ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目日本の長期金利は一時2.945%に上昇~その背景と今後の展望

2026年8月19日

三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩

【市川レポート】日本の長期金利は一時2.945%に上昇~その背景と今後の展望

●長期金利は日銀の早期利上げ観測や財政悪化懸念、原油高とインフレの警戒などで大きく上昇。
●弊社は政策金利が2027年6月に1.75%へ到達すると予想しており、市場もほぼ織り込み済み。
●ただ原油高などの状況下で長期金利上昇圧力は残る、政府の財政規律配慮の姿勢が待たれる。

長期金利は日銀の早期利上げ観測や財政悪化懸念、原油高とインフレの警戒などで大きく上昇

8月18日の国内債券市場において、長期金利の指標となる新発10年国債の利回りが上昇(価格は下落)し、一時2.945%の水準に達しました。17日には一時2.930%をつけていましたが、それに続いて、売買高の多い指標銘柄が長期金利とされていた1996年9月以来、およそ30年ぶりの高さを記録しました。18日は、新発の20年、30年、40年国債といった年限が10年を超える超長期国債にも売りが広がりました。


国内の長期金利上昇の要因としては、日銀の早期利上げ観測や、高市早苗政権の拡張的な財政運営に対する財政悪化懸念、中東情勢悪化に起因する原油高とインフレへの警戒があると思われます。また、米国でも、対イラン戦争での戦費拡大などによる財政悪化や、ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)による巨額の社債発行などを背景に、国債の需給が緩むとの見方から、長期金利が上昇しており、これも相応に影響していると推測されます。

弊社は政策金利が2027年6月に1.75%へ到達すると予想しており、市場もほぼ織り込み済み

今後の長期金利の動向を展望するにあたり、はじめに日銀の早期利上げ観測からみていきます。翌日物金利スワップ(OIS)市場では、8月に入り、25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の追加利上げが早期に行われるとの予想が広がり、8月18日時点では、2027年6月の会合までに3回の利上げが実施され、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標は1.75%程度になるとの見方がほぼ織り込まれています(図表1)。


弊社は日銀の金融政策について、日米の協調介入を経て早期の利上げが行われる可能性が高まったと判断し、8月18日に、2026年は9月、2027年は1月と6月に25bpの利上げが行われるとの見通しに変更しました(従来は2026年12月、2027年6月と12月)。ターミナルレート(利上げの最終到達点)は1.75%と、日銀が推計する名目の中立金利(景気を刺激も抑制もしない水準)である1.1%~2.5%程度のほぼ中心に達するとみています。

ただ原油高などの状況下で長期金利上昇圧力は残る、政府の財政規律配慮の姿勢が待たれる

仮に、弊社の見通し通りに利上げが進むことになれば、来年6月までに政策金利が1.75%まで引き上げられることは市場でほぼ織り込み済みのため、日銀の早期利上げ観測による長期金利上昇は、この先、一服する可能性が高いと思われます。次に、財政悪化懸念に焦点を移すと、タームプレミアム(年限に応じて各種リスクが反映される上乗せ金利)は依然として高止まりが続いています(図表2)。


財政悪化懸念を和らげるには、政府が危機管理・成長投資のための歳出拡大に対し、具体的な財源、国債発行額、歳出抑制策を明確に示すことが必要と考えます。原油高と海外での長期金利上昇という状況下では、10年国債利回りが3%を超えるケースを想定しておくことは必要と思われますが、例えば、2027年度予算などで財政規律に配慮する政府の姿勢が確認されれば、長期金利が急騰するような事態は避けられるのではないかとみています。