ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目中東情勢の不透明感が原油価格と日米金融政策に与える影響

2026年10月20日

三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩

【市川レポート】中東情勢の不透明感が原油価格と日米金融政策に与える影響

●米国とイランの交渉が膠着状態のなか、サウジとフーシ派の衝突が激化し、情勢はいっそう複雑に。
●中東情勢の不安定さは、単に宗派争いではなく地域の安全保障や主導権争いも絡むことが一因。

●弊社は、原油の想定価格と日米利上げ予想回数を引き上げ、中東情勢の慎重な見極めを継続。

米国とイランの交渉が膠着状態のなか、サウジとフーシ派の衝突が激化し、情勢はいっそう複雑に

米国とイランの戦闘終結に向けた交渉は膠着状態が続いています。報道によると、イランは先月、米国が資産凍結の解除などに応じれば7日以内にホルムズ海峡を開放し、核交渉を再開する方針を米国に示した模様ですが、トランプ米大統領は9月26日にこの提案を拒否すると述べ、その後の進展はみられていません。両国とも軍事的な圧力を交渉材料として使っており、妥協に転じるきっかけをつかめていない状況です。


こうしたなか、サウジアラビアとイエメンの親イラン武装組織フーシ派との衝突激化が、情勢をさらに複雑にしています。フーシ派はサウジの空港や石油関連施設を攻撃し、サウジ側も対抗しています。攻撃の応酬が続けば、紅海を通る海上輸送への影響が深刻化する恐れもあります。そのため、仮に米国とイランが停戦に合意しても、周辺地域で戦闘が継続する限り、中東全体の緊張は容易に収まらず、原油市場にも不安が残るとみられます。

中東情勢の不安定さは、単に宗派争いではなく地域の安全保障や主導権争いも絡むことが一因

不安定な中東情勢には宗教的な要因も深くかかわっています。イスラム教は大きくスンニ派とシーア派に分かれ、サウジではスンニ派、イランではシーア派が多数を占めます(図表1)。シーア派の一派であるザイド派を背景とするフーシ派はイランの支援を受け、サウジが支援するイエメン暫定政権と対立しています。ただ、現在の対立は単なる宗派争いではなく、地域の安全保障や主導権争いも絡んでいるように思われます。


このような状況下、これまでの報道を踏まえ、米・イランの戦闘終結への手順を想定してみます(図表2)。まず、相互攻撃の停止で合意し、ホルムズ海峡の安全な航行を確保する必要があります。その上で、核交渉の再開と米国による経済制裁の段階的解除を組み合わせることが考えられます。また、周辺の戦闘を極力抑え、合意の履行を第3国が確認する仕組みも重要です。ただ、これだけでも条件は多岐にわたり、合意は容易ではないとみています。

弊社は、原油の想定価格と日米利上げ予想回数を引き上げ、中東情勢の慎重な見極めを継続

なお、国際エネルギー機関(IEA)は10月14日、中東の湾岸産油国からの原油輸出量が9月に米イラン軍事衝突前の75%程度まで回復したとの分析を示しました。ただ、ホルムズ海峡周辺で船舶への攻撃が続くなか、輸送費や保険料が膨らんでいます。前述の通り、米国とイランの戦闘終結に向けた合意へのハードルはなお高く、輸出量が増えても供給不安が残り、原油価格の高止まりが日米両国の物価を押し上げる可能性があります。


弊社は昨日、経済見通しの前提となる北海ブレント原油先物の想定価格について、今年の平均価格を1バレル86ドルから98ドルへ、来年は84ドルから85ドルへ引き上げ、日米で来年3月に25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げ実施予想を追加しました(従来は米国が今年12月、日本は来年1月と6月で来年1月を今年12月に変更)。さらなる原油高は利上げ回数の増加につながりかねず、引き続き中東情勢の慎重な見極めが必要です。