2026年8月31日
三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩
【市川レポート】2026年8月ジャクソンホール会議レビュー~タカ派のウォーシュ発言
●政策運営の基本原則と米国経済に関するウォーシュ発言は金融政策見通しの重要な手掛かりに。
●ウォーシュ議長はFRBの最優先の焦点は物価であることを明言し金融引き締めに含みを持たせた。
●目先は8月米CPIの直近12カ月変動率と直近6カ月変動率の数字が9月利上げの重要なカギに。
政策運営の基本原則と米国経済に関するウォーシュ発言は金融政策見通しの重要な手掛かりに
米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ議長は8月28日、経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で講演し、①人工知能(AI)による経済構造の変化、②フォワードガイダンス(金融政策の先行きに関する指針)のあり方、③金融政策運営の基本原則、④足元の米国経済について、それぞれ見解を示しました。①と②の内容は、おおむね想定内でしたが、③と④の内容は、今後の金融政策を見通す上で重要な手掛かりとなりました。
③では、基本原則として、金融政策は単月の指標ではなく経済の基調を重視すること、需要と供給の均衡を慎重に判断すること、2%の物価安定目標を明確に堅持し、最大雇用との両立を図ることが挙げられました。また、政策手段は短期金利を中心とし、非伝統的金融政策は危機時に限定すること、貨幣は重要であること、結果によって信認を得る、より静かなFRBを目指すことも明示されました。
ウォーシュ議長はFRBの最優先の焦点は物価であることを明言し金融引き締めに含みを持たせた
④の足元の米国経済について、設備投資と企業利益はいずれも成長期待がかなり高く、クレジット市場などには金融引き締めを示す兆候はほとんどみられず、実質個人消費は堅調に推移し、労働市場は完全雇用の状態にあるとの見方が示されました。ただ、インフレ率はFRBの目標である2%を上回って推移していることから、FRBの最優先の焦点は物価であることが明言されました(図表1)。
ウォーシュ議長はまた、夏の個人消費支出(PCE)物価指数および消費者物価指数(CPI)に触れ、予想よりも伸びが鈍化したものの、それだけで基調的なインフレ率が有意義に改善したとは思えないと述べました。その上で、基調的なインフレ率が目標である2%へ明確かつ十分な速度で向かっているとの確信がなければ、「やるべき仕事がある」と発言し、金融引き締めに含みを持たせました。
目先は8月米CPIの直近12カ月変動率と直近6カ月変動率の数字が9月利上げの重要なカギに
今回の講演で、ウォーシュ議長は政策運営の基本原則と米国経済の現状認識を明確に示した一方、9月の利上げを示唆するようなフォワードガイダンスは回避しました。ただ、物価の現状認識は、市場がタカ派的と判断するのに十分な内容となり、8月28日のフェデラルファンド(FF)金利先物市場では9月の利上げ確率が上昇し(図表2)、総じて米国株は下落、米国債の利回りは上昇(価格は下落)、米ドルは対主要通貨で増価の反応となりました。
目先は9月11日に公表される8月のCPIが注目されます。ウォーシュ議長は講演で、7月のPCEについて、直近12カ月の変動率は3.7%、直近6カ月の変動率(年率換算)は4.1%と、目標の2%を上回っていると指摘しました。そのため、8月のCPIで、直近12カ月の変動率と直近6カ月の変動率(年率換算)が、ともに2%を上回り、後者が前者を上回っていることが確認された場合などには、9月利上げの見方が一段と強まるように思われます。



