ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目相次ぐ日米高官の円安けん制発言で円安進行は抑制されるか

2026年9月29日

三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩

【市川レポート】相次ぐ日米高官の円安けん制発言で円安進行は抑制されるか

●このところ、日米高官から円安をけん制する発言が続いており、9月25日には特に発言が集中した。
●これら一連の発言は投機の円売り抑制効果があり、また実際に為替介入の可能性も相応に高い。
●日本単独介入なら152円10銭水準が視野、ただしドル高・円安方向の圧力は残り続けるとみる。

このところ、日米高官から円安をけん制する発言が続いており、9月25日には特に発言が集中した

このところ、日米の高官から円安をけん制する発言が相次いでいます。以下、主な発言を確認すると(図表1)、まず、片山さつき財務相は9月24日、足元で進む円安について記者団から問われた際、「先般の協調介入以降のプリンシプル(原則)は生きている」と話しました。プリンシプルとは、8月3日に財務省から公表された財務大臣談話の内容と推測され、そこには「今後、さらなる協調介入を実施することも躊躇しない」との文言があります。


翌9月25日には、高市早苗首相と片山財務相が、先日の日米首脳会談においてトランプ大統領から円安への懸念が示されたことを明らかにし、高市首相は一般論として、円の過小評価は問題である旨をトランプ米大統領に伝えたと述べました。また、城内実経済財政相も同日、高市政権の財政運営について「(金融緩和と積極財政を志向する)リフレ政策ではない」と発言しました。


これら一連の発言は投機の円売り抑制効果があり、また実際に為替介入の可能性も相応に高い

なお、9月25日には、片山財務相とベッセント米財務長官との電話会談が行われ、「円の過小評価は問題であるという点」と、「両国間の協力をさらに強化していくこと」を再確認したことが、同日に財務省から公表された日米財務大臣会談の内容で明らかになりました。ベッセント米財務長官は会談後、「堅調な日本経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映した強い円が望ましい」ことなどを協議したとSNSに投稿しました。


さらに9月28日には、三村淳財務官より、円の過小評価は問題だと日米両政府が共有したメッセージは「非常にクリア」との認識が示されました。これら一連の発言は、市場に日米当局による為替介入を警戒させ、投機的な円売りを一定程度、抑制する効果はあると思われます。また、日銀が市場参加者にドル円相場の水準を照会する「レートチェック」を9月18日の海外市場で行ったと報じられており、為替介入の可能性は相応に高いと判断されます。

日本単独介入なら152円10銭水準が視野、ただしドル高・円安方向の圧力は残り続けるとみる

日米高官からの円安けん制発言を受け、ドル円は短期的に1ドル=160円を大きく超えてドル高・円安が進むシナリオは、いったん後退したように思われます。また、この先、急速に円安が進行し、ドル売り・円買いの為替介入が実施された場合、日本単独であれば、1月27日につけた152円10銭水準が視野に入り、米国がドル売り・円買いで協調すれば、この水準よりもドル安・円高が進むことが予想されます。


ただ、8月12日付レポートや9月8日付レポートで指摘したドル高・円安が進みやすい背景(図表2)を改めて考えると、いずれも円安けん制や為替介入では解決できず、ドル高・円安方向の圧力は残り続けると思われます。なお、現時点で日銀の利上げが後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」の懸念は後退したとみられるため、政府が財政悪化懸念を払しょくするメッセージを市場に発信できれば、円安抑制効果はさらに強まるとみています。