げの決定や、10年間で1.5兆ドルという大型減税を盛り込んだ税制改革法の成立という上昇要因と、物価上昇率の低位安定という低下要因が拮抗し、結局、前月末とほぼ同じ水準で引けました。ドイツ10年国債利回りは、ECB高官から「金融政策の重点を資産購入による量的緩和から政策金利の操作等にシフトすべき」等のタカ派的な発言が相次いだことから上昇しました。米国社債については、高い利回りを求める内外投資家からの引き合いが強く、国債とのスプレッドが縮小しました。

<見通し>

米国では、景気が底堅く推移するなか、緩慢なペースでの利上げ継続、FRBの資産圧縮などから、長期金利は緩やかにレンジを切り上げる見込みです。
欧州では、景気拡大が続くなか、物価上昇率も徐々に持ち直していくことが想定され、長期金利には上昇圧力がかかると予想されます。
日本では、物価上昇が緩慢なものにとどまるため、日銀の緩和的な金融政策は長期化し、長期金利は低位での安定した推移となる見込みです。
米国など主要国の社債市場は、企業の堅調な業績などを背景に、国債利回りとのスプレッドは引き続き安定的に推移する見通しです。

7.為替

<現状>

米ドルの対円相場は、米税制改革の進展やFRBによる利上げを支えに、底堅い展開となりました。ただ、依然として米ドルの上値は重く、月間の高値は1米ドル=113円台にとどまりました。一方、ユーロの対円相場は、好調なユーロ圏の経済指標等を受けて上昇しました。豪ドルの対円相場は、11月の雇用統計や12月の消費者信頼感指数といった豪州の景気指標が良好だったことや、同国の主要輸出品である鉄鉱石価格が値上がりしたこと等から、上昇しました。

<見通し>

米景気は底堅く推移しており、FRBによる利上げ継続がドルの支援要因となる一方で、経常収支の不均衡是正を求める米国からの政治的圧力が意識されることから、円相場は対米ドルで一進一退の展開となる見通しです。対ユーロでは、良好な域内経済やECBの金融緩和縮小方針がユーロの支援材料になると予想されます。また、英国のEU離脱選択に伴う不透明感はあるものの、対英ポンドも当面レンジ内での推移となりそうです。一方、豪ドルの対円相場は、資源価格の持ち直しによる豪州経済の成長率加速や貿易収支の黒字基調の継続が見込まれること、豪州と日本の金融政策の方向性が異なること(日銀は緩和姿勢維持に対し、豪州準備銀行は据え置きの見通し)等から判断すると、底堅く推移すると考えられます。

8.リート

<現状>

グローバルリート市場は、アジア、欧州が堅調に推移したことから、上昇しました。為替効果はプラスに寄与し、円ベースの月間上昇率はドルベースの上昇率を上回りました。

<見通し>

FRBによる利上げのペースは緩やかなものになると見られ、米長期金利は当面レンジ内の推移が見込まれます。世界的に緩和的な金融環境に依然変わりはなく、投資家が相対的に高い利回りを求める需要は根強いことが引き続きグローバルリート市場をサポートすると考えられます。世界的な景気拡大と低金利環境の下で、グローバルリート市場は底堅い展開が予想されます。

9.まとめ

株式 S&P500指数採用企業の17年予想EPSは、17年12月29日時点で前年比+12.0%と二桁の増益が見込まれています。続く18年も17年と同じ、同+12.0%の増益が予想されています(トムソン・ロイターズI/B/E/S)。一方、日本の予想経常増益率は、17年度が前年度比+16.6%(前月同+16.2%)、18年度が同+9.2%(前月同+8.9%)と、ともに若干の上方修正となっています(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、 17年12月29日時点)。日米ともに企業業績に対する期待は依然として強く、株式市場は堅調な推移が続く見通しです。
債券 米国では、景気が堅調に推移するなか、FRBは資産圧縮など金融政策の正常化方針を継続する見通しです。長期金利は緩やかにレンジを切り上げていくと考えられます。
欧州では、景気拡大が続くなか、今後はECBの金融緩和姿勢が徐々に後退していくことが想定され、長期金利には上昇圧力がかかる見込みです。
日本では、日銀のイールドカーブ・コントロールにより、長期金利は低位での安定した推移が予想されます。
米国など主要国の社債市場は、企業の堅調な業績などを背景に、社債スプレッドは引き続き安定的に推移する見通しです。
為替 米国景気は底堅く推移しており、FRBの利上げがドルの支援要因となる一方で、経常収支の不均衡是正を求める米国から政治的圧力が意識されることから、円相場は対ドルで一進一退の展開となる見通しです。対ユーロでは、良好な域内経済やECBの金融緩和縮小方針がユーロの支援材料になると予想されます。一方、豪ドルの対円相場は、豪州の景気や国際収支の改善、世界的な景気回復を受けた商品市況の下振れリスク低下を勘案すると、底堅く推移する見通しです。
リート FRBによる利上げのペースは緩やかなものになると見られ、米長期金利は当面レンジ内の推移が見込まれます。世界的に緩和的な金融環境に依然変わりはなく、相対的に高い利回りを求める投資家の需要が根強いことが、引き続きグローバルリート市場をサポートすると考えられます。世界的な景気拡大と低金利環境の下で、グローバルリート市場は底堅い展開が予想されます。
  ※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。